生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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夏の光に照らされ

打ち寄せる波の音。

焼けるように暑い光と眩しい砂浜。

肌に触れる風は少し冷たいけどちょうどいい。

今の私はオレンジを基調のどシンプルビキニ。

 

「何ぼーっとしてるんだ?」

 

「単にいい景色だなぁってね」

 

サングラスを取り銀を見る。

赤のスポーツタイプの水着。

中学生にしては攻めてる気がするけど買った時女の子らしいのを提示されて全力で断ってたっけ。

 

「皆呼んでるし早く行くぞー!」

 

「分かったから手掴ま…あっつ!!」

 

「足の裏が痛い!!海まで走れぇー!」

 

「サンダル履いてから行けばよかったのにぃ!!」

 

全力で走り海にダイブした。

海水が熱した体を一気に冷やす。

 

「ぷはぁ!んーっ!気持ちいい!!」

 

髪をかきあげ海水の冷たさに酔いしれる。

今日は黒花さん主催の勇者部卒業旅行(夏)。

場所は去年大赦主催で遊んだ浜辺。

ここも一般にはオープンされているけど大赦の息がかかってるらしく園子の一声でプライベートビーチに早変わり。

今の大赦弱過ぎない?

 

「遅いわよ!いつまで浜辺にいるつもり!!」

 

「別にいいじゃん〜。過ごすのは勝手でしょ」

 

私の前に現れたのは銀ではなく夏凛だった。

にしても夏凛の水着のセンス独特だと思うのは私だけ?

 

「で、何用?」

 

「何用って水泳で勝負する約束忘れたの!?」

 

「あー…何かしてたねぇ…」

 

「さっさとやるわよ。あと珠子も混ぜたから」

 

よし、最下位は無くなった。

 

「上等、やってやるよ」

 

珠子が手をブンブン振っている場所へ歩いていく。

なんかオーディエンス多い気がするけどまぁ気楽にやりますかね。

 

結果は珠子が最下位になり私と夏凛は同着判定された。

決着をちゃんとつけたいのか再度勝負を持ちかけられたけど、やけに疲れたから負けを適当に認め海から上がった。

 

「お疲れ様です。ジュース飲みます?」

 

「おっ、部長ナイスタイミング〜」

 

パラソルの下で休んでいた樹ちゃんと杏、千景が迎えてくれた。

 

「美穂さん凄い泳ぎでしたね」

 

「そう?普通にやったつもりだけどね。んっ…はぁ〜…潤う〜」

 

「凄い蕩けてるわね」

 

「それにしても千景〜何丸まってんのさ〜」

 

千景は体育座りでタオルを被っていた。

直射日光は無いとはいえ絶対暑いでしょ。

 

「だって…恥ずかしいもの…」

 

「杏がここまでオープンなのに?」

 

「そう言われると私も恥ずかしくなりますよ…」

 

腕を胸元に回して隠してる。

水着は隠せても大事なあれは逆に強調されてしまう。

それ珠子の前でやらないようにね。

 

「…羨ましい」

 

うん、聞かなかったことにしよう。

曇らせたら風先輩になんて言われるか。

 

「千景は可愛いのに勿体ないよ」

 

「ッ!急に言わないでよ!」

 

顔を赤くしてますます丸くなっちゃった。

多分千景が見せたくないのは水着のセンスじゃない。

奥底にある小さなトゲだろう。

なら…

 

「ちょっと来て」

 

「え、ちょっと!?」

 

タオルを持つ手を握り砂浜を走る。

皆楽しそうに海で遊んでるからこの光景を見られたのは2人だけ。

ちゃんと説明すれば言わないと思うし大丈夫でしょ。

更衣室に駆け込み鍵を閉める。

 

「な、何やってんの!?こんなところに閉じこもってどうするつもりよ!」

 

「水着見せたくないのって恥ずかしいだけじゃないでしょ?」

 

私の顔を見ていたのに言葉を聞いた途端、目線を逸らした。

タオルを持つ手が強くなりシワが出来る。

 

「…分かってたの?」

 

「千景の過去を考えればね」

 

「そうよね…」

 

ブレーカーが壊れた時も最後まで脱ごうとはしなかった。

それは隠しておきたい何かがあったから。

今は楽しみたい気持ちと隠したい気持ちが混ざって動けないだけ。

 

「こんな醜い体見せたらひいちゃう…」

 

影の中で生きてきた分周りの目に敏感になる。

たとえ理解してもらえるとしても1度染み付いた偏見は消えない。

 

「見せないとダメよね…でも体が動かないの…」

 

「いいんだよ。千景のタイミングでやればいいんだから」

 

サラサラの髪を優しく梳かす。

肩がゆっくりと下がり緊張が解けていくのが分かる。

 

「高木さん…お願い…」

 

「分かった」

 

タオルの端に手を置き開くように脱がす。

赤いフリルのついた可愛らしい水着。

思わず喉を鳴らしてしまった。

 

「どう…かしら?」

 

上目遣いに私を見るから可愛さが増してる。

こんなに可愛かったっけ…?

 

「う、うん…可愛い…よ…」

 

「その反応。何よ」

 

「だって可愛い過ぎるんだもん!!ズルすぎるって!」

 

「大きな声で言わないでよ!」

 

「言わせといてそれはないでしょ!!」

 

大声出したからなのか分からないけど心臓が飛び出しそうなくらい跳ねている。

可愛いって感情が溢れて止まらない。

 

「あっ…」

 

水着に注目していて気づかなかったけど右脇腹付近にちいさな青白い痣のようなものがあった。

見つければ違和感を感じるけどそもそも気づきにくい。

 

「これは理科の実験で熱したスプーン押し付けられた跡。これでも小さくなった方なのよね」

 

「触ってもいい?」

 

頷くのを確認しゆっくりと触った。

肌触りは変わらず痛がってる様子もない。

 

「精霊になって消えると思ってたのに」

 

「杏の病弱と同じ判定なのかね」

 

背中を見せてもらったけど切り傷っぽいのがあったけどほぼ同化してる。

 

「綺麗だよ。何なら私よりもプロポーションいいんじゃない?」

 

「大袈裟よ」

 

目を細めながら笑ってくれた。

少しでも自信もってくれればいいかな。

 

「美穂ちゃんいる〜?」

 

突然友奈の声が更衣室に響きびっくりして肘をぶつけてしまった。

 

「い、いるよー!?なんかあったー?」

 

「そろそろお昼だから呼んできてって言われたんだー」

 

「分かった〜。そろそろ出るよー」

 

「あと郡ちゃんもいる?」

 

「え、えぇ」

 

「あれ?2人とも同じところにいるの?」

 

やべっ…

焦りすぎて千景の口塞ぐの忘れていた。

樹ちゃんと杏に黙って連れてきたのに友奈にこれバラされたら園子になんて言われるか…

 

「わ、私の水着が外れかけて直してもらってたの」

 

「そうなんだ!?誰もいなくて本当に良かったね!」

 

「ほんとそれ!すぐ行くって伝えてー」

 

「はーい!」

 

足音が遠のいていき静寂が訪れる。

2人同時にホッと胸を撫で下ろした。

 

「助かった〜…アドリブありがとうね」

 

「今思えば恥ずかしい言い訳だった…結城さん素直に受け取って言いそうね…」

 

「その時はその時だよ。あ、園子は先に封じとくから」

 

「乃木さんは何としても止めて。ろくなことにならないから」

 

「じゃ出よっか。お腹空かしてる人もいそうだしね」

 

扉を開け先に出て後ろを振り返る。

モジモジとしていたけど意を決してタオルを脇に持ち出てきた。

 

「高木さん」

 

私の目を真っ直ぐ見つめ名前を呼んだ。

 

「この世界で貴方に呼ばれて本当に良かった。傷だらけの私を否定せず受け入れてくれた。出会わなかったら私はあの時のように壊れていたかも…だから…」

 

細い腕が私の頬に触れ、千景の顔が近づいてくる。

私は抵抗せず静かに受け止める。

唇だけを重ねるシンプルなキス。

物足りなさを感じるだろうけど千景が自分の意思でやってきたことに意味がある。

水着なのを気にせず密着する。

肌の温もりが直接感じられて心地いい。

 

「んっ…私、郡千景を愛してください…」

 

顔をリンゴのように赤く染め告白してきた。

園子から告白されたけど真っ直ぐな告白は無いから心にグサリと千景の愛が刺さった。

しかも顔が近く恥ずかしさで潤った目が余計来る。

 

「あ、あぁ…」

 

「高木さん…?」

 

「私で…いいの?」

 

「貴方だからよ」

 

「でも千景には高嶋が…」

 

あっちの時間で救ってくれた親友。

彼女がどう思うかは分からないけど無理やりなら申し訳ない。

 

「高嶋さんへの想いは変わって無いわ。それでも私の初恋を高木さんにあげたい…」

 

「…!」

 

ここまで言って拒否れる訳が無い。

 

「千景…」

 

ボソリと名前を呟き千景の唇を奪った。

簡単なキスではなく唾液を交換するような深いもの。

 

「んっ…ん…」

 

「んむっ…んんっ…」

 

小さな喘ぎもよく響く。

今すぐ押し倒したいのを我慢し離れる。

 

「あっ…」

 

名残惜しそうに声を漏らした。

 

「これが私の答えだよ。後で続きしようね」

 

私は微笑み手を出した。

その手をしっかりと握り返しみんなの元へ向かった。

 

海の家に既に集まっていて談笑していた。

 

「来た来た!こっちだよー!」

 

友奈の案内に従い席に着く。

本人は東郷と食べるらしく別の島へ戻っていった。

そして目の前にいたのは…

 

「何ニコニコしてるの?」

 

「別に〜?」

 

まさかの園子だった。

絶対仕組んだな…

 

「ちーちゃんの取れちゃったんだって?」

 

「そうそう」

 

「へぇ〜ここプライベートだからコソコソしなくてもいいのにねぇ〜」

 

ほぼバレてる気がする。

更衣室でいかがわしい事でもしてたんだとか勝手に思ってるんだろな。

それが正解なんだけど。

 

「お待ちどー」

 

「ありがとうござ…えぇ!?」

 

なんの気なしに挨拶をしてしまい反応が遅れた。

 

「黒花さん!?」

 

「今更かよ」

 

黒のインナーをつけた黒花さんが立っていた。

今まで着ていたものより布面積が少ないように感じる。

 

「何やってるんですか?」

 

「見ての通り昼飯担当だ。大赦が食費は出すから自分らで作れなんて中途半端なことするからこうなったんだ」

 

「キツく言っとこっか?」

 

「ちょいキツでな」

 

「オッケ〜」

 

ラーメンの注文じゃないんだから。

それで今日の昼飯は…

 

「ナポリタン?」

 

「惜しい、ナポリタンうどんだ」

 

「変化球だね〜」

 

「うどん使ってるんだから食えるだろ」

 

「そういう問題じゃないと思うんだけどなぁ…」

 

周りを見ると既に食べ始めていた。

パッと見不味そうな顔は無くむしろ美味しそうに食べてる。

 

「はむっ…うん、いつもの味ですね」

 

「お前にとってはな」

 

「美味しい〜さすがくろっち〜」

 

「どこからこんな発想でるのよ」

 

「基本ネットだ。実際作って足してるだけだから差は無いはずだ」

 

それやってあなたの味再現出来ないんだよねぇ…

経験値もあるだろうけど何か違うものができる。

 

「そういえば黒花さんって味覚無かったんですよね?」

 

「だな」

 

「よく味わかりましたね」

 

「コツがあるんだよ。まぁ何の役にも立たんから詮索はやめてくれな」

 

人差し指を口に当て私たちから離れていった。

 

「聞いたって誰にも真似出来ないのに…」

 

「味覚無いのにこの味を出せるなんて…流石天才ね」

 

「やっぱくろっちはヤバいね〜」

 

「お前ら注目ーーー!」

 

席の真ん中に立ち手を叩き目線を集める。

 

「食べ終わったら旅館に戻る。送迎は頼んであるから時間までに着替え終わって集合しとけよ。遅れたら置いてくからそのつもりで」

 

顧問として最後の発言はアウトでしょ。

まぁ脅しなんだろうけど。

それぞれのテンポでうどんを平らげ着替えた。

更衣室に入ると心臓がドキドキしたけど平静でいられた。

全員が集まったのを確認し本日の宿へ移動した。




やって来ました水着回!
の皮を被った百合回!!
やっちまったぜ。
二次創作で最もデリケートなゾーンへ薫製は弾道ミサイルの如く突っ込みました。
爆散?知らねぇ!してから考えろ!!
それでも許されないなら高嶋酒呑童子の1000回勇者パンチ食らってやらぁ!!!

許したまえ、許したまえ。
我の罪を許したまえ。

新章で見たい光景

  • ここがゆゆゆいの世界か…
  • 西園寺の闇見て見ない?
  • 勇者システムに捧げられた者たちの物語
  • 日常を擦れ
  • 他にやることあるだろうが(意見求む)
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