ホールから拉致られるように連れ出され戻された私たちは様々な人からコテンパンに叱られた。
園子も叱られる所だったのを古来から伝わる土下座で何とか回避した。
私の罪を軽くしたかったのか分からないけど共犯だったと嘘をついてまで庇ってくれた。
その想いは嬉しいけど逆効果。
罪を負う覚悟が少しぶれてしまった。
「♪〜」
「本当に反省してるの?」
廊下で正座しながら鼻歌を歌っているのを夏凛に見られた。
「もちろん。大反省してるよ」
「その余裕な姿勢園子にそっくりね。満足そうな顔して罰受けてて」
「!」
その言葉を聞き、目を見開き夏凛の顔を見る。
この世界ではほぼ初対面なのにそこを当てるなんて。
「な、何よ!そんな見ないでよ!!」
「あぁ。ごめんごめん。似てるって言われて驚いてね」
にこやかに笑い場を和ませるも私の心は動揺していた。
「…ねぇ。そっちの私について聞きたいんだけど」
「いいけどなんで?」
「単なる興味よ。異なる世界なら違う道を進んだと思って」
小さなズレも人によっては大きな変化と成りうる。
「とは言っても変わらないよ。勇者部の一番槍で素のスペックも高くツンツンしてる自称完成型勇者」
「待ちなさい。後半どうゆう意味よ」
「事実でしょ?」
「ツンツンしてないし自称じゃなーい!!」
ツンツンに関してはもろ答え出してんじゃん。
自称も大赦から言われたとかじゃなくて単なるモチベーション維持。
だから間違えたことは一言足りとも言っていない。
「まぁ…強いのを認めているなら許してあげる」
「そりゃどうも。今度1戦やる?」
「時間があれば手合わせして欲しいわね」
鼻を少し鳴らし自信たっぷりに答える。
私の手の内知らないんじゃ初見で勝てないんだよね。
夏凛には申し訳ないけどそっちが挑戦者だから。
「いつまで正座するの?」
「んー…多分1時間?」
「多分って何よ…」
「いやぁ。若葉さんが来るまでって言われたから。これで忘れられたら逆にやり返すよ」
「そうはならないと思うけど。まっ、せいぜい頑張りなさい」
「はーい」
数時間後。
「くっ…不覚…!」
「ほらほら〜。いい目覚めになるでしょ〜?」
ツンツンと煽るように若葉さんの頭を突く。
部室の真ん中に正座させ腰に手を当てニヤニヤする。
「美穂…まさか…」
「そう。そのまさかだよ!何と罰の時間を過ぎているのにも関わらず放置したんだ!!」
夏凛も別れ帰りを待つ犬のように正座をしていたが一向に来なかった。
さすがに痺れ気を切らし這い蹲る勢いで若葉さんの部屋に向かうとひなたさんの太ももに心地よさそうに寝ていた。
罪人とはいえ不当な罰は許されない。
鬼を心に宿し逆に叱り倒した。
「美穂さん。もう許してください…私が忘れたのが悪いんです」
「それも一理ある。けど、裁判官が判決の時間に遅刻するのは論外だよね?」
「それはまぁ…」
「ひなたさんが負けてます…」
「高木さん。目怖すぎよ…」
「あ"?」
「いえ…何でもないわ…です…」
「千景の口調が壊れてるぞ…」
若葉さんは悔しそうな顔をしているけど辛そうには見えない。
そういえば鍛錬に瞑想を取り入れていると聞く。
慣れが生じているなら罰とは言えない。
であるなら…
「ふー…」
「んひゃあ!?」
見た目とは真反対の可愛らしい声が響く。
「へぇー。そこは乃木家共通なんだ〜」
「園子ッ!!」
「「何も教えてないよ!!」」
「ハモるってことは嘘ついて無い証拠ですね」
「判断基準そこなんですか…」
話していたら若葉さんの顔がゆでダコのように赤くなる。
園子ですらリンゴ位でここまで赤くならないのに。
「ほんとに弱点なんだ」
「何処で知った…!」
「知る必要も無い。これから内側から破壊される貴方には」
「ッ…!ここは…逃げる!!」
瞬間的に飛び起き部室から逃げた。
「逃げんなゴラァ!!」
「くだらない事で体力使うなー!!」
風先輩のぐうの音も出ない正論を振り切り若葉さんを追う。
静かな学校に騒がしい足音が響き渡る。
誰かにぶつかることは無いのは寂しいけど懐かしさを感じた。
何処かに忘れてきた淡い記憶を思い出すかのように。
最終的に体力が底を尽き廊下にぶっ倒れた。
汗が滝のように流れ心臓の鼓動が耳を叩くように聞こえる。
背中を何度か捉えたけど手が届くことは無かった。
さすが歴代でも最強と言われるだけある。
体力も上位とは完璧じゃんか。
「クソッ…この流れ普通捕まるパターンでしょうに…」
壁に寄りかかりながら立ち上がる。
こんな時に襲撃されたら愚の骨頂…
「美穂ーー!!」
珠子がドタドタと廊下を走って来た。
「はぁ…はぁ…どうしたの…?」
「敵が現れたんだよ!」
一級フラグ建築士襲名していいかな?
とはいえなってしまったのは仕方ない。
「場所は…?」
「確か、大橋だったはず!」
私たちがコンと接触して半日で襲撃。
これを偶然と言うのが難しい。
「皆は」
「既に向かった。若葉も息切れしてたけど無理やり行ったぞ」
「了解。私達も行こう」
「おう!」
私たちは大橋に向かわず慰霊碑のあるホールへ到着した。
大橋にもバーテックスはいたもののコンを狙った襲撃と考えた。
「重装も混ざってる。厄介だね」
私は直ぐに近づかず戦況を見ることにした。
珠子もつられてなのか横に立ち見ていた。
「なぁ。美穂はあの小さいのは飛ばせないんだろ?」
黒木が前に言っていた通り飛ばそうとしても全く動かない。
マウントしてた状態でも遠隔はビームを撃てたのにそれすらも封じられた。
「そうだね。でも盾としてなら使い道はある」
地面に刺せば胸あたりまで届く大きな盾。
先で突けばパイルバンカーにもなる。
近接が強くなったと思えばプラスだ。
「何かタマと雀の特権奪われた気がするぞ」
「珠子は大きくしたりブーメランみたいに飛ばせるからまだ大丈夫。雀は…うん」
「そんなこと言えば絶対逃げるな」
生きる事そのものは大切だ。
時には逃げるのもありだけど雀の常に言っている。
執拗いと思ったけど無意識なのかパリィ決めてるのを見てその気持ちが失せた。
ハイになると強くなるタイプ?
「そろそろ行こうか。あんまサボるとまた叱られちゃう」
「ここでタマが活躍すればいい!」
「なら援護はするよ」
ライフルモードに変え珠子の突撃に合わせる。
広範囲を攻撃可能ではあるが漏れが多くなるのが欠点。
そこを補えば大抵の雑魚は倒せる。
本来杏の場所だけど今は許して欲しいなぁ。
それに珠子の癖は分かってるし。
「それじゃ行くよ!」
「行くぞーー!!」
この心強い返答。懐かしい。
頼もしさもあるこの声に何度救われたか。
ならば今度は私が救う番だ。
戦闘を終え、周りを見渡す。
ホールに目立った傷は無く建っていた。
ただ倒された人型が消えることなく横たわっている。
悪質というか趣味悪いというか。
私でもギリしないような事するねぇ。
「ウゲッ。血が付いてる。もう最悪…」
「これ大丈夫なんだよな?毒液とか飲むと胃が焼けるとか無いよな?」
珠子も血を浴びておりかなり嫌そうだった。
「それなら私は今頃瀕死だろうねー」
「う…そうだよな。今すぐシャワー浴びたいくらいだ」
「それは同感。じゃ帰ろっか」
皆と学校で合流した途端、全員の顔が真っ青になり保健室に担ぎ込まれてしまった。
杏は驚きのあまり気を失い、事情を知った若葉さんから後で来いとキツく言われた。
今回私関係無くない!?
本編では久しぶりの日常回。
ずっと戦闘描写ばかりだと飽きてしまうので。
今後も入れられたらと思いたいですね。