翌日。
「ボリボリ…」
部室でさも当然のようににぼしを頬張る夏凛。
サプリキメられるよりかはマシだけどホントお腹減らないのかな。
「夏凛ちゃん、頼んでおいた猫探しのポスターは?」
「もう出来あがってるわよ」
「わ、ありがとー!うわぁ…!絵上手いんだね!」
「と…当然!絵の一つや二つ描けなくて何が―――」
「ほぉ?ずいぶんと大きな態度じゃない。えぇ?」
戯言を言う夏凛の頬を両手で抓った。
「ひゃめろ…!はなひぇ!」
「他人の成果を横取りして満足感を得るとは…この泥棒猫が」
手を放しバックから一枚のポスターを掲げた。
「見るがいい!これがオリジナルだ!」
「これは…化け猫?」
そこには幼稚園児が描いたような猫の絵が。
「これを自信満々に出された時はさすがに焦ったよ。これがデータ、ホームページに載せた後印刷の手配よろしくね」
東郷さんにUSBを手渡す。
アップくらいならすぐ出来るだろな。
「ほんとファインプレーね。他はいいのになんでこうなるのかしら」
「グッ…これだからセンスのない奴は!」
「あなたは言える立場じゃないんだけど」
「はぁーーー…」
突然聞こえたデカいため息に驚いてしまった。
発生源は樹ちゃん。
「どうしたの?幸せ消えるどころか魂吐き出すほど大きなため息して」
「あ…すみません。今度の歌のテストで頭いっぱいで」
「ああ、樹は人前で歌うの苦手だもんね」
正直私も歌うのは1人がいいけどやれと言われたら歌える。
後、周りのノリが良ければ。
「よし!今回の目標は樹をテストで合格させる!」
「みんなで頑張ろう!おー!」
友奈それ歌いたいだけじゃないよね?
「どんなもんよ!」
先陣をきった風先輩が満足げな顔をした。
そら90点なんていうハイスコア出したらね…
「夏凛ちゃん。これ歌える?」
「一応、歌えるけど」
「なら一緒に歌おうよ!」
「なんでよ。馴れ合う為にいるんじゃないのよ」
「そうよねー…私の後じゃ歌いにくいよね~。ごめんね~」
申し訳なさそうに手合したけど目笑ってるんだよね。
「友奈、マイク貸しなさい…早く!」
本気モード入った夏凛と友奈のデュエット。
歌詞に色が出るから歌えば必然とハモるけどタイミングがバッチリ過ぎる。
しかも即興なのが恐ろしい。
「ハァ…ハァ…」
「はい飲み物。喉痛めないでね」
「ありがとう…結果は?!」
表示された得点は91。
僅か1点差だけど軍配は友奈と夏凛に上がった。
「よっし!」
「やったね夏凛ちゃん!」
「いきなり抱きつくな!」
夏凜もだいぶ打ち解けた感じがする。
親ではないけど何かホッとした。
「次は私かぁ…」
マイクを持ち深呼吸をする。
前奏の無い歌だから最初が大切。
そこからはただノっていくのみ。
身体が勝手にリズムを取り自分の世界に入る。
歌い終わり疲れが来たが快感だった。
「んー…!ストレスが飛んでくー!」
「92点…さすがです」
「ぐぬぅ…何で負けるのよ…!」
夏凜の肩を無言で軽く叩いた。
まだ始まったばかりなんだから。
「次は樹ちゃんの番だよ」
「うぅ…頑張ります…」
友奈からマイクを貰い前に立つ。
手が少し震えているのが気になる。
「~~♪」
やっぱり掠れ気味かな。
「声が震えているわね」
「音程もバラバラでした」
「やっぱり緊張かな」
「まぁ一回目だしみんなで回してコツ掴んでいけば何とかなるっしょ!」
「はい…!頑張ります!」
何曲か歌い盛り上がってきた中風先輩がスマホ片手に抜けた。
恐らく襲撃の話かな。
夏凛がこちらに目線を送った。
3人はワイワイ選曲作業に夢中。
顎で扉を指し後をつかせた。
「あれ?風先輩と夏凛ちゃんは?」
「連れション。全く、子供じゃないのにね」
2人ともごめん…言い訳がこれしか思いつかない…
「そう言えば、頼んだポテトがもうないんだけどみんなよく食べるね」
「違うよ。牛鬼が食べてるんだよ」
「牛鬼?」
部屋をぐるりと見渡したけど何もいない。
「まさか見えないんですか?」
「あー…私精霊見えないんだよね」
「じゃあ、バリアが…」
「うん、無いよ」
私は精霊との契約ではなく補助パーツによる疑似的な加護。
出力差はもちろんバリアもない。
つまり食らったら大けがは確定。
「怖くないの?」
「怖いと言えば怖いけど…」
コップの中身を飲み干し付け加える。
「人はいつ死ぬか分からない。明日事故で死ぬかもしれないし。だから一瞬一瞬を楽しんで生きる、それで死を誤魔化してる」
あ、やっちゃった…
気付いた時には遅くカラオケボックスがお通夜状態になってしまった。
「えーと…まぁ今はとにかく歌おうー!次入れないと私歌ちゃうよ~」
無理やり笑顔を作り誤魔化す。
彼女たちに恐怖は与えたくない。
あれは辛いとか生半可なものじゃないからね。
その後帰ってきた風先輩のフォローで場は再び盛り上がり使用時間ギリギリまで歌った。
――――
テスト当日。
私は心臓が今にもはじけ飛びそうなくらい緊張していた。
「次、犬吠埼さん」
「は、はい!」
声が裏返って恥ずかしい。
前に立ちいやでも見えるみんなの目線。
覚悟を決め教科書を開いたら一枚のプリントが落ちた。
「すみません!」
拾いあげようとした時、見覚えのないプリントで思わず開ける。
それは、皆からの寄せ書きだった。
―――――
前日の昼休み。
樹ちゃん以外のメンバーが風先輩に呼び出された。
「緊張を減らす案があったら欲しいんだけど」
「サプリを―」
「却下」
「早い!」
それは夏凛限定なんだよね。
しかし、緊張を減らすかぁ…
となると、
「メッセージ?」
「そうなりますね」
「つまり寄せ書きだね!」
「そうと決まったら作るわよ!仕込みは任せなさい!」
張り切ってるなぁ…
さてと、何書こうかな。
―――――
『終わったらみんなでケーキ食べよう! 友奈』
『周りの人は皆カボチャ 東郷』
『気合よ』
『前を向かなきゃ始まらない!ゴールに向かって進め! 美穂』
『周りの目なんて気にしない!お姉ちゃんは樹の歌が上手いの知っているから 風』
皆からの温かい言葉に背中を押され、緊張感が消えていく。
これなら…!
―――――
「はぁぁぁ…」
「そんなため息ついていると老けますよ」
「だって気になるじゃない~…」
不安になるのも無理ない。
「けど、そこまで不安になるのは樹ちゃんの事信用してないって意味になりません?」
「いや信頼はしてるけどこれは別というか…」
「大丈夫ですよ!きっと受かってますよ!」
「こういう前向きな気持ちで待ってないと」
すると部室の扉が開き樹ちゃんが入ってきた。
みな固唾をのんで結果を待っている。
「…受かりました」
笑顔で一番聞きたかった言葉を言ってくれた。
直後、風先輩が抱き着きながら号泣していた。
ここまで妹思いだとさすがに引くね…
その後、友奈の宣言通り皆でケーキを食べ解散となった。
帰宅後、食器を洗いながらふと考える。
風先輩と樹ちゃんは姉妹だけどそれ以上の大切な存在とお互い意識してる。
それに比べ私は血の繋がりのある家族と呼べる人はほとんどいない。
いたとしても遠縁ってとこ。
だから私にとって家族と呼べるのは黒花さんだけ。
じゃぁ銀は?
本来ならここにいてはならない存在。
けど…
チラリとリビングを視る。
銀はテレビを寝転がりながら眺めている。
その光景を見るだけで心が温かくなる。
あぁ…どうかこの日常が、
続きますように。
この話を忘れてました。
日常パートも入れたいけど難しい…
戦闘も待ってるし書かなければ。