艦これ(妖精さん入り) 人類は衰退しました   作:筆折ルマンド

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時系列 いつ海2話相当
終章だけ先に書く姑息な手段


1944-終-1 スリガオ海峡昼戦

 日が沈む

 傾いた陽が徐々に海を眩く全てを朱に染め始める頃。

 

 第一遊撃部隊第三部隊(1YB3H)はレイテ湾へ向けて航行していた。

 

 スリガオ海峡

 

 航路は順調

 射撃は良好

 

 潜水艦は沈めた。

 艦載機は撃ち落とした。

 駆逐艦たちの手際は専門職と言って良いほど鮮やかだった。

 ただの前哨戦、小競り合いに苦戦する装備でも練度でもなかった。

 

 手持ち無沙汰な大型艦は偵察機を飛ばして次の獲物を探し、そして見つけた。

 

「最上より旗艦山城へ伝達。偵察機再度PT魚雷艇群を捕捉、部隊を2部隊に分割し、一隊がレイテ湾の駆逐艦隊と合流しスリガオ海峡から進行中」

 

「あら、最上が一番乗り」

 誰が最初に敵を見つけられるか、偵察機を積める艦娘同士の飴玉一つ分のちょっとした賭けがあった。

 

「航空隊が帰ってこないから、見回りにでも出したのかしら?」

 30機ほど飛んできた敵艦載機は対空に特化した装備の駆逐艦に一機残らず叩き落とされていた。

 

「そうね姉様、けれど駆逐艦隊まで来るのは嬉しい誤算だわ。決戦前に間引ける船が増えたのだから」

 山城の高揚に応えるように艤装が唸る。

 

「艦隊砲雷撃戦用意! 最上、私、姉様で先制砲撃を仕掛ける! 撃ち漏らしは駆逐艦のみんなで食べちゃいなさい!」

 

「深海棲艦なんて食べたらお腹壊しちゃいます!」

 

「比喩に決まってるじゃない! ふふん、なら満潮が1人で全部平らげちゃおうかしら」

 

「ボクはそれでも構わないよ。でも満潮が撃ち漏らしたらボクが貰うからね」

 

「上等じゃない! 見てなさい!」

 

 PT小鬼魚雷艇群は小型の深海棲艦

 高速で接近し魚雷を撃ち込む事に特化した個体。

 小型と言えど魚雷の威力は侮れないが、小型軽量化のため対空能力も装甲も捨てており機銃ですら容易く倒せる。

 しかし数と小ささと速力が自慢の自爆特攻兵器であるため、群れの1匹でも逃せば魚雷の直撃を受けてしまう危険な敵である。

 

 通常ならば

 

 哀れ30隻を超える魚雷艇群と駆逐艦隊は長距離からの砲撃に晒された。

 撃ちてし止まぬ砲撃によって隊列を乱され数を減らされ、偵察機で位置が暴露したまま追い立てられるように突貫。

 後は待ち受ける駆逐艦の機銃の射線に入ってボン。

 呆気なく壊滅した。

 

 見敵必殺

 

 偵察機伝いに発見した深海棲艦を遠距離からメッタ撃ち。

 

 リンガ泊地での習熟演習によってもたらされた教訓のうちの一つ

『射程で上からぶん殴る』

 遮蔽物の無い海戦において最も効率的な戦術であった。

 

 編成当初の悲壮感も、囮艦隊の汚名もどこへやら

 随伴の駆逐艦たちに大発動艇(輸送用ボート)を牽引させ、山ほど持ち込んだ弾薬片手に悠々自適なターキーシュート。

 第一遊撃部隊第三部隊(1YB3H)は余り物の寄せ集め艦隊から防空・対潜駆逐艦が脇を固めながら戦艦と重巡洋艦がほとんどの敵洋上艦の射程外から一方的に砲火を浴びせる長距離砲撃艦隊へと昇化した。

 

 艦隊は何事も無くスリガオ海峡を北上し、待ち伏せていたはずの残りの魚雷艇群も一方的な砲撃によって容易く海の藻屑と消えた。

 

 残るは50隻の敵艦隊

 なんだ50発撃てば0ではないか。

 

 それを罷り通すだけの訓練を積んだ。

 成果は既に示してみせた。

 後は本命を残すのみ。

 流石に気分が高揚します。

 

「偵察機から続報! 敵艦載機編隊がスリガオ海峡を南下! こっちに向かってる!」

 

「山城、私の偵察機からも報告よ。軽巡洋艦艦隊が本隊を離れこちらに向かっているわ。敵は完全に私たちに食いついたみたいね」

 

 1YB3Hの任務は主力部隊の航行支援、言ってしまえば囮である。

 つまり作戦は大成功。

 後は釣れた敵をじっくり叩き潰すのみ。

 

「望むところよ、片っ端から返り討ちにするわ。全艦! 砲雷撃戦用意! これからが本番よ!」

 

 叫ぶ山城の背負う4基12門の砲塔が、いの一番に火を噴いた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 戦果は上々。敵艦隊は木っ端微塵となり、1YB3Hは戦闘機の機銃による極々軽い軽傷のみ。

 太陽はあらかた沈み、ぼんやりと群青色だった空がだんだんと夜の色に変わって来ている。

 

「たっはー、つっかれたー」

 

「お疲れ様、大活躍だったね」

 

 夜戦前の小休止。

 持ち込んだ大発動艇から燃料と弾薬を補給する。

 

「もー、砲撃の有効射程を精度で無理やり伸ばすなんて、よく考えるよ全くぅ」

 

「でも、頑張って出来るようにしたんでしょ?」

 

「まあね! 航空巡洋艦は半端モノじゃなくて何でも出来る巡洋艦なんだって山城に見せてあげるのさ」

 

 隙と女子が揃えば話の花は咲く。

 中身はやや物騒だが。

 

「最上」

 

「あ、山城、どうしたの?」

 

「口開けなさい」

 

「え、どうして」

 

「いいから」

 

「え、あ、あー、んむ! ……甘い」

 山城が最上の口に飴玉を突っ込んだ。

 

「最初に見つけたご褒美、まだだったわね」

 

「あー、そうひえば。ありがと、ひゃま城」

 

「ふん、夜が本番よ。気を引き締めなさい」

 

「うん、分かった」

 

 言うだけ言って山城が離れる。

 気遣いというものをやり慣れていないと見えた。

 懐に入れれば優しい昭和のヤンキーの近縁種山城。

 

「しぐれさん、ほうだいなおしましたが」

 

「うん、ありがとう」

 先の戦闘中、弾切れの後、敵艦載機に投げつけたはずの時雨の12.7cm連装砲がどういう訳か給油弾薬補充用に牽引していた大発動艇(輸送用ボート)に収まっていた。

 妖精さん曰く「拾って直した」との事。どうやって拾ったのかは聞くだけ野暮というものだろう。聞いた所で不明瞭でふわっとした説明しか得られないのは既に学習済み。

 何も聞かずに時雨が受け取る。

 残弾が増える事は良い事だ。

 

「ボクたちは補給終わったけど、最上は? 大丈夫?」

 

「補給は完了したけど、やっぱり弾が足りるか心配になっちゃうね」

 

「そうそう切れる事は無いと思うけど」

 

「大発動艇にはまだ弾薬少し残ってますから、隙を見て補給すれば良いんじゃないですか?」

 

「えー、置いていった方が良いと思うけど」

 

「備えあれば憂いなし、ですよ!」

 

「そうだね、ボクも五月雨の意見に賛成。敵の総数がわからない以上少しでも多く弾薬を持っておきたい。いざとなれば敵に送れば囮ぐらいにはなるさ」

 命より先に弾の心配をするなんて始めての経験だった。

 

「そお? 2人が良いなら良いけどさ。危なくなったすぐ捨てるんだよ? 大発動艇は急には止められないんだから『衝突注意』だよ。特に五月雨は」

 

「分かってる」

 

「大丈夫です! キチンと気をつけますから!」

 今までの実績からそれでも心配。とは言わない優しさがあった。

 

「最上! 時雨! 五月雨! 休憩は終わりよ、ぐずぐずしない!」

 山城が呼んでいる。

 

「分かってる! 今行く! じゃ、行こうか」

 

「うん、行って、帰ろう」

 

 大発動艇にはお菓子が積んであった。

 艦娘も出撃時に懐にお菓子を忍ばせる事はあるが、これはリンガ泊地の司令官が用意したものだろう。

 

 本隊には支援艦隊とその母艦である給糧艦が付いている。あの艦長の事だから戦闘前にお菓子を大盤振る舞いしている事だろう。

 その分を少しでも1YB3Hに分けてあげたかったのだろう。

 

 みんなで食べた。

 美味しかった。

 山城も素直に参加してくれた。

 

 みんなでまた、一緒にご飯を食べるんだ。

 誰とも無く皆そう思った。

 

「陣形は複縦陣、ただし私と姉様で指揮系統を分け、実質的に艦隊を二つに分ける事にしたわ。私、最上、時雨、五月雨が第一隊。姉様、満潮、朝雲、山雲を第二隊とするわ。満潮! あんたは姉様の直衛なんだから、呆けてたら承知しないわよ!」

 

「分かってるわよ! それくらい!」

 

「なら良し! 機関部は十分休ませたわ、戦闘開始後、船速は4速以上を維持! 休みたかったら敵を全員ぶっ倒してからになさい! いいわね!」

 

「「了解!」」

 

「艦隊前進!」

 

 夜が来た。

 夜戦の時間だ。

 今までの一方的な蹂躙ではなく、砲火が交差する命懸けの戦場が来る。

 

 




いつ海が終わる前に終わりそうにないので先に決戦を書く事にしました。
「いちわにいんぱすと」「げんさくおまーじゅですか」「ただいきあたりばったりしてるだけでは」「いきだおれー」「かいてからたおれましょう」「ほしがりませんかつまでは」「ぽけもんかったー」「有罪」「あーん」
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