生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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力は受け継がれる

今日は黒花さんから端末の受け取りに行く事になった。

出来上がりが思ってたより早かった。

場所が場所だから黒花さんの車で運ばれる。

 

「美穂は知っているが全員これを被ってくれ。まだバラしたくないからな」

 

渡されたのは黒の布袋。

薄いから呼吸は出来るけど真っ暗。

全員被ったのを確認したのか車が動き出した。

途中揺れが凄かったけど酔いはしなかった。

 

「着いたぞ、取っていいからな」

 

黒花さんに言われ布を取り車から降りた。

周りには木々が生えていて通って来た道も草が生えていて一見分からないようになっている。

その先にあるのは苔が生えた倉庫。

黒花さんの後に着いていき中に入る。

最初は暗かったけど電気がつくと検査機材らしき物が所狭しと並んでいる。

 

「ここが技術部の最先端だ。今日はオレが使うから誰もいない。持ってくるからそこに座って待ってろ」

 

「お茶入れますよ」

 

「助かる。場所は変わってないはずだ」

 

黒花さんは螺旋状の階段を降りていった。

その間に私は棚からパックのお茶を取り出しケトルのお湯を入れる。

人数分何とか入ったけどケトルが空になった。

お菓子はさすがに無いからお盆に湯のみだせ乗せ持って行った。

皆は大きめのソファに並んで座っていて目の前に置いていく。

机がやや低いから落としそうだけど。

 

「ここ何処なんだ?」

 

「私の使っているシステムが生まれた場所。そして異端児たちが作る最後の砦」

 

「異端児って何なの?」

 

「大赦から追い出された変人たちの中でも、世界を守りたいって意志のある人をスカウトして結成されたんだよ」

 

「秘密組織か!」

 

「強ち間違いじゃないね」

 

「よく大赦にバレませんね」

 

「バレてるよ。でも迂闊に攻撃できないから静観って感じ」

 

まぁお互い牽制しているから均衡保ててるんだけどね。

一度でも間違えたら内部戦争起こるし。

 

「おっ。説明してたのか?」

 

黒花さんがアタッシュケースを持って上がってきた。

 

「大雑把にですけど」

 

「それでも構わんさ。まずはこれを返す」

 

座り目の前にアタッシュケースを置く。

中には3人の端末が入っていた。

 

「これまで使っていたのより性能が上がるから使い勝手が異なる」

 

「性能が上がる?どうゆう事ですか?」

 

「分解して分かったが通常で倒せるのは小型だけ。進化しちまえば傷すらつけれないくらい弱い」

 

「アタシのより低いんですね…」

 

初代だから強すぎて弱体化したんじゃなく初期値が低すぎたんだ。

逆にここまで戦えたのが凄い。

 

「そして切り札はシステム解除が出来なかったから一時封印という形にしている」

 

「やはり切り札はダメでしたか」

 

「仕組みは把握出来たんだけどな。精霊を使用者の身体と直接融合させ神域の力を宿す。オレから言わしてもらえば無茶苦茶すぎる」

 

黒花さんは前のめりに座り直した。

 

「精神汚染や身体に掛かる反動は度外視。おろす精霊との相性に左右されるが兵器として見るなら失敗作だ」

 

「兵器って言い方悪いですよ」

 

流石の私も今のは傷つく。

人を兵器扱いなんて誰が聞いても嫌だ。

 

「だが事実だ」

 

「っ…!」

 

正面から言われ私は俯いた。

もう言い返す事も出来ない。

 

「これからテストをするからついてきてくれ。動かなきゃ意味ないからな」

 

先に立ち下に降りていった。

 

「…みんなごめん」

 

私が言うべきじゃないけどつい口から洩れた。

どうせ黒花さんの事だから3人に向けて悪意持って言った訳じゃないけど私にはそう聞こえる。

 

「いいんです、千早さんの言い分も分かりますから」

 

伊予島さんが私の手を握ってきた。

 

「あの時は必死だったんです。何度も傷ついて折れそうになる事もありました。でもみんなで乗り越えてきました」

 

「最初凄いギスギスしてたからな」

 

「でも超える度に仲良くなれていつの間にか背中を託せるくらいになれた」

 

私はいつも誰かを守る為に行動していた。

途中から銀が戦線に加わって変化はしたけど本質的には変わらなかった。

甘えてみるのもいいのかな。

 

「ありがとう。よしっ!」

 

パンと頬を叩き気合を入れる。

 

「行こっか!黒花さんが待ってるしね」

 

私たちは階段を降りて黒花さんの元へ行った。

 

下は射撃場やトレーニングルーム等の身体を動かす部屋だった。

 

「来たか。随分と遅かったがどうした?」

 

「誰のせいだと思ってます?」

 

「…そうだな。先ほどの発言謝罪する」

 

黒花さんは3人に向かって頭を下げる。

謝れる大人は立派だと思う。

 

「じゃ、始めるぞ」

 

私と銀は端に座りテストの様子を眺めていた。

3人はアプリを起動させる。

変身そのものは私たちと変わらない。

郡さんの服は黒に近い赤で武器は大鎌、土井さんはオレンジで旋刃盤、伊予島さんは白でボウガンだった。

3人とも黒い布の面積が多めだった。

近、中、遠とバラけてて戦闘はしやすそう。

それぞれ動きながら確認している。

 

「ん?」

 

私は1つ気付いてしまった。

 

「どうした?」

 

「いや、郡さんの髪伸びてない?」

 

元々腰まである黒髪が今太もも付近まで伸びてる。

 

「ホントだ。気にならないのかな?」

 

鎌を振っているけど気にしていないように思える。

 

「不思議な事もあるんだね…」

 

「おーい美穂~」

 

「はーい!」

 

黒花さんに呼ばれ駆け足で近寄る。

 

「悪いが変身してくれないか?」

 

「いいですけど、アレ言わないんですか?」

 

アレとは3人は精霊であるという事。

 

「やってから考える。今は憶測だからな」

 

納得し私も変身した。

 

「凄いカラフル…」

 

「綺麗です…」

 

「目立ち過ぎじゃないか?」

 

ほらぁ、やっぱ変えた方がいいって。

黒花さんに前言ったけどスルーされたし。

 

「感じるか?」

 

「…」

 

目を瞑り意識を集中させる。

暗闇に3つの光が見え始めた。

 

「感じま――」

 

言おうとした時、大量の星が落ちてくるイメージが私を襲う。

まるで一遍に何かを言われたように。

 

「うぁぁぁ!!」

 

反射的に剣を出して横に振るも星はすり抜けるように私を貫いてきた。

頭が焼ける様に痛い。

首を振っても逃れられない。

それでもひたすら剣を振る。

 

「悪いな」

 

低い声が頭に響き一番大きな星が私にぶつかってきた。

 

――――――

 

突然美穂が苦しみだしアタシは咄嗟に変身し近づく。

その瞬間、美穂が剣を出し振ってきたけど間一髪避けれた。

 

「危なっ!」

 

「大丈夫か!?」

 

珠子さんがしりもちをついたアタシの前に立つ。

美穂はまだ剣を振り続けている。

 

「黒花さん!」

 

「分かっている。土井、剣を一瞬受け止めてくれ」

 

「任せタマえ!このくらい!」

 

ガンと重い音が響く。

衝撃で少し体が下がったけど耐えきった。

 

「悪いな」

 

黒花さんは瞬時に近づき美穂の顔面を思いっきり殴った。

剣が手から離れ吹き飛んでく。

 

「うぁ…あ…」

 

ゆっくり目を開けるも視点が定まっていない。

 

「荒治療すぎでしょ…」

 

「生憎とこれしか知らないのでな」

 

殴った右手を振りながら答えている。

 

「美穂、何があったんだ?」

 

「なんか…星が大量に降って来たの。頭以外痛くないんだけど怖くて」

 

「3人同時接続に耐えらえなかったか」

 

「同時接続?」

 

「それは後で話す。銀、美穂を上で休ませてやってくれ」

 

「分かりました。立てるか?」

 

美穂はゆっくり立ち上がりアタシの肩を貸し上のソファへ向かった。

 

――――――

 

今は横になって休憩している。

 

「気分はどう?」

 

「さっきよりかはマシかな。止めてくれてありがとう」

 

「お、おう…まぁアタシじゃないけど…」

 

目覚めたら駆け寄ってくれたからてっきり銀かと思った。

後で助けてくれた人に御礼言わないと。

それにしても最後の星だけ痛みが違ったなぁ。

 

「勇者部に顔出せないの大丈夫かな」

 

「大丈夫さ。みんななら何とかしそうだし」

 

「だね」

 

「美穂ってここいつ来たの?」

 

「えーと…コレ貰った時だから3年前?」

 

正直そこに関しては曖昧。

記憶が無いとかじゃなくて普通に覚えてない。

あの時もシステムの調整が多くて忙しかったからね。

 

「つまりアタシたちと同期って事か?」

 

「時期は一緒だね。まぁ実戦は私の方が先だけど」

 

「マジ?なんか悔しい」

 

「私は小型を何体か倒しただけだから銀の方がすごいよ」

 

「でも追い出すのが限界だったからな」

 

「その前なんて通常で倒せない無理ゲーだし。ホント凄い進歩だよ」

 

「先輩方のおかげだな」

 

「今度は私が恩を返さないとね」

 

「アタシもだろ?」

 

「銀はほら…ね?」

 

「あー…確かに」

 

私も何か未来に託すのかな。

そんなの無いかもしれないけど。

 

「終わったぞー。美穂、調子はどうだい?」

 

黒花さんが3人を連れ上がってきた。

 

「幾分か楽になりました。迷惑かけてすみませんでした」

 

「今回はオレのミスだ。なつき度とかも関係ないしてるのかもな。それに事情は教えたしな」

 

3人の顔色に変化は無いから納得はしてそう。

裏側は分からないけど。

 

「ところで私を助けてくれたのは誰?」

 

「黒花さんだよ」

 

「ありがとうございます。ちなみにどうやって助けたんですか?」

 

全員が黙ってたり、目線を逸らしていた。

何この空気?

 

「グーパンよ」

 

郡さんが最初に沈黙を破った。

「はい?」

 

「助走つけて顔面殴ったんだぞ」

 

「かなり痛そうだったですけど」

 

ははぁーん…なるほどね。

 

「黒花さん、弁解は?」

 

「いい目覚めになったろ?」

 

「えぇ。おかげさまで」

 

私はゆっくり立ち上がり黒花さんに迫る。

 

「御礼したかったんですよ。ちょっと止まってくれません?」

 

後ろにゆっくりと下がっている。

それでも私は笑みを浮かべにじり寄る。

 

「遠慮するわ」

 

「拒否権なんてありませんよ」

 

「あっそ…っ!」

 

後ろを向き猛ダッシュで逃げた。

 

「待てっ!1発殴らせろ!」

 

「いやに決まってるだろ!てか3人!ナチュラルに裏切るな!」

 

「いい気味ね」

 

「あれガチギレじゃないのか?」

 

「大丈夫。いつもあのくらいだから」

 

「あれが普通なんだ…」

 

私と黒花さんのチェイスを4人は眺めているだけだった。




西暦組は神世紀組と比べて切り札便りな印象あるので逆にインフレ。
というか切り札封印した時点で勝てないんですよね。
それと黒花の仕事場公開。

次回は個別ルートです。
重めかも?
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