生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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奇妙な出会い

教室に戻ると私たちを除いた全員が集まっていた。

足を踏まないよう人の間をくぐり抜け端に陣取る。

 

「前回の戦闘を私たちなりに解析しました」

 

上里さんがゆっくりと話を始める。

 

「現れた敵は平安時代の逸話にある大百足。そして、天の神の勇者である高木美穂…さん」

 

「言いにくいなら呼び捨てでもいいよ。私は気にしないから」

 

こちらを気遣うように濁してきた。

自分の名前が敵として使われるのは複雑だけど円滑な議論の為には仕方ない。

 

「では…黒い高木さんが今回の首謀者でありますが天の神の意志とも言えます。つまり彼女は勇者であり巫女なのです」

 

「そこまで来たらもう人じゃなく神様の域じゃん」

 

「な、なぁ…まさかだとは思うけどあの百足が精霊じゃないよな…」

 

「申し訳ないのですが正解です…」

 

だと思った。というのが感想。

正式な勇者には精霊がつくけど基本妖怪レベルの存在。

満開を使用した時に纏うのもこの精霊たちがベース。

上位の存在とも契約は可能だけど時間制限付きで、デバッグを体が受けるから勝ってもボロボロになる。

それを黒い私は何の影響も無い上、オリジナルを召喚した。

 

「けど倒したなら終わりなんじゃ…?」

 

「そう簡単に終わる訳無いでしょ」

 

外は未だ業火の海。

完全に息の根を止めていない以上、次があるのが確実。

 

「そして、もう1人の白髪の女の子についてですがまだ判明しておりません」

 

聞き込み調査しての結果なんだろうけどそれは無理もない。

私は見てないけど何か細工したら百足が消えるなんて明らかなチート。

 

「現状敵対していないことを見て保留にします。今は黒い高木さん妥当に専念するしかありません」

 

「とはいえうちのエースの満開をいなした相手にどう立ち向かえばいいのよ」

 

「黒い高木を、囲んで倒すのは?」

 

「それは難しいと思う。満開は用途によるけど基本対軍及び巨大バーテックスへの最終兵器。個人へ振るうには大ぶり過ぎる」

 

東郷や風先輩のような広範囲に散開している時に効果的な満開が多い。

そもそも対バーテックス用に作られたんだから想定されてないのは当たり前。

ご先祖さまや高嶋のような立ち回り次第で上手く扱えるものもあるけど僅かしかない。

 

「戦うとしても対人に心得ある人しか無理という事ですね」

 

「そうなります…ごめんなさい」

 

「みーちゃんが謝ることないわ!これも全部高木さんのせいよ!!」

 

「待って!?確かに好きに呼んでとは言ったけどその言い方だと語弊生むからやめてくれないかな!!」

 

「何かややこしいから黒木でいいんじゃないか?」

 

「いいですね!敵だけどカッコイイ!!」

 

「何か趣旨がズレてるような…」

 

デジャブな名前…

黒って名前に親近感湧くのはなんでなんだろ。

いつものように脱線していくのを見ていたら私の端末が震えた。

こっそり取り出し確認すると差出人不明のメールが1件入っていた。

そこには『碑に眠る』とタイトルにあり、数字が一言書いてあるのみ。

碑と言えばあそこしかないけど候補は複数ある。

周りの様子を見る限り私1人に送られたもの。

そしてこの世界で勇者以外に活動出来るのは2人だけ。

行かなければならないが黙っていく訳にも行かない。

これは共犯者が必要だね…

 

 

「何で私なんですか〜?」

 

私に向け純粋無垢な瞳を向ける園子(小)。

集会が終わったあと、バレないよう声をかけ部屋に招き入れた。

 

「簡単な話だよ。大きくなった園子が経験した事ない行動をするんだからね」

 

「した事ない?」

 

「皆に黙ってやる事は何度もあった。けど、宛先不明の相手との密会はしてないんだよ。敵か味方かも分からない人物とのコンタクト。これを最前列で見れるって聞いたらどうする?」

 

幼さはあるものの根は同じ。

興味あるものに頭から突っ込み食らいつくし小説として生み出す。

話に聞くと中の方とグルになって様々な事態を起こすトラブルメーカーズ。

今回は私の罪を被せるダミーだから申し訳なさはある。

 

「やりたいです〜!それに危なかったら皆を呼べば大丈夫ですしね!」

 

「う、うん…」

 

多分援軍嫌がって妨害してくると思うけど…

もちろん策もなく行く愚行はしない。

ちゃんと皆には伝えるよ。

 

指定されたのは深夜の時間帯。

寝静まったタイミングで静かに変身し、窓を開け抜け出す。

そのまま行くのではなく園子の部屋に寄り道をする。

窓枠にしがみつき中を覗くと心地よさそうに寝ていた。

予想を裏切らない姿勢、私は嫌いじゃないけどね。

こんな事もあろうと園子には窓の鍵を開けておいてもらった。

おかげでスムーズに侵入し起こせた。

 

「ん〜…おはようございます…スヤァ…」

 

「寝るな寝るな。起きないと世紀の瞬間をスクープ出来ないよ」

 

「はっ!!忘れるところでしたー!」

 

「声が大きいっ!!」

 

 

 

2人で燃える街を跳ね飛ぶ。

煙で空は黒く昼も夜も分からない。

太陽の光が懐かしくも思える。

燃えていると言っても火の勢いはゆっくりとしており所々燃え残りがある。

そこを伝い目的地へ向かう。

 

「あそこだ…」

 

道路がひしゃげた大橋の横に作られたホール。

火の手が回ってないのか壊れた容姿もなくぽっかりと空いた穴のように見えた。

降り立つと少し肌寒かった。

海風が吹いているのもあるけど他と何かが違う。

体の中から凍りつくすような寒さ。

 

「ぅぅ…ここ怖いです…」

 

「大丈夫。何があっても私が守るから」

 

私の後ろに園子を隠すようにホールの中へ入る。

台を取り囲むように置かれた石碑。

その一つ一つに歴史はあるものの全てを知る者は居ない。

何度も行った場所なのに心がざわついていた。

まるで誰かが私たちを静かに見ているような視線を強く感じる。

 

「ッ…」

 

喉を強く鳴らし覚悟を決め真ん中に立つ石碑へ歩みを進める。

初めての殉職者が発生した時に作られたものであるだけで強い存在感を放つ。

 

「来たよ。同行者がいるのは申し訳ないけど許して欲しい」

 

得体の知れない何かに向け謝る。

声が反射し別の声と言葉になって耳に返ってくる。

端末の時計を見ても数分早いくらいで誤差程度に過ぎない。

持っていたペンライトでホールを照らしながら探索をする。

侵攻前に来た時は何の変化もなかった。

誰も寄り付かず最低限整備された場所。

()()()()()()()()()()()()()()()()()けど綺麗とは思った。

小さな石碑も数こそ数えていないものの私の世界と同じだろう。

そして掘られた名前も…

 

「え?」

 

「どうしたんですか?」

 

一つの石碑をペンライトで照らす私はその場で固まってしまった。

石碑はあったものの書かれた名前が無く光が反射していた。

かつて東郷が消された時も似たようなものがあったけど今回は掘られているけど何なのか分からないくらい風化している。

他の石碑を照らしても同じ状態だった。

古いから消えた訳でも無く、銀の石碑も名前が消えていた。

 

「どうゆうこと…前来た時は皆の名前があったのに…」

 

「誰かが削り取ったとか?」

 

「いや…これは人為的なものじゃない。自然が削ったとしてもあまりにも不自然…」

 

突如甲高い声が響き渡る。

咄嗟にライトで辺りを素早く照らすも発生源が分からず定まらない。

 

「人の声には聞こえない。物を動かした音…にしては綺麗過ぎる…」

 

「まさか…バーテックス?」

 

「無きにしも非ずだね。新種を巻いていたとしても不思議じゃない」

 

左手にライトを高く持ち右手で剣を構える。

月の光も無く真っ暗な闇が広がっており、どこから襲われても対処が遅れる。

背を石碑に合わせ視界を狭めお互いフォローし合う。

トンッ、トンッと軽い音が続く。

こういうのラップ音って言うんだっけ。

誰もいなくても家が気圧とか湿度で音が鳴る現象。

バーテックスなら殺せるけど幽霊が出たら終わりだ。

手持ちには十字架も経典も無い。

南無阿弥陀仏とか言えばいいのかな…

 

「って何考えてるのやら…」

 

「美穂さん!あそこ照らしてください!!」

 

怯えるように槍を一点に向けている。

即座に光を当てる。

 

「何も居ない…?」

 

「今動いたんですけど…」

 

「ライトの光で作られた影かも。気になるけど他にも目を配らせて」

 

「はい〜…」

 

こんな時ビットの機能があれば…

今はないものをねだっても事は動かない。

それに足元も少し温かい。

温かい?

 

「ん?」

 

見てみると足元に丸まるように白い狐が絡まっていた。

 

「なんだ。狐か…はあああぁぁぁ!!??」

 

反射的に足を蹴り上げ飛ばしてしまった。

一瞬、狐の目が落ちそうなくらい開いていたのが見えた。

 

「え!!幽霊出たんですか!?」

 

「幽霊じゃない!あれは…精霊!?」

 

あれが人の頭だったら発狂してたに違いない。

SAN値が残っていなければ即死だった…

 

「何処に飛んで行っちゃったんだろ…」

 

「良かった。天井に刺さった訳では無さそう…」

 

「うんうん。びっくりしたけど受け身取れて良かったよ」

 

「そうなんですか〜。良かったです〜」

 

話しながら狐がトコトコと歩いてきた。

眩しくない程度に光を当てて見たら大きな怪我は無かった。

大きさも普通の狐よりやや大きめといったところ。

 

「え…?まっ…えぇ?」

 

「初めまして!わたしの名前は…コン!狐のコン!! 」

 

「コンちゃん!こんにちは〜じゃなくてこんばんはかな?」

 

「大丈夫。時間なんて気にしなくていいよ〜」

 

「いや…いやいやいや!!何サラッと話進めてるの!?」

 

混乱しながらも突っ込みを入れる。

 

「この子精霊何ですよね?なら安心出来ますよー」

 

「その認識で正解だよ。あ〜…そこ撫でられるの気持ちいい〜…」

 

「えぇ…」

 

唖然とするしか無かった。

人語を話す精霊は勇者以外見たことがない。

一体日本語を少しだけ話すタイプがいたけど基本的に言葉による意思疎通は不可能。

 

「まさか、貴方がメールをうったとかじゃないよね」

 

「正解。ほら、これが証拠」

 

ふわふわとした背中には黒いゴムで体に巻きついた端末があった。

 

「誰かに呼ばれたの〜?」

 

「呼ばれたんじゃなくて呼べなかっただね。他の子とはちょっと事情が違うから」

 

「ならその事情について詳しく教えて貰おうかな」

 

気持ちが収まり園子に抱えられた狐と相対する。

 

「もちろん。そのつもりで呼んだんだからね。わたしは神樹様から発せられた救難信号を元にここに到着した神霊」

 

まるで船みたいなシステム…

そして、サラッと神霊と言った。

大百足と同じ、神域にいる高次の存在。

 

「でも、行く途中結界に阻まれてたどり着かなかったの。何とかあの人と一緒にこじ開けてわたしだけ先に来れたんだ」

 

「他に援軍がいるの?」

 

「いるよ。最高に頼もしい援軍がね。結界の拒絶が強いから合流は少し先になるかも」

 

「早く会いたいなー」

 

落ち着いたのか狐を撫でながら楽しそうに話す。

小学生の園子も可愛らしい。

傍にずっと入れたらどうなってたんだろな…

 

「ふむふむ…」

 

「ん?私なんか言った?」

 

「幸せそうな顔をしてたから何考えていたのかなって」

 

「人間観察してなんの得があるの。さては化かすつもり?」

 

「わたしは狐だからね。化かすのが仕事だよ」

 

「えー!狐さん嘘ついてるの!?」

 

「それはちょっと違うよ。嘘の方が重く化かしは軽いと思ってくれればいいね」

 

首を傾げ狐の話を聞く。

勘の良さはまだ追いついていない。

 

「とりあえずわたしは勇者側だから安心して」

 

「大百足を倒したのも貴方なの?」

 

「倒したというより飛ばしたかな。今の状態でオリジナルを倒すのは無理だから」

 

「オリジナル…つまり平安時代からアレを持ってきたってこと?」

 

コクンと力強く頷く。

 

「残りの召喚回数は」

 

「分からない。彼女の力は未知数。天の神を越えることは無くてもそれに近い力はあるはず」

 

私の力の源は神樹の御霊の欠片を利用した無限の力。

それと同じ経緯もしくは同等の物を持つなら厄介だ。

 

「ムムッ…もう時間かぁ〜。警戒しないのは仕方ないとはいえ早いなぁ」

 

私の顔を細い目で見る。

結界の話が出た以上ここにも貼られているに違いない。

園子からスルリと抜け出すと駆け足で距離を離す。

 

「今の話は皆に話していいよ。それが活路になるなら嬉しいけどね」

 

白い身体が闇に溶けていく。

もしかしたら実際に溶けたのかもしれない。

唖然と立っていた私たちは到着した勇者たちをぼーっと迎えた。




あけましておめでとうございます!
1ヶ月近く消えてましたけど元気です!
今年もよろしくお願いします!

新キャラとして精霊のコンを追加しました。
仮面ライダーの冬映画観られた方はん?と思われますが、この小説は公開前に描ききってました。
(ホント)
ネタバレになりますがあっちは「コンスタンティン」のコンですので。
それにここまで読んでくれた方ならミスリードにすらなっていないかもですけど…
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