生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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居場所

翌日、神託で突発的な襲撃が無い限り平和だと告げられた。

部屋の改装もまだ終わってないし何もすること無いから街中をブラブラしてマッピング作業をする。

店も建物も変わっておらず我が家もあったが空き家のままだった。

まるで世界から私だけ切り取られたような感じ。

でもこれが正しいのかもしれない。

存在そのものが規格外の上乃木家から追い出され暁に駒扱いされた。

そんなチートがいない世界こそ本来あるべき姿。

 

「まぁ死ぬ気は無いけどね」

 

部屋に戻りベットに寝転がる。

呼ばれた理由は必ずある。

あの中で未来を知っているのは私だけなんだから。

 

大赦が用意した射撃練習で無心で銃口を的に向けていた。

普段の私ならしないけど何かしたくなった。

合図と同時に間髪入れずに引き金を引く。

あっという間にマガジンが空になった。

 

「素晴らしい射撃精度ね」

 

「そう?使い所が無くて悲しいよ」

 

マガジンを引き抜き机に置く。

防人と呼ばれる壁外調査を行うチームのリーダー、楠芽吹。

 

「貴方も勇者候補だったの?」

 

「んー…私は単にならなかっただけかな」

 

「ならなかった?」

 

「勇者になるのは光栄な事だとは思う。けど私にその地位は相応しくなくてね」

 

本当は人殺ししていてなれると思わなかったんだけどね。

 

「どのような経緯であれ力を持っているのに勇者になりたがらないなんて考えられないわ」

 

「副次的な力だよ。真に強い人は心がしっかりしてる。自らを捨てるつもりで信念を貫く。それだけだよ

 

神を超えたのも人の思い。

楠も、もしかしたら見るのかもしれない。

だからあえて匂わせるだけ。

 

「じゃお先失礼するよ」

 

軽く慣らす程度だったからここまで。

お腹減ったし食べよっと。

 

食堂に行くとかなり賑わっていた。

同じ世代で食べていたり混ざって話をしている。

私の時も凄い光景と思ったけどそれを遥かに超えていた。

どうせ話しかけてくるだろうし食べやすいのでいいや。

料理を受け取り席に着く。

 

「いただきます」

 

うん、これも偶にはいいね。

過激派からは何て言われるか分からないけど…

 

「貴方何食べてるの?」

 

ほら来た。

 

「蕎麦ですよ」

 

さっさと自白するに限る。

これで文句言われたら流せばいい。

 

「〜〜〜!!パーフェクト!最高よ貴方!! 」

 

「ぐえっ!?」

 

反応が思ってたのと反対なんだけど!?

状況が読み取れない!?

あと蕎麦出る!!

 

「やっと蕎麦派が増えて…私…もう…」

 

「ええええ…」

 

涙腺が分からない…

蕎麦って玉ねぎみたいに涙出るっけ?

 

「うたのん迷惑だからそこまでにしてよね…」

 

「何言ってるのみーちゃん!ようやく蕎麦派が増えたのに泣かない訳無いじゃない!!」

 

「ほう、蕎麦と言ったか…」

 

今度こそ終わった…

ガチ勢筆頭の乃木若葉が食いついた。

言ってないけど私のご先祖さまと会えたのは嬉しいけどタイミングがね…

 

「何故四国民なのに蕎麦を食べる?」

 

「気分です…」

 

「なってない…全くなってないぞ。一から教え込む必要があるな…」

 

頭抱えてため息つかれたし。

確かにうどんは好きだ、けど毎日食べるほどじゃない。

旧世紀はうどんしか食べるもの無かったの?

帰ったら絶対██さんに聞こ。

 

改装が終わった連絡を受け部屋に向かう。

中はシンプルな宿舎といった所。

これまで広い家ばっか暮らしてから何か新鮮。

 

「一人暮らしかぁ…」

 

ベットに座り呟く。

心細さもあるけどシェアハウスのような時と似た感じかな。

雰囲気は桁違いだけど。

 

「美穂ちゃんいる〜?」

 

ノックと共に友奈の声がした。

 

「いるよー、ちょっと待ってね〜」

 

鍵を開け部屋に招いた。

何かテンション高い気がする。

 

「今から美穂ちゃんの歓迎会やるから呼びに来たんだ!」

 

「あれ?そんなこと言ってたっけ?」

 

「聞いてなかった?」

 

「全く」

 

「えええ!!どうしよう〜!!」

 

あたふたと私の横で頭抱えてる。

東郷が堕ちるのも分かる気がする。

これが無意識でやってるんだもんねぇ…

 

「大丈夫、暇だったし行けるよ」

 

「ホント!?ありがとう!!」

 

手を握りブンブンと振るう。

 

「それじゃ行こっか!風先輩食べてなきゃいいけど」

 

「そこまで食い意地は無いはずだと思うよ」

 

「そうだよね!」

 

横に並びながら廊下を歩く。

普段通りの光景なのにどこか落ち着かない。

声も性格も私の知る結城友奈なのは間違いない。

間違いないんだけどやはり別人なんだろう。

 

「それにしても不思議だよね。神託も無しに現れるなんて」

 

「神託はあったんじゃないの?」

 

「えっと…勇者が来る時は事前に巫女の人に届くんだけど今回は戦闘が始まってから来たらしいんだよね」

 

つまり私が目を覚まし変身した時点では存在を把握しきれていなかった。

 

「今回みたいな事はあったの?」

 

「時間差だったり樹海化と同時に現れた事くらいかな」

 

神樹が状況に応じて各時代から勇者と巫女を呼ぶのなら私にもその理由がある。

ただ理由が発生したのが唐突なだけ。

本来なら有り得ない事態がこの世界に生まれたから呼ばれた。

そう考えるしかない。

まさか奴が侵攻を?

あの運命はいかなる時代でも逃れられない決定事項。

それはこの歪な世界でも同じだけど、いつ現れるかは別問題。

早まったなんて事は容易に有り得る…

 

「美穂ちゃんどうしたの?」

 

「あぁ、考え事しててね。ごめんごめん」

 

「そっか。何か険しかったから私何か言っちゃったのかなって」

 

少ししょんぼりとした表情を浮かべる。

 

「いやいや!そんなことないって!ただ気になることがあってね」

 

「気づいたことあった?」

 

「まだ私の中でも整理出来てないんだよね。納得する形になったら言うから」

 

「分かったよ!」

 

相変わらずの眩しい笑顔に戻った。

いつもは嘘つくの下手なのに本気になったら自己すら封じるんだから恐ろしいよ。

 

歓迎会では怒涛の質問攻めを食らった。

勇者としての役割に対してではなく趣味といった何気ないもの。

楽しく会話出来たけどとにかく疲れた。

ガンガン攻めてくるから捌くのに苦労する。

さすが陽キャ、テンションが違う。

 

「んーーー!」

 

部屋に戻ると共にベットへダイブ、そして背伸び。

腰の骨が鳴り疲労が消えていく。

椅子に座り続けるのも疲れる。

別に気を使う事の存在でも無いのに。

 

「単に、ひとりぼっちなだけだよ」

 

静かな部屋。

プライベートが守られ周りの音は殆どしない。

それはいい事なのは分かっている。

なのに心には穴が出来ていた。

皆がいるのに私を知らない。

慣れたとはいえ少し辛い。

 

「あーあ。やんなっちゃうな」

 

部屋に自分の声が木霊する。

1人の時何してたか忘れるくらいあの空気に浸っていたらしい。

帰りたい気持ちもあるけどあっちには家族はいない。

記憶の無い家族と、1人も居ない家族。

今の私の居場所はどっちなんだろうね。




何気ない日常パートでした。
人の数が多すぎて処理が難しい…
しかも口調も被るから誰話してるか察してもらわないといけない。
絶対抜けが出るな…
もしキャラ抜けしてたら本当に申し訳ない。

あと書きながら投稿するのでガチで不定期です。
今回は本当だからね?
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