家に着いた時には真っ暗になっていた。
これでも早めに帰ってきたつもりなんだけどな…
美穂が怒るところ見た事ないけど嫌味は飛んできそう。
とりあえず、入った時の反応次第だな。
階段を急いで駆け上がり、鍵でドアを開け部屋に入る。
「ただいまー。遅くなってごめんー」
返事は無いけどリビングに美穂はいる。
黒花さんがいう繋がりの影響かな。
ドアが閉まっていたから開ける。
「美穂ごめ―――」
その先の言葉が出てこない程異常な光景だった。
美穂はソファの上に横になって寝ていて、横には3人の女の子が座っていた。
同じ制服を着てたけど見た事ないデザインだ。
「あぁ…おかえり…」
ゆっくりと疲労で感情が無くなった顔をこちらに向ける。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫。ねぇ、聞いてよ。餃子作ってたら端末光り出して女の子が家にいる夢を見たんだ」
「よく分からないけど現実だぞ」
「はぁ、だよねぇ…」
頭を掻きながら起き上がり、3人の顔をじっと見ていた。
少しの沈黙があったけど美穂が口を開ける。
「さて、皆の事教えて欲しいな」
――――――
頑張って笑顔を作るけど手遅れ感が凄い。
1人ならまだしも3人は聞いてないって。
お陰で軽く貧血起こした。
既に黒花さんにはSOSを送った。
半年前は風呂に入っていて召喚された瞬間は見てないけど似た感じだろな。
黒花さんの説が正しいなら3人は私の精霊。
まさかこのタイミングで増援が来るなんて思わなかった。
「「「…」」」
どうせ記憶無いんだから聞いても無駄かな。
一応こっちからアプローチしてみよう。
「私は高木美穂、讃州中学に通っている2年生。疑似勇者として世界を守ってる」
「疑似勇者?」
クリーム色の髪の子が食いついた。
「うん、そもそも勇者って知ってる?」
「はい、私たちも勇者です」
迷うことのない肯定。
まさか記憶があるの?
「ごめん、名前聞いてもいい?」
「伊予島杏です」
伊予島…?
確か名家として名を連ねているはず。
「杏!警戒心なさ過ぎだぞ!誘拐犯に心開いて!」
「でも誘拐なら身動き取れなくするはずなのに」
「この人の罠かもしれない」
うわぁ…ファーストインプレッションクソ悪い。
銀はゼロからここに来たから困惑が勝ってたんだろうけど3人から見れば突然訳分からない部屋にワープしたんだ。
誘拐と解釈されても仕方ない。
「美穂。この人たちって…」
私は人差し指を軽く口につける。
今言えば余計混乱する。
「いい加減目的を言ったら?」
「目的…」
それは私も聞きたいくらい。
というか黒髪の子かなり言い方キツイ。
「それは…」
様子を見ながら話そうとした時、ドアが勢いよく開いた。
「一体何があった!?」
最高の助け舟が来た。
これで私の負担が軽く…
「先生!?」
「千早!助けに来てくれたのか!」
「黒花さん…良かった…」
何この空気?
なんで安堵の表情してるの?
私は3人と黒花さんの顔を見比べる。
黒花さんは目を丸くして固まっていた。
「お前ら…誰だ?何故オレを知っている…?」
ドアによろめきながら寄りかかり少し声を震わせ答える。
知らない人から名前呼ばれたらそうなるよね。
「知らないって、嘘だよな…」
オレンジ髪の子が衝撃を受けてる。
こっちもこっちで混乱してるよ…
「なぁ美穂。まさかだけど…」
「はい、そのまさかです」
「マジかよ…」
この感覚共有できる人がいて助かった。
今は黒花さん仲裁の元お互いの誤解を解こうとしている。
「とりあえず名前からだ。なんならオレがしようか?」
「1番要らないんじゃ…」
「被疑者は黙ってろ」
「はい…」
何故か全員で黒花さんの前に正座させられている。
しかも今の返答理不尽過ぎない?
「右から言ってってくれ」
まさかの私から。
絶対狙ってるし最初からそうすれば良かったでしょ…
「高木美穂」
「なんでアタシまで…三ノ輪銀」
「郡千景…」
「土井珠子!」
「伊予島杏です…」
「ふむ、土井に伊予島か…。まぁいい、3人に聞こう。今年は何年だ?」
どういう質問?
常識の話じゃん。
「西暦2019年です」
「「は??」」
待って待って、西暦?
「じゃあ高木。同じ質問だ」
「…神世記300年」
「「「え???」」」
黒花さんがパンと手を叩く。
その顔はどこかスッキリした感じだった。
「これで誘拐犯の誤解は解けたな」
「いやいやいや、食い違い過ぎですって」
「全く分からんぞ…タマの頭おかしくなったのか?」
全員大混乱。
記憶があるのが救いだけど銀の時の比にならないくらい情報量が多い。
「まぁまぁここからゆっくり解いていけばいい。けど…」
立ち上がりキッチンに向かう。
「飯にしようや」
ウインクをして勝手に冷蔵庫を開ける。
確かに色々ありすぎてお腹が減ってることに今気づいた。
頭が回らず黒花さんがごちゃごちゃやってるのをボーッと見ているだけだった。
黒花さんが作ったのは万能料理、素うどん。
とりあえず食わしとけ感あるけど今は仕方ない。
緊張と疑問で味を感じない素うどんは始めて。
「…ご馳走様」
「食べと終わったの持っていきますよ」
「ありがとう…」
「食器洗い手伝うぞ?」
「助かります。私は食器戻すので」
「それなら私拭く作業やります」
重苦しい空気に耐えられないのか自主的に動き始めた。
黒花さんの方をチラリと見たらニコニコしていた。
完全に手の上で転がされてる。
でも、悪くない気分。
食べ終わった後、再び場を設けた。
銀がウトウトし始めていたから黒花さんに許可をもらって先に寝させた。
作戦で全力使ったからしょうがない。
「当然の事だが3人はこの世界では死人だ。それを忘れるなよ」
そこからお互いの事について時間をかけて話し合った。
西暦と神世紀。
異なる環境で異なる立ち位置。
同じ言葉でも意味合いが変わるのは時代の流れなのかな。
そもそもこうして生きてこれたのもこの人達のお陰なんだけどね。
私から見たら尊敬すべきなんだけど変に敬語使うと嫌がりそう。
「タイムスリップなんてフィクションだと思ってたのに経験する日が来るなんて思わなかったわ」
「300年も経ってたら色々変わってそうだな」
「でもなんで私たちだけなんでしょうか?乃木さんや高嶋さんの方が戦力として充分と思います」
私は2人の実力は知らないけどそこまで言うって事は相当強いんだろうね。
まぁ乃木は子孫がヤバいから何となくわかるけど。
「さぁな。神のみぞ知るってな」
人選にどうのこうの言う事は無理。
まぁ援軍がある時点で何か起こるに違いない。
しかも3人来たんだから前回以上に危険なのかも。
「とりあえずここまでか。日付変わったし疲れたろ」
300年の差を縮めるには時間が足りない。
これじゃオールしても終わらなさそう。
「オレは帰るわ。6人で寝泊まるには狭いだろ」
5人でも限界だけど…
黒花さんが帰り勇者のみとなった。
「…風呂と布団どっちにする?」
「眠気が凄いんだよ…」
「さすがに寝ないと生活に支障でそうです」
「情報が多すぎて頭痛いくらいよ…」
「じゃ寝ましょうか」
最後の最後に問題が発生した。
寝床が足りない。
今、銀を私のベットに寝かせていて残るは敷布団と災害用の寝袋2つ。
そう1人分足りない。
来たばかりの3人にはゆっくりして欲しいから郡さんを敷布団に、土井さんと伊予島さんは寝袋に寝て貰った。
そして私はソファで枕を敷き寝た。
どうして私の人生はこうハードなんだか…
目を閉じたら疲労の影響かすぐに夢へ落ちた。
──────
近くのコンビニに車を停め、一息つく。
頭の中の整理がついていない状態で運転なんて危険だからな。
しかし、先代のみならず初代まで召喚するとは…
ここまでになると恐怖すら感じる。
美穂のシステムは独自の進化を遂げている。
契約、バリア、自己回復。
全て初期段階には存在していない。
今は守るという純粋な思いで留まっているが最悪、全人類の敵にもなる。
「オレはアイツを止められるのか…?」
正直分からない。
こんななりだが心は人だ。
人である以上情は存在する。
それを押しのけ世界を優先できるだろうか。
「畜生…やるしかねぇってか」
答えは出ない。
今は仮初の覚悟を決め警戒するしかない。
西暦組登場です。
正直どう出そうかかなり悩みましたが救済がモットー(?)なのでそちらを優先しました。
オールスター感出ちゃってますが何とかなるでしょう!
次回は各キャラのルートづくりの回です。