生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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恐怖は気づかないもの

探検とは言え、知り合いの家の中。

さすがに遭難はしないとして食べ物は持ってかない。

 

「まさかライトの位置も知らないなんて…災害起こった時どうするのさ」

 

「反省してます…」

 

「まぁまぁ。そんなに大きくないんだしついでに探そうよ」

 

燐がペンライトを持っていたからそれを代用する。

やっぱキャンパーの備え方は違うなぁ…

 

「で、何処から行く?」

 

今は2階にある蛍の部屋にいる。

そこへ行くだけでも襖のついた部屋が多くある。

 

「隣は空き部屋って聞いてるから1階から行こうかな」

 

「了解。じゃ行きましょか」

 

 

階段を降り、長めの廊下に出る。

蛍には申し訳ないけどここの廊下は苦手。

壁側にはお面と絵が飾られている。

それがなんというか気味悪い。

 

「これ嫌なんだよねぇ…」

 

「うん…何か見られてる感じがして」

 

「やっぱり?蛍はどうなの?」

 

「私は特に無いかな。でも誰かいる感じはするね」

 

「「え??」」

 

唐突のホラー発言に驚いてしまった。

 

「それホント?」

 

「ホントだよ。でも害は無いから」

 

「いやいや、そういう問題じゃないよ…」

 

霊感があるんだね。

まぁ害加えないなら良いのかな。

 

「ここ開けるね。と言っても私も始めて入るけど…」

 

「今まで何してきたのさ…」

 

蛍が襖を開けた。

キチンと整理された和室。

埃一つ無いから掃除も行き届いている。

 

「ちょっと失礼し――」

 

私は適当に近場の棚を開ける。

そこには何も無かった。

 

「はい?」

 

他の棚も皆で開けるが全て空。

 

「あ、こっちの襖は?」

 

「隣の部屋に繋がってるよ。確か新年の時とかに繋げて宴会するの」

 

口に手を当て私は考える。

宴会を行うって事は椅子や座布団があるはずなのに影の形もない。

他の部屋を見たけど棚は無なかった。

それに、机も見当たらない。

何処かに置いてるのかそれとも用済みで捨てたのか。

この家、何処か変だ。

 

「他の部屋にあるのかな?」

 

「他回ってみよっか。美穂?」

 

「ん?あ、あぁ…そうだね」

 

自分の世界に入ってしまった。

黒花さんが前に私の顔みて『怖いぞ、お前』と言ってたっけ。

考えを頭の片隅に置き他の部屋を見ていく。

 

 

「ここで最後なんだよね?」

 

「そうなんだけど…」

 

「変だよ…なんで部屋が同じなの…」

 

開ける前に燐がついに言ってしまった。

1階を片っ端から開けいったんだけど、構造がほぼ同じで棚は空という状態。

もう浴衣探しとか言ってる場合じゃない。

お互い表情が暗くなり最後の部屋に着く頃、燐は少し怯えている。

 

「燐…」

 

「蛍ちゃんは怖くないの!自分の家が変なのに!」

 

「私だって怖いよ!」

 

蛍が聞いたことも無いくらい大きな声で反論する。

 

「怖いの…私の育った家なのに知らない事も…だから…」

 

ポロポロと涙を零している。

 

「燐。蛍。」

私は2人を強く抱きしめた。

 

「大丈夫、2人とも私が守るよ。だから傍にいて欲しい」

 

正直私も怖い。

バーテックスとの戦いと違う心に響く恐怖。

正体が分からないこそ折れない勇気が強くいる。

 

「だから見てて。それだけでいいからね」

 

2人が動けないと判断し私が襖を開けようとした…

 

「待って!!」

 

燐が声を上げた。

 

「1人で行かせないよ…!」

 

「もしなんかあったら私嫌だよ…!」

 

「2人共…」

 

怖いのは変わらないのに立ち上がってくれてる。

2人を親友って思えてよかった。

 

「ありがとう、3人で開けよ」

 

襖の取っ手を3人で持つ。

 

「行くよ…せーのっ!」

 

意を決して襖を開けた。

 

構造上窓が無いのは知っているからペンライトを即座につけた。

最初に目に入ったのは日本人形。

ガラスケースに入っているから反射して少しまぶしい。

横にずらすとまた日本人形。

その横も、その横も全部日本人形。

暗いのにそこに置いてある物が容易に分かるのが怖い。

 

「ハァハァハァ…!」

 

息が上がり、部屋の空気が身体に巻き付く。

本能が逃げろ、閉めろと言っているが動けない。

いやでも光景が頭に沁み込んでいく。

ピトリと手に感触が当たる。

2人とも違う、第三者の手。

私も白いとは思うけど更に白い。

でも、冷えている訳ではなく暖かい…

その瞬間、襖がしまった。

かなりの勢いだったから後ろに吹っ飛ばされる。

頭を少し打って痛い。

 

「痛っ…たぁ…」

 

後頭部を擦り周りを見る。

2人も吹っ飛ばされていた。

私は再び襖に手を伸ばし開けた。

正直すんなり開くとは思わない。

だが、何事もなく動いた。

人形は無くなっていた。

恐る恐る入り、物色する。

今までの部屋と同じになっていた。

 

「ハァァァーーー…」

 

SAN値がゴリゴリ削られていたから力が抜け、寝転がった。

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫~…」

 

親指を上げ反応する。

何が大丈夫なのかは分からないけど。

 

「暖かいお茶飲む?」

 

「是非お願いします」

 

「変に疲れたよ…」

 

3人でキッチンに向かう。

窓から夕陽が差し込んでいた。

夏場だし日も伸びてるなぁ…

時計を見ると5時過ぎ。

 

「今日家に泊まってく…?」

 

「こんな状況で1人にするのはね…」

 

まぁそうなるよね。

 

「なら同居人連れてきていい?荷物もついでに持ってくるからさ」

 

まだ会わしていないから都合がいい。

 

「いいけど遅くならない?」

 

「最悪タクシーで来るよ。必要経費って事でね」

 

ここからバスで終点近くまで行ければ着く距離。

本数が少ないのが問題だけど仕方ない。

 

「じゃぁ行ってくる!」

 

私は蛍の家を出て、銀に連絡をした。

元気そうに了承してくれたのが嬉しかった。

それにしても

 

「逢魔が時か…」

 

魔物や妖怪に遭遇する怪しい時間。

私たちが見たのは何だったんだろう。

いつか正体が分かるのか、それとも共存するのか。

今はまだ分からない。

 

───

 

オレは暗い廊下を大赦の重役と歩いていた。

理由はある人物と面会するため。

2年前、この四国を守った人神。

厳重に管理…いや祀られている。

習わしとして気持ち悪いお面をつけていく。

左半分しかないけど。

 

「これより神域です。節操のないように」

 

扉の前で説明を受ける。

ホント鼻につく言い方だな。

 

「御託はいい。さっさと通せ」

 

ため息をつかれたが、扉を開けて貰う。

何度か来た事はあるがここ程人の悪意が見えるのは無い。

紙垂が見えたから軽くお辞儀をしとく。

本来は膝ついてなんか言うんだろうがそこまではしない。

中央にライトアップされた場所へ向かう。

 

「よっ」

 

「よっすー、くろっちー」

 

全身包帯まみれで感情は左目でしか判断できないが意思疎通は可能。

 

「てか、夕方じゃないと面会不可とかどうゆう事だ?」

 

「私は暇なんだけどね。あんまり接触して欲しくないんだろうね」

 

「ふん。人として扱わんとは、実にくだらんな」

 

周りに跪く神官を睨みつける。

オレも異端児扱いだからなんも言われないが内心嫌そうだ。

 

「今日は雑談しに来た訳じゃないよね」

 

「あぁ、聞きたい事があってな」

 

「散華だよね」

 

「…話が早くて助かる。さすがお嬢だな」

 

お嬢とオレの思考は違うが何となく言いたいことは分かる。

オレは椅子に座り、向かい合う様にした。

 

「満開システムの初導入は2年前。その時から変化していないのか」

 

「多分ね。聞いても何も答えてくれないから」

 

「使用者の声を聞いて反映するのが運営の仕事だろうが」

 

「運営が運営だからね。仕方ないよ」

 

ホント周りが良くないと育つもんも育たん。

子供と野菜は一緒だと思う。

 

「で、何回した?」

 

「20回」

 

あまりの桁数に黙ってしまった。

確率ガチャだが20回もしたら人としての機能はほとんど持ってかれる。

 

「道理でいい部屋を用意して貰える訳だ。てっきり血筋かと思った」

 

「それもあるだろうね。特別視されるのは慣れてるから」

 

「あいつらには言うのか?」

 

「言わないよ。言っても信じないだろうしね」

 

ピクリと眉が動いたのに気付いた。

 

「左様ですか。じゃこれは内密にと」

 

「そうしてくれるとありがたいね。私からもいいかな?」

 

お嬢からの質問とは珍しい。

本で気になる点で聞かれる場面はあるが真面目な会話で出てくるとは。

 

「どうぞ」

 

「世界が滅ぶとしたら、大勢と少数どっちを優先する?」

 

天秤問題か。

実に悩ましいが

 

「大勢だろな」

 

「それが大切な人でも?」

 

「犠牲無き勝利はない。時には友を捨てる覚悟も必要だ」

 

「そっか…合理的だね」

 

どこか悲しそうな声だった。

彼女が欲する答えは分かっている。

しかし、個人のエゴを他人に押し付けるのはダメだ。

 

「黒花千早。時間だ」

 

刑務所の面会のように終了を伝えられた。

 

「分かった。またなお嬢」

 

「その呼び方変えないの?名前教えたのになぁ」

 

「オレの前に立って来たら呼んでやる。それまでお預けだ」

 

手を振りながら部屋を出ていった。

彼女は見ているのか、勇者達がどう動くのかを。

スタンスは同じだが彼女は絶対動く。

その時、どうするのかオレにも分からない。

ただ待つのみだ。




ほぼオリキャラのみのパートです。
戦闘もいいですが日常も入れないと。
こういう展開が少し続きます。
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