生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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夏祭り

お祭り当日。

蛍の家で浴衣が見つからなかったからレンタルした。

というか持ってる人いる?

 

「東郷さんの貸してくれた浴衣すっごく可愛いね!」

 

「サイズが合っててくれて良かった」

 

居たわぁ…

さすが過ぎて言葉も出てこない。

 

「それにしてもみんな気合入れてるね」

 

皆、勇者服の色に合わせている。

髪留めも豪華にしている。

 

「そらそうよ!ここでいい男に声かけて貰って…!」

 

「夢見過ぎよ。というか私まで…」

 

「そう言ってノリノリだったくせに~」

 

「言わない約束だったでしょ!」

 

『お姉ちゃん弄りすぎだよ』

 

後遺症が残っていても根は変わらない。

黒花さんから返答は無い。

かなり難航してるのか、まだ言えないのか。

勇者部の皆も直ると信じているから余計ね。

 

「そろそろ時間なので配置つきますね。皆がんばろー」

 

「それ私の役割…」

 

「イチャコラしてるのが悪いんですよ」

 

「「誰がイチャコラよ!!」」

 

 

与えらえた仕事は人の整理。

屋台が参道の両端にあるため参拝の客と交錯し混乱する。

警備の方が大方やってくれるが捌ききれない。

そこで要所要所で声かけやプラカードを掲げ、事故が起こらないようにする。

あともう一つは

 

「来ると思ったよ…」

 

目の前にいるのは銀、燐、蛍と謎の少年。

 

「ここについてすぐだよね」

 

「そうだね。入口で泣いててとりあえず美穂の所にって銀が言って連れて来たの」

 

「という事なんです」

 

「いや、想定してたけどさぁ…早いんだよ!」

 

あの恐怖体験した日、銀を仕事が終わるまで預かっていて欲しいと頼んでおいた。

どうせトラブル招くと予想して受け持ち箇所を伝えていたが、まさか配置について数分で来るとは…

本部の場所を伝えとくべきだったかな。

とりあえず本部に連れてかないといけないけど人の流れが止まらない。

 

「うーん…これじゃすぐに連れていけないね」

 

かといってここに留まらせる訳にはいかない。

 

「この子の名前聞いた?」

 

「一応聞いといたよ」

 

銀からの答えを聞き電話をかける。

 

「迷子1号を発見、対応求めますー」

 

『こちら東郷、連れてこれます?』

 

この人混みに車椅子は酷なので本部で連絡係をしている。

 

「動けそうにないので情報言うからそれを先に放送していい?」

 

『分かりました。では、お願いします』

 

スマホを銀に渡した。

その間、人を捌いたり案内をする。

 

「連絡終わったよ」

 

「サンキュー。ある程度人の流れも空いたし行けるよ」

 

「分かったー。じゃ行ってくる!」

 

「逆迷子にはならないでね。終わったらあそこで待ってるよ」

 

4人と別れ仕事に戻った。

 

その後、何事もなく仕事を終えた。

蛍から教わった祠の近くに座った。

ここも神社の敷地だけど穴場らしい。

それにメインイベントもよく見えるとか。

 

「人酔いしたかな…」

 

小さなお祭りとはいえかなりの人だった。

チョコバナナを食べながら夜風に当たっている。

甘いのを仕事後に食べるのは最高。

 

「あっ。いたいた!」

 

「遅くなりましたー」

 

石段を登ってくる3人。

 

「お疲れ様~いやぁ大変だったね」

 

「そのセリフそっくり返すよ」

 

「まぁね…」

 

「うん…」

 

「えへへ…」

 

洗礼を受けた顔だね。

悪意無いのだから仕方ない。

 

「さっき言い忘れたけど、浴衣似合ってるよ」

 

やっぱり夏祭りと言えば浴衣だからね。

 

「あの後お手伝いさんに聞いて場所は教えてもらったんだけどね…」

 

そこで止めるってことは情報は無かったのかな。

まぁあれは夢だったで済ましてるし深堀はしない。

 

「着付けまでしてもらちゃってね。ホント感謝しかないよ〜」

 

「そんな事ないよ。帯び結ぶの慣れてるから」

「サラッと言えるのカッコイイなぁ!」

 

仲良くなってて良かった。

でも、傷増やしちゃうのかな…

そうしたら申し訳ないな。

 

「ところで、時間ギリギリだったね。何かあったの?」

 

トラブルに合うとはいえそこまで連発はしない。

屋台で色々遊んでたのかな。

 

「えーっと、手出してくれる?」

 

驚きながらも手を開いて差し出す。

 

「はい、どうぞっ」

 

渡されたのは白いネコのストラップ。

マスコットっぽくデフォルメされていて何かユルい。

 

「お揃いの欲しいねって話してたら射的でたまたま見つけてね」

 

「3人で頑張って取ったんだよ」

 

「射的初めてだったから苦戦しちゃって。それでも、気合いで頑張ったの」

 

それぞれ色違いのストラップを出す。

燐は黄色、蛍は青、銀は赤。

 

「ありがとう、それしか言えないよ」

 

涙腺崩壊1歩手前だったから目線を逸らした。

暗いのが救いになったけど声が震えていた。

その時バンと音がなり周りが一瞬明るくなった。

 

「始まった…」

 

メインイベントである花火が上がった。

ここを指定したのは花火を綺麗に見る穴場スポット。

神社から少し離れるのがちょうどいい。

 

「綺麗…」

 

もはや言葉は不要。

ただ、この瞬間を噛み締めるだけ。

 

「…来年もまた来ようね」

 

「来年だけじゃないよ。ずっと、だよ」

 

「そうだね。こんな綺麗な花火忘れられないよ」

 

「また4人で見ないとね。そうと決まったらこの光景覚えとかないと!」

 

やっぱりダメだった。

ポロポロと涙が落ちてくる。

嗚咽は耐えたけど視界が霞む。

霞んだ世界でも花火は美しく咲いている。

 

夏休みも大詰め。

色々あったけど半分はベットで寝てたからそこまで充実したとは言えない。

ただ、最後までエンジョイはするけど。

 

「「暑ッ〜〜」」

 

今日は買い出しのためにイネスへ灼熱の中やってきた。

着いた途端気力失ってへたりこんでるけど。

 

「バスから降りて数分歩くだけなのにこんなって…」

 

「絶対来る時間間違えてるって…」

 

「そうは言ってもね…」

 

まぁバーゲンがある訳じゃないから無理して来る必要は無いんだけどね。

ただ、ココにしかないからやむ無く出てきた。

 

「休んでる?私はそろそろ行こうかな」

 

「いや行くって。どうせ荷物持って欲しいんでしょ」

 

「そりゃねぇ…」

 

重い腰をあげ買い物を始める。

 

 

「これで終わりっと。お疲れ様」

 

お互い両手に袋を持っている。

 

「お疲れ様〜。いやぁまさか服を買うとは思わなかった」

 

「服のレパートリー少ないのに気づいてね」

 

皆ファッションセンス高くて焦った。

元々買おうとは思ってたけど何かと忙しくて。

 

「何か甘い物食べて帰ろっか。えーっと、何かあるかな」

 

目の前に団子屋があったから買って帰ろう。

そう思い向かおうとしたら銀に手を掴まれた。

 

「ん?何か買い忘れた?」

 

「…ジェラート…」

 

「はい?」

 

「ジェラートが…いい」

 

 

「ほんとに合ったよ…」

 

導かれるように着いて行ったら存在していた。

てっきりアイスクリームと間違えたのかと思ったらそうでは無かった。

 

「いつ見つけたの?」

 

「元々あるのは知ってたからさ。いやぁここに来たら食べないと損だしね」

 

あれぇ、私の気のせいかな?

まるで来たことあるような発言。

 

「では先生。何味を食べればよろしいのでしょうか?」

 

気を取り直し、その波に乗ってみる。

 

「それはもちろん〜」

 

「もちろん〜?」

 

「しょうゆ豆!」

 

「……へ?」

 

メニュー表を指しドヤ顔をキメる。

オレンジとかの変化球かと思いきやまさかの渋いコース。

 

「しょうゆ豆…?ほぉ?」

 

「物は試し!ささ!」

 

背中を押されレジに連れていかれた。

言われたからには頼むしかない。

一応予備でバニラも注文しておいた。

 

「いただきます」

 

パクリと1口食べてみる。

銀はニコニコした顔でこちらを見ている。

 

「ーーー…ほほぉ?」

 

「おおー?」

 

さらに顔が近づく。

 

「美味しい…」

 

「ホント!?」

 

「ホントのホント。美味しいじゃん」

 

甘いのとしょっぱいのが混ざってちょうどいい味だしてる。

まさにベストマッチ。

 

「良かったぁ〜。アタシの味覚も悪くは無いってことだね」

 

「誰かに勧めたの?」

 

「2人居たのは思い出したんだけどね。でも、あんま反応薄くて」

 

にこやかに話し、胸の辺りを触った。

 

「その2人のこと思うと懐かしい気持ちになるんだよね」

 

「そっか、きっと大切な人なんだろうね」

 

「うん。早く思い出さないと!」

 

「その事なんだけどさ…」

 

私は遂に1歩踏み出してみようと決意した。

 

「今日の夜話しておきたいことがあって…」

 

その時、周りの雑音が消えた。

 

「そんな…もう終わったんじゃ!」

 

スマホから久しぶりにアラート音が鳴り響く。

建物の中でも花びらが巻い樹海の波に飲み込まれた。




オリキャラと既存キャラの掛け合いって難しいですよね…
次回は戦闘少し挟んで真相解明タイムです。

そういえば来週ニコ生で1期配信するらしいですね。
楽しみに待ちますかね…
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