生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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壊れた人形

今から4年前。

相変わらず大赦の元で色んな仕事を請け負っていた。

次期勇者候補の育成方針だか、脱落した適正値の高い奴らの活用方法だったりと様々。

そんな日々を過ごしていたオレに彼女が現れた。

確か大赦が経営している病院に行けって命令受けて向かった筈。

金色の髪、透き通るほどの白い肌、飲み込まれる位の青い目。

個室のガラス越しに面会したんだが人形みたいだった。

 

「で、誰だコイツ?」

 

担当している男に聞いた。

 

「高木美穂、年齢は10歳。道端で倒れているのを発見。適正値の高さからこちらに転院。」

 

「なるほどな。利用価値があるとみなしたのかアイツらは」

 

次期勇者も小学生と聞いているから増援にでも使う気か。

 

「いえ。彼女は神樹様に認められていません」

 

「は?そりゃどういう意味だ」

 

「神託です。彼女は勇者に値しないと」

 

「値しない?」

 

適正値が高いなら手放すはずなのに。

 

「こちらとしても理由は分かりません。ただ、言われてしまったからにはそうするしか」

 

神様っていうのは自分の感想、意見だけ言って終わりの一方通行。

聞くだけで不敬罪、直談判なんて死刑レベルだ。

 

「そうですかい。親はこのこと知ってるのか?」

 

「2人とも亡くなってます。母親は自殺、父親は殺害として見ているようです」

 

「…待て、両親死んだの最近じゃねぇか」

 

「はい。この数ヶ月の間の出来事です」

 

不幸とかのレベルじゃねぇぞ。

どう考えても誰かが介入してるだろ。

 

「身元引受人は?」

 

「現状不明です。最悪孤児扱いになるかと」

 

「ふむ。オレは何をすればいい」

 

「我々からの依頼はこの子の保護と管理です」

 

「保護は分かるが管理はいけ好かないな」

 

「彼女の適正値は言ってしまえば異常です。我々が手をつけられる領域ではありません」

 

道理でオレが呼ばれる訳だ。

現状勇者に対抗できる力を有するのはオレしかいない。

副作用に目を瞑れば奥の手だってある。

 

「なら、処遇はオレに一任って事だろ」

 

「その通りです。これが引き渡し書です」

 

人を物扱いするやり方だけど仕方ない。

 

「ここにサインだろ…ほれ」

 

「確認しました。では、私はこれで」

 

男は書類をまとめ出ていった。

 

「さてと…」

 

オレは病室へ入っていく。

美穂の目は生気を失っていて視点が動いていなかった。

 

「初めまして、オレ…私は黒花千早。あなたの名前聞いてもいい?」

 

「…」

 

あぁ、だめだこれ。完全に心壊れているわ。

反応無いし、視線動かないし。

こりゃ骨が折れそうだ。

 

「なぁ。一体何があったんだ?」

 

いつもの口調に戻すも無言。

 

「…身体触るぞ」

 

無言は肯定として服を捲る。

診断以外に何か見落としがあるのかと思い見てみる。

特に目立った所はなさそう。

ならここからはゆっくりやるしかない。

オレは仕事の合間をぬって美穂の元に行った。

配慮なのか仕事量がやや少ない気がした。

美穂の隣で本読んだり、簡単な仕事をこなしたり、お菓子を食べた。

殺風景な部屋に動かない少女とやること無さすぎてつまらない。

それでもオレは通い続けた。

今も思えば仕事とか関係なく絶対元に戻すって維持はってたんだろな。

 

その生活を始めて数か月程経った。

 

「来たぞー」

 

「…」

 

「今日の昼はハンバーガーにしたわ。いやぁ新作が出るって聞いて試し食いしてな」

 

一方的だけど話していればなんかしら答えるだろうって根端。

 

「味は中々だったな。ソースが辛くて苦手な人にはきついがちょうどいいくらいだ…っと、美穂に渡す物があった」

 

オレは美穂の右手に十字架のネックレスを置いた。

 

「母親の形見ってやつだ。家を捜索していた時に発見されて、鑑識に持ってかれていたのがようやく返却されたのさ」

 

事件そのものは警察が先で美穂の適性値を危惧した大赦が割り込んだおかげで混乱していた。

ロクな事しないなあそこ。

 

「遅くなってごめんな」

 

オレは鞄かパソコンを取り出し仕事の続きをする。

いつも通りキーボードを打つ音が響く。

しばらくして肩が痛くなって背伸びをした。

カランと音が鳴り床をみたらネックレスが落ちていた。

 

「あーあ、落ちてるって…」

 

拾ってあげて首から下げてあげようと美穂に近づいた。

 

「首にかけるぞ」

 

「……さ…」

 

「ん?」

 

今、なんか言ったのか?

 

「どうした?」

 

口元に耳を近づけた。

同時に美穂が左手をゆっくり上げ、まるで何かを掴むよう空間をかいていた。

 

「おかあさん…」

 

「っ!!」

 

思わず飛びのいてしまった。

美穂はずっと母親の幻影を追いかけているのか。

恐らく光も届かない暗闇を永遠と。

 

「お前…!」

 

オレは強く抱きしめた。

 

「もういい!もういいんだよ!そのままだと過去に食われちまうぞ!」

 

ピタリと左手が止まる。

 

「お前に何があったかは分からない。けどな、現実から逃げていい理由になる訳ないだろ!」

 

美穂が震え始めたが気にしない。

 

「進め。例え行き止まりの世界だとしても進むんだ」

 

「うぁぁ…ぁぁぁ」

 

ネックレスを再び右手にのせた。

今度はオレの手ごと力込めて握ってきた。

この時、美穂の目に色がついたような気がした。

 

 

 

一息つけそうだから紅茶をすする。

 

「まぁそれを看護師に見られてクソ恥ずかしかったけどな」

 

「凄いですね…」

 

銀も飲むのを忘れ聞き入っていた。

 

「さて、昔話もここまでだ。容体は安定しているから傍にいてやれば大丈夫だろう」

 

オレは荷物をまとめ帰宅の準備をした。

 

「おっと、注射器は出しっぱなしでいい。安定したら自分でしまうだろうからな」

 

「本当にありがとうございました」

 

「礼なんて言われる筋合いはないさ。ただ、わがままではあるが…」

 

これはオレの数少ない本音。

言うべきか迷うがこのタイミングでしか言えない。

 

「美穂を、頼む」

 

「黒花さん…」

 

オレはそう言い残し部屋を出た。

 

車に戻りドアを強く閉める。

 

「はぁぁぁぁーーー」

 

顔を手で覆い深くため息をつく。

今日もハードだった。

にしても久しぶりにあの姿見たな。

前は確か起動実験の時にやらかしたかのはず。

そのおかげで大赦に目つけられたんだよな。

とりあえず今日は疲れたし銭湯行くとしますか。

オレはアクセルを踏み駐車場を出た。




オリキャラ出しといて深堀り無しはヤバいんでこのタイミングで過去に少し触れました。
病みキャラって奥深いですよね…
次は半々構成です。
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