生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

19 / 126
注意:出血描写があります。


友との出会い

正直二度と見たくなかった樹海。

皆何かを失ってまで終わらせたのにもう呼ばれるなんて。

 

「クソッ…」

 

拳を力強く握る。

今度は私がやらないと。

即座に変身をする。

防御面は少し強化が入ったらしいけど、武器が剣のみ。

前回の戦いで盾を行使し過ぎて使い物にならなくなった。

おかけで機動力は上がったけどね。

 

「相手はあのスピードタイプか」

 

勇者部の皆も呼ばれているのは把握している。

 

「銀。今回は大丈夫そうだから待ってて」

 

「楽そうなの?」

 

「骨は折れそうだけどね」

 

「なら待ってるよ。あっ物理的に折れないでね!?」

 

少し笑い飛び立った。

それにしても、片方潰してもストックあるとか厄介。

 

「あれ。前より遅い?」

 

肌感覚だけどバーテックスのスピードが遅い。

機動力向上がいい感じに効いている。

これなら追いつけるね。

バーテックスの前に立ち行く手を阻む。

今は時間を稼ぐしかない。

 

「止まらんかい!!」

 

助走をつけ、組み付いた。

やや押し負けて後ろに下がりつつあるけどとどめられない訳じゃない。

けどそこまでやるつもりは無かった。

 

「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

上から友奈と夏凛が高速で降ってきた。

 

「ちょいちょいちょい!」

 

ギリギリで避けたが衝撃波に巻き込まれる。

 

「大丈夫!?」

 

「痛ってて…大丈夫ー」

 

「止め方がむちゃくちゃなのよ!」

 

そこは反省してる。

でも前回の戦いだと武装相性悪いから仕方ないじゃん!

 

「ナイスよ2人とも!というか高木!端末返ってくるまで部活でないってどういう事よ!」

 

夏祭りの後アプリの不調を理由に部活をサボっていた。

正確には銀と思い出作りたかったが本音だけど。

 

「それは後で説明するのでさっさと封印してくださいって!」

 

「あぁもう!きっちり話してもらうからね!」

 

終わったらイネスにスポーンするから荷物置いたら学校行かないとね。

その間にも立ち上がろうとするバーテックスを狙撃して1歩も動かさない東郷さん。

これ集団リンチなのでは?

私はやや後方から儀式を見ている。

すぐに御霊が出てきた、大量に。

広範囲攻撃が無いと無理。

しかも謎の譲り合いが起こってる。

満開の影響懸念してるのかな。

気づいたら友奈が特撮顔負けのド派手な蹴りをして一気に片付けていた。

 

「みんなお疲れ様〜。じゃこれにて失礼」

 

「逃げる気満々じゃない!」

 

「まだデートの途中なんだって!終わったら言うから!」

 

「デッ、デート!いつの間に異性と付き合ってたなんて…」

 

「誤解生みました。同性ですのでご安心を」

 

「みんな無事でよかった〜。学校始まったら忙しくなりそうだね」

 

「そうね。風先輩が大量に依頼持って来るかもしれませんからね」

 

「ウッ…肝に銘じときます…」

 

わちゃわちゃしながら樹海化が溶けていった。

 

案の定、賑わっているイネスに返って来た。

 

「さてと、サクッと終わったし食べて帰ろ──」

椅子には荷物しか無かった。

 

あれ、スポーンズレた?

とりあえず電話してみる。

遠くなければ迎えに行かないと。

 

『電源が入っていないか、電波の届かないところにいます───』

 

背中を嫌な汗がつたっている。

やばいやばいやばい…

最悪の予想が頭を過ぎるけどさすがに無いと思い振り切る。

その時、端末が鳴った。

凄まじい早さで画面を見たら風先輩から。

 

「もしもし!」

 

『友奈と東郷そっちいない!?』

 

周りを見てもそれらしき人物はいない。

 

「いないですよ!それよりも銀います!?」

 

『いないわよ!まさか3人消えるなんて…』

 

途中で電話を切ってしまった。

今度は黒花さんに電話する。

少し間が空いたけど出てくれた。

 

『今忙しいんだが…』

 

「そんな事どうでもいい!銀が居なくなった!」

 

切羽詰まってて敬語すら言わないし、周りに人がいるのもお構いなく声を荒げる。

 

『待て待て、いつだ?』

 

「今!樹海が解けて気づいたらいないの!」

 

『…なるほど。恐らく命に関わる事じゃない、出てくる場所が異なるだけだ』

 

冷静に答えてるけどまるで何か知っているよう。

 

「電波も来ない所なのに?」

 

『一時的なものだから直に来ると思う、今は家に帰れ』

 

ここで問い詰めても周りに迷惑かけるだけ。

大きく深呼吸をして怒りを無理やり抑える。

 

「分かりました…」

 

私は電話を切り荷物をまとめ席を離れた。

もうジェラートを食べる余裕なんて無い。

______________________

 

気づけば見知らぬところにいた。

 

「あれ、ここ何処だ?」

 

前には夕日に照らされる祠があってその後ろにはへし曲がった橋がある。

 

「戻った…あら?」

 

「ここいつもの所じゃないよね…って銀ちゃん!」

 

「友奈さんに東郷さん!1人じゃなくて良かった〜」

 

知らない所に1人置いてかれてたら絶対動けないって。

 

「端末に電波入ってない…2人のは?」

 

結果は同じく圏外。

参ったなぁ…美穂に連絡しないと心配するだろうし。

 

「ずっと、樹海で呼んでいたよ〜…わっしー、ミノさん…会いたかった〜」

 

聞き覚えのあるような声がし、辺りを見渡すと開けた場所に病院のベットが置かれていた。

 

「えっ…ええ?」

 

いや、場違い過ぎない?

外にベットってだけでも違和感あるのに寝ている子が紫の浴衣以外包帯で隠れているのが逆に不気味に感じる。

 

「ようやく呼び出しに成功したよ…」

 

嬉しいのか声が少し震えていた。

 

「えーっと東郷さんと銀ちゃんの知り合い?」

 

「いいえ、初対面だわ」

 

「うーん、どこかで会ったような…」

 

「…私は乃木園子っていうんだよ~。一応、あなたの先輩になるのかな」

 

名前を聞いた時、頭がズキリと痛む。

 

「うっ…」

 

頭蓋骨をかち割られるような痛さ。

アタシは膝から崩れ落ちるように倒れた。

 

「大丈夫!?」

 

友奈さんが心配してくれたけど気にする暇がない。

 

「乃木…園子…!」

 

欠けたピースが組み立てられていく。

 

『とつげきぃぃぃーー!』

 

『私ラブレター貰ったんだ。嬉しいなぁ〜』

 

『勇者は!気合いと!根性ー!』

 

何で忘れていたんだ。

忘れちゃいけないのにどうして…

 

「園子…?」

 

「あぁ…ミノさん…!」

 

改めてみる親友の姿はあまりにも変わっていた。

 

「なんでそんな姿に…まさかバーテックス!」

 

「ううん。間接的にはそうだけど原因は満開だよ」

 

「え!?」

 

あの時、吹っ飛ばされて記憶ないけど後で黒花さんの報告書で見た名前。

 

「神の力を振るった代償に身体のどこかが不自由になる。それが散華」

 

「なんで、そんな…」

 

「代償だなんて…」

 

園子は独り言のように語り続ける。

 

「その代わり、勇者は決して死ぬことはないんだよ~。私は、戦い続けて…今みたいになっちゃったけど」

 

「どうして…どうして無茶するんだよ!」

 

あまりの理不尽に思わず大声で問いただしてしまった。

 

「あの時のミノさんと同じだよ。ボロボロになっても守りたかったからね」

 

もう反論すらできなかった。

怒りを無理やり抑え、俯いた。

 

「どうして私たちなの…?」

 

「いつの時代も神に見いだされるのは無垢な少女、いわば生贄だね」

 

「酷すぎる…」

 

「なぁ園子。アタシ達の時は追い出すのが限界だったのに今は倒せてる。これで終わりなんじゃないのか?」

 

アタシが居た時は満開もバリアも無かったから対抗手段が少なかった。

けど、今までの戦いを見ても満開を使わなくても勝てる状況はある。

しかも12体だけならそもそも倒しきっている。

 

「そうだといいね…」

 

まるですべてを知っているかのような言い方。

 

「それで、失った部分はずっとこのままなんですか?みんなは治らないんですか?」

 

友奈さんが希望にすがる様に聞いている。

 

「治りたいよね。私も治りたい。歩いて友達を抱きしめたい…」

 

突然足音が周囲から聞こえ、見てみると気味の悪い仮面をつけた人に囲まれていた。

 

「その服…大赦の人か!」

 

ジワリジワリと近づいてくるから2人の前に立ちふさがった。

 

「彼女達を傷つけたら許さないよ」

 

今まで聞いたことのないくらい他者を突き放す声を園子が言った。

背筋がゾクリと震え上がる。

のんびりとしていた園子から想像もつかない。

 

「私が呼んだお客様なんだよ。あれだけ反対したんだから自力で呼んじゃったよ」

 

大赦の人が一斉に頭を下げた。

しかも息ぴったりだから怖い。

 

「悲しませてごめんね。このシステムを隠すのはひとつの思いやりではあるんだ~。でも私は…」

 

言葉が詰まる。

 

「そういうの…分かってたら、友達と…もっともっと…だから、伝えておきたくて…」

 

先ほどと異なり、震わせながら涙を零していた。

結局守れてないじゃん…ただ苦しめただけ。

アタシは血が滲むぐらい拳を握りしめていた。

その時、東郷さんが車椅子を園子の隣につけ、涙を拭きとってあげた。

 

「あ…そのリボン、似合ってるね…」

 

「これは、とても大切な物。それだけは覚えていて…ごめんなさい、私、記憶が…」

 

つい数分前まで記憶が無かったけどこの再開はあまりにも残酷だ。

そしてアタシ自身も…

 

「ミノさん…」

 

「あぁ。分かってるよ」

 

2人に近づき頭を撫でる。

 

「ごめん。今はこれくらいしかできない…」

 

「そんなことないよ。やっぱり落ち着くよ~」

 

「私もなんか安心する…」

 

しばらく交代しながら撫でて、落ち着いたと思うから離れた。

 

「あの!方法は…、このシステムを変える方法はないんですか!」

 

「神樹様の力が使えるのはごく一部。その中で更に一部の人だけが勇者になれるの」

 

その場の空気が更に重くなっていく。

逃げ道すらない現実が襲ってくる。

 

「はいはい、通りますよって。おいそこ、邪魔だっつーの」

 

そんな重苦しい空気を壊す声が聞こえた。

少し安堵してしまった。

 

「やっぱりここにいたか、お嬢様」

 

「流石だね、くろっち」

 

人をかき分け現れたのは黒花さん。

 

「通報を受けてすっ飛んで来たんだが、どうやら先を越されたようだ」

 

「あなた、病院の…」

 

「その通り。部員が心配してましたぞ」

 

なんか口調変だけど。

似合わなさ過ぎて違和感しか感じない。

 

「よくここが分かったね」

 

「祠の数は限られている。後は今回のメンツから目星つけて来ただけさ。それにしても…」

 

黒花さんは後ろの大橋を見上げていた。

 

「ここを選ぶとはな。ホントお前らしい…」

 

「…みんなを送ってあげて。大赦はあなたの存在をあやふやにしないから大丈夫だよ」

 

最後の言葉はきっと東郷さんに言っただろうな。

けど、あの顔じゃ聞こえてなさそう。

 

「心得た。じゃ行きましょう」

 

「待って黒花さん」

 

アタシは黒花さんを引き留めた。

 

「もう少し、園子と話してていいですか?」

 

「お前、まさか…!」

 

目を丸くして驚いていた。

ホント気付くのが早い。

腕時計と周りの神官を見ていた。

 

「分かった、3分だけな。お嬢もそれで構わんだろ?」

 

「大丈夫だよ。私も2人っきりになりたかったから」

 

「近くに停めているから時間になったら帰ってこい」

 

そう言って黒花さんは2人を連れ離れていった。

 

「わがまま言っちゃったかなぁ…」

 

「これくらいなんとも思ってないよ。むしろ想定内かもね〜」

 

「マジか。あの人何者なんだよ」

 

出会ってまだ半月くらいだけど不思議な人なんだよな。

「ミノさん…」

 

「ん?」

 

「本物なんだよね?」

 

1番答えにくい質問が飛んできた。

 

「あー…まぁ、アタシとしては正真正銘三ノ輪銀だけどさぁ…」

 

記憶が正しければアタシは確実に死んでいる。

逆にあの状況で生きてる方が凄いけど。

 

「生き返ったって実感が無いって言うか、夢から覚めたって感じなのかな」

 

「夢かぁ~…天国と地獄どっち行ったの?」

 

「いやいや、そういう問題じゃないでしょ」

 

久しぶりにこのやり取りやった気がする。

 

「まさか園子で思い出すとは思わなかったわ。東郷…須美はダメだったけど…」

 

「神樹様に供物として持ってかれちゃったからね」

 

そう思うと美穂の方がマシに思えてきた。

神様の力使ってるかは分からないけど一応治る怪我だから。

どっちも危険だけど。

 

「…変わったよな。2人とも」

 

「ミノさんが変わらないんだよ」

 

「仕方ないじゃんー。あっ、アタシの家族元気にしてる?」

 

1番聞きたかった質問。

黒花さんと美穂から絶対行くなって釘刺されてる。

死んだ娘が帰ってきたら泡吹いて倒れちゃうわ。

 

「元気そうだよ。ホントは会いに行きたいんだけどね」

 

身体を自由に動かせない上、外出すらさせて貰えないんじゃね。

 

「そっか、もう時間かな」

 

「早いね~。また会える?」

 

「そらそうだよ。お呼びとあればすっ飛んで会いにいくって!」

 

「うん…最後に一つだけ言わせて」

 

「どうした?」

 

「くろっち…黒花と高木には気を付けてね」

 

「え?」

 

その2人が出てくるのは驚き。

しかも、黒花さんとはいい感じの関係だったのに。

 

「あの2人は隠し事をしてるよ。どこまで知っているのか分からないけどミノさんの情報は確実に持っているよ」

 

前に書類を渡してくれた事言ってるのかな。

でもそれ以外あるのか?

 

「分かったよ。またね」

 

まだ物足りないけど帰らないと周りの目が怖くなる。

園子の元を離れ、車に向かった。

外には黒花さんが車に寄りかかって待っていた。

 

「ん。おかえり」

 

「待たせちゃった?」

 

「そんなでもない。暗くなるから早く帰るぞ」

 

アタシを助手席に座らせ、車を出した。

 

車の中はとてつもなく静かだった。

特に後ろの2人にとっては衝撃が強かったんだろな。

窓の縁に肘をつき外を眺める。

景色を頭に入れるというか後ろを見ない様にするため。

 

「よし!」

 

「ゆ、友奈ちゃん…?」

 

物音がしたからサイドミラー越しに見てみる。

結城さんが須美を抱きしめていた。

 

「勇者部5箇条。悩んだら相談だよ」

 

「っ!…友奈ちゃん…」

 

すすり泣く声が車に響く。

 

「私、ずっと一緒にいるから。何とかする方法を見つけるから…!」

 

アタシは本来ここにいちゃいけない。

今の須美に立てるのは結城さんだけだ。

 

2人の家が隣という事もあり送るのは簡単に終わった。

 

「お疲れ様」

 

運転しながら黒花さんが話しかけてきた。

 

「お互い様ですって」

 

「まぁな。きっかけは園子か?」

 

「そうですね。けど、名前聞いて思い出すなんて」

 

「名前だけ?死に際とかじゃなくて?」

 

「はい。不思議ですよね」

 

「そうだな…」

 

黒花さんは前を向きながらも眉間に皺を寄せていた。

何か思うことがあるのかな?

 

「園子と何話した?」

 

「満開の後遺症です。2人っきりの時は軽く雑談しました」

 

「なるほどな。遂に言ったのか」

 

「黒花さんは知ってたんですか?」

 

美穂が起きた時に仮説として言っていたけど。

 

「あぁ。知ってたさ」

 

「いつですか?」

 

「つい最近だけどな。言い訳に聞こえるが言おうとしてた 」

 

タイミングが悪かったのか。

でも、さっきの園子の言葉が刺さる。

 

「着いたぞ」

 

気づけば見慣れたマンションに着いていた。

 

「あ、ありがとうございました」

 

「…部屋先行ってろ。停めたらオレも行く」

 

「分かりました」

 

今日の事話すんだろな。

まぁ記憶戻ったーなんてすぐに言えないしね。

鞄から鍵を出しドアを開ける。

部屋に電気はついてなく暗かった。

熱風と共に冷房とは違う空気が肌に触れる。

床には買い物袋が雑に置かれていた。

勇者をしていた頃に培った勘が危険と知らせている。

それでもアタシは黙って靴を脱ぎリビングへ向かう。

恐る恐る覗いてみるとそこには美穂が座り込んでいた。

 

「美穂…?」

 

声掛けしても反応は無い。

猫背にして俯いているから髪が垂れて表情が読めないけど、左腕を眺めている風だった。

右手に何か持って──

 

「えっ…」

 

そこにはカッターが握られていて、血が滴っていた。

 

「美穂!!」

 

カッターを叩き落とし、肩を掴んだ。

 

「バカ!何やって…」

 

「ぁ…銀…?」

 

その顔は買い物の時と真逆の顔だった。

目は充血していて生気を感じない。

 

「どうしたんだよ…!」

 

左腕が真っ赤に染まっている。

 

「うぁ…あぁ…あああああ!!」

 

アタシを突き飛ばし発狂しながら頭を掻きむしり始めた。

 

「美穂!落ち着けって!」

 

「あああああッッッ!!」

 

腕を抑え止めようとしても力が強過ぎる。

後ろのドアが勢いよく開いた。

 

「チッ!やっぱりか!」

 

「黒花さん!」

 

まさかこれを予期して一緒に行くって言ったのか!

 

「抑えてろ!すぐ戻る!」

 

「むちゃくちゃな!」

 

普通逆だろ!

まぁ頼まれたからにはやりますけど!

黒花さんは美穂の部屋に入っていき何かを探していた。

 

「確かここに…あった!」

 

戻ってきた黒花さんの手には1本の注射器が握られていた。

 

「首を出させろ」

 

「えっ、何を…」

 

「いいから!このままだと死ぬぞ!」

 

死ぬと言われ美穂の腕を必死に抑える。

 

「手荒で悪いが許せよ」

 

黒花さんは注射器を首元に突き刺した。

一瞬痛がる反応をしたけどお構いなく何かを入れる。

注射器を放し黒花さんに首元を捕まれ距離を置かれた。

 

「あああ…!うっ…あ…」

 

美穂は首元を抑えていたが崩れ落ちるように倒れた。

 

「これで一旦落ち着いたな」

 

「今のは…」

 

「精神安定剤。メンタル壊れた時の奥の手ってやつだ」

 

使用した注射器を袋に入れポケットにしまった。

 

「何で、買い物の時は元気だったのに…」

 

「失うって思ったからだろな。一旦処置をするから荷物は任せる」

 

美穂を抱えベットに向かった。

アタシはその場にへたりこんだまま動けなかった。

______________________

 

美穂のリストカットを止血し包帯を巻いた。

かなり広範囲だったから全体的にやることにはなったが。

 

「全く、芯の部分はあの頃と変わらないんだな」

 

美穂と初めて会った日を思い出す。

他者を拒否し自分の殻に閉じこもり、開けるのはオレ。

 

「はぁ、今はゆっくり寝なよ」

 

顔にかかっている髪を払い部屋を出る。

リビングにはよろよろと動く銀がいた。

 

「びっくりしたか?」

 

「まぁ…」

 

あれはトラウマになりかねないからな。

一緒に行くべきかと迷ったが、失血か脱水起こされても困るから判断としては正しかったか。

 

「紅茶入れるからそこに座ってろ」

 

やかんにお湯を入れ、棚からパックの紅茶を出す。

専用のマグカップを置き湧くのを待つ。

その間もお互い沈黙で聞こえるのはエアコンの稼働音とお湯の湧く音のみ。

やかんがなる前に火を止めお湯を注ぐ。

 

「どうぞ」

 

銀の前に紅茶を置く。

 

「ありがとうございます…」

 

向かい合うように座り1口飲む。

冷たいものを出すのがいいだろうけど肝が冷えまくったから温かいのにした。

 

「…アタシのせいですか」

 

ポツリと呟くように銀が口を開いた。

 

「勝手に居なくなって心配したからこうなったんですよね…」

 

「そうだな、まぁ今回はお嬢の気まぐれだから仕方ないが」

 

「アタシは何をすれば良かったですか…」

 

塞ぎ込んでいる上、責任感じすぎている。

なら知ってもらうしかない。

 

「…昔話をしよう」

 

オレと美穂の出会いを。




雑ですがここで記憶を全部復活!
まぁ2人記憶無いより思い出せた方がまだマシかなと思い強硬しました。
そして主人公がまさかのリスカ。
病みモードするならやっちゃえとこれまた勢い。
次回は少し過去を掘り下げます。

念のため言って置きますが薫製はリスカどころか病んでいないのでご安心を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。