生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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新天地

遂に引越しの時が来た。

黒花さんが手続きをやってくれたお陰か早めに行えた。

最小限の物しか持ってなかったから荷物も多くない。

夏凛の事言えないや…

最後に部屋の写真を撮り別れを告げた。

 

「本当にここなのか?」

 

「うん…一度下見に来たけどびっくりしたよ」

 

「学生が住むには広すぎじゃない?」

 

「まるでシェアハウスですね」

 

「めっちゃ楽しいそうでいいじゃん〜」

 

紹介されたのはまさかの二階建ての一軒家。

しかもお風呂が2つあるという謎の造り。

でも長風呂の心配が無いから安心する。

水道代も適度に使うなら心配なさそう。

それに学校から離れていないから安心。

まぁ1番のポイントは部屋数がそこそこある事。

そうと決まれば…

 

「これより自室会議を開始する!」

 

私が家主だから特権行使して先に決めさせてもらった。

そうじゃないと荷物を廊下に置くことになるからね。

ちなみに私は1階の廊下横にした。

理由はすぐに対応できるのとトイレと風呂から遠いため静かだと思ったから。

 

「はい!タマはあんずの隣の部屋がいい!」

 

「なら2階しか無いね。2人はどうします?」

 

「別にどこでもいいけど極力静かな所がいいわね。ゲームの邪魔にならなければいいし」

 

「アタシも場所は気にしないかな。部屋も大きすぎても掃除大変だからね」

 

こうして自室会議はあっという間に終わった。

部屋割りとして2階伊予島さん、土井さん。1階私、郡さん、銀となった。

意外と簡単に決まるとは思わない。

それぞれの部屋に荷物を運び終了。

大きめのは早めに送ってくれたから生活そのものに支障は少ない。

 

「では、前置きは割愛して…乾杯!」

 

『乾杯〜!!!!!』

 

初日だからピザにした。

5人もいるとピザの量もバカにならないし2リットルコーラがどんどん減ってく。

食べ盛りもあるけど凄い食べっぷり。

 

「なんでタマたちのこと名字でさん付けなんだ?」

 

「んー…先輩だから?」

 

300年前なんて大先輩すら超えていて仲良く接するのが限界。

どうしても畏まっちゃうんだよね。

 

「堅苦しいのは無しだって!気安くタマか珠子と呼べぇ!」

 

「全然名前でいいですよ」

 

「私も名前で呼んでほしい。ってこの流れだとついでみたいになるじゃない」

 

「ありがとう。珠子、杏、千景」

 

胸のあたりがスッと軽くなった。

自分でも知らず知らずのうちに気使ってたのかな。

今食べているピザが美味しく感じた。

 

食べ終わった後はパーティーゲームをする事になった。

6種類の柄がありそれを好きな人に送り何の柄か宣言する。

受け取り手はその柄が嘘か本当かを宣言し当てたら持ち主に返し外れたら自分の下に表にしで追加する。

交代交代で繰り返し終了は同じ柄が4枚揃う、全種類揃える、手札切れした者のみ負けっていうルール。

つまり集中砲火をして単独敗北も可能って訳。

 

「ダイヤ」

 

「嘘だろな、って本当かよ…」

 

「銀はまだまだだな~。んー…丸!」

 

「ホントでしょ。はい返すわ」

 

「ぐああぁぁぁぁ!!」

 

「フラグ回収早いよ…」

 

ルールも分かりやすいからすぐに腹の探り合いが始まった。

現在、銀と珠子がピンチで私と杏はまだ戦える。

それに対して千景は余裕過ぎる。

まさかアナログも強いとは…

勝負しかけるとしますかね。

 

「ハートでどう?」

 

私は千景にカードを送る。

即決していたのに今回は悩んでる。

表になったカードと自分と周りの手札を見ている。

ガチじゃん。

 

「…本当」

 

「ファイナルアンサー?」

 

「ファイナルアンサー!」

 

勢いよくカードを捲り柄を確認する。

描かれていた柄はハート。

 

「よしっ!」

 

本気のガッツポーズを決めていた。

それだけ嬉しかったって事だね。

 

「マジか~。それ当てるのかぁ」

 

カードを受け取り手元に加える。

ゲーマーの名は伊達じゃないか。

表情は読み取らせないよう平然を装えるけど推理されるとキツイ。

 

「美穂今度はアタシと勝負だ!」

 

「かかってきなさいな」

 

「四角!」

 

「はい本当」

 

「早いしあってるし!」

 

「だって何度もカード見てたじゃん」

 

「それだけで分かるのか~」

 

最終的に銀と珠子の一騎討ちとなった。

銀の逆境に強い精神が光り珠子を圧倒し接戦を制した。

 

「てことで罰ゲームを何にするか決めましょうかね」

 

普通にゲームするだけじゃつまらないからと罰ゲームを導入した。

まぁ言いだしっぺが珠子だけど。

 

「イヤだ~!再試合を要求する!」

 

「自業自得でしょ。諦めなさい」

 

「銀ー!ヘルプー!」

 

「流石に無理ですって」

 

「なら提案があります!」

 

杏が思いっきり手を挙げた。

なんか目が輝いているような。

 

「はいどうぞ」

 

「タマっち先輩を女の子にしたいです!」

 

「あんず!?」

 

物真似芸のネタとかじゃなくて女の子にしたい?

 

「どういう事?」

 

「だって可愛い恰好させたくないですか?」

 

「余計なことを…」

 

確かに女の子らしさという点であれば納得する格好ではある。

でも個人的には黒花さんにやった方が面白いと思うけどあの手この手で逃げそう。

 

「まぁ、味変ってことならありなんじゃない?」

 

「そういえばあっちでも見たこと無かったわね」

 

「可愛い恰好…ヒラヒラ…ウッ、頭が…」

 

なんか二次被害が発生してる。

そういえば…

 

「あったあった、一応参考資料で」

 

端末をみんなに見せる。

そこにはゴスロリ風の服を着た一人の少女の写真。

 

「これって三ノ輪さん?」

 

「とっても可愛いです!」

 

「おおー。髪型変わってないのに服1つでこうも変わるのか」

 

「うええええ!!何で持ってるんだよ!」

 

「東郷から貰った。なんならまだあるけど?」

 

「もういい!いいから閉じろって!」

 

脱線したけど罰ゲームそのものは決まった。

買っても本人が着なければ勿体ないから試着で済ますことにした。

まぁ置いとくと珠子のメンタルが徐々にすり減ってぶっ壊れる可能性があるしね。

その後本当に決行され晒し者にされていた。

途中から哀れに感じたけど杏が暴走状態に突入して収拾不可能と判断し諦めた。

不機嫌になった珠子をなだめるのは至難の業だったけど。

 

後日、黒花さんから全員で見て欲しい資料があるとメールを貰った。

開いてみると誰かの経歴みたいだった。

紙をデータ化させたからか劣化した部分が目立つ。

 

「『大卒で大社に入り、特別教師に任命される。』凄いね…」

 

スピード出世ってやつだ。

よっぽど頭がいいのかな。

それに大社は大赦の前身だからかなり古い資料。

 

「『■■の■■を2年半勤める。』規制が入っちゃってるかぁ…」

 

「なぁ、これって千早のじゃないか?」

 

「時期は書いてないけどほぼ合ってるわね」

 

西暦の黒花さんの資料を神世紀の黒花さんが提供する。

これで先祖じゃないんだから普通に混ざりそう。

 

「あれ、もう終わりだ」

 

銀のように黒塗り中心ではなく古すぎて解読不能が多かった。

結局、黒花千早についてこれ以上知るのは不可能か。

 

「他に資料は無いんですか?」

 

「後は…ん、ロック付きのデータファイル?」

 

暗証番号がかけられたデータが隠れていた。

ヒントのように書かれていた言葉は『グラウンドゼロ』。

 

「確か広島の原爆が投下されたポイントやアメリカの同時多発テロで破壊されたビル跡地に用いられた言葉ですね」

 

「つまり何か大きな出来事が起こった日、なのかな」

 

「そう言われても心当たりが多いというか…」

 

「手あたり次第やってみるしかないわね」

 

私が初出撃した日、お役目を終えた日、銀の命日…

どれもエラー表記だった。

 

「ならタマたちの初出撃はどうだ?」

 

「確か9月11日…って同時多発テロと同じ日です!」

 

打ち込むもエラー。

 

「えええ…他にあるのかよ〜…」

 

珠子が頭を抱え始めた。

西暦の出来事は神世紀には殆ど開示されていない。

だから3人の記憶が頼りになっている。

 

「7月30…」

 

「千景?」

 

「爆心地って言葉に引っかかってたのよ。だから『全ての始まり』って意味に変えたらその日しか出てこなかった」

 

「どんな日なの?」

 

「バーテックスが世界を襲った日」

 

「ッ!!」

 

急いでやってみたら承認の文字が。

そこには昔の新聞記事が入っていた。

『勇者一行諏訪より帰還!』

『外部に生存者がいる痕跡を発見! 』

胡散臭い見出しというか大赦発表は大半嘘。

 

「3人は諏訪の様子覚えてる?」

 

「いいえ。実感した覚えがないわ」

 

「最後の記憶が遠征前で止まってます」

 

「修学旅行だー!ってノリなのは覚えてるな」

 

つまり3人にとって未来の記録になるのか。

そのまま読み進めても希望を煽るようなものばかり。

本当にロックの意味があるのかな。

 

「ん…?」

 

凱旋の様子が書かれた脇に小さな記事を見つけた。

そこには…

『勇者特別担任、自宅で自殺か。』

 

「は…?」

 

自殺?黒花さんが?

性格も似てるというなら自殺は絶対しない。

 

「どういう事だよ…千早が自殺?」

 

「私たちが遠征中に亡くなってた…全く分からない…」

 

「千早先生が死ぬ理由が思いつきません…恨まれる事も無かったはず…なんで…」

 

「この記事西暦のなんだろ?それをどうして黒花さんが持ってるんだ?」

 

「データで貰ったのを引き継いだ…にしては違和感あるよね」

 

それにパスワードが300年前の出来事の日なんて普通出てこない。

あの人の事知らなくちゃ行けない時が迫ってるのかな。

それ以上明確な情報は無かった。

3人の記憶、特に死ぬ瞬間の記憶が抜けている。

銀の例を見れば親しい人との接触だろうけどそんな人はこの時代にはいない。

となればインパクトのある光景か縁のある物かな。

とりあえずこの環境に慣れるのを優先させたい。

その途中で思い出すかもしれないしね。




日常続きだったのでここでシリアスを入れました。
オリキャラも深堀のタイミングですからね。

次は最後の1人のルート開通です。
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