生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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注意

この物語は三柰木イヴさんとのコラボしました『安芸優樹は勇者である 第█章 生者の章』の後日談になります。



物語は紡がれる

「なぁ、先週の祝日何していた」

いつもの公園のベンチでで出会って早々黒花さんから謎の質問を受けた。

意図が分からずキョトンとしてしまったが正直に答える。

 

「千景、珠子、杏と一緒に映画を観ました。その後はモールでご飯と買い物をサクッとして帰りました」

 

「ほぅ。映画ってのはあの勇者が題材のか?」

 

「えぇその通りです。しょうもない内容とは思いましたが一度くらいは観ないとと思いまして」

 

「なるほどな。それで中身はどうだっな?」

 

「頭空っぽで観れば面白いってやつです」

 

「そうかそうか。大赦のプロパガンダもまだまだだな」

 

「…で、なんのために呼んだのですか。そんな雑談するためならわざわざここじゃなくてもいいですよね」

 

天の神の使徒との死闘から数週間。

私の身体に別状はなく、4人も元気に活動出来ている。

散華ほど酷いものは無いとはいえ良くないことが起こってもおかしくないのは薄々思っていた。

黒花さんは笑いを飛ばすためか深くため息をついた後、間を置き話す。

 

「……()()()()って男を知ってるか」

 

「安芸、優樹……?いえ、思い当たりません……」

 

思っていたことと全く違う話で肩透かしをされた。

それに脳内の記憶を探るも安芸優樹という存在に心当たりは無い。

 

「やはりか…神樹め。手加減無しか…」

 

「黒花さん?」

 

「いや、なんでもない。急に居なくなったから知ってるかと思ってな」

 

「それは、失踪ってことですか?」

 

「多分そんな大事じゃねぇ。ただ…帰っただけさ」

 

私は首を傾げながら黒花さんの言葉を聞いている。

安芸優樹という人物は黒花さんの前から突如消えたにも関わらず焦ることなく帰ったと予測した。

仲のいい関係なら察することもあるだろうけどわざわざ無関係の私に話す内容では無い。

 

「黒花さん。何か隠してます?」

 

「……そうとも言えるし違うとも言える」

 

「含む答えですね」

 

「言ったところで信じないだろうし実感がわかないからな。まっ、全てのケリが着いた後に飲みながら話してやるよ」

 

ベンチから立ち上がった黒花さんはヒラヒラと手を振りながら去っていく。

よく分からない質問をしに来たのかと思うと無駄足感が否めない。

けど、あの黒花さんがくだらない雑談をしに来ただけとは思えない。

何か、私にとって大事な事を、忘れている。

 

「安芸優樹……」

 

口に出してもその名で閃くことはなく冬風に乗って空へ飛んで行った。

 

ある日のこと。

 

「そうしたらね。サンチョがロケットになってドビューン!って宙の彼方へ飛んで行ったんよ〜」

 

「相変わらず園子はすげぇ夢見てるな。てことは…美穂も?」

 

「何でそうなるのさ。そこまでドリームな感じじゃないよ。多分」

 

買い物袋を片手に園子、銀と共に帰路についていた。

なんてことのない買い物なのに園子がやってみたいんよ〜と言ってレジでブラックカードを取り出した時は肝を冷やした。

中学生がクレジットカードを持つ時点で目を引くのに、最高クラスのブラックなんて言ったら尚更人目が集まる。

咄嗟に玩具のカードと言って誤魔化せたから何とかなったけど。

 

「にしても買いすぎたか?美穂半分持つよ」

 

「いいって。このくらいなんて事ないから」

 

「力持ち〜。にぼっしーみたいに筋トレとかしてるの?」

 

「私は筋トレよりもイメトレだよ。ビットの操作は頭使うからさ」

 

「分かるー!集中力かなり使うからヘロヘロだよな」

 

「いいなぁ〜。私もビット使いたいー」

 

「「使わなくても充分強いでしょうが!!」」

 

たわいのない話をしていると私の視界に1人の少年が横切る。

道路側を歩く銀の横をサッと通り過ぎただけなのに私の意識は完全に吸い付けられていた。

 

「帰ったら早速筋トレしないとね」

 

「あんまりやりすぎても体に良くないわよ」

 

「もちろん。程よく休んで、プロテイン飲んで、それから筋トレを再開するよ」

 

「あら。私の手料理よりプロテインが優先なのね。それはまぁ…」

 

「あ、いや…そうじゃなくて…!!えーっと、君の作る料理を沢山食べるためにお腹を空かすためだよ!プロテインはちょっとしたサポート!」

 

「そこまで想ってくれていたなんて…!疑ってごめんなさい…」

 

なんとも仲睦まじい光景。

お互いのことを信じ好いていると関係を知らなくても感じさせる会話。

それなのに私の内側では別の感情が生まれていた。

『幸せになってて良かった』

カップルを見れば幸せになって欲しいと思う事もある。

でも私のそれは知り合いに対して向けられる応援のようなもの。

あの2人とは面識が無い赤の他人。

なんなんだ…これ……。

 

「お姉ちゃん?」

 

心配そうに聞く園子の声で私はハッと意識を戻す。

 

「あの2人と面識あるのか?」

 

「無いよ。多分、他人の空似。かもね」

 

「何かパッとしない返事だな」

 

「勘だから仕方ないよ。それよりも早く帰らないと寒くて凍えちゃうよ」

 

「………それは大変〜。家の前で氷の彫像になるのは勘弁だよ〜」

 

園子がほんの少し私の顔を訝しむも元のほんわかとした雰囲気に戻った。

あの園子だろうと私ですら理解できてないこの感情を正確に読み解くのは不可能だろうけど。

にしても…なんであの人たちに意識を奪われたんだろう。

 

──────

 

カチリ。

オレはボイスレコーダーを切ると椅子に腰を深く下ろす。

あの物語を持ち帰れたオレはボイスレコーダーに物語として残した。

クラウドに残せば大赦が嗅ぎつける可能性も捨てきれないためアナログに頼った。

だがオレが直接見たのは事の一端のみ。

あとは2人が残した記録を読み解き綴るだけ。

実際、美穂や精霊達と会って聞いたが案の定忘れていた。

さすがに気合いだけじゃ耐えられない。

だが基本世界である安芸なら断片的に持っていられるはず。

とは言ったがこれも憶測程度の話。

なぜならあの世界への扉は閉ざされたから確かめようもないから。

度の過ぎた干渉は有り得た未来をかき消してしまうほど強力。

死ぬはずのない人間の死が確定しまうのはオレも望まないし、優樹が苦しむだけだ。

 

「さて…」

 

オレはパソコンを立ち上げると、大赦の専用クラウドからハッキングして手に入れた資料を見入る。

そこには『神婚による救済について』とデカデカと書かれていた。

 

「……全く。人類全て等しく腹の中に収めれば解決ってか?は、笑えねぇ」

 

こんな腐った未来は認めるわけには行かない。

戦ってなるならまだしも、白旗あげながら神様の奴隷に成り下がるなんて尚更ごめんだ。

 

「決着の時は近い、か」

 

安芸の世界と美穂の世界は使徒による襲撃の有無で差はあるが同じ時を刻んでいる。

ならばその先に待つ運命もまた似たものになるはず。

それでもアイツらなら乗り越えられるだろう。

共に戦う仲間と守るべき場所があるのならきっとーーーー。

 

「行け。その先に希望があるのなら進み掴み取れ。明日ってのはこの世界に生きる人間全員が繋ぐ未来へのバトンなのだから」




お久しぶりです。
スランプを脱し?本年初投稿です。
前書きにも注意事項として載せましたように、イヴさんとのコラボ小説の後日談side高木・黒花となってます。
特に本編に関わる内容ではないのでサクッと書き上げました。

コラボ小説と言うのは初でしかもメインで書かせてもらえてほんと感謝しかないです。
派手にやりすぎた感はありますがお互い満足なら良し!
書き上げるにあたってネタバレ情報も仕入れてしまったので何も言えないのが事実…!

軽く近況報告ですがネタが散らかっていて整理出来てない状況です。
ええい!生臭坊主!!さっさと動かんか!!(自問自答)
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