生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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迷いと疑い

樹海化が解けた先は学校の屋上。

アタシが美穂を抱いて泣いているのを見て三好さんが大赦に連絡し、病院に運んでくれた。

全員検査入院をすることになりアタシも含まれた。

東郷さんを庇った時に右腕を脱臼しただけ。

数日安静にして動けるようになった。

 

「…」

 

アタシの目の前で寝ている美穂の身体はあちこちにチューブが刺さっていて、所々包帯が巻かれていた。

命に別状は無いもののいつ目覚めるか分からないと言われた。

1歩間違えていたら死んでいたらしい。

 

「入るぞ」

 

ノックの後ドアが開き黒花さんが来た。

手には花を持っている。

スーツ姿は変わらないけど黒の帽子を深々と被っていた。

 

「いつからそうしてるんだ?」

 

「…もう覚えてない」

 

「そっか」

 

花を花瓶に入れ、綺麗に見えるよう整えている。

 

「これでよしと…ほい、お前ずっと食ってないだろ」

 

渡されたのはゼリー飲料。

ここ最近食べ物が喉を通らなかった。

やっぱり見抜かれちゃうか。

 

「ありがとうございます…」

 

封を開けゆっくり飲む。

 

「負い目感じてるのか?」

 

帽子を脱ぎ椅子を持ってきて横に座ってきた。

アタシはただ黙って飲む。

 

「確かにお前は無力だった。1度守ったらしいが後はただのびていただけ」

図星すぎる。

 

「だけどなそれを言ったら他の勇者だって同じだった。動ける者が何とかしなきゃ敵は進行を続けていた。そうだろ?」

 

「でも…」

 

手に力が入る。

 

「それでも美穂をこうしたのはアタシのせいだ!もっと戦えていたらここまで酷くなかった!」

 

目に涙をため大声をあげる。

 

「戦うだけがお前の仕事か?」

 

「…!!」

 

「美穂はずっと1人だった。オレが会っても素っ気なくてな。けど、銀が来てから気持ちが柔らかくなって…ホント変わったよ」

 

黒花さんは少し笑みを浮かべていた。

 

「自分の弱さを認めるのはいい。けどな、それで追い込むのは違う。自分にできることをする、出来ないことを無理にするな。時には割り切ることも大切だからな」

 

黒花さんはそう言い、立ち上がる。

 

「なせば大抵なんとかなるだっけ?それはあくまで精神論だ、結果に繋がる保証はない。そうじゃないのかい?勇者部さん」

 

少しの沈黙の後扉が開いた。

そこには勇者部のみんながいた。

急いで涙を拭き取る。

 

「盗み聞きとはな。活動の一環にストーカーが入ってるのかい?」

 

「あんた高木がそうなるの知ってたの」

 

風さんが怒りに近い声で問い詰める。

 

「もちろん。このシステムはオレが作ったからな」

 

「ならなんで止めないのよ!」

 

「止める?何を言っている。これは彼女の意思だ。オレは使い方も代償も全て教えた。ましてや前日にアドバイスもしたくらいだ」

 

確か練習の時に言ってた。

美穂は守りたいものを守るために命を燃やしたんだ。

 

「お前たちだって満開使ったんだろ?怪我のレベルが違うだけでコレと変わらないろうに全く…」

 

呆れながら黒い帽子を被り部屋を出ようとする。

 

「じゃオレは失礼するよ。銀、辛くなったら電話してこい。話は聞いてやるよ」

 

勇者部の皆を分け扉に手をかけた。

そこで動きが止まった。

 

「真実を隠すか話す、どっちが幸福なのかね」

 

ボヤくように言い部屋を出ていった。

 

「何なのよアイツ…」

 

三好さんが嫌そうな顔してるのも無理ない。

 

「みんなごめん…」

 

あまりの空気の重さでつい謝ってしまった。

 

「大丈夫だよ。辛いのはみんな同じだからね」

 

結城さんの優しい声掛けで少し落ち着いたかも。

きっと黒花さんも…

──────

病院横の駐車場に停めた車に乗る。

夏場、しかも炎天下に置いたからサウナ状態。

 

「暑…」

 

急いでエンジンをかけ、冷房をつける。

エンジンが回るまで熱風しか出ない。

 

「…クソッ!」

 

ハンドルの縁を殴る。

暑すぎるのもあるがそれよりも、

 

「あのバカ…!」

 

あんな姿見せられて平然としてられるか。

年長としてなだめてる側だけど辛い時は辛い。

しかも、アレを使うのは2回目。

調整したとはいえデメリットが想定よりも大きすぎる。

 

「神様には筒抜け…いや、踊らされているのか?」

 

そう考えると実に馬鹿らしい。

ようやく冷房が効き始めたから、ブレーキを解除し駐車場を出た。

 

──────

 

「え?」

 

目が覚めたら私は、椅子に座っていた。

ついさっきまで樹海で切り札使ってボロボロになった挙句吹っ飛ばされたのに何これ?

アンティークっぽい白い椅子と机。

反対側にも椅子が置いてある。

周りは虚無、暗いだけ。

スポットライトを浴びているかのようにココだけ明るい。

夢だってここまでの殺風景は無いって。

 

「起きたのか。気分はどうだ?」

 

前から声が聞こえ目をこらす。

少し暗闇に慣れてきたが一向に出てこない。

その時、椅子が動いた。

 

「うええええ?!」

 

思わず変な声をあげて立ってしまった。

 

「ん?まさか私が見えないのか?」

 

「え、はい…?」

 

「参ったな…そこまで薄れているとは…」

 

姿は見えないけど、悩んでいるのが分かる。

なんか他愛ないのに一言一言に重みがあるというか背筋が伸びるというか…

 

「そうだな…君に危害を与えることはしない。安心してくれ」

 

「なるほど…?」

 

椅子に座り直す。

気持ち的に整理がつかないけど一旦落ち着かないと。

 

「で、あなたがここに呼んだのですか?」

 

「呼んだのでは無く波長が合ったと言うべきか」

 

「波長?」

 

「縁といえば分かりやすいか。今はギリギリ繋がっているから声だけは聞こえるらしい」

 

まるでラジオみたいだ。

 

「らしいってそちらも分からないんですか…」

 

「面目ない…」

 

めっちゃ申し訳なさそう…

 

「いえいえ!こういうのは初めてだったので!」

 

「そうか、私も同じだったから良かった」

 

声が上がり安心したっぽい。

情報が少ない分何となくでしか分からない。

 

「あっ!みんなは!」

 

1番大切なことを忘れていた。

確か火球に突入して爆発したんだっけ。

 

「心配ない。怪我はしているが無事だ」

 

「そっか…良かったぁ…」

 

嬉しさで涙腺が緩んでしまった。

そっか、私守れたんだ。

なら後悔は無いかな。

 

「私はいつ天国に…あいや、地獄でしたよね」

 

きっとこの人は閻魔大王だろうな。

それにしても女性で人当たりいいなんて知らなかった。

 

「何を言っている?君は死んでないぞ」

 

「へ?ならココは?」

 

「精神世界と言った方がイメージしやすいだろう」

 

「え…えええええ?!」

 

夢の次は精神世界?!

二重人格じゃないかって疑うよこれ!

 

「何が何だか分からないよ…」

 

机に肘をついて頭を抱えた。

さすがにパンクしそうだよ…

 

「すまない。君に押し付けてしまって」

 

「押しつけだなんてそんな事ないですよ」

 

ふと眠気が押し寄せてきた。

 

「あれ…」

 

何度も目を擦っても頭にモヤがかかる。

 

「時間か、ここでの出来事は忘れる。だから…」

 

机に突っ伏すように倒れ瞼がゆっくりおりた。

 

「自分の選択を悔やむな」

 

真っ暗闇の中、響き渡った。

 

 

「ん…」

 

ゆっくり目を開けると白い天井が見えた。

なんかよく分からない出来事があったんだけど思い出せない。

てか、身体動かないし。

まぁあんな派手に血吹き出したら納得だけど…

左にある時計を見ると夕方。

いつまで寝てたんだか。

ふと右側が妙に暖かい。

顔だけ横に向けると、銀が私に寄りかかるように寝ていた。

 

「痛ッ…」

 

起こそうと思い腕を少し動かしたけど痛い。

参ったな…ナースコール押すにも押せないし。

左手は何とか動く。

 

「あー…」

 

喉も痛みはない、となると。

 

「起きてくれませんかねぇ?」

 

ひたすら声掛け。

このままでいたいけど状況知りたいんでね。

 

「あのー?いつまで寝てるんですかー?寝坊助に育てたことは1度もないですけど〜?」

 

モゾりと身体が動いた。

 

「おっ」

 

ゆっくりと顔をあげ私を見ていた。

少しやつれ目にくまが浮かんでいた。

 

「おはようございます?んー…ただいま?」

 

ハイライトのなかった目に活力が戻ってき始めている。

同時に、溢れ出す涙。

 

「バカぁぁぁぁ!!」

 

思いっきりのハグ。

けどね…

 

「いったぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

痛すぎるんだよ…

 

大声過ぎたのか看護師の方が飛び込んできた。

その後、軽く検査を受け問題なしと言われた。

 

「ごめん!嬉しくてつい!」

 

銀が謝ってきた。

まぁ1週間も経ってたらそらねぇ…

 

「大丈夫。私こそ無理してごめん」

 

「黒花さんには連絡しておいたから来ると思う」

 

「ありがとう。それにしても、切り札ヤバいね。もう一度黒花さんと擦り合わせとかないとね」

 

ここまでボロボロになるのは知らなかった。

次使ったら…いやいや、考えるのは早計。

 

「入院長引きそうだね…銀はどうするの?」

 

「黒花さんのお世話になろっかな。優しくしてくれるからね」

 

「それはいい判断だね。私も頑張ってリハビリしないとね!」

 

左手でガッツポーズをする。

その時、ノックもせず扉が開く。

 

「おうおうおう。何だよ、元気そうじゃねぇか」

 

「あの、ノックの概念忘れたんですか?」

 

「いやいや、銀が『美穂が大変なことに!』とか言うからすっ飛んできただけだが?」

 

「なら息切れしてないのは?」

 

「お前死ななさそうだったから普通に歩いてきた」

 

この人ったら…

けど信頼されてるって思えば嬉しいかな。

 

「そうだ、お前に見せたいものがある」

 

手が使えないのを見越してなのかタブレットを顔に突きつけてきた。

 

「これは?」

 

「各勇者の怪我具合だ。美穂から見てどう思う」

 

風先輩は左目の視力低下、樹ちゃんは声帯損傷、友奈は味覚障害、東郷さんは左耳の聴覚低下、夏凛はなし。

 

「は????」

 

いやいやいや…百歩譲って風先輩の目は分かる。

他の3人は痛める理由が思いつかない。

バーテックスからの攻撃と言えば納得するけど私が覚えている限り封印の儀をしていた筈。

あまりにピンポイント過ぎる。

 

「どうゆうこと…?」

 

「やはりな。オレも検査結果を見て首傾げてな」

 

銀にタブレットを渡した。

 

「ここで1つ、()()()()()()()()()()

 

「──まさか!!」

 

「満開のデメリット。強大な力を手にするかわりに払う代償」

 

夏凛が来た時に言ってた説明には無かった。

意図的に隠してるか、知らないか。

まぁ後者だろうけど。

 

「黒花さんは…」

 

「知るわけない。この結果見て結論を出しただけだ」

 

「それじゃ、みんなこのまま…」

 

銀は震える声で言った。

 

「まだ決まったわけじゃない。きっと道はある」

 

チラリと黒花さんを見たら少し目が揺らいでいた。

 

「調査お願いできますか」

 

「無論だ。お前はリハビリに務めろ、あと銀はこっちで預かる」

 

「よろしくお願いします。銀、家の事頼むよ」

 

「…任せろって!料理鍛えとく!」

 

2人と少し話した後、病室を出ていった。

久しぶりの1人なのに何処か心細さを感じる。

 

「騒がしいのに慣れちゃったか…」

 

乾いた笑いが零れる。

慣れってのはここまで毒とはね。

今は自分に出来ることをしなくちゃ。

 

「よし…!頑張ろー!!」

 

夜になっていたので小声で意気込んだ。




意外とかけました。
またオリ展開入りますが齟齬が無いよう頑張ります。
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