火の玉が収束していく。
一撃で沈めるつもりだ。
それはそれで好都合、タイミングさえ外さなければ行ける。
放たれるギリギリまで接近するはずが想定よりも早く放たれた。
「やるしかない…!」
弾に向かって飛ぶ。
接触して爆破するが時差があると思うしかない。
弾をギリギリで避け、斧の面で横から当てる。
バットを振る様に力を込める。
「そぉれ!」
軌道を変え、バーテックスに返した。
当然直撃し、爆発した。
全体が傾いた事から怯んだと思う。
その隙に、飛びつき上に向かっていく。
目指すは弾の発射口。
「壊れろぉ!!」
何度も斧を振り下ろす。
傷一つもつかないが一点集中だ。
妙に背中が明るくなったと思い振り向いたら火の玉が浮いていた。
「マジかぁ…」
そういえば拡散の方は周りに出てたんだっけ。
これは詰みかな。
と思っていたら突然爆発した。
「はぁぁぁぁ!!」
風先輩が大剣で発射口をたたきつける。
「遅いですって!」
「ピンチだった人が最初に言うセリフ?!でもありがとう!」
身体のあちこちに擦り傷が見えたけど大丈夫だろな。
人の事言えないけど。
「みんなを巻き込んどいてくたばる訳にはいかないでしょうが!」
「無理しないでくださ―――ッッ!!」
目の前が歪み息がしずらくなった。
これって水の中?実にマズイ…
人が息を止められる時間は大体30秒。
勇者システムは例外かは分からないけど脱出は早めにしないといけない。
泳ごうにも動きが重い。
風先輩も大剣を振るも効果はなさそう。
次第にバーテックスから水球が離れていく。
息が辛くなり、本能で口を開けてしまった。
空気を求める肺に水が入る。
ここが死に場所とは情けないなぁ…
急に目の前が白くなった。
この光景は何度も見たけど不思議と恐怖はない。
身体が軽くなり息がしやすくなると同時にむせる。
腕を掴まれているから落ちる事はなかった。
見てみると風先輩が掴んでくれていた。
それにしても服装が豪華というか、派手というか、神々しいというかとにかく凄い。
これが満開なのかな。
「アイツを止めてくる」
「ど…うぞ…」
むせて声がかすれて小さくなっているけど聞こえていると思う。
すると思いっきり上に投げられた。
回転してないから三半規管に負担がかからない。
その間に風先輩が拳をバーテックスにぶつけた。
轟音と共に今まで以上に倒れていく。
しかも宙に浮いていられている。
ホントのパワーアップじゃん。
で、私この状況でどうしよう…
風先輩は合体したバーテックスの対応に追われている。
となると、動けそうな人に頼るしかない。
「…友奈ぁぁぁぁぁぁ!!」
絶対に来てくれる名を叫び、身体を丸める。
落下が止まり、温かさを感じた。
そのままフワリと地面に降り立った。
「おおお…あ、ありがとう」
「ごめんね。私達がすぐ倒れちゃって」
「大丈夫。無事なのが1番だよ」
にしても、お姫様抱っこしながら見る友奈の顔イケてるなぁ…
そんなこと考えていたらゆっくり降ろしてくれた。
状況確認しようと端末を見ようとした時、神樹の方角が青く光った。
「東郷さん…!」
東郷さんも満開したのか…って何アレ、戦艦?
主砲6本とか殺意高過ぎでは…?
しかも、あの装甲の固い鯨を撃ち抜くなんて。
やはり火力。火力は全てを解決する。
「こちらで一体倒したわ。みんな大丈夫?」
私たちの前にフワリと降り立つ。
風先輩と同じく服装そのものに差はない。
「大丈夫だよ!それにしてもホントかっこいいなぁ〜」
「それは分かる。私も頼んで見ようかな」
「あの美穂さん…」
東郷さんが銀を抱えていた。
「ごめんなさい。私のために守ってくれたからこんな傷だらけに…」
お腹が上下しているから意識を失っているだけだろな。
盾で直撃は避けてもダメージがゼロって訳じゃない。
寧ろこれで済むのが奇跡。
「気にしないで、きっと自分の意思でやりたかった事だから。ここまでして守りたかったんだろね」
銀をその場に寝かした。
前線ではあるけどもし起きたら這いつくばってでも来そう。
突然アラームが鳴り見てみると1体神樹に接近していた。
「早すぎる!」
これまでのバーテックスと比べるとトップクラスのスピード。
東郷さんの正確な砲撃を綺麗に避け走っている。
このままだと…
今度は黄緑色の光が現れた。
樹ちゃんが満開をした。
後輩にさせるのは不甲斐ないけど仕方ない。
「これで、止まって!」
ワイヤーを大量に展開しバーテックスを拘束、巻き取りバラバラにした。
かなりエグいことするんだね…
「皆満開してるのね…」
夏凛と避けていた風先輩も合流した。
「避けるのお疲れ様です」
「ホントしつこいのよ!とにかく私が抑えるから皆は封印を──」
巨大バーテックスの方を見ると火の玉を次々と吐き出しながら大きな火球を作っていた。
先に風先輩が大剣を出し防ぎに行った。
「早く行って!」
私も盾だけだし火球に向け飛んだ。
「使うしかない…」
身体の中心に力を込めるイメージを持つ。
端末が光り服装が変わる。
黒をメインにした西洋風の鎧。
これが私の切り札。
一時的に勇者と同等の出力と火力を出せる。
スカートみたいになっているのが嫌だけど仕様らしい。
手にはオレンジ、黄色、白に輝く盾。
一時的に飛行能力も付与され防御力も上がるから耐えられるはず。
「熱ッ!さっきのより熱いですね!」
盾と鎧に守られてるとはいえ熱いことは変わらない。
「その格好…まさか満開?!」
「いえ!擬似満開と思ってください…って話してる暇あるんですか!」
「そうね、かなりキツい…!」
お互い能力値は上がっているけど抑えるのが限界。
それに私は無理やりだから…
「あっ…」
パリンと何かが割れる音がした。
物理的なのもでは無く身体の内側から。
「ああああああ!!!」
全身に痛みがはしる。
視界が眩み盾を握る手が緩む。
横から風先輩が何か言ってるけどハッキリ聞こえない。
擬似満開と言ったけど力の源は神樹。
私の適正値を生かし、勇者であると誤認させる事で通常の勇者と同出力になる。
ただ、適正値だけだから長期戦や出力を上げまくってると身体負荷が高まり最悪廃人に。
その前兆がコレ。
「ゴホッ…」
血を吐き出し更におされる。
意識を離せと本能が叫んでるが無視。
みんなが頑張っているのに私だけ逃げるのは嫌だ。
それに今の私には…
「守る為にここにいるんだよ!!」
その時火球が突如爆発し、私は幹に叩きつけられたのと同時に目の前が電源の切れたテレビのように一瞬で暗くなった。
──────
アタシはゆっくりと目を開いた。
確か、東郷さんといて1回守ってその後吹き飛ばされて…
「あっ!」
勢いよく身体を起こしたら目の前には超巨大な三角形。
「なんだこれ…」
あまりの大きさにただ、驚くしかない。
下には東郷さん含め勇者部のみんながいた。
なんか服装違うけど…
「あれ、美穂は…?」
何処かで戦ってるのかな。
でも、アイツ以外で戦闘してる雰囲気はない。
右腕が痛いけど気にしていられない。
フラフラとあてもなく樹海の中を歩く。
何となくだけどそこに居るかもって思っちゃう。
美穂の様に身体能力も上げてもらえば良かった。
スマホを起動させても盾は砕け散って使えない。
戦えないのがこれ程無力だったとはね。
ふと周りを見ると幹が激しく壊れていた。
バーテックスによる攻撃にしては焦げた後もない。
まるで、空から降ってきたような…
アタシはその先を見てしまった。
見ちゃいけないと分かっていても目が離せなかった。
クレーターの様にへこんだところに美穂が倒れていた。
血溜まりの上に…
早歩きで近づく。
綺麗に整っていた髪を乱し、あちこちから血が流れていた。
心臓が1度跳ね上がる。
「嫌だ…」
頭に浮かんだ言葉を何度も消す。
それを認めたら本当になりそうだったから。
膝をつき美穂の身体を抱き寄せた。
服が血を染み込んだけどそんなのはどうでもいい。
「ダメだって…」
身体の震えが止まらない。
嫌だ嫌だ嫌だ。
夜ちらし寿司作るって言ってくれたのに。
七夕だから願い事書かないとって言ってたのに。
こんなのって…
「うぁぁ…」
ボロボロと涙がこぼれ、美穂の顔に当たる。
それでも起きない。
「あぁ…あああああ!!!」
花びらが舞う樹海でアタシはただ泣き叫んだ。
本編だと希望ある勝利って感じでしたけどまぁシリアスにしてみました。
主人公くらいボロボロでもいいんじゃない?
切り札の服はFateのセイバーの感じです。
オルタじゃなくアホ毛ありの方。
別ゲーの話になりますが南米で宇宙人とのタイマンを済ましてきましたが余韻が凄いので投稿遅れるかもしれないです。
辛ぇけど最高だったわ…