この章は60話「高木美穂は勇者となる」の派生ルートです。
61話及び62話のルート分岐問わず読めます。
また、内容には零の章のネタバレを含む恐れがあります。
ご了承ください。
300年の宴
その光景を見て私の思考は固まった。
目の前に広がるは星の見えない黒い空、周りは淡く白色に輝いていた。
「っ…あ?」
全く状況が読み取れない。
起き上がり周りを見ると久しぶりな景色が広がっていた。
「樹海…冗談にも程があるって」
うねうねとした幹が地面を覆う。
役目を終えた以上また見るとは思わなかった。
この前まで何してた?
学校行って燐と蛍と話して帰ってきた…
何の不自然も無い日常。
となれば夢オチ?
いや、夢にしてはやけにリアルに感じる。
それに胸の辺りがザワザワとする。
「…マジで言ってる?」
遥か先から複数の白い点が向かってきていた。
見飽きたほど狩ってきたアイツら。
そこそこのカズがまとまって来てるから巨大に思える。
スマホを見ると消えたはずの勇者アプリが入っていた。
樹海が生成され、バーテックスが攻めてきたということは神樹と天の神が生きているという事。
つまり神様からまた戦えって言ってるの?
考えたところで戦う以外出れる方法は無い。
「仕方ない、か…」
渋々アプリを起動し変身する。
服装も武装も高嶋戦とほぼ同じ。
「ビット起動」
盾から分離させ感覚を確認する。
前よりも滑らかに扱える気がした。
「よし…いける」
剣を握り大群へ突っ込む。
ビットで捌きながら剣で細かく倒す。
近中遠を網羅してるからこその芸当。
そういえば1人で戦うことってほとんど無かったから色んなとこ見ないといけないから大変。
背中を預けられる大切さを理解したよ。
「にしても終わりはあるの?」
隙を見て端末のレーダーを見ると半分を倒したあたり。
行けなくは無いけどキツイって。
「チィ!しつこい!」
疲れたと言うより飽きてきた。
行動が変わらなくて作業感出ていた。
命のやり取りなのにこんな気持ち持ったらダメなのに。
ビットの合間を通り抜け1体突っ込んで来た。
「このっ!!」
剣で応戦しようとしたけど浅く入っただけで致命傷には至っていない。
「ヤバっ!!」
横に反射的に飛び避けた影響でビットの連携が乱れさらに隙を作ってしまった。
ますますヤバい。
後ろに下がりながら体勢を整えるけど間に合わない。
愚痴を大きく開けたバーテックスが目の前に広がり…
「勇者…パーーーーンチ!!!」
掛け声と共にバーテックスが横に吹き飛んで爆散した。
目の前に降り立ったのは赤に近い薄桃色の勇者。
「大丈夫!?」
「あっ…」
ドクンと心臓が跳ね剣を握る手が強くなる。
私の知る友奈と瓜二つの姿、そして私が戦った最後の敵。
高嶋友奈…
「敵が多すぎる…それでもッ!!」
拳を握り大群へ突っ込んでいく。
その姿はまさに暴風そのもの。
私は立ったまま眺めていた。
半分倒していたとは言っても拳だけで倒すのは異常過ぎる。
対峙した時もそうだけどセンスが違う。
「ふぅ…もう安心かな」
「援護ありがとうございました」
深々と頭を下げる。
救われたからには感謝しないといけないが警戒は怠らない。
「いやいや!そんな丁寧なお辞儀するほどじゃないよ!」
「それにしてもここはどこですか?」
「まぁ混乱するよね。一旦皆の所に戻ってから説明するよ」
皆の所…高嶋がいるってことは西暦なのかな?
天の神の覇気も感じないから本人で間違いない。
まさか私がタイムスリップする側になるなんてね。
そう思っていた時期が私にもありました。
樹海化が解かれ連れて来られたのは讃州中学の家庭科準備室。
この時点で混乱、そして中に入って思考停止。
元々狭かった部室が人が集まっていて更に狭くなっている。
すし詰め状態とはこの事を言うんだね…
その中には見慣れた顔もチラホラ見受けられた。
「皆注目〜!」
風先輩が手を叩き皆の目線を集める。
変に緊張するけど知り合いがいるからフォローしてくれるでしょ。
「神託でも聞いたと思うけど新たな勇者が来たわ。それじゃ自己紹介よろしく」
「もうちょい場を和ませるとかないんですか。風先輩」
「へ?」
「はい?」
「いやいや、
ん…?
あぁ、そういう事…
「…失礼しました。知り合いに似てたのでつい癖で言ってしまいました」
頭を切り替え前を向く。
隠す必要も無いなら本来の私を言うだけだ。
「私は高木美穂、神世紀300年から来たこの世でただ1人勇者殺しの名を受けた勇者です」
場の空気が凍る。
援軍のつもりだったのにまさかメタられるとは思わなかったろう。
「勇者、殺し…?」
「はい。世界を救う希望である反面その力を間違えれば滅ぼす絶望の存在ともなります。そこで大赦が自らの保身から勇者を倒す存在を求めた。その完成系が私です」
これは紛れもない事実。
あの人たちからしたら殺すなんて最初から考えていなかったに違いない。
欲しいのは勇者システムを作る大義名分。
それにしても物騒な言い訳だけど…
「と言っても基本鍛錬と外の偵察が基本でしたし指令
が下されたのも1回だけなので」
チラリと東郷の方を見ると神妙な面持ちだった。
どうやらここでもやらかしたらしい。
「実際に殺ったの…?」
「まさか。してたらこの部室から1人勇者がいなくなってますよ」
笑いながら答えたけど冗談として受け止められてないだろなぁ。
「それで、私が呼ばれた理由をそろそろ教えて欲しいんですが」
「実は…かくかくしかじか…」
紫がかった髪の女の子から事情を聞く。
この世界は神樹が作り出した模倣世界。
今は造反神と国盗り合戦中で、最後の高知を攻めてる途中らしい。
そしてここにいるのは300年の間に生まれ戦ってきた歴代の勇者たち。
地方を始め初代、先代、候補者と経歴だけ見たらヤバいパーティー。
これでもまだいるって言うから末恐ろしい。
「状況は把握できた。けどこの戦力で私の力必要ある?」
言葉を崩し疑問を口にする。
神樹寄りの神であるなら脅威度は天の神の下の存在になる。
また怪我はしても死者が出てないし、満開の後遺症は無し。
そんな状況で私を召喚してしまったらバランス崩れるのではと考えた。
「後々必要になるとか?」
「こっから難易度バク上がりしたり 」
「ハードモードね!」
「死にたくないんで美穂さんの後ろにいます」
脅したのに馴染むの早いなぁ…
勇者の資格ある人はこうテンション高めな人が多いのかな。
大赦も歴代の勇者を蔑ろには出来ないのか寮を買い上げ住まわしてる。
備品もくれるし生活費もお小遣い制でくれる。
あまりの甘々システムで調子狂いそう。
「疲れた〜…」
色んな人から質問攻めされて大変だった。
てか300年組多いんだからわざわざ私じゃなくてもいいのに。
「…造反神、か」
話の中で敵側にも1人勇者がいるらしい。
名は赤嶺友奈、友奈シリーズの3番目。
顔も声も似てるから初見だと分からないだとか。
神に仕える友奈、構図が似てる。
意図的かたまたまかは不明だけど気にしてしまう。
これを皆に言えばタイムパラドックス案件。
私が警戒すれば問題ない。
「ただ声かけにくいんだよねぇ」
クラスメイトも精霊だった友も私を知る者は誰1人いない。
この状況で相談するのは難しい。
しばらく偵察しながら過ごしますかね。
「さっさと支度して寝よっと」
困ったら早めに寝るに限る。
明日は明日の風が吹くってね。
アンケート結果によりゆゆゆい編を開始するッ!!
長続きしている先駆者さん達もゆゆゆい世界には突入してますのでやる気はありました。
ただ、受け入れる側ではなく受け入れられる側にしました。
こっち視点て中々無くない?
誰もやらなさそうだったことに挑戦するのがこの小説。
ジャングルの中を掻き分ける探検家の如く頑張りますかね!