私は暗闇の中に1人いた。
床はコンクリートで冷たかった。
動こうとしても身体が上手く行かない。
ガチャガチャ音が鳴ってるから両手両足を縛られているんだろな。
拉致されたのかな?いや、あの時は確か…
「うーん…思い出せない」
けど、メタい推測だけど夢なんだろうなぁ~。
「早く終わらないかな…」
こうも変な夢ばかりだと慣れちゃうし飽きちゃうよね。
早く終わって欲しいなぁ…
『こいつが例の娘か?』
いきなりいかつい男性の声が聞こえた。
反響してるから何処から言っているのか分からない。
こんな声聞いた事ないんだけど誰なんだろ。
『そう。僕たちの切り札』
もう1人別の男性の声がした。
こっちは静かな雰囲気。
「あのー誰かいます〜?」
夢だから呑気に話しかけてみた。
『しかし、こんなガキに世界を救う力があるとは思えんが』
『子犬ほど噛みつかれると怖いのを知らないのかい?』
完全無視。
これはこれで辛いんだけど。
『まぁいい。既にやったんだろ?』
『もちろん。神の意向としてね』
一体何を話しているんだろう?
神?切り札?
うーん…分からない!
『で、コレは何だ?』
『見せしめだよ。君にも知って欲しくてね』
姿は見えないけど絶対私のことだ。
「ちょっと待ってよ!私がなにをしたの!」
聞こえてない訳が無い。
口に枷つけられていないから。
突然視界が白くなる。
「うっ…!」
目を瞑りゆっくり開く。
何処からかライトが当てられたみたい。
『さぁ…アレは君の、世界の敵だよ。敵はどうするんだっけ?』
カチャリと金属音がし、足音が近づいてくる。
男性の足音じゃない、女性…?
それにしても軽い。
「話を聞いて!私は関係ないの!」
返ってくるのは無言の圧。
夢だとしても緊張感は過去一。
だってこれ完全に…
私の周りが薄暗くなり、頭に冷たい何かが当たる。
「あっ…」
顔を恐る恐る上げる。
そこに居たのは──
『
私の目の前が再び暗転する。
「ハッ!!」
目を覚ますと白い天井があった。
目印のバツ印もある。
「夢、だったよね…」
起きようと身体を起こそうとしたら右側が暖かい。
しかも動けない。
「ん…?」
横を見てみると銀の寝顔があった。
寝顔…?
「んんんん!?」
驚いて振りほどくように起きた。
「痛っ…!」
左腕が痛んだのと同時に銀をベットから落としてしまった。
「あぇ…何で床に…?」
「ご、ごごごめん!大丈夫!?」
左腕を庇いながら近寄る。
「大丈夫。もしかして寝相悪かった?」
「いや、それは無いんだけど…」
左腕を捲ってみる。
そこには包帯が巻かれていて少し赤くなっていた。
机を見ると奥に閉まったはずの注射箱が置かれていた。
「あ…これって…」
昨日の事をハッキリと思い出した。
銀が連れさらわれたと勝手に思ってて、家帰ってきたら不安になってやっちゃったんだ。
「血滲んでるね。包帯変えるよ」
「大丈夫!これくらい自分でやるって!」
見られているとは思うけどあんま見て欲しくない。
「ダメだ。ちゃんと言うこと聞きなって」
「…はーい」
腕を前に出し、ゆっくりと包帯を取っていく。
横に切った後が何ヶ所もある。
自分でも思うけどかなりやったねコレ。
消毒液をガーゼに染み込ませ傷口に当てる。
「痛む?」
「さすがにね…っ!」
浅めの切り傷だけど染みるんだよね。
「よし、後は」
丁寧に新しい包帯を巻いていく。
「巻くの上手いね。何処かで習った?」
「昔怪我した時の見よう見まねだよ。だからこれが初めて」
「ほんとぉ?」
「ホントだって!」
余りの必死ぶりに思わず笑ってしまった。
銀も釣られて笑ってくれた。
「昨日暴れた後寝かしたから風呂もご飯も食べてないからな」
「道理で臭いしお腹減ってる訳。包帯巻いちゃったしタオルで身拭くだけにする」
「はいよ。ご飯作っとくから」
銀が居なくても黒花さんが代わりにやってくれるだろうけど今は謎の安心感がある。
まさか、母性!
「いや、そりゃないって」
自分で自分のボケに突っ込む。
まぁ私は母性なんて知らないから言える口じゃないけどね。
お湯で濡らしたタオルで全身を拭き、簡単に作ったというお粥を食べる。
胃が空の時にドカ食いしたくなるけど軽いのを食べるのがちょうどいいのよ。
「分かってるなぁ〜」
「何が?」
「人の胃袋を掴むのがね」
「そりゃそうよ!一家の台所任されていたから!」
なるほど…ね。
「ありがとう。だいたい事情は察したよ」
「へ?」
「思い出したんでしょ」
「…何で分かった?」
「簡単だよ。今までは『だった』、『かも』なのが確定した出来事のように話したからね」
「えええ…怖いって」
「フフッ、よく言われる」
先生があの弄れた黒花さんだもん。
ボロにつけ込むのが外道スタイル。
「ごめん。本当は帰ってから話そうと思ってて」
「だからあんな真剣だったのか」
「そうそう。食べ終わったら資料、見る?」
「一応。確認でね」
私はお粥を早めに食べ終え、机から資料を持ってきた。
「美穂は見たんだよね」
「うん。黒花さんが持ってきた時に」
「見るにしては遅すぎると思ったわ」
資料を流し読みし次々ページをめくる。
すると、最後のページでピタリと止まった。
「…そっか」
一言呟きゆっくり閉じた。
「もういいの?」
「納得はしたつもり」
「そっか」
私は資料を受け取り再び閉まった。
これは色々書かれすぎていて捨てられないからね。
「そういえば昨日何があったの?」
「そういや言って無かったわ。長くなるけどいい?」
「いいよ」
私は樹海を開けた後の出来事を聞いた。
散華、代償として身体器官の一部を捧げる。
何かしら関係はあると思ったけどこれの事か。
そして、乃木園子。
名家乃木の名を持つ。
そして、銀と同じ先代勇者。
このタイミングで来るって事は何か理由があるに違いない。
とりあえず頭の片隅に入れとこう。
「夏休みも終わりかぁ〜」
着替えてソファにくつろぐ。
「色々合ったよね」
「その色々が濃厚なんだよ」
「確かにね」
笑いながら同意した。
病院に行ったら迷惑かかるから自然治癒。
しかも、自傷だし自分への戒めって理由で。
にしても今日の夢、他のと違って生々しいというかまるで実際にあったとも取れちゃう。
突然インターホンが鳴ったけどどうせ相手は分かっている。
「変に律儀なんだから…」
私が玄関のドアを開けに行く。
「どうもー…ってお前か」
案の定居たのは黒花さん。
「仕事はどうしたんですか、まさか休んだとか?」
「いやこれからだわ。それに、あんな派手に壊れやがって感謝の一言もないのか?」
「…そうですね。昨日はありがとうございました」
「どういたしまして。元気そうならオレも安心だ。てことで」
渡してきたのは白い箱、この大きさは…
「ケーキ?」
「惜しい、タルトだ。今日切れだから食い忘れるなよ」
黒花さんはそう言い残しドアを閉めた。
気使わせすぎたかな。
いつもなら唾つけて治せとか言うのに。
「こりゃ、菓子折りの一つでも持ってかないとダメかな」
ちなみに中身はフルーツてんこ盛りのタルトだった。
後で調べてみたけどそこそこの値段してて焦った。
夏休みを終え、新学期に突入。
久しぶりに着る制服は新鮮。
腕の傷はまだ残っているから長袖でどうにか誤魔化す。
もし聞かれたら捻ったとでも言おう。
「忘れ物も無し、宿題も終わらせた。よし!」
鞄を閉め、靴をはく。
「行ってくる!!」
「おう!気を付けて!」
いつも通り早めに教室に入った。
多めにクラスメイトがいて、2か月ぶりの再会で思い出を語り合っている。
「とりゃーーー!!」
「ぐほっ…!」
腹に誰かがダイブしてきた。
勢い良すぎて後ろに下がったけど耐えきる。
「元気有り余りすぎだって、燐」
「それが取り柄だから!」
「よしよし、いい子いい子」
「なんで頭撫でるの…?」
蛍が不思議そうに聞いた。
「なんか撫でとかないとって思ってね」
「そうなのかな?」
「ところで宿題は終わらした?」
「うん。もう終わっているよ」
「もちろん…」
そこの燐、目線そらしたの見てるんだからね。
終わらせていると信じるしかないなぁ。
結論から言うと杞憂でした。
裏技?使ったらしいけどギリギリだったと零していた。
詳しくは聞かなかったけど、解答写してたりするんだろな。
放課後は新学期最初の部活動。
「高木美穂、到着しま…」
部室のドアを開けたら重苦しい空気が漂っていた。
「高木、悪いけど鍵閉めて」
風先輩が低めの声で指示してきた。
理由など聞いても無駄と思い言われた通り閉めた。
「散華の話聞いた?」
「はい。やはりと思いましたけどね」
「まさか知ってたんじゃ…」
「仮説として考えていただけです」
「違和感は持ってたのね」
東郷さんが聞いてきた。
きっと1番最初に気づいたに違いない。
「そうだね。怪我の仕方が異常だったから」
「美穂ちゃんの怪我は治ったの?」
「私のは自傷みたいなものだからね。一応治ってきてはいるよ」
左腕の包帯をチラリと見せる。
これで自傷跡とは思わないだろな。
失礼だけどちょっとラッキー。
「樹ちゃんと夏凛は?」
「まだ言ってない。このことは内緒にして」
確かにこの2人には荷が重い話だし、心配させたくないのは分かる。
「でも、知る権利はありますよ」
「分かってるって…」
部長として、姉として最善の判断だろうけど負担が大きすぎる。
私も似た決断をするけど。
その後、2人を呼び戻し普段通り部活をしたものの、全体的にどこかぎこちなさがあった。
―――――
午後、アタシは1人ファミレスにいた。
当然、食べるのが目的じゃない。
「よっ」
「お疲れ様です。呼び出してすみません」
黒花さんに聞きたい事があったから電話をしてみたら待ち合わせ場所を指定してきた。
「構わんさ。何か食べるか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうか、ちょっと待ってろよ」
黒花さんはメニュー表をパラパラとめくりながら見ている。
すると、水を持ったウエイターさんが来た。
「ポテトフライとこの季節限定パフェを」
「かしこまりました」
オーダーをメモして離れていった。
決めるのが早い…!
「小腹が空いてな。ポテトは食べていいから」
「ありがとうございます」
水を少し飲んだ。
冷えているから喉がよく潤う。
「今日は何用で?」
単刀直入に聞いてみる。
「アタシの勇者システムを入れてください」
「…それは無理だ」
「何故ですか」
「理由は2つ。1つ目、技術的に無理。2つ目、今は後継者が使っている」
そのタイミングで山盛りのポテトが届いた。
熱々で美味しそう。
「後継者って誰ですか?」
「三好夏凛」
黒花さんはポリポリとポテトを食べ始めた。
「やっぱり…」
樹海で見た時、アタシが使ってた服と似ていると思ってた。
「そういう事だ。力になれなくて悪いな」
黒花さんは食べるだけで立とうとしない。
注文したパフェが来ないからだけどすぐ終わらすならそもそもこんなに頼まない。
試されている?何のために?
黒花さんの顔を見ても外を見ていて目線すら合わない。
『美穂を、頼む』
あの日言われた言葉が引っかかる。
頼んでいるならここで渡すに違いない。
なら…
「もう、出来てるんですね」
「ん?」
「アタシの勇者システム。ここにあるんだよな」
端末に入っている1つのアプリを起動させる。
かつて防御用の盾を出すために使用した。
「あの時、調整と言ってアタシに使わせたのってこのアプリの起動テストって意味になると思う」
「なぜそう考える?」
「盾を使わすなら美穂のような手に持つタイプがいい。なのに遠隔をわざわざ選んだのはその先を見越してなんだろ?」
いいタイミングでパフェが置かれ話が止まる。
黒花さんは真っ直ぐアタシを見る。
「フッ…ハハハッ…!」
肘を机に置き、髪を上げながら静かに笑った。
「ご名答だよ。既に導入済みだ」
緊張が解け息を吐きながら背もたれに寄りかかる。
「小学生にしては頭がいいな」
「いや、これでもあの2人には届かないですよ」
ポテトにようやく手を付けられる。
塩がやや強めだけど美味い。
「1つ訂正するが生前使ってたのより全体的に劣化している」
「じゃあ今使えないのは何でなんですか?」
「その力を使うに値するか見定める必要があってな。記憶もないのに与えても意味ないだろ」
確かにあれは記憶の無かった頃のアタシには扱いきれない。
「端末を貸せ」
油まみれの手を拭いているのを確認し、端末を渡した。
鞄から別の端末を取り出しケーブルで繋げる。
少し操作した後、抜き取り返してくれた。
「権限を解除した。これで銀も疑似勇者だ」
疑似って事は美穂と同じシステム。
バリアがないから被弾1つが命とりになる。
と言っても前も似た感じだし変わらないか。
「言うまでもないが私的使用はやめろよ。オレが精神的に死ぬ」
「流石にしませんって」
水を一気に飲み干す。
ポテトのせいか緊張のせいかは分からないけど喉がカラカラだった。
「褒美だ。パフェ半分やるよ」
「ありがとうございます、ってこれ狙ってましたよね」
「さぁ、どうでしょうね?」
前、美穂と黒花さんがやっていた気がするな。
2人で何気ない会話をしながらパフェとポテトを食べた。
クライマックスへ突き進んでます。
かなり巻き巻きかもですけど大筋は合ってるハズ…
ニコ生見ながら執筆してましたがコメの統一感凄いですね。
アベマでも放送とかなんなんですかねぇ…
まぁ1期書いてるんで見直しになって助かりますけど。