その光景を見て私は怒りを感じなかった。
この地に現れたのならこの展開は必然だったと何処かで思っていたのかもしれない。
「この世界では2年振りの同窓会と言ったところかな」
「何処までも腐ってるね」
「戦いの先にあるのは勝利のみ。その為にならどんな手も尽くすのさ」
完成したのか見慣れた顔が私たちを見下ろしていた。
樹海化した世界でしかバーテックスを見てないから逆に恐怖を感じた。
「君たちはその武器以外守るものは無い。2年前と同じかするだけでも無事ではいられない条件。よく出来た舞台だと思わないかい?」
口が裂けるぐらいに口角をあげ笑っている。
その笑みはたかみーでは無く私とわっしーに向けられているんだろう。
ここに派遣されたのが偶然か必然なのかはどうでもいい。
ここに来てしまった以上私たちはまたあの悲劇を繰り返す運命なんだ。
「お前は1つ勘違いをしている」
たかみーが再び口を開く。
「私の知る歴史とほぼ同じだと言うのなら確かによく出来た舞台だと思う。けど、それは結果だけ見ただけだ。その過程はどうだった」
「…」
使徒は無表情に近い顔に変え美穂を見ている。
「言えないよね。だって何千年も生きてきたクセにたった12年しか生きていない1人のちっぽけな存在にしっぽ巻くしか出来ないんだからな!!」
声をどんどん大きくしながら使徒に訴える。
こんな状況でも前を向ける姿が眩しく見えた。
「それに今は6人一緒。どんな逆境も共に支え乗り越えた私の知る中で最も強い勇者たちだ。この条件で無事にいられるのはどっちなのかな?」
「犬の遠吠えにしてはいい演説だね。その言葉叶うといいね」
「叶うさ。
一瞬たかみーから冷たい覇気を感じた。
前に見た黒い装束とは違うもっと深いところから流れ込んだような冷たさ。
「まさか…いや、そんなはずは…」
使徒が明確に狼狽えていた。
何を思ってその反応をしたのか分からない。
「ごめんね皆、難易度あげちゃって」
私たちの方を向き軽く笑っていた。
冷たい覇気も無くいつものたかみーがいた。
「言ってくれてありがとう。私なら言い返せ無かったわ」
「単に言いたいことを言っただけだよ。それにあの子だって怒っただろうしね」
「凄いすっきりしたよ」
「どんなもんよ〜ってね」
「そろそろ構えなさいよね!勇者部プラスで行くわよ!!」
「プラス扱いなんだ…」
「赤嶺さんは時代が違いますからね」
「よーっし!!気合い入れていこー!!」
もう、誰も1人にはさせない。
今度こそ皆で帰るんだ…!!
───
暁と私はお互い何もせず距離を保ちながら見合っていた。
この戦いに私たちが参加すれば泥試合行きはほぼ確定となる。
それに人の可能性を見せるという点でもこれ以上無い舞台だ。
「それにしても貴方が動かないなんてね」
「わざわざ僕が動く必要も無い。結果は見えているのだから」
「それはどっちの勝利なのかな?」
「教える必要も無いだろ?」
鼻で深く息を吐きながら戦況を見る。
バーテックス3体の連携と勇者7人の連携。
機械のような攻撃をお互いの声かけで避け仕掛けるカウンタータイプの戦闘。
インカムもつけないであれほど情報共有出来るとは思わなかった。
私も文明の利器に頼らなきゃなってたのかな。
「最強と推す理由も分かる。彼女たちは確かに強い」
「人は日々変化する生き物だからね」
「変化か。君が変わったのも変化なのかい?」
「そうとも言えるかも」
変化は自分1人で起こせるようなものじゃない。
家族が、友達が、この世界に生きる全ての人との繋がりで変わるのだから。
「なるほど。また僕は見誤ったようだね」
話していたら3体のバーテックスは御霊を壊され光の粒となりながら消えていた。
皆も傷を負いながらではあったけど無事だった。
「さてと。敗北したんだからそれなりの対応をさせて貰うよ」
閉まっていた剣を召喚し暁へ迫る。
「あぁ。負けを認めるよ。だから教えてあげる。僕の肉体は、神によって再構築された電脳体のようなもの」
だから身体能力が大幅に強化されていたのか。
友奈の上位互換と言った所かな。
「僕を殺しても事態の解決には至らない。君たちが倒すべきは神の概念そのものだ」
「概念?」
「遥か昔から人は自然現象に対し祈りを捧げてきた。その願いが神というフィクションへ昇格した。それが現実に現れたのならその全てを倒しきることで元に戻る」
雷や雨を科学的に証明出来る時代に本来神は存在出来ない。
その理を越えるほど人は衰退していた。
ならば神そのものを消せば世界は戻るのは納得する。
というか私の世界だと成功してるんだけどね。
「残念だけどこの魂とはおさらばだね。安心していい、僕では無い誰かだけど直に会えるよ」
「何を言って…!?」
横から体のあちこちが消えた小型が突っ込んできた。
咄嗟にバックステップをして避けるも狙いは私ではなかった。
真っ直ぐ暁に向い大口を開き喰らいつく。
「な…にっ!?」
目的が分からないけど嫌な予感だけは感じた。
すぐさま小型へ接近し、ビットを合体した大剣を振るう。
私が接近しても抵抗すること無く受け入れ真っ二つに割れ粒子となる。
そこには暁の死体も肉片の一つも残ってない。
息を切らしながら周りを見ても気配すら感じ取れず波の音しか聞こえない。
逃げられた?いや、あの言葉は完全に死ぬ前提の話だ。
一体何をしようとしている…
「何処だ…何処へ消えた…!」
「高木。いい加減にしなさい」
風先輩の言葉で我に返った。
口に鉄の味がして手袋で拭くと、血が付着していた。
いつの間にか口を切っていたらしい。
「…ごめん」
変身を解き戦闘の意思と怒りを捨てる。
今はこれでいいんだ。
今は…
各地に出没していた人型のバーテックスが次々と自壊していった。
指揮塔であり供給源であった暁が消えたからだろう。
これで事態が振り出しに戻る。
そう思っていた。
「何で誰もいないんだ…」
街は変わらず静寂が漂っていた。
戦闘前に行った時は人影が無いだけで気配は何となくあった。
それすらも感じ取れないのは異常だ。
「大赦とも連絡が途絶えました。昨日までは正常に繋がっていたのに…」
「私のお父さんとお母さんも家にいないの…どこいっちゃったんだろ…」
部室に集まったものの皆の顔は変わらず暗かった。
正に神隠しにあったような状態。
ただ、ここまで大規模となると私たちが神隠しにあっていると考えた方が納得いく。
ライフラインだけは都合よく生きているから生活そのものには支障が無い。
これも神の力の残滓とでも言うのかな。
「使徒は完全に倒しきった訳じゃ無いのよね」
「自害のように見えたけどあれはカモフラージュとも取れる。何れにせよ再侵攻はあるね」
「ただでさえ強いのに更に上があるのかよ…」
「貴方はは前回勝算はゼロに近いと言ったわね。それは今でも変わらない?」
「…そうだね。これでコンマ1がゼロになったよ。今回ばかりはお手上げだ」
「戦ってすらいないのに!?」
「あれが私の知る使徒の最高地点だからね」
バーテックス形態もあるけど今は置いておこう。
人間態の暁と直接やり合ったのはごく一瞬だったから本気を出せばあのくらいやれたと仮定しての結論。
「2柱の神を取り込んだにしてはあっさり負けを認めた。そうなれば次会った時が使徒の本気であり真の姿なんだと思う」
「いよいよ満開も使わないと行けないのかもしれません」
「それは…」
嫌がるのも無理ない。
改良されたとはいえ実態は不明。
同じ歴史を辿ったとしてもその裏で起こることに誤差が生じる。
そんな私もその誤差が思い出せないんだけど。
「使い時は各自の判断に委ねるしかない。けど、気軽に切るべきじゃない事だけは覚えておいて欲しい」
状況次第というフワッとした言い方で対策会議は終わった。
事前に行動出来るならしたいが神の考えは人の域を越えている。
それでも尚私たちは抗わないといけない。
序章完結と言った感じですかね。
え?これで序章だって?
そりゃ相手がこの小説の使い回し要員の彼ですからね。
ここからどんどん重くしていきますよー。