ゆっくりと目を覚ます。
カーテンの隙間から陽の光が差し込んでいて少し眩しい。
横を見ると金髪の娘が肩を定期的に動かしながら寝ていた。
「ふふっ…」
心地良さそうに寝てるから思わず顔を優しく撫でてしまった。
あんなにかっこいいのに寝てる顔は可愛いんだから。
目に入れても痛くないという意味が分かった気がする。
もっと眺めたいけど起こさないといけない。
「高木さん」
肩を優しく揺らしながら声をかける。
「ん、んんっ…?」
目を強く瞑った後目を少し開けた。
まだ寝ぼけてるのかボーッと見てる。
「おはよう」
「…おはよう」
「くっついて暑くなかったかしら?」
「全然、くっついてると落ち着くよ」
「私もよ」
手を握り足を絡め距離を近づける。
「ヤバいなー。離れられないなー」
「離れる気なんてないくせに」
「バレた?」
「見せびらかしてるとしか見えないけど」
正解と言わんばかりにくしゃっとした笑みを浮かべてくれた。
「今何時?」
「6時過ぎ…ぐらい?」
「あー…起きなきゃ…」
「夏休みなんだからゆっくりしていいのに」
「そうは言っても怠けるのは良くないからね」
スルリと私の体を抜けベットから起き上がる。
大きく背伸びをし体の緊張を解く。
「ん〜!ふはぁ…よしっ!一旦部屋戻るね〜」
「えぇ、また後で」
立ち上がり部屋を出ていく。
同じ1階にあるからさほど距離は無いのに何故か切なく感じる。
高木さんがいたベットを指でなぞる。
温もりと残り香があり、今もそこにいるんじゃないかと錯覚する。
そろそろ私も起きないと…
──────
合宿の甘い事件から数日。
皆普段通り接してくれている。
私たちも目の前でイチャイチャするのは控え、変わらない日々を過ごしていた。
「ちゃんと勉強してるのか?」
「そりゃそうよ。こう見えて受験生ですので」
「何か遊び呆けている気がするんだよな」
「その言葉そっくり返すよ。宿題溜めてないんだろね?」
「まぁ…?」
通信教育と言っても宿題は出る。
紙ではなくパソコンに打ち込み提出するタイプ。
期限もあるからちゃんとやって欲しいんだけどね…
「オンオフはちゃんと切り替えてやりなよ。ご馳走様」
今日は何も無いから勉強しますかね。
問題集もある程度解けるようになったからネットにあった過去問でもやってみようかな。
そうだ、コピー機は家に無いからコンビニ行かないといけないんだ。
「コンビニ後で行くけど欲しいものある?」
「アイス!」
「だよね。他には?」
「特に無いですね」
「あいよー」
外は暑いからさっさと行って帰ってこよ。
と思っていたのに…
「最っ悪…」
「前も似た光景あったわね」
「外行かなくて良かった〜」
家に着くギリギリで雷雨に会いずぶ濡れに。
重要な過去問とアイスはバッグに入れてたから難を逃れた。
「美穂さん実は雨女だったりしません?」
「無いとは思うけど…」
絞った服を洗濯機に放り込みシャワーを浴びる。
夏場だけ体操着で外でた方が安全じゃない?
部屋着に着替え自室に戻ったけどやる気も洗い流されていた。
こんなんなったら誰だってやる気失せるって。
洗濯を待つ間、トークアプリを開き勇者部で共有している写真を眺める。
どれも笑顔が写っていて楽しそうだった。
「いい思い出作れたね」
勇者になって良い事も悪い事もあったけどその果てがこれなら満足。
これが当たり前と思わず大切にしなくちゃね。
「美穂〜?」
ノックをして珠子が入ってきた。
「どうしたの?」
「いや、これって話じゃないんだが…」
深く息を吸い込私の正面に立った。
「千景のことありがとうな」
「…ん?」
「アイツ西暦の時も心閉ざしてたんだ。タマたちの前では分からないけど好きなんて言葉聞いたこと無かった。だから美穂には感謝しかない!」
何を言い出すかと思ったら感謝の言葉だった。
千景の親みたいに感じだけど言わないでおこう。
「困ったことがあったらタマに遠慮なく言ってくれ!!」
「ありがとう、杏に相談するね」
「なんで!?」
「どうせ杏の恋愛小説で得た知識でしょ?しかもうたた寝状態の」
「うぐっ…確かにそうだけど…」
「でも相談はするよ。聞いてくれるだけでも有難いからね」
「うむ!」
ドヤ顔で胸を張った。
相談するのは事実だけどちょろい。
珠子が部屋を出ていった後、ふと思う。
何気に周り見えてるんじゃないと。
基本杏と行動を共にしてるイメージが強いし、実際そうだ。
戦闘でも杏の脅威には直ぐに察知し回避していた。
だからこそなのかな?
皆が仲良くなれば杏もいやすくなると考えてるとか。
これは憶測だから何とも言えないけど。
「高木さん」
今度は千景が入ってきた。
「なんかあった?」
「勉強教えて欲しいんだけどいいかしら?」
「全然大丈夫…そっか、千景中3だった」
「今更それ言うの?」
不満そうに睨んできた。
「忘れてただけだって」
「なら覚えて。私のこと全部」
持っていた勉強道具を置きにじりよって来た。
告白されてからスキンシップ多くなった気がする。
「分かってるよ。大好きな彼女の事だもん」
「だから高木さんのことも教えて欲しい」
「一緒に知り合ってこうね」
その言葉を聞き、千景は嬉しそうに目を閉じた。
どうやら『一緒』って言葉が好きらしい。
もっと感じ合いたいけど我慢。
「それで教えて欲しいのはこっちでしょ?」
「え、えぇ…ごめんなさい」
理性を戻し机に教科書を広げる。
「英語なのだけど大丈夫?」
「基本は抑えてるから大丈夫なはず」
「ならここの問題なのだけど…」
1つしかない椅子に2人が腰掛ける。
お尻が半分浮いた状態だけど支えあっているから辛くない。
それに合法的に密着してるし。
「受け身って自分がされる、されているって意味があるの。英文でこれが出た時に訳す時はこれに注意してね」
「なるほど…でも長くなるとどこで切っていいのか分からないの」
「なら文を区切ればいいんだよ。例えば…」
ペンを持ち問題文に分かりやすく書いていく。
真剣な面持ちで私の説明を聞いている。
「…て感じかな。今のアドバイス参考にここ解いてみて」
「分かったわ」
ペンを貸し問題と向き合う。
あまり覗き込むと集中出来ないと思い目をそらす。
かりかりと書き込む音と千景の吐息が聞こえる。
「んんっ…」
変な声が出そうだったから喉を鳴らし誤魔化した。
毒されてきてるなぁ…
「これでどう?」
「どれどれ…うん、合ってるよ。さすが千景だね」
「高木さんの教え方が良かったのよ」
「そんなことないって」
謙遜しちゃうのはお互い様。
「ねぇ、高木さん。良かったら私の部屋で一緒に勉強しない?」
「いいの?私は大歓迎だけど」
「オンラインの授業受けてるだけだから基本静かなの。それに分からないことがあれば聞けるし」
「私の疑問点解消は?」
「そもそも疑問点なんて無いでしょ」
「はい…」
でも千景のためになれるなら嬉しい。
「本当は同じ高校に行きたかった…」
ボソリと夢を呟いた。
「小学校のいじめの影響でクラスが恐怖の対象だった。丸亀城でも同じように思ってたけどかなり解けれたと思う」
勇者だけだと聞いたから6人1クラスってことかな。
そんな少ないとクラスと言えるかは分からないけど。
「それでも克服は出来てないと思う。でも、高木さんとなら…」
「…私から離れられないんだね」
肩に顔を擦り寄せてきた。
イマジナリーなしっぽをブンブン振ってそう。
猫耳コスさせたいな。
「今から頑張ってみる?」
「頑張りたい…支えてくれる?」
「もちろん、大変だけど頑張ろうね」
目が潤んだように見えたけど直ぐに閉じてしまった。
「使わなくなった教科書貸そっか?」
「嬉しいけどもう使わないの?」
「網羅したからね。あとは実戦で引き出しを開けられるかが問題なだけ」
「頭の構造が違うわね…」
そうなのかな?
少なくとも園子よりかはマトモだとは自負してるけど。
「今度燐の家で勉強会やるから行こうよ」
「ぜひ行きたいわ」
目を開け私の顔を近距離で見てきた。
無意識にやってるからズルいんだって…
頭を撫で笑顔で答える。
体が触れられるのってこんな心地いいんだ…
久しぶりの日常パート!
殺伐とした世界続けると空気重くなるので味変しました。
そしてオリカップル回。
やっちまったぜ感は未だ消えませんけど大丈夫でしょ!