「タマ堂々のふっかーーーつ!!」
珠子が拳を上にあげ宣言した。
ネットサーフィンしようと端末をいじっていたら『召喚可能』と通知が出てきて押してみたら珠子がポンと音を立て出てきた。
「まずはおかえり、珠子」
「おう、世話になったな!居心地はまぁ…そこそこだったけど」
「本当に傷痛まないの?」
「この通り!」
高めにジャンプして見せるも痛そうにしてない。
「良かった〜。病院に行かなくて済みそうだな」
「そう言えば最終戦の時銀入院してなかった?」
「あー、アレ気失ってただけで目立った傷は無いって言われた」
軽傷なら私の中に入らなくても治るって意味かな。
自己回復ついてないと精霊としている事が変だしね。
「タマっち先輩…」
「あんず、ただいま」
前私の口から言った言葉だけど込められた想いが違う。
「タマっち先輩のバカぁ!!」
「ぐはぁぁぁ!!」
またビンタしてるよ…
しかも私の時よりも強め。
「もう!心配したどころの騒ぎじゃないんだからね!」
「いやそうだけどさぁ…アレは仕方ないだろ!」
「それでもだよ!まだ反省足りないならもっと見せつけるよ!」
「それだけはやめてくれぇ!頭壊れそうだったんだぞ!」
「私も毎回頭の中で発狂されてたからそのぐらいで…」
このテンションでやめろー!とか見せるなー!って言われたら段々申し訳なく感じてくる。
まさか寝取るってこういう事…?
「なら約束して、ずっと一緒にいるって」
「当たり前だろ。絶対離れないからな」
「はいはい。ご馳走様です」
黒花さんが手を合わせて茶々を入れる。
前回の戦闘で気になった事があるらしく訪れてきた。
「まずは任務お疲れ様。犠牲はゼロって事でいいんだよな?」
「とりあえずはその認識でいいと思います」
「了解。報酬は美穂の口座に一括で振り込んどく。分配は任せたぞ」
「あれ?アタシの口座には入れないんですか?」
「そりゃ2人だったから分ける必要は無いがこの人数だ。誰かが馬鹿みたいに使って借金になったら困るだろ?」
確かに1人がまとめて管理した方が支出がわかりやすい。
そうなると家計簿つける必要があるね。
「ここからが本題、お前らが戦ってたあの村についてだ」
2体のバーテックスと珠子消失事件で完全に忘れていたけど気味の悪い村だった。
「調査部隊と共に残った家や穴を調査した。その結果、
「え???」
黒花さんは鞄から真空パックに入れられた一冊の本を取り出し机の上に置いた。
それはボロボロになった日記帳。
「民家に残されていた物の中で保存状態がそれだけ良かった」
私は中から取り出しページを捲る。
ノートは子供の字で書かれていた。
主語が私だから女の子っぽい。
所々読めない部分はあるけど内容は日々の出来事を綴っている。
途中気になる内容があり手を止めた。
『今日私はお役目に選ばれました。これで村のみんなが喜んでくれる。生まれてきたことに感謝しないと―――』
一気に内容が変わった。
お役目?まさかバーテックスと戦っていた?
私は黒花さんの顔を見る。
「たどり着いたか。そこから読んでみろ」
皆に聞こえるよう音読する。
『お母さんは泣きながら喜んでました。お父さんは隣の家に行っておじぎしてました。友達からたくさんほめられました。私は幸せです。』
『今日も美味しいご飯を食べました。お役目が何か分からないけどみんなが笑顔になるって聞きました。早く私も喜ばせたい。』
『おじさんが私の家に来ました。明日お役目があるらしいです。お父さんとお母さんとはなればなれになるけど怖くない。私は―――――』
『娘が帰ってこない。神官は成功したと言うだけ。周りも態度が変わり避けるようになった。』
途中から字体が変わった。
この子の父親が書き続けているに違いない。
『家に落書きや石が投げつけられるようになった。ーーーはずっと笑っている。もう逃げたい。神というなら人を救ってみせろ。』
『絶対に―――――』
「ヒッ…!」
その先のページを見た瞬間杏が小さく悲鳴をあげた。
見開き1ページに書き込まれた『許さない』の文字。
後半になるにつれ字の形が変わり原型が無くなっている。
「なんだこれ…」
「狂ってる…」
その先は全て白紙だった。
「まさか生贄文化がつい最近まであったとはな。いや、今の大赦も似たものか」
でも限度が違い過ぎる。
勇者システムは戦闘時以外で死ぬことは無いがこれは片道切符だ。
「この子はあの穴にいったんですね」
「恐らく。報告じゃ神社があったと聞くがぶっ飛んじまったからな」
緊急だったし仕方ないでしょ…
元々屋根は抜け落ちていたから仮に残っていても入るのは危険だったかも。
「小型はどうやって繁殖したんでしょうか…」
「自己増殖しか考えられなくない?壁内であの数異常だったし」
「今もどこかで増えていると考えたら恐ろしいな…」
「それじゃあキリないじゃんか!」
「そこは神樹様の力次第」
フワッとしてるなぁ…
まぁ自然災害も起こって分かるものだし対策が出来ても予知はできないのと同じ。
「穴には入ったんですか?」
「オレが単独で行った。中はアリの巣と言えば伝わるか。あとは人間の悪い所を煮詰めた感じだったな…」
黒花さんは詳しく話さなかった。
日記の内容ですらこの酷さならその大元は地獄に違いない。
多数を生かすため少数を捨てる。
醜すぎるけど私もまた…
「あそこは大赦と協力して封印した。もう眠りを妨げる者はいない」
この子も少しでも報われるならいいな。
私は日記帳を返した。
「ありがとうございました…」
「しばらくは無いと思いたいがあればまた連絡する。あと、外の事教えろよ」
黒花さんが出ていったあと気まずい空気が流れる。
信仰が生んだ狂気を目の当たりにしたから。
私は耐性がついているけど4人には受け止めるにはあまりにも重すぎる。
特に千景は境遇が似ている。
「千景大丈夫?」
「え、えぇ…ありがとう」
相当来てるね。
ましてやこっちは死んでいるんだから。
「それにしても外の事って?」
そうだった、最後の最後に爆弾渡されたんだった。
気まずいこのタイミングで言わなくてもいいのに…
でもいつか見せなきゃいけない現実でもある。
「まずは壁に行こうか」
私はベランダに立ち変身した。
昼時だけどまさか空を眺める人はそうそう居ないだろう。
全員変身して飛んでいく。
海を越えていく必要があったけど私の盾で足場を作って対応した。
壁に来るのは園子と戦った時以来。
そういえば銀は壁の上に立ったけど外には出ていってないのか。
「これから見るのは人類が鳥かごに逃げた末路。そして世界が抱えている問題そのもの」
結界を抜け地獄を見る。
相変わらずの暑さと大量の小型、そして建造中のバーテックス群。
変化が無いのはいいけど着実に次の侵攻の準備は進んでる。
「は…?異世界かここ…?」
「これが四国の外…何もかも無くなってる…」
「諏訪は、諏訪は残ってるの!」
千景に胸ぐらを掴まれた。
聞いた事ない名前だけどその結末は同じだ。
「ここ以外全て持ってかれたらしいよ。例外なく」
「そんな…じゃあタマ達がやってきた事って…」
皆ショックを受けている。
勘のいい小型は事前に飛ばしたビットで対応している。
この状態で戦闘しろは言えない。
千景から解放され話続ける。
「私が知ってるのはほんの少しだけ。300年前に何があったか、どんな思いで決断をくだしたのか。それは当事者にしか分からない。今を生きる私たちにできるのはその事実を受け止めるのみ」
淡々と話すけどこの風景に慣れただけ。
てか説明なら絶対黒花さんの方がいいって。
本当に少ししか知らないんだから。
そろそろビットの処理を越える量が来たから全員を結界内に戻す。
ついでにライフルモードにして適当に撃ってみる。
壁を越えても弾は残るも段々威力が下がっていった。
この結果は頭の片隅にでも入れておこう。
いつか役に立つ日が来くるかも。
外の世界をどう捉えるかは各勇者次第。
さすがに壁を壊す暴挙は起こさないとは思うけどメンタルが再び壊れるかもしれない。
小さな変化に気を使う必要があるね。
こういう時、精霊なんだから心で話せる機能とかあればいいのになぁ…
ーーーーー
「山で不発弾が爆発。被害は無しか…」
「あ?何言ってんだ?」
「分かる人には分かる嘘のつき方だよ」
「お前と組んで4年経つが理解出来ねぇな」
「人の中身を理解しても意味は無いよ。それすら見せかけなんだから」
「はぁ…で、アイツそろそろ回収するんだろ?上手くいくのか?」
「このまま会っても彼女は動かないさ。だから先に餌を取りに行かないとね」
「チッ、その餌も大変なんだが」
「報酬を前払いしたんだ。それなりに頑張って貰わないと」
「傭兵である以上クライアントには従うさ。やり方はこっちに任せてもらおう」
「極力傷はつけないでくれよ」
「腕は訛っちゃいないさ」
「では頼んだよ、
以上、真実回でした。
信仰心ってめっちゃ怖いなぁと思いました。
最後セリフしかないですが次回予告みたいなものです。
ここでは詳しく言えないので想像しながら読んでもらえると嬉しいかなと。
次回は日常回です。