生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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歪み始める事態

「マジかッ!赤嶺!!」

 

「分かってるよ!」

 

私は即座に変身し神官に突撃する。

相手が勇者であるにも関わらず引き金を引いてきた。

花火のような音が鳴り目の前に展開した盾に物が当たる感覚が伝わる。

こいつら本気かよ!

 

「手加減してやるからさっさと寝ろっ!!」

 

盾で防ぎながら突っ込み1人の神官の頬あたりを殴る。

もちろん生身の人間に振るうんだからビンタレベルに抑えた。

それでもライフルを離し吹き飛んでいく。

勇者の力って凄いんだね…っと関心してる場合じゃない。

落としたライフルを広いビットで私を守りながら肩を撃ち抜いていく。

攻撃の手が止めば拘束は可能だ。

血が周りに飛び散るけど喧嘩を売ってきたんだから仕方ないよね。

1発で仕留められたから1マガジンで制圧出来た。

 

「こっちは終わりっと…」

 

「お疲れ様。手加減難しくて大変だったよ」

 

勇者に変身した赤嶺が右手をヒラヒラと振っている。

赤と黒の勇者服だからなのか手元がより赤く見える。

 

「本気で殺ってないよね?」

 

「信じてくれないの?」

 

「…分かったよ」

 

最初に殴り倒した神官の元へ歩み寄る。

 

「何者。大赦の人間じゃないね」

 

仮面をつけたままじっと見ている。

痛いから話せないとかでは無く本当の沈黙。

 

「その仮面剥ぎ取ってやる」

 

勇者の力に任せ仮面に手をかけ取り上げる。

 

「は?」

 

そこにあったのは人間の顔では無かった。

鼻は無く十字の目に耳まで裂けた口。

この顔を何度も見てるし倒してきた。

 

「マジか…」

 

「うわぁ…いくらなんでも無いよ…」

 

これなら殺しておけば良かった。

今までのマシュマロ体型が愛しく思うって。

 

「殺る?」

 

「再生されたら困るからね」

 

ビットで神官もどきの首を跳ね飛ばす。

動かなくなったけど大量の血を飛び散らせた。

 

「趣味悪すぎるって…クソッ、汚れたじゃん」

 

「まだまだ残ってるから大変だ」

 

「手伝いなよ」

 

「分かってるって。でもあの子たちはどうするの?」

 

指差す方を見ると3人は尻もちをつきながら震えていた。

仮面の下を見たらそうなるよね。

 

「私が何とかする。その間に倒しといて」

 

「それ使えば楽だろうけどいいよ」

 

変身を解除し3人の元へ近づく。

 

「高木さん…これ、は…?」

 

「私にも分からない。けど敵なのは確実」

 

「人の体してるのに…お顔がバーテックスだよ〜…」

 

「………」

 

私でも刺激強かったのに小学生からしたらトラウマに等しい。

 

「頭を切り替えろ何て事は言わない。今まで戦ってきたのとは性質が違うからね。でもどんなに怖くても進まなきゃいけない。止まってても何も変わらない」

 

無理なのは理解してる。

でもその恐怖は1人だけのものじゃない。

共有し打ち解けていくのも大切なんだ。

 

「粗方殺り終わったよ」

 

「ありがとう。このまま退散しよう」

 

「どこへ行くんですか…?」

 

「我が家だよ。と言っても質素過ぎるけど」

 

「一緒に来ないの?」

 

「まだね。その内合流するから待ってて」

 

幼い園子の頭を優しく撫でる。

心地よさそうに手に擦り付けてる。

私の存在を知らない綺麗な園子。

運命を変えられなくても支えてあげたくなるのは血故か。

 

「またね〜」

 

3人に手を振り再び変身しその場を高速で離脱する。

さっきからサイレンの音が段々大きくなってきたし勇者も合流してきそうだった。

それにしてもあのバーテックスどこかで会った気がする。

殺した時の感覚が初めてでは無かった。

いつだ…いつ…

ダメだ全く分からない…

それが分かれば謎も解けるはずなんだけど…

 

赤嶺とのワイルドキャンプライフを始め2週間。

バーテックスの襲撃は1度あったものの出る幕なく終わった。

死地を幾つもくぐり抜けてきたからか安定した勝利といった所。

そして私はと言うと…

 

「ハッ!」

 

「フッ!たあッ!」

 

赤嶺の回し蹴りを体を逸らし避け右腕を伸ばしを当てにいく。

それを着地と同時に左腕を縦に出し防ぐ。

 

「やるねぇ…!」

 

「そっちもね…!」

 

お互いにやけながら距離をとった。

赤嶺の肩が治り始めたから河川でリハビリの組手をしてる。

本調子とまでは行かないけど小型なら容易に倒せるだろう。

 

「ッ!!」

 

「ーー!!」

 

口から息を出す音と肌がぶつかる音しか聞こえない。

インファイトは苦手だけどやってみれば楽しい。

まぁ殺しが入ってないから遊びレベルだろうけど。

 

「はぁ…はぁ…っ…ここで打ち止めにしよう…」

 

「もう…やめるの…?弱いね…ぇ…」

 

「煽っても…やらないから…んっ…」

 

スポドリを川から取り飲む。

自然の冷たさが体に入り心地よい。

 

「フゥ…久しぶりに体動かせて良かったよ」

 

「脱ぐの早いって。羞恥心とかないの?」

 

「スポーツブラだから関係ないって。もしかして私の体に見とれたの〜?」

 

「くっつくな!暑苦しい!!」

 

友奈を冠しているのに性格は全く違う。

言わばワルワル友奈。

脳筋なのに変装が何故か上手い。

 

「高木ってその戦闘スキル誰から教わったの?」

 

「師匠だよ。まぁ型とか無い無法野郎だったけど」

 

「感覚で戦う感じだ」

 

「ほぼ正解」

 

足を川につけ話す。

赤嶺も隣に座って同じく足をつける。

 

「基本アドリブで戦闘するから周りに合わせやすいんだよ」

 

「へぇー。私もこれって型は無いけど癖が抜けないね」

 

「右がメインになるとか?」

 

「それは元々武器が右手しか無かったから」

 

「何そのアンバランス」

 

「神樹様がくれたから仕方ないって」

 

適正とかあるだろうけど変なの。

てか友奈系は格闘タイプだったり?

そうこう話してると端末から警報が鳴った。

 

「お呼び出しだね」

 

「疲れたから行ってきて」

 

「これからが本番なのに。強いと思ってたのにサボり癖でもついてるの?」

 

「程々にあるよ。ヨイショと…」

 

立ち上がり軽く跳ねる。

体力は変身してしまえば関係なくなる。

終わったら動けなくなるくらい疲れるだけ。

 

「どこに湧くのかな」

 

「もしかしたらお姉様の隣とか…」

 

何か夢女になった気がするけど気の所為だろう。

そろそろ樹海化の筈…

 

「…遅くない?」

 

「変だね。鳴って直ぐに呑まれるのに」

 

花びらも舞わないけど時は止まっている。

前の件と言い変だ。

 

「嫌な予感がする。敵の数は?」

 

「マズイね…壁の方から来てるよ」

 

壁の方?まさか…

 

「行こう。呑気にしてる暇は無さそうだ」

 

疲労感が一気に吹き飛び足に力が入る。

誰にも見られないからいつもよりもスピードをあげ向かう。

 

たどり着いたのはかつて夏合宿をした海岸。

真っ直ぐで綺麗だった砂浜は穴があちこちに空いていていた。

 

「あれが、敵…?」

 

海に浮かぶのは大量のゴムボート。

そして乗っているのは黒い仮面を被ったあのバーテックスもどき。

ライフルを構え勇者たちに攻撃している。

遮蔽物が少なく防戦一方。

旧世紀、世界では人同士が争う戦争が勃発していた。

それが目の前で行われている。

 

「一刻を争う!手抜くなよ!!」

 

「そっちこそ!疲れてやられたとかやめてね!!」

 

「当たり前だっつーの!ビット!!」

 

狙うは上陸前の敵。

長距離攻撃が出来る勇者は限られ、援護もまともに出来ない。

だからこそ母数を減らし少しでも楽にさせる。

それに手が空いているのは私だけ。

 

「堕ちろぉぉぉぉ!!!」

 

動力部を貫き、狙撃し次々爆発させていく。

私を脅威と感じたのか狙いが向いた。

 

「こいよッ!一匹足りともここから行かせるかよ!!」

 

剣を構えバーテックスもどきと対峙する。

横に並び一斉に撃ち込んできた。

体を縮めバネのように一気に近づき一体の首を跳ねる。

鮮血が私と砂浜を汚し倒れる。

それでも止まらず次々切り捨てる。

死体を盾にし突っ込み心臓を複数体まとめて突き刺し、ライフルで腹を撃ち抜いた。

ぐちゃり、ぐちゃり。

肉の音が耳に響く。

昔聞いた最低な音だけど何かが違う。

人を殺す感覚というより虫を潰す感じ。

バーテックスなんだろうけど不快感があった。

 

「止まれ高木ッ!」

 

若葉さんの声が聞こえたと思ったら私をタックルするように突き飛ばしてきた。

手加減したんだろうけど受けみとった時に捻りそうになった。

 

「痛っ…何すんだよッ!!」

 

「アイツらに攻撃するな!あれは一般人だ!」

 

「はぁ!?」

 

「話は後でする!今は下がれ!!」

 

不本意ではあるけどビットで若葉を守りながら後ろへ下がる。

 

「どういう事?」

 

私は戦場を気にしながらスマホに問いかける。

赤嶺も説得されたのか輪の中にいた。

 

『戦闘前に神託がありました。イネスで高木さんが対峙したのは一般の人が変異した姿なんです』

 

巫女である上里が説明する。

つまりあれは一般人がバーテックスに寄生された姿だと。

 

「だから攻撃してないんだね」

 

「そういう事。今は待つしかないの」

 

「待つってどのくらい?」

 

その先の発言は無かった。

ジリ貧と分かってて何も手は無いと。

ふと自分の右手に付いた血を見つめる。

粘り気を纏ったそれは私の体温で少し暖かくなっていた。

指に付いた血をなん気なしに舐める。

 

「え、ええええ!!??」

 

「何やってんのよッ!!」

 

「幾ら海でもそれは…」

 

外野を気にせず口の中で味を噛み締めるように舌を回す。

血を飲み込み一つの結論にたどり着いた。

 

「これ、血じゃない」

 

「は…?」

 

「粘り気はあるけど独特の生臭さと鉄の風味がない。ただのダミーだ」

 

「いや食レポされても困るんだけど!?」

 

ここで謎を解くのもいいけど状況が状況だ。

脱してからでも遅くない。

 

「鎮魂ちゃんとするから許して欲しい!」

 

私は砂浜を蹴り上げ前線へ飛び出す。

銃弾の雨を避け、上陸したバーテックスを次々倒す。

後でお叱り確定かなぁ…

 

はい、その通りでした。

神託内容を聞き、対策を練っている間に独断専行し敵を殲滅。

大赦が行方不明者のリストをあらっているらしいけど未だ発見されていない。

 

「説明願おうか」

 

裁判を受ける被告人のように周りを囲まれ正座させられた。

この流れは基本負けムーブだけど今回は論破できる。

 

「その前に神託がどのように届くのかについて詳しく知りたい」

 

「簡単に言えば写真のようなイメージが頭の中に入ってくる感じです」

 

「今回も同じ?」

 

「いえ…いつもに比べ大雑把な感じがしました。具体的に読み取ろうとしても引っかかるような…」

 

やはり違和感は存在していた。

 

「私はあの敵をバーテックスと判断し攻撃しました。理由はあの体液が血ではないからです」

 

「見てたけどかなり引いたわ…」

 

「しかも味知ってるなんて…」

 

仕事柄でどうしても知っちゃうんだよ…

まぁ死神の話は直に話すけど。

 

「それにバーテックスに変異したなら何故樹海化しないの。一般人と混ざって判定出来ないにしても警報が鳴った時点で変化するのに」

 

警報からの変化がセオリー。

それが無いのに神託だけ届く?

 

「そこは神樹様も答えてくれませんでした…」

 

神樹は身勝手な点はあるとはいえ樹海化はちゃんとやるやつだと認識してる。

だからこそ今回の行動に違和感を感じた。

 

「今のを元に出た答えは、今回の警報は第三者による偽の通報」

 

「第三者…まさか造反神!!」

 

「それは無い。するとしても私たちを攻撃する理由が無いから」

 

「なら誰が…」

 

「私の知る限り1人しか思いつかない」

 

最悪の結論だけどこれしか無い。

 

「天の神の使徒、暁。彼がこの事件の首謀者だ」




おまたせぇ!
構想練って何度も書き直していたんで遅くなりました!

そして何度も擦るオリボス。
マジで使い勝手いいんですよ。
まさに「おのれディケイド」状態。
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