Reinkarnation & Abenteuer【完結】   作:吾妻原昌孝

7 / 8
最終話です。
あらかじめ断っておくと、この小説はとても読めたものではないので、絶対に読まないでください・・・と言いたくなるくらいの駄文と言って差し支えない内容です。
暖かい目で見てください。


最終話 Entscheidungsschlacht+エピローグ

 ラーダイカの町。バルジャマンにとっての始まりの地に、ヒッシュはいた。

「・・・」

「お前が・・・っ!」

 怒りを露わにするバルジャマンと対照的に、シオンは落ち着き払っている。長い年月を生きたことによって、一種の悟りを開いたような精神になっているのだ。尤もそれは、あくまで感情を表出させていないだけ、とも取れるが。

 ヒッシュは、何も言わない。

 ただ、二人を見据えているだけだ。

「絶対に、殺すっ!」

 そう叫び、バルジャマンはヒッシュに突撃した。

「待て、バン! 迂闊に飛び出すな!」

 シオンは制止したが、バルジャマンの知るところではない。

──ここで殺すんだ、町の人を殺し尽くした、こいつを!

 バルジャマンの思考は、これでいっぱいになっていた。

 「!」

 ヒッシュは、長く伸ばした爪を、バルジャマンに刺そうとする。一撃必殺になりうる、頸動脈を狙ったものだ。しかし、それは当たらなかった。

「そうか、ならば・・・!」

 シオンも、加勢に入った。

 そう、ヒッシュの攻撃は、文字通り「必殺」である。死を経験していないものには、痛恨の一撃となる。しかし、バルジャマンのような転生者、シオンのような不死身の存在には、効果がないのである。

「とったっ!」

 バルジャマンはヒッシュの頭を両腕で捉え、そのまま勢いよく首を捻った。常人ならば、死亡しておかしくない行為である。

「やったか!? ・・・いや、まだだ!」

 しかし、不死身なのはヒッシュも同じ事。首を折られた程度では死なない、まさに人を殺すためだけの災厄であった。

「やっぱり・・・! だけど、アレを使うには・・・!」

 バルジャマンは、ヒッシュを誘導することにした。

 それは、一般的には誘導とは言わない行為であるが。

「シオンさん、風を!」

「承った!」

 無詠唱で風の上級魔法を放つシオン。それにより、ヒッシュは遥か遠くの平原にまで飛ばされた。

「後を追うぞ、飛べ!」

「了解!」

 ヒッシュの落下地点まで、二人は高速で飛んだ。その所要時間は、10秒に満たない。

 彼らが降り立ったそこは、国内屈指の牧草地隊である。だが、それを気にする暇はなく、また気にする彼らではない。余談だが、この戦いの後、ミズイルでは一時的に家畜の生産数が落ち込んでしまったらしい。

 ヒッシュは、着地した彼らに、寸分狂わぬタイミングでナイフを投げた。それも、波状にである。そのウェーブ数、30。二人はそれを、すべて難なく叩き落とした。

 しかし、それは牽制である。先ほどと比べると2.5倍程度の大きさのナイフが、二人めがけて飛んできたのだ。流石に命の危機を感じたのか、二人は体を後ろに反らし、間一髪で難を逃れた。読者諸君が見れば、仮想世界を舞台にした洋画を思い浮かべることだろう。

 そして、体の位置を元に戻した二人は、同時に火を放つ。無論、魔法によるものだ。シオンは例によって無詠唱、バルジャマンは「ファイア!」と叫んだ。

 周囲の牧草は燃えた。ヒッシュの衣服も、焦げ付いてしまった。だが、彼自身は意に介さない。

 そして、バルジャマンはヒッシュの元へ駆ける。そして、先ほどヒッシュが投擲したナイフを二本拾い、

「シオンさん、今ですっ! 壁を!」

 と叫んだ。

「心得た!」

 とシオンが叫ぶと同時に、バルジャマンとヒッシュは、燃え盛る牧草と共に、シオンが作り出した、四方と天井を覆う、まるで現代社会の高層ビルのような壁に閉じ込められた。

「・・・?」

 怪訝な様子を見せるヒッシュ。当然である。燃え盛る炎の中で、しかも密閉空間だ。いずれ酸素は尽き、バルジャマンが死亡することは目に見えている。

「お前、このままだと死ぬのになんでこんなことしてるのかって考えてるだろ? それが俺らの作戦だっ!」

 ナイフを両手に水平に構え、回転の用意をする。

「くらえ、これが転生したからこそやれる技、名付けてナイフプロセッサッ! ひとまず、細切れになれぇぇぇええええええ!!!!!!」

 そう叫び、業務用扇風機をも凌駕する大回転を見せる。

 読者諸君は、フードプロセッサをご存知であろうか。専用の容器に野菜などを入れ、蓋をして、内側の刃によって細切れにしてしまうという、恐るべき調理器具である。バルジャマン自身は、前世で料理少年だったわけではない。だが、両親がよくこれを使っていたため、印象に残っていたのだ。

「・・・!」

 少なくとも、ヒッシュの衣服は細切れになっている。その肌にも、大量の切り傷が刻まれているのがわかる。だが、それでも死ぬ気配を見せない。

「わかってんだよそんなことっ! だから、待ってたんだろっ!」

 バルジャマンは、1秒90回転の剣戟を止め、ナイフを地面に刺し、印を結んだ。

「・・・! ───」

「怖がったな? これがお前を殺すからっ!」

 ヒッシュを殺す術。それを知るには、死を知らなければならなかった。

 だが、バルジャマンは、一度死んで、ここに来た。だから、容易く知ることができたのだ。

 今、その秘術が解き放たれる。

「我の死を汝に与えん。汝の生は此処に潰え、人の輪廻を外れ、永劫に回帰することなし。人は人として生き、世界は世界として生きる。其処に他の石の介在は不要。この世のあるべき理に回帰せん。・・・厄災よ、去るがよいッ!」

 その呪文と共に、光の刃が現れる。厄災殺しの剣、エンドラスである。

 バルジャマンは、迷うことなく両手でそれを掴み、ヒッシュに突き立てる。

「─────!!!!!」

「これで終わりだド外道の厄災ィィイイイ!!!」

 ヒッシュは、呻き声と共に、消滅した。同時に、先ほどシオンの魔法で作られた壁が跡形もなく消えた。

 同時刻、この世界のすべての魔法が喪われた。

 ヒッシュを殺す秘術は、この世すべての魔法を代償に発動するものだったのだ。

 こうして、ヒッシュをめぐる一連の騒動は、幕を閉じた。

 

***

 

 二人のその後について、ここに記しておこう。

 シオンは、これまで通り放浪の旅を続けることにした。死に場所を求めてか、何か違う意図があってのことなのかは、わからないが。後に、世界各地で、似たような男の伝承が存在することになるが、それはすべて彼のものである。

 バルジャマンは、ヒッシュを倒した功績を評価され、20歳で王城に登用された。それだけでなく、三十路に突入した折に禅譲──王位を譲られた。

 彼は、後の世で、名君と呼ばれるほどの善政を敷いた。そのおかげか民にも大人気で、晩年病で床に臥した時には、多くの民が見舞いに駆けつけたという。結局彼は、98年という長い時間を、この世界で過ごしたことになる。さらに、彼は27歳でラーダイカの娘と結婚し、多くの子宝(七男五女)に恵まれた。彼の没後、王位を継いだのは、これまた名君(バルジャマンが名君すぎて、教科書ではあまり話題にならないらしい)と名高い長男のエルシオンであった。

 尚、彼の出生には謎が多く、後世の研究者たちが頭を抱えていると言うことは余談である。

 最後に、この世界はどう言うものなのかを説明しておこう。

 この世界は、バルジャマンの前世と違う歴史を辿った地球である。しかし、単に地球と呼ぶと混乱を招きかねないため、これをニアーワールドと呼ぶことにする。

 この後にも、さまざまな物語が生まれることになる。これは、その第1章に過ぎないのだ。

 

***

 

「・・・ここは?」

 そこは、あの世というにはあまりにも殺風景であった。

 真っ白な部屋に、モニターが一つ置いてあるだけ。

「私は──俺は、天寿を全うして、それで・・・」

 戸惑うバルジャマン。モニターを見ると、そこには、数百年後の世界が映っていた。上位存在によって引き起こされた、蠱毒が。

「・・・まさか。俺が転生したのも、そいつの・・・」

 バルジャマンは、なんとか干渉することはできぬかと、その方法を模索し始めた。

 上位存在による蠱毒を、最悪の形で終わらせないために・・・。

 

Reinkarnation & Abenteuer(ニアーワールドシリーズ第1章) 完




いかがでしたか?
ここまで来るのにかなりの時間を要しました。
最後に唐突に登場した用語、ニアーワールドには、深い意味はありません。吾妻原昌孝、つまり私の一次創作の舞台となる地球、と思っていただければ大丈夫です。

本作を書きたいと思った理由は、なんとなく、でしょうか。転生モノ書いてみたいなー程度のものでした。プロットなんて少しも組んでないものですから、話がこんなに唐突で、伏線もなく、駆け足で終わる。私の創作の、しかも連載の試金石といったポジションですね、しっくり来るのは。

ニアーワールドシリーズに含まれるのは、今の所、本作、短編「ラモネェド」、ブロークン・ワールドの3本です。本作がすべての始まりで、ラモネェドはブロークン・ワールドの少し前、と言うような時系列を想定しています。

本作は、これで一応の完結となります。もしかすると、外伝とか補完を投稿するかもしれません。
ここまでの閲覧、誠にありがとうございました。他の作品も、どうぞよろしくお願いします。
ぜひ、感想と評価をお願いします。
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