事態は唐突に動き始めた。
大赦職員による監視網を嘲笑うかのように爆破テロが四国全土で同時に起こった。
リュックを背負った神官が突然爆発したとの豊国もある。
重症の人もおりただ事じゃない。
しかも一瞬で行うのではなくじわじわと恐怖を与えながら壊す鬼畜っぷり。
ニュースやSNSで眺めてもその恐怖は浸透していてお店を閉じる所も出てきた。
「対策も出来ないんじゃこうなるよね」
私と赤嶺は静かになった商店街を歩く。
来た時は活気があったのに酷く寂れていた。
「買い物しててもつまらなく感じるよ」
「つまらないのは変わり映えしない袋の中だけど」
「いつも通りでいいじゃん」
「いつも過ぎるんだよ…」
プロテインの大量に入った袋を軽々と持って帰る。
暁が来ても変わらない。
まぁ気持ち的に助かってるのは事実だけど。
「それにしても一般人を消してどうしたいのかな」
「邪魔をさせないようにするとか。現実世界で私たちと相対したいなら誰にも見られない状況を作るにはいいと思うけど」
「妙に説得力あるね」
「唯一アイツとサシでやったからね」
「それもあるけど…」
「まぁね…」
2人同時に後ろをむく。
そこにいたのは不気味な仮面をつけた人が3列に並んで立っていた。
「見なきゃ良かった」
「これは気持ち悪過ぎる…」
すると統制されたように同時に懐から銃を取り出し私たちに向ける。
明らかな殺意。
「こんなことしないと外出れないの?」
「生きづらい世の中になったね」
端末を取り出し変身する。
爆音がしてもどうせ怖がって誰も出てこない。
「…来いよ」
剣先を集団に向け挑発する。
帰るのは遅くなりそうだ。
商店街そのものに被害を出さないようビットを封じて戦闘したから時間がかかってしまった。
それに買い物袋も守らないといけなかったし。
「全部無事で良かった〜」
「そこに関しては納得」
戦闘そのものは他の勇者にも発生しているらしく報告があがってきてる。
ゲームで言うランダムで発生する雑魚キャラとのエンカウント的なものだろう。
「勇者の力が使えて良かったね」
「なかったら一方的な蹂躙だって。それをしないのも変だけど妙に腑に落ちるんだよね」
園子を生贄にした時も選択するまでは本当に手を出さなかった。
あそこで私の背後を取るか園子を撃ち抜いて落とすとか色々手はあったのに最後まで静観していた。
今回も何処かで見ているんじゃないのかな。
それが選別なのか茶番なのかは分からないけど。
「お腹減ったな〜。なんか作ってよ〜」
「ゼリー飲料でも飲みなって。あれ1ケース残ってて邪魔んだけど」
「はいはい」
フラフラと面倒くさそうに冷蔵庫に向かおうとしてたその時。
端末から耳に残る警報音が鳴り出した。
「…モーニングコールにしては最低だね」
操作しポイントを探すと…
「さいっあく…」
「趣味悪いね」
気持ちが少し沈んだけど行くしかない。
あの6人は確実に来るだろうし1番に行くに違いない。
先に変身し窓を開け飛び出た。
これが私の最短ルートなんだし、誰も見てないんだから。
到着した先は丸亀城。
始まりの地にして繁栄の証。
その天守閣の屋根に1人膝を立て座っていた。
「高木」
いつもより低い声で若葉が話しかけてきた。
その目元は怒りが込められているように険しかった。
「あれは暁本体か?」
「さぁ…アイツにとって何が本物か偽物かなんて定義無いから…」
「ならどうやって倒したんだ?」
「瞬間的に燃やして灰にした」
「何てパワープレイ…」
すると私の端末が鳴り出した。
見てみると非通知から連絡が来ていた。
こんな時に電話かけるバカは一人しかいない。
スピーカーに切り替え皆に聞こえるようにして出る。
「こんなショー開いて何が面白いの」
『ショーじゃない。君たちの生き様を転がして楽しんでいるだけ』
「相変わらず悪趣味だね」
暁は淡々とした声で話を続ける。
『それに君と話したかったんだよ』
「1人の時に話しかければいいのに」
『彼女たちは後で必要だからね。時短ってやつだよ』
何が時短なのか理解出来ない。
『それで何様?』
「僕と共に世界をめちゃくちゃにしないか?」
何を言うのかと思ったらまたそれ。
「口説いよ。アンタの下で働くなんて二度とごめんだよ」
『あんなに純粋に仕事してくれたのに』
「お陰でひねくれたよ」
周りの目がやけに鋭い。
恐らくこの会話は陽動だ。
人殺しの真実を教え不信感を抱かせる。
王道だけど効果的。
『たくさんの人を殺して築き上げた日常はさぞ甘美だろうね』
「その十字架は今も私の背中にある。生きる事が私の贖罪なのだから」
『もう乗り越えたか。相変わらず君の心は真っ直ぐだね』
少し笑いが聞こえた気がした。
お前に親ズラされるのは反吐が出るんだけど。
『なら話すことは無いよ。ここからは純粋に…』
ブツリとノイズが一瞬走った。
と思ったら屋根にいた暁がいなくなっていた。
一体どこに…
『「遊ぼうじゃないか」』
端末と背後から聞こえ全員で振り向く。
そこには暁が少し笑みを浮かべながら静かに立っていた。
「貴様…!?」
「遅い」
刹那、横に立っていた若葉の姿が轟音と共に消え暁が右手を突き出す形でいた。
「なっ、あぁ…!!」
「乃木さん!!」
頭が追いついた先にあったのは城壁に出来た真新しいクレーターだった。
見えなかったのは仕方ない。
ただ、殺意すら感じ取れないのは異状だ。
「テメェ!!」
状況を読み取ったのと同時に大鎌とライフルによる援護射撃が寸分たがわず暁を襲う。
しかし、瞬きをした瞬間攻撃した勇者がまた倒された。
「ひっ…!」
「何で、だよ…!!」
どうやって倒したか何てどうでも良くなった。
この場で起こっていることそのものを理解出来ないのだから。
時を止められたかのようなスピードと威力。
勇者服とバリアによるフィードバックも通常と比べ劣る。
「…造作もない。手こずっていた勇者がこうも呆気ないとは」
「皆さん!離れてください!!このままだと…!!」
「お喋りは良くないね」
「あんずッ!!」
また1人、1人と倒されていく。
抵抗も意味をなさず一瞬で葬りさられる。
「おや、僕としたことが。熱が入ってしまったようだ」
パンパンと砂を払い私に顔を向ける。
「感情がのると制御が聞かないらしい。殺しはしてないから安心していいよ」
「そういう問題じゃ…無いだろ…ッ!!」
その場に無傷で立っているのは私だけ。
皆様々な形で倒された。
「僕も驚いているんだ。ここまで力があるとは知らなかったからね。寧ろ寸止めしただけでも感謝して欲しいけど」
「誰がするかッ!お前は私が止める!!」
「愚かな」
剣を構える前に私の前に近づき剣先を中指の2本で掴まれた。
「なっ…!?」
「抵抗の意思を持った以上無力化させてもらうよ」
「チィッ!!」
ビットを展開し暁の周囲に───!!
そう思った時にはガンッと鈍い音が頭に響き目の前が暗くなった。
気づけば座り心地のよい椅子に座っていた。
天井から淡いオレンジ色の光が最低限あり空間を照らしていた。
頭の回転が戻り周りを見るとそこは映画館だった。
ただ、長く使われていないのか肘掛には埃が溜まっていた。
かび臭さもないから息は普通にできる。
恐らくここは夢で間違いない。
ないんだけど…
いつ行った…?
お父さんとお母さんと?
いや、そんな前じゃない。
恐らく1年以内のはず…
何処だ…絶対に覚えているはず…
『ようこそ、迷える仔羊よ。上映時間は過ぎているぞ』
低めの声がシアター内に響く。
周りを見ても人の気配は無い。
『そう怯えるな。お前をどうこうしようとする気は無い』
「ここは何処だ!お前は誰だ!!」
『質問は1つずつにしろ。答える側の気持ちにもなれ』
なんか癪に障る言い方だ…
けど、何でか分からないけど懐かしくも聞こえる。
この人、何処かで…?
『まぁいい、急を急ぐ事態だ。1つ目、ご推察通りここは夢だ。現実だとノックアウトされて気失ってる』
やはり殺さなかったのか。
どこまでも人の事遊んでるんだ…
『2つ目、これに関してはお前に言うのは早い』
「どういう事?貴方も天の神の使徒とでも言うの」
『間違いじゃ無いとは言っておこう』
「なら私たちをどうするつもりだ!!」
『吠えるな。オレとやつはスタンスが違う。それにアイツの思考を読み取るのは反吐が出る』
声だけでも嫌そうなのが伝わる。
それに私に言うには早いと言っていた。
この人はどこまで知ってるんだ?
「貴方一体…」
突然、耳を劈くようなベルが鳴り響く。
『ここまでか。まぁ繋げ方だけでも得られたならいいか』
「待ってよ!まだ聞き足りないの!!」
シアターの中をぐるぐる周り声の主を探す。
『答えを急ぐ必要は無い。ただ、時間はあまり無いがな』
「矛盾を押し付けないで!」
『なに、答えはすぐ近くにある。お前が気づいていないだけさ』
「ならヒントくらい言ってよ!」
『ひたすら思え。何気ないワンシーン、くだらない会話。その全てを集めればオレにも会えるだろう』
そう言った後、照明が落とされ真っ暗闇となった。
オールスター作品の敵って大概チートだよね。
なら多少暴れても文句ない!よしっ!
ということでやや強化です。
本編だと尺の関係でAC化させてしまったので素の力を見せれなかったんですよね。
そして結城友奈は勇者である9周年おめでとうございます!
この日を一勇者部員として迎えられて嬉しいです!
これからも応援すべく筆を走らせますかね!