生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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思いを馳せる

今日もデート…ではなく交流会が行われる。

前回同様あちこち行くと思い覚悟を決めていたんだけど…

 

「雨かぁ…」

 

「雨ですね…」

 

「止みそうにないね…」

 

しっかりとした雨が降っていて水音を鳴らしている。

今は杏と蛍の3人でカフェに入り雨宿りをしていた。

本来の計画は散歩をしながら古本屋をめぐるはずだったのに天気予報が外れこの結果に。

降水確率20パーセントって言ってたから折り畳み傘を置いてきちゃった。

これも全て神樹ってやつの仕業なんだ…!

 

「時間もまだありますしこのまま待ちましょう」

 

「ここで女子会開くのも悪くないしね」

 

「ならお題決めないと」

 

まぁこのメンツならほぼ決まってると思うけど。

 

「でしたら好きな本について語りましょう!」

 

知ってた。

しかし好きな本かぁ。

本屋には行くけどあらすじ読んでいいなって思ったら買うタイプ。

 

「私は恋愛モノかな。両想いでカップルになっていく王道展開が特に好きだね」

 

「いいですよね~…お互い片想いだと思ってて一歩を踏み出せないじれったさがたまりません」

 

スイッチ入り始めたね。

珠子と燐の時もそうだけど話し始めると無限に話してる。

趣味が合う人が少ないから合致した時の爆発力が凄いんだろな。

私はキラキラした目をしながら話し込む2人と外を交互に見ながらコーヒーを飲む。

少し小降りになってきている。

 

「美穂は何かあるの?」

 

蛍が私に話を振って来た。

 

「んー…私は逆転劇が好きかな。倒したって思ったらまだ残っていて負けそうになるけど気合で倒し切るとかね」

 

「男の子が好きそうな展開ですね。急にやってくるのでハラハラします」

 

「一番感情移入しちゃう瞬間だね。心の中で応援するくらいだし」

 

杏が恋愛系を読むのは知ってたけどバトル系も読むんだ。

意外とストライクゾーン広めなのかも。

 

「そういえば美穂さんって絵描くの上手いですよね」

 

「ただの落書きだけどね」

 

「いつも言ってるね。上手いのに自覚しなんだから」

 

「数こなせば必然的になっちゃうって」

 

スポーツと同じ何度もやれば上手くなる。

ただやる気があればいいだけ。

 

「お願いがあるんですけどいいですか?」

 

「構わないよ。どんなお願い?」

 

「えーっと…このシーンを描いて欲しいんです」

 

しおりに挟まれたページを読む。

主人公が好きな人から告られる場面。

なるほど、壁ドンですか…

リアルでやられるとイチコロだね。

 

「了解…っと。しばしお待ちを」

 

鞄からペンと紙を取り出し描き始める。

最初に読んだイメージをそのまま絵にする。

こういうのは直感でやるのが1番いい。

ペンでスラスラと描いていく。

目線をバチバチ感じるけど頑張って無視しよう。

 

「こんな所かな。大雑把な絵だけど許してね」

 

ご所望通り壁ドンシチュ。

下から覗くアングルで主人公の顔をメインにした。

 

「凄い…!私の思っているイメージ通りです!!」

 

「それは良かった~」

 

少し冷めてしまったコーヒーを飲み干す。

頭使うから沁みるんだよね。

 

「私も挑戦してみようかな…」

 

「なら授業中の落書きから始めるのを進めるよ。暇な時こそ創作意欲ってのは湧くからね」

 

「それはさすがにまずいんじゃ…」

 

ふと外を見てみると雲の隙間から日が差していた。

 

「ちょうど止んだっぽいね。そろそろ動きますか」

 

その後、計画通り古本屋ツアーが始まった。

趣味になると体力増加するんじゃないかって思うくらい歩いた気がする。

ルートは蛍が事前に決めたらしくスムーズに行けた。

前回は数が少なかったけど行き当たりばったりから変に疲れた。

この2人だとかなり安心する。

 

「それでも荷物持ちなんだけどね…」

 

「重いなら持ちましょうか?」

 

「大丈夫だよ。2人は気にしなくていいから」

 

逆に持たせたら私の存在意義ゼロになっちゃうよ。

それにまたオーダー受けたしね。

外野の反応見るのも少し楽しみになってきてる。

2人が夢中になっている間に通知を開く。

『いい笑顔だね!楽しそう~』

『羨ましいぞー!今からそっちに行くからな!!』

1人拗らせ気味なんですけど…

まぁ千景と銀が止めるでしょ、多分。

気付けば夕方になっていて帰宅する人が多くなってきた。

 

「今日はここでお開きかな」

 

「なんかあっという間だったね」

 

「ここまで盛り上がったの初めてです」

 

良い顔してるから成功って事で。

蛍とはバスターミナルで別れ解散となった。

 

―――――

 

部屋に戻って早速買ってきた本を読もうとしたらいきなりタマっち先輩が入って来た。

何かあったんじゃないかなって一瞬思ったけど『今日のデートの報告を聞きに来た』って言われた。

別にデートじゃないし美穂さんの友達だから不審に思う事無いのに。

隠す内容でもないから簡単に話す。

 

「…って事があったんだよ」

 

「なーるほどな。随分楽しそうにしてたしな」

 

「何で知ってるの?」

 

「うぇ!?そら…話の流れから察してだっ…!」

 

あたふたと手を振りながら弁明してる。

 

「フフッ。どうせ美穂さんから送られてきたんでしょ」

 

「えええ!?タマなんも言ってないぞ!」

 

「私もタマっち先輩の交流会の写真送って貰ってたからね」

 

「二重スパイか!やるなアイツ~」

 

あの時も私が欲しいと言ってなくても送られてきたんだっけ。

美穂さんと一緒だとしても少し不安な気持ちになってた。

でもあの写真見て気持ちが晴れたから感謝しかない。

 

「そうだ、4人で交流会開こうよ!」

 

「4人でか?」

 

「うん、仲良くなるだけじゃなくてお互いの事知った方がいいしね」

 

「なら全員でやろう!皆でやった方が何倍も楽しいからな!」

 

ニカッと笑いながら提案する。

いつも周りを気にして声をかけていた。

そういうタマっち先輩がかっこいいんだけど少しズルい。

 

「そうだね。皆でやろうね」

 

タマっち先輩にやらすと混乱しそうだから私が皆に声かけて予定空けてもらわないと。

この日々がいつまで続くか分からないけど楽しんだもの勝ちだね。

 

―――――

 

いつもの映画館に座っていた。

主催者の気配も無い普通の上映会。

この夢も久しぶりと思うのも変な話。

流れているのは一人称視点で撮られた映像。

片膝をつき小型の盾を構えバーテックスの攻撃を耐えている。

いつもなら特に考えず見るのに不安にかられる。

盾にひびが入り今にも壊れそうなのに動かない。

そして砕け散り白い針が貫いていく。

視点が変わり画面いっぱいに誰かが倒れていた。

今回はモザイクや画角で誤魔化すことなくハッキリと映っていた。

 

「あ、あああ…!」

 

血を流し生気を失った杏だった。

つまりこの視点は珠子…

バンッと停電が起こったように電気が消え真っ暗になった。

 

勢い良く目を開けると見慣れた天井があった。

もう冬になるのに寝汗が凄い。

今日の夢は怖かったなぁ…

…あれ、なんの夢だったっけ?




杏ルートでした。
あんたまはオリキャラ混ぜないと後々ややこしくなるんで。
これで全員分のルートは開けました。
これで安心して日常送れるね!
ん?最後不穏だって?
まぁそんな甘くないですよね…

次回は久しぶりの戦闘回です。
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