私は見覚えのある白い椅子に座っていた。
周りが真っ暗だけど何か置いてある。
目が慣れたら見えそう。
「また呼んでしまって申し訳ない」
目の前に女の人が座っていた。
意識して無かったからなのか湧き出たように見えた。
「大丈夫です」
それにまたって言った?
この人と会った事があるのかな。
悪意を感じず顔の部分だけ意図的に暗くなってて表情が分からない。
「御用件は何ですか?」
「君の連れている勇者たちについて」
急に核心ついてきたね。
「結論を言おう。縁を繋いだのは私だ」
「あの奇怪な現象もあなたの仕業と?」
「奇怪…あぁ、そうだ」
ちょっと傷つけちゃった?
でもネックレスが熱くなって端末光ったらそうなるよ。
「彼女たちは私の大切な仲間なんだ」
「仲間…」
懐かしそうな悔しそうな感情が入り混じった声。
話の流れからしてこの人も勇者だったんだ。
「あなたも■■■■なの?」
自分の声が途中から聞こえなくなった。
まるで言っていけない言葉のように。
「答えとしては正しい。だがそれを言うのはまだ先になる」
まだ先?一体何を…
糸が切れた人形のように力がガクリと抜け机に頭をぶつける。
「君にとってはこの先厳しい道になる。だから傍にいる友を信じて欲しい」
痛みを感じながら私は眠気に呑まれた。
「ーー!美ーーー!」
誰かに呼ばれている気がする。
ゆっくりと目を開けると銀が覗き込んでいた。
「っあ…おはよう、銀」
「そんな狭い場所で寝てるなんて身体に悪いぞ」
動くと節々から軋む音がして痛い。
ちゃんとした所で寝ないとダメだね。
「皆は?」
「もう起きてるよ」
私が最後か。
にしてもまた変な夢見た気がする。
何か変な空間で誰かと話したような…
ダメだ、今回も覚えてない。
「いててて…ご飯まだなら作るよ」
「でも食材が足りないんだよ」
そうだった…
昨晩奥の手を使ったから今日は封印するとしても2人前しかない。
時計を見ると8時過ぎ。
学校が無いからゆっくりしていられるけど飲食店はまだ開いていない。
となれば…
「コンビニに行くしかないっか」
朝から制服姿の女の子を連れて行くのはどうかと思うけど我慢するしかない。
とりあえずお金は払うから気にしないでと言っておいた。
「言ったけどねぇ…」
土井さんのかごには大量のお菓子が。
「いいじゃんかー。別にタマが1人で食べるわけ無いだろ」
銀と同じ雰囲気を感じるけど、何かが違う。
経験と歳の影響かな。
「限度って言葉知ってる?」
「これでも抑えた方なんだぞ。本当はあれも食べたいのに」
「うん、本音隠す気ゼロだね」
その後伊予島さんが説得し、半分に減らし納得してもらった。
家に帰り机を囲んでご飯を食べた。
つい半月前は1人じゃ広く感じていた部屋も今じゃ狭い。
精霊なら姿を消せるのかと思ったけど銀の様子見る限り無理そう。
しばらくは窮屈を強いられそうだ。
銀に昨晩の出来事を伝えたけど途中から目が点になってた。
まぁ頭の片隅に入ってればいいや。
時間もあるし3人の生活用品を揃えにイネスに向かう。
「好きな物買っていいからね」
「本当にすみません。お金後で返しますので」
伊予島さんが謝ってきた。
あの時もそうだけど他の2人とは違う視点を持ってそう。
「気にしないで。それに貸し借りの関係になるのは嫌だからね」
「そうですか…ところで美穂さん、本屋さんってここにあります?」
「あるよ。欲しいのあるなら後で時間作るよ」
「ありがとうございます」
土井さんに呼ばれ嬉しそうに買い物を続けていた。
まるで姉妹みたいに感じたのは気のせいかな。
全員の電話番号を交換し自由時間と称し一時解散した。
銀が土井さんについて行ったのは驚きだったけど。
「なんで私について来るの?」
郡さんが嫌そうに私を見る。
「お互い知った方が家に居やすいでしょ?しばらくお世話になるんだし」
「そうね、プライベート空間がないから仕方ないわね」
ウッ…しょうがないじゃん、一人暮らし用の部屋だし。
たどり着いた先はゲームコーナー。
1人の時は暇つぶしでやってたけど最近は出来てないな。
郡さんが物色している間、私はゲームのCMを見ていた。
「へぇ…あのゲーム新作でるんだ」
パーツを組み換えオリジナルのロボットを作り、様々なミッションをこなすアクションゲーム。
10年近く音沙汰無かったからてっきり終わったと思った。
絶対買おう。
「こういうの好きなの?」
「うわっ!びっくりした…」
映像に夢中になっていて郡さんの存在に気付かなかった。
「ごめんなさい、そんなに驚くなんて思わなかった」
「こちらこそごめん」
手にはカセットと携帯ゲーム機があった。
RPG、FPS、アクション等幅広いジャンル。
「食わず嫌いなの?」
「ゲームそのものが好きなだけ。それ以外にこだわりは無いわ」
「なるほど、いわゆるゲーマーってやつかな」
「そうなるわね」
会計を済ませ待ち合わせ場所に向かう。
「荷物重くないの?」
「気にしないでいいよ。これくらい余裕だから」
両手に袋を持っている状態。
時々持ち方変えるけどそこまで辛くない。
ただゲームカセットだけは郡さんに持ってもらった。
「あなたはなんで戦っているの?」
唐突な質問に一瞬焦った。
「そうだね…この世界が大好きになったからかな」
「大好きになった?」
「前まで汚い大人にこき使われて何やってんだろって思ってたんだよね。でも、黒花さんと会って世界が変わったの。その時に気づいたんだ。この力は誰かを傷つけるんじゃない、助けるためだって」
右手をグッと握り締める。
この手は汚れていても誰かを握ることくらいは出来る。
「世界を助ければ今のくだらない日常を過ごせる。時には辛いこともあるけどみんなといれば怖いもの無しだよ」
「…似てるわね」
「ん?」
「何でもない」
微笑んでいた気もするけど気のせいかな。
合流した後、お昼もついでに食べ帰宅した。
銀が醤油豆ジェラートの布教をしていたけど反応は微妙。
これが本来なんだけど私は好きなんだけどね。
「よし、スペース開けたよー」
「どこに置いとく?」
「そこの机に置いといて」
「了解ー」
「服混ざらないでしょうか」
「大丈夫でしょ。取り違えても分かると思うし」
「服のセンスみんな違うからな」
荷物のスペース確保のため大掃除が始まった。
パズルのように位置や向きを変えしまっていく。
「やっぱりプライベート空間の確保は無理そうだね」
部屋が大きくても人数が多かったら意味がない。
こりゃ引越ししないとダメかな…
突然、玄関のドアが開き黒花さんが入ってきた。
「お前ら何やってんだ?」
「部屋の片づけですよ。かなり買ったので」
「それなら問題ないぞ。今日家を確保した」
「はい?」
「引っ越しのお時間だ」
「えええええ!!!???」
驚き過ぎて荷物を落としてしまった。
いくらなんでも早すぎるって!
昨日の今日だよ!そんなホイホイ家見つかるの!?
しかも学生だし、バイトすらしてない。
裏稼業でどうにも出来るとはいえ早計でしょ。
「色々ツッコミたいけど、どこから言えば…」
「まずあがらせてくれない?」
すっかり忘れてた。
とりあえず部屋に入れ話の続きを聞く。
「元々大赦が職員用に確保していた家だ。最近持ち主が結婚して出ていったから空いていた」
「家賃とかの費用は?」
「大赦に全額払わす」
払ってくれないんだ。
しかも払わすって強引だなぁ。
「早くても来週には引越し業者が来る。こことはお別れになるがな」
私が学校に通うために黒花さんが譲ってくれた部屋。
未練とかはないけどいざ離れるとなると少し寂しさはある。
「分かりました。手続きは一緒にしますか?」
「オレが受け持つ。未成年にそんなことさせるかよ」
「ありがとうございます」
細かなところはしっかりやってくれる。
黒花さんがある意味好きになるポイントの1つ。
「なぁ、仲良くやってるか?」
みんなの顔を眺めるように見ていく。
「そらバッチリですよ」
私が答えたけどみんな満更でもない顔をしている。
「そりゃ良かった。仲裁した甲斐があるわ」
安心したように笑みと共に一息ついた。
「あと1つ、確認だが3人変身できるか?」
当然アプリが作動しなかった。
「まぁそうなるわね」
「300年も経てば使い物になりませんよね」
「後輩にかっこいいとこ見せたかったのになー」
3人の端末を回収し代替スマホを支給した。
ただのスマホと変わらないから生活に支障はない。
まぁ黒花さん式の改造が施されてるとか。
「しかし、初期型にこうして触れられるとはな…」
黒花さんが端末をまじまじと眺める。
パッと見た感じ外見に大きな違いはなさそうだった。
「オレも初めての品だ。どのくらいかかるかは分からないから気長に待っててくれ。襲撃があった場合は2人で対処しろ」
「任して下さい」
「返り討ちにしてやりますよ!」
「頼もしい限りだ」
少し笑い黒花さんは帰っていった。
ここまで忙しいなら勇者部のみんなに事情説明して休みもらおう。
部員には作戦に関して、3人には精霊である事は今のところ隠しとくよう言われている。
「そういえばそっちの黒花千早も似た感じなの?」
「ほとんど似てるな。顔の傷が気になるけど」
「あれは火傷?かなり酷そうだけど大丈夫なのかしら」
「仕事でやらかしたって聞いてるけど詳しくは言わないの」
本人が言いたくない事は無理に聞いてもいい思いはしない。
私も同じ闇を持っているから。
今回は個別ルートの兆し的な回です。
本編サクサク進めますがまぁ幕間的なのも入れとかないとですね。
個別ルート…上手く書けるかな…
??「やってみせろよ!」
??「成せばなんとでもなるはずだ!」
??「キャラ崩壊だと!?」
10年近く発売されていなかったロボゲー…
うーん、気になりますね。(棒読み)
という事で次回から誰かのルートに入ります。