生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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今ここに立つ理由

さっきまで家でテレビ見ていたのに気付いたら樹海の中にいた。

 

「そんな、終わったはずじゃ!」

 

12体を倒し戦う事は無いはずなのに。

端末で状況を確認してみる。

 

「なんだよこれ…」

 

そこには無数の赤い点が壁を越え押し寄せていた。

壁を見ると巨大な穴が開いていて小さなバーテックスが次々と入ってきていた。

再びマップを見ると壁にいたのは須美、園子そして

 

「美穂!!」

 

あの園子が前線に出ているのは異常すぎる。

 

「まさか…」

 

3人が壊した…?

いや、美穂に限ってまさか。

『高木と黒花には気を付けて』

園子の言葉が再び響き頭の中をジワジワと広がっていく。

そんな事は無い。あの3人に限ってそれは…

頭を振り雑念を捨てる。

とにかく行かなくちゃ。

友奈さんと夏凛さんも向かっているから上手く合流しよう。

アタシはアプリを開き変身を――

 

「え…」

 

出来ない。

何度押しても反応しない。

 

「なんで、なんでだよ!!」

 

黒花さんが騙した?

ならあそこで試すはず無い。

情報が多すぎて思考がこんがらがってくる。

 

「こんな時に…」

 

まだバーテックスはこちらまで来ていない。

このまま何もできず見てろと?

 

「イヤだ、そんなのはイヤなんだ…!だから動いてくれよ!!」

 

それでも反応は無い。

 

「うあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

思いっきり端末を叩きつける。

壊れる事は無くバウンドした。

アタシは…無力だ。

助けた2人を地獄へ突き落し、家族を悲しませ自分は楽になった。

何も残せてないし傷つけた。

なんで生き返ったんだろ…

もう、どうでもいいや。

座り込んで現実を遮断した。

早く、終わって欲しいな。

 

「何やってるんだ?」

 

この世界では聞く事の無い声に思わず顔を上げる。

そこにいたのは―――

 

―――――

 

完全に押されている。

穴から少し離れた場所に移動し戦闘をしている。

散華する度力が増すって言うなら2桁は確実に超えている。

スピードもパワーも他の勇者とは比べるのがおこがましいくらいだからね。

既に壁中にはバーテックスが複数体侵入している。

小型がいないのが救いだけど。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「どうしたの、まだまだだよね?」

 

舐められてる…

あちこちに切り傷ができて痛い。

立ってるだけでやっとなのに。

 

「ひょっとしてSなの…?」

 

「んー、そんな事ないよ?」

 

「ならさっさと殺せばいいのに…」

 

「ダメだよ、もっと苦しんでもらわなきゃ」

 

マジで言ってる?

さすがにハードモード過ぎるって。

 

「クソッ…!」

 

剣をなんとか構える。

途中から乃木は立って私の攻撃を待っていた。

何が目的?

あぁもう!分からない!

 

「はぁぁぁ!」

 

剣を振り上げ切りかかる。

しかし、複数の槍が交差し防御される。

その間に足元と後ろからも飛んでくる。

避けれずダメージを食らうけど動けない痛みじゃない。

 

「っ…!」

 

これの繰り返しでメンタルが折れかけてる。

ガクンと足の力が抜け膝をついて座り込む。

 

「もう終わり?くろっちの弟子とはいえこの程度なのね」

 

「…」

 

絶望の一文字しかない。

風が吹き、音もなく近づいて来る。

 

「本当はもっとしたかったけど、抵抗しないならいいや」

 

首元に槍を突き付けられる。

立場逆転したし、こうも実力差あるとね…

その時、周りが赤く輝いた。

 

「夏凛…」

 

顔を動かしその方向を見てみると大型の刀を持った夏凛が1人で戦っていた。

一撃で大型を鎮めていくものの、攻撃を喰らい解除される。

それでも再び満開する。

何度も、何度も。

 

「凄い気合だね」

 

他人事のように園子は言う。

あの夏凛があそこまで命かけるなんて。

それに比べて何やってるんだろ私。

ここで挫けてる暇ないっていうのに。

 

「そうだよ、まだ終わってない」

 

冷めていた心に火が灯る。

 

「自分が嫌いなんだね」

 

私は目の前の神に問いただす。

 

「誰かと交わるために自分を偽る。それは時に大切だけど段々醜く感じる」

 

左目しか見えない顔を見る。

感情は読み取りにくいけど怒りを感じる。

 

「これも嘘で固めた姿、祝福なんてこれっぽっちもない」

 

腕を少し上げ勇者服を見せる。

本来私に与えられるべきものじゃないから。

 

「けど、私には居場所ができた。絶対に帰るべき場所がね」

 

銀が来て生活が変わった。

燐と蛍と黒花さんにも助けられているけど心の支えとして1番大きかった。

 

「やめて…なんで笑ってるの…」

 

どうやら口角が上がっていたらしい。

 

「いや、思い出してついね」

 

「人から奪っておいて、何言ってるの!」

 

「奪ってないよ。銀から私の所に来たんだよ」

 

「ふざけないで…あなたの傍にミノさんがいていいわけがない!」

 

槍を振り上げ心臓を狙ってきた。

馬鹿にしたのは私なりのケジメ。

足掻くことなく運命受け入れる。

 

 

 

 

 

 

そのはずだった。

矛先が宙で止まる。

なぜなら顔の前にに赤い膜が現れて防いでいるから。

 

「精霊バリア!」

 

実物は初めて見た…というかバリア!?

 

「このっ!」

 

仕組みが同じなら割れないとは思うけど油断はしない。

バリアを活用し槍を流すように立ち上がる。

 

「ようやく、仕切り直しかな」

 

「バリアがあっても関係ない。実力差は変わらないよ」

 

「そうだね、()()()()()()()()()()()

 

この状況で動かない訳がない。

時間稼ぎしているつもりは無かったけど流れとしてそうなったけどね。

私の横に1人の少女が降り立つ。

 

「遅くなってごめん」

 

「大丈夫。死にかけただけ」

 

「ミノさん…」

 

赤い勇者服に身を包んだ銀が現れた。

 

―――――

 

目の前に現れたのは黒花さんだった。

 

「どうしてここに…?」

 

「世界崩壊の危機だぞ。オレが動かない訳ないだろ?」

 

「だってここ樹海ですよ?」

 

勇者の資格が無いと入れないし動けるはずがない。

 

「そうだな。でも樹海化してるって認識しちまえば簡単に入れちまうもんだ」

 

「無茶苦茶な…」

 

この人なんでもありなんじゃ…

 

「で、ここにいるのは意味あるのか?」

 

端末を拾い渡してきた。

 

「…動きません」

 

「あ?」

 

「アタシは戦えないんです」

 

「どうゆう事だ?」

 

端末をひったくりもう一度アプリを開く。

当然反応しない。

 

「どうゆう事ですか?」

 

画面を見せつけても黒花さんは顔色を変えない。

 

「理解はした。結論から言おう、端末は正常だ」

 

「は…?何言ってるんだよ…」

 

ため口になる程怒りを覚えた。

動かないのが正常?そんな訳あるか。

 

「正常だと言ったが」

 

「嘘つけ!」

 

勢いよく立ち上がり黒花さんを睨みつける。

身長差で見上げるようになったけど。

 

「嘘じゃない」

 

「嘘だ!」

 

「お前、自分に非が無いとでも思ってるのか?」

 

黒花さんの声が一段と下がった。

 

「何を…!」

 

「思い出せ、これまで戦ってきた経緯を」

 

癪だけどほんの少し冷静になって思い出してみる。

最初は世界を救う役目として変身した。

けど2人と関わってただ救うだけじゃダメだと思った。

最後はその2人と家族のために戦い死んだ。

 

「…」

 

「思い出したか?なら聞こう、今のお前に足りないものはなんだ」

 

アタシは現実から逃げた。

守った2人が世界を壊している事実を正面から受け入れなかったんだ。

今のアタシに足りないもの、それは…

 

「…覚悟」

 

「その通りだ。自分の行動が正しいかなんて分からない。けどな、今出来る事をしないで逃げるのは一番後悔する」

 

力強い言葉だったけどどこか優しさを感じた。

 

「何のためにその力を使うかは任せる。だがどちらにせよ誰かを傷つける。それでも行けるか?」

 

アタシは壊された壁を真っ直ぐ見つめた。

もう迷わない。

深呼吸を1つして答える。

 

「あぁ、行けるさ」

 

アプリを起動させる。

端末が赤く光りアタシは勇者に変身した。

外見に変化は無いけど元々白かった所が黒に変わっている。

両手に使い慣れた斧を出す。

久しぶりの重さを腕に感じる。

 

「行ってきます」

 

「行ってこい」

 

アタシは地面を蹴り上げ向かう。

大型を三好さんが満開をしながら倒している。

その横を飛び跳ねながら目的地へ進む。

いたのは美穂と園子。

須美の姿が無かったけど今は…

距離を取った美穂の隣に降り立つ。

 

「遅くなってごめん」

 

美穂の身体に大量の切り傷があって血が垂れていた。

 

「大丈夫。死にかけただけ」

 

冗談にしてはキツいって。

 

「ミノさん…」

 

園子が唯一見える左目を大きく開いていた。

 

「園子、お前を止めに来た」

 

「どうしてそっちにいるの?私たちズッ友でしょ…?」

 

「ズッ友だから止めなきゃ行けないんだよ。友達が悪いことしたら叱るだろ?」

 

今の園子を止めれるのはアタシしかいない。

須美の暴挙に手を貸したのも美穂の所にいたからだろな。

乃木ってだけで周りから話しかけられて無かったからアタシ達が大切な存在なのは分かる。

けど、園子がしようとしているのは間違っている。

 

「そう…みんな裏切るんだ。なら消えちゃえ」

 

園子の後ろに槍が大量に展開される。

目で数えたけど20を超えたから諦めた。

 

「行ける?」

 

背中を任せる友に聞いてみる。

 

「行けるじゃなくて行く、でしょ」

 

「確かにね」

 

苦笑いを浮かべたけど恐怖は無かった。

これは世界をかけた大喧嘩なんだから。




特撮あるあるのような展開。
でもそれがいいんだよ!!(誇張)
ここでバチバチしてるのは他の勇者は知らない状態でメインストーリー通り動いてます。
勇者同士の殴り合いって良くない?(Fate脳)

アベマで1期見て満足してたら2期も放送するって!?
胃薬必須の胸糞展開を観ろと言うのか!
小説書きながら耐えようかなぁ…
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