生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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初陣

翌朝。

夢に変化は無かった。

そのまま起きてご飯を食べ洗濯物をかけ登校。

教室に入ろうとした時、予想してたとは言え1番聞きたくない声を聞いた。

 

「おはよー!」

 

「えっ…ええ。おはよう友奈」

 

右から友奈が来た。

相変わらずの笑顔。朝から眩しいってば…

 

「今日は東郷さんと一緒じゃ…」

 

「そんなに会いたかったのかしら?」

 

ヒェッと小さく吸ったあと思わず息を止めてしまった。

友奈と同じ教室なら右から話しかけるのがセオリーなのになんと左にいた。

気配なんて話しかけるまで気づかない上車椅子。

元々忍者でしたって言われたら納得するけど…いやそうであってください。

 

「ねね!入部の件考えてくれた?」

 

キタコレ…

恐らくはぐらかしても放課後来るのは確定。

挙句東郷さんの目は昨日よりも冷たい。

『断ったらどうなるか分かりますよね?』

そう言ってるに違いない。

なら先手を打つのみ!

 

「次の部活見学しに行くよ。見てから考えても遅くないからね」

 

先延ばしの策ではあるが少なくとも『行く』事には変わりはない。

おかげで夕飯の焼きうどんを焦がしたが。

 

「やったぁ!じゃぁ明日待ってるね!」

 

友奈が両手を私の前に出したのでハイタッチをした。

 

「明日…分かった。場所は家庭科準備室だっけ?」

 

「そうだよ〜。じゃぁ待ってるからね!」

 

トテトテと私の後ろを周り東郷さんの車椅子の後ろに立ち教室に入っていった。

「あ!東郷さんもハイタッチしよ!」

 

突然の提案に私は驚いたが東郷さんは慌てることは無かった。

 

「ええ。待ってますからね」

 

なんか念を押された気がするが構わず東郷さんに合わせ少ししゃがみハイタッチをした。

その時目の前にノイズがはしった。

昔の映像を見るかのような感覚。

そう…夢と同じ。

ただ、違うのは誰かの目線だった。

 

『███。』

 

ノイズによって音は完全には聞こえないが何か別れの言葉に感じた。

 

「美穂ちゃん!」

 

友奈の声で再び学校に帰ってきた。

私は東郷さんの手を強く握っていた。

 

「あっ…ごめん!大丈夫だった?!」

 

「大丈夫よ…ただ、びっくりして…」

 

思わず目線をさげてしまった。

私自身なんでそんな行動を取ったのか検討もつかなかった。

それにしてもさっきのは夢?それとも…

2人に謝罪をし教室に入った。

席に座っても先程の件で頭がいっぱいだった。

 

予鈴がなり起きた私はそのまま授業を受けた。

いつもと変わらない平凡な学校生活を過ごしていた。

朝の件を除いて。

ふと周りに意識突然先生の声がしなくなった。

考え事をしていたからてっきり自習か問題を解いているのかと思って周りを見た。

横の男子がペンを片手に止まっていた。

それだけで状況を把握するには充分。

勢いで立とうとした時、隣から話し声が聞こえた。

やっべぇぇ…

今の私は『ただの一般人』。

まさか警報内を動けるなんて事を悟られたら終わり。

音を出さないようペンを握り教科書と睨めっこを開始。

今は耐えるのみ。

少しして窓が眩しくなってきたから目を瞑った。

 

ゆっくりと目を開けると私は巨大な根っこの上にいた。

「これが噂の樹海化かぁ…」

 

空は黒く地面は根っこというよりは幹で覆われていた。

私の後ろは蜃気楼のようにモヤモヤしていたが白く輝いている。

そこにいるエノキみたいなのが神樹。

この世界を作った元凶。

こんな異界に前置き無しに放り込まれたら固まるに違いない。

まぁ実際なってるんだろうけど。

 

「さてさて…しっかり動いてね」

 

と言いながらスマホを操作しアプリを開く。

すると近未来的な音がなり光に再び包まれた。

黒のインナーをつけその上から黄色のパーカー、オレンジ色の手袋、白のショートパンツ。

カラフル過ぎませんかね…

黒花さんくらいカッコイイの欲しいから後で聞いてみよう。

とにかく今は仕事しないと。

と言ってもすることは簡単、監視だ。

人類の敵、バーテックスを倒す唯一の対抗手段『勇者』。

それを纏えるのは無垢な女の子。

一部は大赦で戦闘訓練を行っているけど殆どは素人。

最悪全滅し神樹様に到達され滅ぶ可能性もある上、その力を乱用し破滅をもたらす恐れもある。

そこで勇者にはなれなかった落ちこぼれの中でも優秀な逸材を擬似的に勇者としサポートする。

今回は監視がメインなので後方から双眼鏡片手に見ている。

大赦の方もスマホを盗聴してデータを回収している。

私も地図でお互いの位置も把握できる。

いやプライベートもクソもないなこれ。

しかも、私は管理者権限で位置情報は勇者達に私は映らない。

権限最高かよ…!

 

にしても、まさか友奈と東郷さんが入っているとは…

奥から一体のバーテックスがゆっくり接近してくる。

縦長でヒラヒラした羽をなびかせていた。

確か…ヴァルゴな筈。

12星座の名を冠してるらしいがなんでそこだけギリシャ神話なのだか。

まぁ名前なんてどうでもいい。

 

まだ戦闘が始まらなさそうなので追加の確認もする。

自分の武器だ。

意識を両手に集中させる。

すると、右手に長い西洋風の剣、左手には身体よりも大きな盾が現れた。

なんで西洋風なのかは分からないが黒花さんは『聖騎士(パラディン)』と名付けたらしい。

確かに騎士だけど私勇者なんだけどね。

剣と盾の重さや動きやすさを確認しながら時を待った。

剣は申し分ないが盾は機能上かなり重い。

まぁてんこ盛りだし仕方ない。

確認に夢中になっていたらヴァルゴの下の管から1発の弾が射出さ爆発した。

位置的に勇者がいるところだ。

 

「先行取られたかぁ…どう来るんだろね」

 

武器をしまい少しワクワクしながら見守っていた。

その位置から黄色と黄緑の光が溢れた。

変身の光ってあんな輝くのか…

名前は…犬吠埼風と犬吠埼樹…姉妹じゃん!

慌てて双眼鏡で確認する。

確かに髪質が似ている。

いいなぁ〜…ちょっと羨ましい。

2人はヴァルゴの弾を飛びながら避ける。

勇者になってしまえば身体機能は大幅に強化される。

私も最初は振り回されてたっけ。

 

突然ヴァルゴは砲撃をやめ巨大な弾を放った。

先程よりも発生速度は下がったが威力は上がった。

戦況は一気に変わり2人は吹き飛ばされた。

残るは未変身の友奈と東郷さんのみ。

けど友奈がここで終わるわけない。

ヴァルゴもそこに狙いを定め放った。

今まで1番大きい爆音がした。

煙の中からピンクの光が現れた。

友達を大切にするからこそ絶対動くに決まっていたけどギリギリすぎるって…

しかし、東郷さんは変身しなかった。

覚悟がないからだろう。

そのまま3人でヴァルゴを圧倒し、御霊を出させトドメは風さんの大剣で押しつぶすゴリ押し戦法。

人柄が出てるなぁ…

突然周りから花びらが巻い始めた。

樹海化が溶け始めた証だ。

あれ、そういや私何処にスポーンするんだっけ…

そんな事を考えていたがゆっくりと意識を無くした。

 

 

目の前には適当に開いた参考書があった。

恐る恐る顔を上げるといつもの授業風景があり先生が黒板に何か書いている。

よかったぁ…変なとこにいなくて。

本来はこの学校の屋上にスポーンするらしい。

てことはあの4人は突然居なくなった事になると。

なんかシュール。

「ではここ高木さん。回答お願いします」

「へ?あっ、はい!」

なんでこのタイミングで指すかなぁ?!

 

 

今日は今までで密な日だった。

そのおかげで疲れが酷かった。

とにかく家に帰ったら今日のレポート書かないと。

黒花さんから戦闘レポートをざっとでいいから出せと言われている。

大赦の仕事の延長だろうけど私が口頭で言うだけじゃダメかな…

そうこう考えていると家に着いた。

靴をしまいバックを床に置きそのままベットへダイブした。

 

「あー…疲れたぁぁ!!」

 

一人部屋に向かって叫ぶ。

なんか言いたくなった時は言うにかぎる。

まぁ枕に顔押し付けて言うから近所迷惑にはならないでしょ。

時計をチラリとみたら17時半。

早いけど風呂に入るか…

制服のまんま浴槽の清掃をし、お湯炊きをした。

その間にパジャマを用意し冷蔵庫を開ける。

昨日の焼きうどん余ってるからそれにしよう。

手抜きしても誰も居ないから大丈夫。

冷蔵庫を閉め沸くまでテレビを眺める。

あくまでBGMのような役割だから中身は気にしない。

少しして沸いたアナウンスがしたので十字架のペンダントを机に置き浴室へ向かった。

 

今日は長風呂にして疲れを流してきた。

ホカホカして心地よいんだよね。

着替えをし、ドライヤーをかけようとした時違和感を感じた。

まるで誰かに見られているような。

洗面の鏡越しに後ろを見てもドアはしっかり閉まっている。

となるとその奥か…

不法侵入と言っても私のマンションは一応オートロック式。

よく住人では無いのに後ろからついて行って入る人がいるがそれでもドアを開けるまで行くのは至難の業。

一体なんのために…?

考えても埒が明かない。

ここは朝と同じく先手必勝。

黒花さん直伝の対人用の武術で押し切る。

まぁナイフ持ってたら詰みだけど。

パジャマに着替えドアの前に立つ。

まずは大声を上げ判断を鈍らす。

その後は相手を探し接近し締め上げる。

うん、イメージ完了。

少し息を吐き、思いっきり開けた。

 

「動くな!」

 

身体を飛び出すように廊下に出る。

リビングに確実にいると想定したからだ。

犯人は確かにいた。

いたが…

 

「あっ…えっと…」

 

そこに居たのはボロボロの制服を着た少女だった。




まずは、あけましておめでとうございます!
今後も薫製をよろしくお願いします!
さて、ここで本編に介入し始めましたけど主人公まさかの静観。
え?バトルが見たい?
まぁ、そのうち出ますよ…多分…
そして最後。
察する人が大半ですがその通りです。(どゆこと)
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