黒花さんが真剣な面持ちで我が家を訪れた。
「緊急の依頼だ。小型の残党を発見したがその隊との連絡が途絶えた」
「山登って探しているんですか?」
「いや、駐屯地跡からヘリを飛ばして探し報告するようにしている」
たしか高知の端にあるはず。
燃料よく保つなと考えてしまう。
「墜落でしたら煙が見えると思います」
「それが見えないんだよ。最後に確認された位置から巣の真ん中に落ちた可能性もあるが」
「私たちへの依頼はその隊の安否と残党狩りの両方をするって事ですか」
「その通り。事は急を有する。悪いが全員今すぐ出動だ」
私たちは黒花さんの車で最後に確認された場所の近くに向かった。
今回も山登りだけど範囲が広い。
人数が多くて良かった。
「全員インカムは正常だな?」
皆変身した状態で頷く。
人数分用意してるとか仕事はやすぎでしょ。
「今回は逐一報告をして貰う。連絡が途絶えた場合は異常事態が起こったと判断する」
「分かりました」
「…無事に帰って来い。最優先は自分たちの命だ」
前回は普通に送り出してくれたのに念押しが強い。
それだけ危険って事だね。
「行ってきます」
私たちは黒花さんに背を向け山の中へ入っていった。
普通に登山したら時間かかりそうな傾斜を難なく超えていく。
これが生身でも出来たらなと思ってしまう。
「間もなくポイントに着きます」
『了解、敵が潜んでいるかもしれないから周りを警戒しろ』
「でしたら横に並んで捜索しましょう。視認できる範囲を保ちながら行けば対応出来ます」
杏が即座に提案する。
いつも私が指示を出していたから少し調子狂う。
「分かった。何か見つけたら報告して」
それぞれ隣の人が見える距離まで展開し捜索を始めた。
ここから徒歩になるけど飛びながらだと見落としが発生するから仕方ない。
それに傾斜もそこまで急じゃないから体への負担は少ない。
にしても残党を見つけて攻撃されたにしては変な話。
ヘリが無暗に巣に近づくことはありえない。
飛んで攻撃したなら姿が見えるし無線に音声が残るはず。
音もなく消えるなんて異常としか考えらえない。
「そろそろ限界域だね」
これといった成果もなく残党がいるとされるポイントに近づいた。
『これ以上行くと敵も多くなりそうね』
『このまま突っ切って倒すか?』
『先に倒して探すのも手だと思います』
「そうだね、これより敵陣へ強襲をかける。みんな気をつけて」
それぞれの武器を握り地面を思いっきり蹴りあげる。
周りの景色が線のようになり風が強く当たる。
枝に当たらないよう避けながら向かう。
「見えた!」
巣の正体は小さな村だった。
建物が何家か残っていてその周りを小型が飛んでいる。
何か守ってるようにも見える。
「行くよビット!」
盾からビットを切り離し私の周りに浮かせる。
『千景さんと銀ちゃんは前に行ってください!』
『分かったわ。全部鏖殺してやる…』
『おっしゃあ!暴れてやらぁ!』
『タマっち先輩は2人が疲れたら交代で前に出て!』
『任せろ!その間あんずは絶対守る!』
『美穂さんは前衛の支援お願いします!』
「了解!背中は任せて!」
まるで軍師だ。
指示が的確だし初共闘なのに皆の呼吸が合う。
これが西暦の戦い方なのかな。
接近してきた小型を叩き切る。
皆も一撃で倒していくから数が減っていく。
はずなのに前回よりも敵の数が多く感じる。
というか…
「増えていってない!?」
ワラワラとどこからか沸いてきている。
倒しても倒してもキリがない。
『このままだとジリ貧よ…』
『うわっと!こいつら物陰に潜んでる!』
『こっちまで来たぞ!埒が明かないな!』
『どこから出てきてるの…!』
戦いながら沸き位置を探す。
すると神社らしき所に小型が異様に集まっていた。
「そこか!」
ライフルモードにして狙いを定める。
無防備になるからビットを防御に回し集中する。
ロックオンし白い弾が発射され神社にぶつかる。
小型を巻き込みながら爆発し木材の破片が辺りに飛び散る。
煙が晴れると穴が開いており奥から蟻のように小型が出てきている。
「なら穴ごと壊すまで!」
高く飛び穴の真上を取る。
今度はこの状態で撃てる最大火力で内部ごと壊す。
被害は最小限にしたいけど今回は無理そう。
チャージをしながら狙いを絞ろうとしたその時、穴の周りにヒビが入り壊れていく。
違和感を感じたと同時に私に向かって何かが伸びてきた。
盾を即座に出し防御姿勢を取ったけど相手の威力が高く吹き飛ばされた。
「ガハッ…!」
地面を何度かバウンドし止まった。
肺の空気が全部吐き出され胸が苦しい。
「危ない!」
千景が私の前に立ち鎌で襲ってきた小型を倒した。
「ごめん、助かったよ…」
「無理しなくていいわよ。それよりもアレ何…」
穴の方を見るとそこには巨大な尻尾があった。
あれは…
「バーテックス!何でここに!」
確かスコーピオンだったはず。
しかし本体が見当たらない。
まさか地面の下に?
そうなると厄介だ。
「みんな尾の先には気をつけて!」
尻尾は私と千景の場所へ振り下ろしてきた。
「クソッ!」
衝撃の痛みが残る身体を無理やり起こし避ける。
『アレ厄介だぞ!あんずどうするんだ!?』
『成長したらさらに手がつけられなくなります。ここで倒しきりましょう!』
『あーもー!やるしかないか!』
「高木さんいける!?」
「ここで寝てる訳には行かないでしょ!」
剣の状態にして盾で防ぎながら根元を叩く、それしかない。
力を足に込め飛び出そうとした時。
『うおおおおお!!』
ノイズで乱れるほどの声。
声の主は銀で1人で突撃していた。
『銀ちゃん下がって美穂さんと合流してください!』
『コイツは…コイツだけはアタシが!』
杏の指示を無視し攻撃を続けている。
完全に周りが見えていない。
「銀のサポートしに行くから星屑の掃討お願い!」
『分かりました!』
「行こう千景!」
「えぇ。あの状態はマズイわね」
小型の戦闘を極力避けバーテックスの元へたどり着く。
銀は斧を振り下ろししっぽを切り落とそうとしている。
「何やってるの!」
「コイツのせいでみんなが苦しんだんだ!だからアタシが倒さないとダメなんだ!」
「バカ!周りを見な…っ!ビット!」
話している間に小型が隙をついてくる。
油断も隙もありゃしない。
バーテックスが尾を思いっきり振り回した。
直撃はしなかったけど吹き飛ばされる。
お陰で距離を置けたから一旦集合し小型を捌きながら対策をたてる。
「本体が地下にいるならアレを倒しても終わらないと思う」
「いえ、私たちの時代には『進化体』という未完成のバーテックスと言える存在がありました。それと同じならあの尾が本体です」
「なるほど。ならアレの弱いところを叩けば仕留めれるって事だね」
「結論としてはそうなります。ただ、綻びがどこにあるか分からないんです」
「あの時は乃木さんが見つけたポイントを狙ったのよね」
「なら同じことをするだけだね。大丈夫、そのポイントは大体検討ついてるよ」
「ホントか!」
「神世紀の勇者の力見せなきゃね。銀大丈夫?」
さっきまで取り乱していたけど今は落ち着いてきている。
無理もない、だってアイツは…
「みんなごめん…ついカッとなって」
「大丈夫。辛いけど力を貸してほしい」
「あぁ、分かってるよ!」
サムズアップして返してくれた。
「タイミングは私が言いますので合わしてください」
「分かったわ。高木さん、出来ればビットで支援して」
「ギリギリまで頑張るよ」
「タマも行くのか?」
「そうだよ。私は大丈夫だから行ってきて」
「なら行ってくる!なぁにあんなのすぐ倒して戻ってくるからな!」
「皆となら絶対勝てる!もう1人じゃないしね」
「体力も限界に近いと思うけど最後の最後まで油断しないでね!」
私たちはバラバラに飛び出す。
案の定小型が押し寄せてきた。
「やるしかない…ビットフルオープン!」
8つのビットを展開した。
全てのビットの位置を把握し移動経路の指示する為を頭にかかる負荷が大きくなり割れるくらい痛い。
「グッ…!この程度耐えろ私!」
何とか耐えながら狙撃用を2つ千景の方へ送り他はバーテックスの周りを避けながら飛び回せる。
ビットを最大限まで活用し反応が強いところを探す。
時間はほぼ無い、みんなが私の返答を待っている。
何処だ、何処にある…!
段々慣れて来たのか反応に強弱がついてきた。
「…見えた!穴より数えて2段目、中央やや破損している2か所、針の根本!」
正直焦っていて自分でも何言ってるか分からない。
データファイルが散乱したパソコンみたいに思考が上手く繋がらない。
でも口から出たのは紛れもなく真実。
『今です!』
それでも皆理解したらしく杏の掛け声と同時に攻撃をしかけていた。
弱点を全て壊されボロボロとその形を崩していた。
残党はまだいるけど強敵は倒した。
「このまま残りを倒――――」
私の声は轟音にかき消された。
山肌が崩れ空に勢いよく伸びる尻尾。
「二体目!今まで気付かなかったなんて!」
空から何か降ってきて民家を押しつぶした。
正体は残骸となったヘリ。
コイツが撃墜した時に絡まって地中に持っていったから見えなかったんだ。
しかも出てきた位置は私たちの後方。
まさか狙いは!
「杏逃げろ!」
ビットを飛ばすも小型が壁となって動けない。
まるでそこで仲間が死ぬのを見てろと言わんばかり。
『コイツらしつこい!』
『全く動けない…!』
「このッ…邪魔するなぁぁぁ!」
剣を振りまとめて切ってもその先がある。
完全に万策尽きかけている。
杏の声も聞こえない。
私はどうすれば…
「美穂!タマだけでもあっちに飛ばせるか!?」
近くに珠子が降り立った。
「向こうに?そんな事…」
そこでハッと気づく。
攻撃してこないならあの戦法が可能だ。
「少し危険なフライトをご所望ならいけるよ」
「構わん!好きにやってくれい!」
「承った!」
即座に切り札を発動させる。
服装が変わり鎧を纏う。
しかしあの時と違い全身黒くなっていた。
「これが美穂の切り札…」
「見とれている時間は無いよ。私が拳で殴るから足で受け止めて」
かつて園子の槍の雨を超える為にやった人間大砲。
あの時は真っ直ぐ飛ばしたけど今回は斜めにやるから私の難易度が上がる。
それでもやるしかない。
膝をつき角度を調整し右手に力を込める。
「舌嚙まないでね!」
「おう!」
珠子がジャンプしドロップキックのように足を私に向ける。
右手を振り珠子を押し上げる。
小型の壁をオレンジの光が飛んでいく。
後は頼んだよ。
―――――
みんなと分断されてしまった。
小型が攻めてこないのは幸いだけど相手が悪すぎる。
出現位置が近く射角が少し足りず、下がっても小型の壁がある。
助けを求めても故障なのか反応が無かった。
つまり私1人で戦う状況。
あまりの絶望に腰が抜けて立てないし胸が苦しい。
まるで心臓を貫かれたみたい…
ユラユラと尻尾が揺れ狙いを定めているかのように感じる。
私は一番体力が無いし病弱気味で若葉さんのような強さも友奈さんみたいな根性も無い。
こんな所で終わっちゃうのかな。
針が私に向かってくる。
ごめんねタマっち先輩…
次生まれ変わったら今度は…
「あんずーーーッッ!!」
声が聞こえたと同時に私の目の前で土煙が舞い思わず腕で顔を覆う。
ゆっくり目を開けるとそこにいたのは
「全く、あんずはタマが居ないとダメなんだから」
「えっ…タマっち先輩…?」
小さな背中を私に向け尻尾と対峙していた。
その姿がとてもカッコよかった。
「言ったろ。倒したらすぐに戻るって」
何勝手に諦めてたんだろう。
まだ死ねない理由は山ほどある。
私は目元を拭い立ち上がる。
「来てくれてありがとう」
「なーに、アイツはタマに任せタマえ!」
「違うよ。
タマっち先輩の横に並ぶ。
いつも前に行っちゃうからこんな機会滅多にない。
だから少しだけ背伸びしちゃった。
「あぁ!アイツを倒して帰ろうな!」
「うん!」
私はクロスボウを構える。
もう私の中に恐怖は無かった。
みんな大好きのアイツがついに登場だよ〜!
しかも2体も〜!
やったね!これでトラウマが復活するね!(血涙)
まぁさせる気はないですけどやはり因果を変えなくちゃ行けませんよね。
果たして因縁の相手に対してどう立ち向かうのか気になりますねぇ…