生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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恩讐の炎はあがる

高嶋ちゃんを美穂ちゃんに託して私は1人使徒の後を飛びながら追う。

つられて満開しちゃったけど対峙した時点で覚悟はしていた。

もし散華したとしても文句は言わない。

これが私の選んだ答えだから。

突如、瓦礫の中から青黒い光が2つ飛んできた。

 

「!!」

 

一撃は体を捻り避けたけど二撃目は巨大な腕で防ぐ。

腕にヒビが入っていることからまともに食らっていたら一溜りも無かった。

でも美穂ちゃんも剣を銃に変形させているなら持っているのも納得する。

本当にあの使徒は美穂ちゃんなの…

今度は四方から囲い込むように光が狙ってきた。

 

「ならっ!」

 

先程と同じく腕でガードしながら光の元へ急降下する。

ヒビが広がり遂に腕が砕け散ちった。

その瞬間に背中の輪を切り離し突っ込む。

使徒の姿を捉えそのまま私の拳を振るう。

拳は使徒では無く地面に当たりコンクリートを巻き上げる。

 

「そんなことも出来るんだ。彼の記録も当てにならないね」

 

「復讐なら私たちにしてよ!関係ない人を巻き込むのは間違ってる!!」

 

「間違ってる?何言ってるの。これは私の居るべき世界を作っただけだよ」

 

「世界…?」

 

「この暑さと息苦しさ。常人ならものの数分も耐えられない環境。そんな中に私はいたんだ。長いようで短い間ね」

 

煙で黒く染まった空を見上げ呟く。

 

「私にだって人の心はある。喜怒哀楽くらいは表現出来るけど、心の底から出すことは出来ない。使徒になったのもあるけどそんな感情が抜け落ちたんだ」

 

「それも勇者のせいなの…」

 

「そう。たった数分で私の人生はめちゃくちゃになった。だからここでその因果を断ち切る」

 

顔を下ろし2本の剣を構える。

 

「行くよ、神の産み出した奇跡の子。世界を救ったその力、この場で見せてよ!!」

 

土煙をあげ使徒の姿が消えた。

前回の使徒と同じ高速移動。

普通の状態では追いつくことも出来ないけど満開した今なら目線で分かる。

 

「そこだっ!!」

 

左足を高くあげ使徒の剣撃を相殺し、あげた勢いで腰を捻り右足で蹴りを加える。

しかし、片方の剣を足先に合わせる位置に持ってきており届かなかった。

 

「せこいとは言わないでね」

 

黒い帯が私を取り囲むように襲ってきた。

即座に使徒から離れバックするように避ける。

 

「はっ!!」

 

その行動が過ちと気づいた時には遅かった。

銃の形状に変えた剣から光が放たれた。

防御するも今度は耐えきれず吹き飛ばされた。

 

「あああっ!!」

 

満開したにも関わらず私の腕が焼けるように熱かった。

白かった衣装が黒く焦げ腕が露出している。

 

「ッ…!」

 

追い打ちをかけるように光が襲ってくる。

何とか立ち上がり直撃は避けたものの今度は足を抜かれ倒れ込む。

 

「ギッ…ぁぁ!!」

 

激痛が私の頭を激しく揺さぶる。

戦闘を行う考えすらさせないくらいの痛み。

満開の効果も消え、制服姿に戻ってしまった。

 

「感情の昂りは人一倍なだけだったというオチか。味気ない」

 

ガチャンと私の頭に冷たいものが押し付けられる。

 

「これで終わりだ。絶望の底で事の顛末を見てな」

 

抵抗しようと腕を伸ばしたら押し付ける力が強くなった。

こんな所で終わっちゃうのかな…

諦めたい気持ちと諦めたくない気持ちが私の中でぐちゃぐちゃになる。

どうしたらいいんだろ…

 

 

 

 

…まだ生きてる?

状況は変わっていないのに何で私生きてるんだろう。

 

「百足が殺られた、いや飛ばされた?何故…」

 

表情は分からなかったけど何か予想外の出来事が起こったんだろう。

 

「友奈ぁぁぁぁぁ!!!」

 

「チィ!」

 

私の上が一気に軽くなった。

ゆっくりと顔をあげると美穂ちゃんが険しい顔で私の横にいた。

 

「百足は倒したらしいね。貴方もここで捕まった方が身のためだよ」

 

「…そんな事しないのは1番分かってるくせに。今回はここまでにするよ。またね」

 

黒い影が地面から湧き上がり使徒の体を包み込みそのまま潜り込んでいった。

 

「…友奈。大丈夫?」

 

「大丈夫…それより高嶋ちゃんは?」

 

「先に撤退させた。今の友奈よりかは元気だよ」

 

「そっか…ごめん。私負けちゃった」

 

「生きてるだけでいいんだよ。帰ろう、皆待ってると思うし」

 

最低限の止血を行い、美穂ちゃんにおぶられる形で学校へ戻った。

──────

学校の窓から見える景色は怒りよりも虚しさも感じる。

青い海、緑豊かな畑と山、海沿いを走る車。

何気ないシーンが今とはなっては面影すらない。

山も畑も道路も全て赤く燃え、海も黒く淀んで見える。

使徒との戦闘から数時間。

勇者と巫女以外誰もいなくなった街に火を止める手は無く四国を着実に焼いていた。

 

「どっちが外か分からないや」

 

壁の先も似たような雰囲気だった。

何も無くただ燃えているという点が違うだけ。

地獄の景色に近いのはどっちなんだろな。

 

「街に変化はあったか」

 

「…あそこの家の屋根、綺麗な青色だったのにもう黒くなっちゃった」

 

若葉さんが私の横にやってきた。

 

「そうか…」

 

「高嶋と友奈はどう?」

 

「2人とも大きな怪我じゃない。高木のお陰だ」

 

「私は何もしてないよ。ただ、信じただけ」

 

「たとえ違う世界でも信じるのか」

 

「生き方が少し違うけど根は同じならね」

 

自分よりも他人を思いやる。

他人が傷つくなら自分がその傷を負う。

自己犠牲の精神がまだ強い時期だから危なかっしいけど。

 

「よく平然としていられるな」

 

「あー…あれ?まぁ、動揺したけど有り得たなって」

 

人の縁1つで運命は大きく変わる。

銀があの時死ななければ夏凛は防人になった可能性もあるようなもの。

それでもねじ曲がり過ぎだけど。

 

「そっちも凄いじゃん。古の怪物相手を倒すなんて」

 

「あの話はまだ聞いていないのか…」

 

声が少し低くなる。

私は黙ってその次の言葉を待つ。

 

「確かに倒した。だが、私たちの力じゃない。あの場にはもう1人いたんだ」

 

「その様子だと知らない人っぽいね」

 

「白い髪の人が突然現れて百足に何かを貼ったんだ。そうしたら姿が一瞬にして消えた」

 

白い髪…

その言葉を聞いて私の脳裏にノイズが走る。

 

「その人って髪長かった?」

 

「あぁ。腰くらいまで伸びてたな」

 

再びノイズがかかった記憶が蘇る。

白髪のような歳を感じさせる色ではなく、雪のように真っ白な髪。

 

「なるほどね…声かけなかったの?」

 

「かける前に逃げられてしまってな。少しでも情報を得られれば良かったが」

 

「こっちに敵対する意思が無いだけで充分だよ。もしかしたら神樹から派遣された勇者かもね」

 

使徒も大百足が負けるのは想定外だったように思えた。

それにしても何かを貼って倒すってまるで陰陽師みたい。

 

「話は変わるが何で神樹様を呼び捨てにするんだ?」

 

「だって勇者に戦わせておいて何も言わないんだよ。そんな相手に様つける必要無くない?」

 

「それでも力を授け、神託や樹海化もしてくれるんだから感謝の気持ちは込めてもいいんじゃないか?」

 

「それはそれ。私の師匠なんてクソウッドとか言ってたんだよ」

 

その師匠の顔も思い出せてないんだけど。

 

「それで剥奪されたらどうするんだ」

 

「逆に伐採するかな」

 

「こちらまで巻き込むな…」

 

呆れながらも少し笑ってくれた。

チラリと顔を見たけど少女らしい笑みだった。

ちゃんと笑えるんじゃん。

 

「さてと…お呼び出しだね」

 

端末がブルブルと鳴っていた。

何か進展があったのかもしれない。

そのまま2人で誰もいなくなった廊下を歩く。

 

「虚しいな」

 

「肝試しで来るのとは違うね」

 

幽霊は人の楽しいという気持ちが残る場所に集まりやすいと聞いたことがある。

だからこそ七不思議の噂が産まれるんだろう。

私がいるのはそんな感情すら消えた学校だった。

外側は完全に再現されても中身が空っぽ。

しかも私の知る讃州中学と同じなら尚更。

 

「それじゃ開けますよ。ご先祖さま」

 

「ご先祖さま呼びはやめろ。あれは園子だけで充分だ」

 

「ごめんごめん。つい言って見たくてね…」

 

私は軽く笑いながら部室の扉を開ける。

本当のご先祖さまなんだけど、ね。




久しぶりの投稿でした。
モチベを分割したのでどうしても偏ってしまいまして。
でも逃げてないのでセーフ!

闇高木(後々呼称変更)対 結城友奈戦。
満開相手を圧倒するのは強者の証。
まぁ、素体が半チートだしオリキャラだしアリだよね!

次回は番外を挟みます。
こちらは「日常の章」に挟まれるので把握よろしくお願いします。
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