生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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逃亡生活

翌日、神託で突発的な襲撃が発生することが告げられた。

場所まで分かる時もあるらしいけど今回はタイミングも不明。

身構えながら過ごす日になるとの事だった。

いつもの公園でコーラを飲みながら目の前の光景を眺める。

子供たちが楽しそうな声を上げながら遊具で遊んでいる。

アレも神樹が作りあげた魂のコピー。

まるで実験都市みたいだ。

造反神というNPCを倒すシュミレーションゲーム。

そう考えると私は駒か。

そんなことを考えていたら端末が突如鳴った。

また1人だよ…って自分からなったんだ。

 

「はぁ…やるしかないってね」

 

樹海化したのを確認しマップを見ると皆1箇所に集まっていた。

私だけハブられてんじゃん。

なんかシラケるなぁ…

 

「ダメダメ。1人落ち込むのは良くないって」

 

顔をパンと叩き切り替える。

くよくよしてもディスっても始まらない。

まずは私に出来ることをしてからだ。

ライフルモードにし敵の波に構える。

今回は大型もいるから苦戦は確実か。

 

「代償無しなら出し惜しむ必要は無いね」

 

通常形態で出せる最大火力を叩き込んでやる。

ビットを銃身に集め狙いを定める。

小型が察したのか勢いよく突っ込んできた。

本能で危機を察したのは素晴らしい、一手遅かったけど。

 

「堕ちろ」

 

爆音と共に白い閃光が放たれ小型を消し炭にしながらバーテックスに向かっていく。

シールドのようなものを重ね抑えようとするもいとも容易く貫く。

図体の割に随分あっけない。

崩れ落ちていくバーテックスを見ながらボーッとしていた。

1人でどうにかする気はなくてもなんとでもなってしまう。

何故呼ばれたのか、何故戦わないといけないのか。

 

「あの子を一撃で沈めるなんて流石だね」

 

聞き覚えのある声が後ろからした。

 

「赤嶺友奈か」

 

「正解」

 

樹海の幹に寄りかかり私を見ていた。

影になっててよく見えないけど肩が激しく揺れているのが気になる。

 

「おかげで助かったよ。あの子は私を殺しに来たんだから」

 

「殺しに?」

 

「バーテックスを使役出来てたのに攻撃されてね。飼い犬に手を噛まれるなんて情けないよ…いてて…」

 

右腕を抑え辛そうにしてる。

これが演技には思えない。

 

「私にどうしろと」

 

「助けて欲しい。あの中で私を疑わないのは貴方しかいない。皆とは何度も刃を交えてるから信頼されてないからね」

 

私は赤嶺と対峙するのはこれが初めて。

常に相手の裏を読み卑劣な手を使う。

やり方は違えど思考は同じ。

 

「美穂ちゃーん!!」

 

結城の方が呼んでいる。

赤嶺はその場を動こうとしない。

処遇を私に託しているのか。

 

「お前は赤嶺!!高木に何しようとしていた!」

 

全員が集まり若葉さんが怒りの声をあげた。

尋問はされないだろうけど拘束はされる。

それでも勇者側のメリットにはなるだろうけど混乱を招くかもしれない。

ヘイト集めなら私の十八番、やるなら今しかない。

 

「赤嶺」

 

名前を呼び1歩歩み寄る。

横目で見るように私の顔を見る。

 

「その願い聞き届けた」

 

ライフルを皆の方に振り向きながら地面に連射した。

土煙が激しく巻い視界が悪くなった。

その隙に赤嶺を抱え戦線を離脱する。

後ろから怒鳴り声が聞こえ弾が横を通り抜ける。

本気で仕留めに来てるのか。

弾をビットで守りながら樹海化に紛れ逃げ切った。

 

 

「ッ…痛いんだけど」

 

「応急処置してるんだから感謝してよね」

 

逃げ込んだのは廃屋。

手持ちのハンカチで傷口を抑える。

 

「…ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

「なんで助けてくれたの?」

 

「身柄をあっちに渡せば爆弾を投下されるかもしれない。なら謎のまま新米勇者と共に消えた方が一体感は残る」

 

「変な考え。でも嫌いじゃない」

 

肩をかばいながら姿勢を変える。

本調子ではないから戦線には連れてけない。

 

「急に裏切られたの?」

 

「そうだね。いつもみたいに攻めに行こうとしたら指示を聞かなくなったんだ」

 

「ハッキングみたいな感じかな」

 

「その通りかも」

 

やはり天の神が干渉してきた?

でも神樹の体内に手を伸ばすのは至難の業。

なら別の勢力?

 

「心当たりはある?」

 

ゆっくりと首を横に振った。

そうだろうとは思ってたけど。

 

「まぁゆっくりやってこう。裏切り者同士仲良くしないとね」

 

「後ろから刺すかもよ」

 

「やれるもんならやってみなってね」

 

赤嶺の笑顔につられて笑ってしまった。

この世界に来て初めて笑えたかも。

 

共犯生活はかなり野性的だった。

本拠地は山の中の洞窟で魚や木の実を取って生活していた。

黒花さんから非常時の対応として習ったことがここで発揮されるとは。

変なとこで発動するけどまさか見越してたり…?

 

「何考え事してるの?」

 

バシャリと顔に冷水をかけられた。

お風呂に入れないから近くの湖に入り体を綺麗にしていた。

一応女の子だし清潔感は大切。

手で拭くと赤嶺がニヤニヤと笑ってた。

 

「別にいいでしょ」

 

「気になるな〜。ひょっとして彼氏?」

 

「バカは黙ってな」

 

「バカ言わないでよ。せめて筋肉つけてって」

 

「はいはい分かりましたよ」

 

赤嶺の体は年頃の子よりも鍛え上げられている。

本人も自覚してるのか私に筋トレを推して来た。

元々直感で動くタイプだから断ったんだけど事ある毎に話してくる。

 

「明日は街に下りるの?」

 

「そうだね。プロテインも不足してきたし」

 

「さすがプロテインの貴公子」

 

ドヤ顔されても反応に困るんだけど。

プロテイン以外にも備品は減っている。

金は造反神から湯水の如く貰ったらしく洞窟の奥底にある。

もう錬金術しちゃってるよ…

 

「バレなきゃいいけど」

 

「もしなったら何とかするよ」

 

「その肩でよく言うよ」

 

「筋力は裏切らない!」

 

「なら早く治してね〜」

 

そう言いながら空を眺める。

星がキラキラと瞬いていた。

山の中だからいつもより幻想的に見えた。

それが偽りでも心には美しいという気持ちがあった。

 

宣言通り山をおり買い出しに向かう。

移動は勇者に変身し人目を気にしながら進む。

しかも寄りによってイネスとは何の因果か。

 

「これとこれと…後は〜」

 

「待って。補充とはいえ買う量考えてよ?」

 

カゴにはプロテインの山ができていた。

 

「何言ってるの。それぞれ効果が違うんだから」

 

サプリと同じってことね。

仲良くなったら夏凛と意気投合しそうだ。

 

「まさかそれだけで過ごしてたとか…」

 

「ちゃんとご飯食べてるよ。バランス良く栄養取らないと意味ないから」

 

それなら安心…って私は赤嶺の親か!!

 

「貴方は買わないの?」

 

「私は最低限あれば何も要ら無いからね」

 

「無理やり連れてこられてるから仕方ないっか。神樹様ももうちょい丁寧にやって欲しいんだけどね」

 

造反神も元は神樹の一部。

これまで守っていたのは神様の集合体が具現化したもの。

けど自我を持っていたなら300年ももつのかな。

 

「会計するから精算頼むよ」

 

「奢ってくれないの?」

 

「無一文に何ねだってんの」

 

赤嶺は肩を負傷してるから私が持って帰らないといけない。

けど重すぎるんだって!!

 

「次から…考えて…買えッ…!」

 

「いい運動でしょ?」

 

「何処がッッ…!!」

 

さっさと勇者に変身して楽になりたいよ…

踏ん張りながら出口へ向かおうとした時。

 

「待ちなさい!!」

 

怒りにも思える声に呼びかけられた気がし後ろを振り向く。

そこには小学生組3人が立っていた。

 

「何の用?今デートの途中なんだ」

 

「デ、デート!?」

 

「3人ともごめんね。後で叱っとくから無視していいよ」

 

「何企んでるんだ!」

 

「傷を癒すんだよ」

 

「ここで倒しちゃえるってこと〜?」

 

「私は倒せちゃうね。でもこっちが許すかな?」

 

親指で私を指してきた。

ボディガードみたいになってるけど間違ってはいない。

 

「何故そちらについたんですか!!」

 

「この世界を別の視点で見るため」

 

荷物を置き距離を詰め見下ろす。

少し後退りしながらも構えていた。

 

「同じ視点ばっかりだと大切な物を落とした時気づかなくなる。もう手遅れになるのはごめん蒙りたいから」

 

この世界に来た時点で本来の時間は止まったまま。

ならこの3人が帰った先で行き着くのはきっと…

 

「帰ったら皆に敵じゃないって伝えて欲しいかな。まぁ信用ゼロだけど君たちから言ってくれれば変わると思う」

 

手を頭の後ろに回し笑う。

言葉ではなく行動で示すべきなんだろうけどね。

 

「じゃ、帰ろっか」

 

荷物の元へ行こうとした時、入口に黒い大きな何かが迫ってきた。

 

「ッ!!」

 

頭が理解する前に体が動き鷲尾さんと園子を抱え飛び退く。

直後、鼓膜が破れるくらいの轟音と衝撃が全身を襲う。

直ぐに体を起こし見ると大型トラックが入口を突っ切りモールの中へ挟まっていた。

 

「大丈夫!?」

 

「何とか〜」

 

「…」

 

「こっちも大丈夫」

 

「ありがとうございます…」

 

鷲尾さんだけ反応無かったけど無事を確認したからさっさと去ろう。

手を引き走ろうとした瞬間、後方のドアが開き人が降りてきた。

儀式用の服にマークのついた仮面。

 

「大赦の神官…?」

 

ゾロゾロと中から出てくる。

ざっと20人くらいかな。

ただの事故かと考えたけど手に持っている物で察した。

 

「ライフルッ!?まさか!!」

 

銃口を一斉に私たちに向けてきた。

最悪の次に待っていたのは最低な展開だった。




赤嶺とまさかのラブラブ展開。
ゆゆゆい本編でも明確な敵意が無かったので助けを求めるくらいならルートとしてありかなと。
あと赤嶺の人格にあの特撮ライダーをインストールしました。
筋トレしてるし脳筋だし大丈夫でしょ!
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