最近のタマはやることが無くてつまらない状態が続いている。
勉強は嫌だけど美穂から釘刺されてやらないといけないし、気分転換に外に出ようとも雨だから無理。
本当なら雨でもやろうと思えばできるがさすがに迷惑かかるからパス。
出来るのはこうしてアウトドア系のパンフレットを眺めるだけ。
「暇だぁ〜!」
そのパンフレットを机に放り大の字にベットに倒れる。
何度も見てるから値段すら覚え始めてた。
もう7月になるってのに天気予報じゃまだ梅雨らしい。
いつも外れるくせになんで嫌な予報は当てるんだよ…
時計を見たらまだ授業時間内。
燐や銀はまだ学校にいる。
「…こんな退屈だったか?」
丸亀城の授業を思い出す。
千早が本読みながらタマたちの自習を眺めてて、質問があったら呼ぶ。
寝てたりサボってたりすれば直ぐにチョークが頭に飛んできたっけな。
それに千早の説明もガサツだけど分かりやすかった。
だから教わったところはスラスラ解けるけど新しいところは全く頭に入ってこない。
何が違うんだろ…?
「タマっち先輩、入ってもいい?」
扉の先からあんずの声がした。
「いいぞー」
「お邪魔します…って勉強してないじゃん」
「休憩だよ。頭使ったからなぁ」
「本当に?」
目線が机に向いた。
そこにあるのはパソコンの上に置かれたパンフレット。
「あっ…」
「あ、じゃないよ。やっぱりサボってた」
「タマタマだッ…!そろそろやろうかなぁ〜ってやる気あげようとしてたタイミングだったんだ」
「小学生の言い訳じゃないんだから」
腰に手を当て説教体勢に入った。
タマの方が先輩なんだけどなぁ〜…
「ちゃんと勉強しなきゃダメだよ」
「ならあんずは何で来たんだ!さてはタマをだしにサボる気だったろ!そうに違いない!」
「タマっち先輩が大声あげるからだよ。何かあったのか心配したんだから」
「そんな大きかったか?」
「イヤホンつけてても聞こえたよ」
「マジか。千景は気づいてる?」
「反応無いから分からなかった。ただ千景さんのイヤホン高性能だから聞こえてないかも」
授業する時に使うイヤホンは自腹で買うよう美穂から言われた。
タマは少し安めのを買ったけど千景は雑音消せるめっちゃ高いのを何の抵抗もなく買ってた。
「とにかくサボりはダメ。これで留年したら呼び捨てで呼ぶからね」
「ヒッ…!それだけは…それだけはやめてくれー!」
外見だけじゃあんずの方が歳上と思われているのに学年すら同じになったらタマが誇れるものが無くなってしまう!
何としても留年だけは阻止しないと!
そう意気込んでもあの時みたいなやる気は起こらなかった。
「なぁ、今の授業楽しいか?」
「楽しいよ。オンラインだけど先生から教わるのが新鮮だから」
「なーんかタマに合ってないように思うんだよ」
あんずがタマの隣に座ってきた。
「何かあったの?」
「大きな事じゃないんだけど勉強が苦痛に思うんだよ。千早の時は全く感じなかったのに」
「先生のは自習なんだけどね。そっちの方がタマっち先輩には合うのかな?」
「自習かぁ〜…」
「でもタマっち先輩寝てたから変わらないよ」
「違う!次の戦闘訓練のイメトレだ!」
「それを寝てるって言うんだよ」
言い合ってるけどそのやる気の要因は分からない。
千早だからか?
いや授業中何もしてないし教えるのも少しだけだ。
「うーん…?」
「教え方じゃなくて教材が良かったんじゃないかな?」
「教材?」
「千早さん言わなかったけど私たちに合わせて教材作ってると思うんだよ。こっちに来てから探したんだけど見つからなかったんだ」
つまり千早は暇そうにしてて裏でちゃんと仕事してたのか?
でも今のはあんずの考え、本当かは分からない。
なら…
「んで、何用だ?」
千早本人に聞くために連絡したらレストランに呼ばれ目の前に人数分のポテトが置かれてた。
アツアツで美味しかったが付き添いで来たあんずに軽くため息をつかれた。
「モグモグ…ンッ…あの時使ってた教科書は千早が作ったのか?」
「あの時…って丸亀城の?」
「はい」
「そうだが」
サラッと認めた。
「なら頼む!もう一度作ってくれ!」
パンと両手を合わせ千早に頭を下げる。
急にやったからかあんずがビクリと驚いていた。
「…そいつは無理だ。諦めな」
「なっ…なんでだよ!」
否定されるとは思わず立ち上がってしまった。
「オレはお前らの保護者だが教師じゃねぇ。教えはするがアレは作らん」
「そんな理由でですか…」
「それに教師だった黒花千早は既に死んだ。ここにいるのはアイツに似たそっくりさんってやつだ」
顔を上げた先にいたのは立ち上がりタマを見下ろす千早だった。
タマの身長が低いからか威圧的に感じ、赤い瞳は頼みを冷たく突き放すように心に刺さった。
「ッ!」
「理解したならもういいな。勘定は先にしとくから好きに食え」
そう言い放ちレストランを出ていった。
その姿を見て力無く座り直す。
「タマっち先輩…」
「気にすんな…千早があそこまで言うんだ。仕方ないさ」
何の気なしにポテトを1本頬張る。
さっき食べた時よりしょっぱいや…
授業映像をペンを片手に持ち眺める。
言われてからさらに集中出来なくなり頭に全く入らない。
『オレはお前らの保護者だが教師じゃねぇ』
「…!」
小さな針が胸に刺さったような痛みがはしる。
タマにとって千早は先生のイメージが強い。
それはあの時と性格が変わっていないからってのもある。
けど1番はタマたちを生徒として接してくれた事。
外に出ても城内で鍛錬してなくても勇者と見られる。
それが嫌で堪らなかった。
タマは中学生だ。バカみたいに遊んで恋もしたはずなのに全部奪われた。
だからこそ千早の接し方はとても嬉しかった。
なのに…
「なんでだよ…」
チクリ。
「なんで…」
チクリ。
「タマを突き放すんだよ…」
気づけば画面は真っ暗でタマの顔が反射して写ってた。
目が潤んだ情けない顔。
あんずにも見せられないな。
「ハッ…ッ…!…止ま…れっ…!」
込み上げてくる何かを無理やり抑える。
苦しいけどここで溢れたら心配かけてしまう。
だってタマは…
「珠子〜?」
「!?」
今度は美穂が部屋に入ってきた。
喉元まできてたから危うく零れそうになった。
「なっ…なんだ〜? 」
慌てすぎててノックのことを追求し忘れてた。
「杏から様子見て欲しいって言われてね。何かあったの?」
「聞いてないのか?」
「それが教えてくれなかったんだよ」
あえて言わなかったのか…
「別に何ともないぞ!」
いつもの笑みを作り誤魔化す。
なんかしら気づいているだろうけど探らせなければいい。
「ふーん…」
手を顎に当てじーっと見てくる。
こう見られると目線合わせにくいって!
「な、なぁ…そんな見ないでくれよ…」
「…ごめんごめん。つい癖で」
美穂は目を瞑り軽く息を吐いた。
「珠子もよく見栄張るから色々貯めやすいと思うんだよ。だから何かあったら声に出してね。杏にはなんとなーく言っとくからさ」
それだけ言い部屋を出ていった。
いつもより追求が浅すぎるけどタマが思っていたことを突かれた。
あんずから既に聞いていたとか?
ダメだ、全く分からない…
てか美穂が帰ってきてるなら授業終わってるじゃん。
それすら気づかないなんて…
「ん?」
スマホに1件のメールが入っていた。
トークアプリでいいのに一体誰が…
「千早…?」
前に交換したけど来るとは思わなかった。
しかも無題のメールとか怖いし。
開いてみると
『オレは好きにした。後は好きにしろ』
の一文だけ。
さっきの美穂といい情報が少ないんだよな…
でも1つのファイルが貼られていたから開いてみる。
「これって…」
そこにはタマの苦手な授業を記したメモだった。
凡ミスのポイントや何故理解出来ないのかを事細かに明記してある。
「…そっか」
『教えはするがアレは作らん』
「ったく…言葉足らずだって…」
ふつふつとやる気が上がってきた。
それは無理やりではなく心からやりたいと思う気持ち。
時計を見てもまだ風呂まで時間はある。
「よしっ!あと1踏ん張り頑張るか!」
力強くペンを持ちパソコンを立ち上げる。
今ならどんな問題でも行ける気がする!
──────
珠子の部屋の前で壁に寄りかかりながら聞き耳を立てていた。
杏から『タマっち先輩が暗いから励まして欲しい』とだけ言われたから頭に疑問符しか浮かび上がらなかった。
直接話してみて何か裏があるように見えたけどあえて深くはいかない。
ガンガン行くのはやばい時のみだし全てを見通せる訳でもないからね。
何はともあれ元通り以上になって良かった。
にしても何があったんだろ…?
やっと珠子回を書けました。
絡みは美穂よりも黒花の方が展開的にいいかなと考えやりました。
タイトルは前向きで明るいという点から仮面ライダーフォーゼリスペクトにしました。
あと気持ち程度のシンゴジ要素も…