生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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時は違えど惹かれ合う

目を開けると眩しいくらいに反射した白い天井が見えた。

左耳からは規則正しい電子音が聞こえ、薬品臭い匂いが私の意識を強く目覚めさせる。

暁に負けてからどのくらいになるんだろう。

私の中じゃ数時間の気持ちだけど相当経ってるに違いない。

それにしてもあのデジャブを感じる夢。

声の主に心当たりはあるものの具体的に誰かは分からない。

それを紐解くのが私の成すべきことに違いない。

…これヒントにすらなってなくない?

 

丸刈りの担当医の方が問診し、身体に大きな異状は無いことを言われた。

 

「あそこまでやられていてその回復力。さすが神樹様に選ばれた勇者です」

 

「お世辞はいいです。それよりも現状について教えてください」

 

少し目線を逸らし考えた後、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「落ち着いて聞いてください…貴方が寝ていた3日。この四国は天の神によって占拠されました。謎の仮面が街を歩き我がものとしてます」

 

想定の範囲内だけど改めて聞くとまぁ酷い。

しかも3日も寝てたなんて寝起き遅い。

 

「他の勇者は?」

 

「傷の浅い方から戦線に復帰されています。貴方が最後まで目覚めませんでした」

 

「本当ですか?若葉さんもかなりダメージ負ってた気がしましたけど」

 

「若葉様は自力で起き上がり鍛錬に向かわれました。『体を動かした方が治りが早い』と言われていたので仕方なくですが…」

 

「ご苦労さまです…」

 

この人も苦労人なんだ…

よっぽどの事がない限り従っておこう。

それに止める人もいるだろうし。

 

「一般の方はどうなっています?」

 

「分かりません…私もテロが起きてからこちらに寝泊まりしてましたので…」

 

「ネットとかで情報が流れたりしてないんですか?」

 

「天の神によって情報が遮断されてしまいました。生き残っているとするなら言葉遣い程度です」

 

「通話も無理そうですね」

 

「私たちのは不可能です。勇者様のは例外らしいですが」

 

神の力を掌握したとしてもすべてとは限らない。

これも慈悲と言うならどうしようもないけど。

 

「高木様は勇者一同から念入りに治して欲しいと頼まれています」

 

「私だけゆっくりしていられないと思うけど」

 

「それはたかみーが最後の希望だからだよ」

 

目線だけ動かすと園子がドアの前に立っていた。

 

「園子様…」

 

「2人っきりにしてくれないかな」

 

担当医は頭を1度下げた後静かに部屋を出た。

 

「私に何か様ですか?」

 

「その前にもう敬語使うのやめた方がいいよ。言いにくいと思うし」

 

笑みを浮かべながら指摘する。

誰に似た洞察力やら…

 

「なら遠慮なく。それで私が最後の希望って?」

 

「別の世界だとしても天の神の使徒を打ち倒した唯一の勇者。私たちじゃ歯が立たなかった相手を越えたのだから重宝するよ」

 

「それは過去の栄光だよ。今の私はアイツに傷1つ付けられない」

 

「そんなことないよ。たかみーは使徒に攻撃を当てれたんだから」

 

「何?」

 

園子の答えに驚きを隠せない。

私が暁に攻撃を当てた?

頭の中でぐるぐると記憶を探るも当てた記憶がでてこない。

 

「それ本当?」

 

「本当だよ。あの場にいた意識のある勇者全員が証人だからね」

 

「そんなにいるの?」

 

「最初に吹き飛ばされたご先祖さま以外は覚えてるはずだよ」

 

ほぼ全員じゃん。

 

「全く覚えがない…」

 

「無理もないよ。あの時のたかみーいつもと違ったから」

 

「いつもと?」

 

()()()()()()()()()()()()

 

「!!」

 

その言葉が出るとは思わなかった。

まさか…

 

「園子。その時の様子教えてくれる? 」

 

「私で良ければいいよ」

───

遠くで金属がぶつかる音がする。

目を開けると視点が定まらず微妙にぼやけている。

頭も割れるくらい痛い。

何とか意識を戻し視点を音の方向に合わせる。

そこには漆黒の勇者服を纏った勇者と使徒が戦っていた。

フードで深く顔を隠し誰かは分からない。

銃を片手に使徒の攻撃を避けながら攻撃を続ける。

 

「素晴らしい…やはり君には影が似合う!!」

 

使徒の声がいままでよりも高く聞こえる。

勇者は弾切れなのかナイフをどこからか取り出し斬り掛かる。

2、3交わった後使徒が勇者を軽く飛ばし距離をとる。

 

「何だ…この感覚…」

 

先程までの高いトーンは消えていた。

 

「この違和感…内側から…?」

 

勇者はナイフを構えながら見つめる。

手をじっと見つめた後、使徒は煙のように消えていった。

同時に勇者の変身が解かれる。

黒い風が私たちを横切り、張り詰めていた空気が一気に解放された。

その風の真ん中にいたのが…

───

「私ってことね」

 

「そういう事。話聞いても記憶に無い?」

 

「全く…」

 

「もしかして二重人格だったり?」

 

「だとしたらしずくさんのように記憶の引き継ぎはあるはず」

 

防人である山伏しずくさんは幼少期のトラウマから極度のストレスがかかるともう1つの人格であるシズクさんが現れる。

典型的な二重人格だけど私は違う。

 

「あれは私の影だよ」

 

「影?」

 

「端末の奥に封印されたデッドシステム。そして、私の贖罪が具現化したもの」

 

暁に埋め込まれ私の変身システムの一部を担う力。

その力はあまりにも血に染まりすぎていた。

 

「つまり…あの姿はたかみーの意思は入ってないってこと?」

 

「そうだね。1度変身すれば目標を潰すまで止まらない。さながらバーサーカーと言った所かな」

 

「制御は出来ないんだね」

 

「外部からなら出来るらしいけど私からは無理だよ」

 

かつて園子を襲いかけた時も銀や珠子が止めてくれたお陰で反転することが出来た。

ただ、この世界で反転した私を止められる人がいるのかが問題だけど。

 

「なるほどね…うん、分かった」

 

「というか何で園子がここに?若葉さんでも良かったんじゃない?」

 

「たまたまだよ。私が聞かなくちゃって思って。何でかは分からないけどね」

 

頭を少しかきながら言った。

この世界の園子とは血の繋がりは無いけど乃木の血は流れている。

それが呼び寄せたのならまさに縁なんだろう。

 

「そっか。ちなみにいつ頃退院出来そうなの?」

 

「2、3日だって。たかみーの回復力が高くてびっくりだよ〜」

 

どんな怪我をしたのかは聞いていないけど治り早くない?

こんな芸当できるのは…

私は病院服の胸元をを軽く巡る。

 

「え…?」

 

そこには谷間沿って付けられた十字の傷跡。

 

「どうしたの?」

 

「…この傷って戦闘の時に付けられたのなの?」

 

「聞いてみないと分からないけど古傷に見えるよ?」

 

こんな跡見たことない…

それにネックレスも無くなっている。

まさか…暁に?

いや、そんな敵に塩を送る様なことをする訳が無い。

なら一体…

 

「…とりあえず復帰しないとね」

 

「たかみーは使徒が現れた時に戦って欲しいからしばらく待機だよ」

 

「そんなの私が我慢出来るとでも?」

 

「皆からの命令だよ。勝手に動いたらひなたんからお叱り受けるよ」

 

あの若葉さんを手懐けるんだから従った方がいい。

 

「分かったよ。けど暁が現れた時は真っ先に連絡して。誰も失わせないから」

 

「…分かったよ」

 

何かを含んだような声で納得して貰えた。

この世界線でも銀の運命は変わらなかったんだ。

まぁ夏凛が勇者となった時点で戦線離脱をせざるを得ない何かが起こっているのは予想してた。

 

「今日は帰るね。復帰したら部室に来てよ〜」

 

「了解〜」

 

手を軽くあげ園子を見送った。

謎は出来たけど今は暁をどうにかしないと。

これ以上私の罪を皆に背負わせる訳にはいかない。




我が小説では推しカップルになりつつある『そのみほ』回でした。
オリキャラなんだからくっつけても解釈不一致にはならないでしょ!
あれ、これ前にも言ったような…まっいっか!!
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