園子誘拐事件から数日、勇者部は一時休部となった。
常にペアとなりお互いの安否を確認しあっている。
友奈が気になって通話したけど大丈夫の一点張り。
東郷に任せる形になるけどそうとうメンタルに来てるかも。
乃木の長女が誘拐された事に焦りを感じたのか大赦が警察に全面協力し捜査にあたってるとの事。
犯人は毛髪ひとつも残さず消えており遺留物がゼロ。
防犯カメラ及びカードキーにハッキング跡が見られたけど使用データそのものが消されていた。
この事件明らかに異質すぎる。
犯罪そのものは発生しているけど強盗や暴行といった軽い刑。
誘拐なんて珍しいレベルだしメリットも無い。
そんな事を考えながら私は1人自室に籠り銃のメンテナンスをする。
かつて壁の上で東郷に牽制で撃った物。
始めて他人から貰ったプレゼント、そして私の人生を変えた呪物。
手放したくても本能でそれを拒絶する程沁みついてしまった。
メンテナンスを終え銃をゆっくり構える。
引き金に手を置くだけでもの凄く安心するのが実に気持ち悪い。
安心感を振り払い机の中にしまってカギを閉める。
普通に盗まれそうだけど引っ越しの時にもバレなかったからセーフ。
部屋から出ると皆、普段の生活をしている。
精霊とはいえ勇者である以上ターゲットになると考え事件については説明した。
すると私の端末が鳴った。
「電話…?」
それにしても音が大きいような…
「あっアタシも」
「タマもだぞ」
「私もです」
「私にもかかってきたわ」
「「「「「え?????」」」」」
同時に電話?しかも相手不明。
出ない訳にはいかないから全員で出る。
『やぁ、初めまして勇者諸君』
相手は男性だった。
冷静な声でどこか知的に感じる。
『この通話は録音だから質問は聞かないよ』
だから同時にかけれるのか。
『僕が乃木園子を誘拐した主犯。彼女には怪我1つさせてない。要件は君たちの実力を試させて欲しい。時間はメールが届いて1時間以内。場所はこちらで指定する。この電話をかけた人間以外にこの事を漏らす、もしくは来なかった場合は乃木園子はこの世からいなくなる。じゃ良い返答を待ってるよ』
一方的に話しかけられ勝手に切られた。
まさか実行犯から電話が来るとは思わなかった。
「…どうする?」
「これは行くしかないわね」
「そうですね。私たちに拒否権は無いようです」
端末が鳴りメールが届いた。
「早く行かないと園子が危ない!」
「行こうみんな!」
私たちは指定された場所へ急いで向かう。
そこは廃ビルだった。
規制線が貼られているけどボロボロになってて意味をなしてない。
中へはいると鉄骨と床以外何も無く殺風景。
「よぉ、死神」
場所の影響かかなり低く聞こえた声が後ろからした。
見てみるとガタイのいい男が柱に寄りかかっていた。
「4年ぶりの再開だ。楽しくいこうじゃないか兄妹」
「悪いけどアンタみたいな兄を見たことないんだけど」
「ハッ、お前は俺と同じってだけだ。面識は少ししかない」
「園子はどこにいる!」
銀が割り込むように聞いてきた。
それだけ切羽詰まっているんだろう。
「ここにはいないさ。アイツから解放するなんて聞いてないだろ?」
「目的は何だ。私はたちが勇者と気づいてるんでしょ」
「そら決まってるだろ?」
男は腰から銃を抜くのが見えた。
行動と狙いを予測し近くの柱に隠れる。
バンッと乾いた音が響き隠れた柱の破片が飛ぶ。
「殺し合いに決まってるだろ!」
「全員姿勢を低くして柱に隠れて!」
目標が私だとしても流れ弾が当たるかもしれない。
狙いがかなり正確。
これはやばい…
「どうした!隠れてるだけじゃつまらねぇだろ!」
「あなたが園子を誘拐したの!」
「それがなんだ!仕事の話持ち込んでどうする!」
コイツが園子を誘拐したのか!
お前が…!
「よくも…!」
私は足元の石を右に蹴り左から時間差で飛び出した。
案の定、男は石に注意をひかれていた。
「これで!」
右肩を狙い放つ。
「うおっと!」
ギリギリ反応され肩を掠めていった。
外したのを見て即座に数発を走りながら撃つ。
男も近くの柱に翻すように身を隠した。
「これだこれ!俺に足りなかった幸福感だ!」
「人殺しがそんなに楽しいかね!」
「生死をかける戦いが楽しいんだよ!雑魚は殺ってもつまらんからな」
「貴様ァ!」
私は隠れながら柱を撃つ。
男は一向に出てこない。
「射撃センスは現役と変わらないな。だが行動が大胆になっているのは悲しいな」
「アンタにアドバイス貰っても嬉しくないね!」
「まぁいい、今日はここまでだ。今度会った時はお互い死ぬまで殺ろう」
「逃がすとでも!」
私は男のいる柱へ走る。
その時黒い物が飛び出てきた。
「ヤバいッ!」
足で速度を無理やり落とすも間に合わず爆破に巻き込まれ吹き飛ぶ。
ただ、柱に当たることはなく床をゴロゴロと転がったから大きな怪我は無かった。
「ゲボッ、ゲボッ…みんな大丈夫!?」
「なんとか〜…」
「なんだよアイツ!めっちゃ強くないか!」
ホコリを叩き立ち上がる。
爆破で床が抜けていた。
まさか手榴弾を投げてくるなんて…
「美穂さん、今までの発言は…」
「それ含めて帰って説明するね」
派手にやったから警察が来るかもしれないから急いでビルを出た。
ホコリで汚くなったからシャワーを浴びてスッキリする。
リビングに戻ると神妙な面持ちで待っていた。
「ごめんね。待たせちゃって」
「高木さん、本当に言うの?」
唯一事情をしる千景が心配そうに聞いてきた。
「大丈夫。いつか訪れる日だったしね」
私は3人の顔を順繰り見て大きく息を吐いた。
「4年前、私はある仕事をしていたの。世界を救うお役目というお題目の元ね」
「その仕事っていうのは…」
「
私が覚えている限り、あの日までは普通の家族だった。
誕生日にはプレゼントとケーキをくれたし新年やクリスマスもやったと思う。
でも幸福はあっという間に消えていく。
ある日、私に神託が下ったらしい。
神の世界を揺るがす者を神の子として粛清するお役目。
つまり、小学4年生に人殺しをさせる。
普通に考えて倫理感が狂っている。
同じ人同士争うなんてメリットが無い。
でも私にそれを拒否する理由はほぼ無かった。
ゲームの世界の延長とでも思ってたのかな。
その時覚えているのは怒鳴り声をあげるお母さんとお父さん。
今思えばちゃんと言うべきだった。
その数日後にお母さんは家を出ていき帰って来た。
物言わぬ死体として。
近くの公園で首を吊ったと後々黒花さんが調べてくれた。
お父さんは顔色1つも変えず私の手を握りながら見ていただけ。
そこから私の家に知らない人が訪れるようになった。
その人の顔は覚えてないけどこのスマホと銃を渡されたの。
『これを使って世界を救って欲しい。君は我々の希望だ』
呪いに聞こえるけどお母さんを失って辛いと思うお父さんを元気づけれると思った。
こうして高木美穂は勇者になりました。
一から射撃の練習をしても時間がかかるからシステムがほとんど補助してくれたの。
最初は扇動していた主要人物を、その次は家族を。
この手が血に染まっても何人も殺した。
途中から感情が失せて人形みたいだったかも。
そんなある日仕事で中々お父さんと会えなかったけど機会を貰ったの。
お父さんの姿が見えた時飛びついたんだ。
こんなにやったの!世界を救ったんだよ!だから私の…!
お父さんは笑ってくれなかった。
『やりすぎだ…やりすぎたんだお前は!』
その言葉を吐き捨て私の前から消えた。
そこからの記憶は無い。
気付けば私は病院にのベットで寝てたの。
横に黒花さんがいてね。
最初は依頼主かと思ってたけど気安く話してくれたから困惑した記憶がある。
元気になっても仕事の癖が抜けなくて銃いつも持ち歩いていたんだよね。
呆れて黒花さんに管理されてから段々抜けてきたけど。
射撃も壁の外でバーテックス相手にやってた。
普通に黒花さんに連れてかれて『これが現状だ。悪いが世界は救えんよ』なんて言われてショックだったよ。
自分が殺してきた人が求めた答えがこれなんて酷すぎたからね。
「とまぁ…私が覚えてる限りの話だったけどどうだった?」
「どうって…何でそんな笑顔なんだよ…」
珠子に指摘され気づいた。
こんな暗い話なのに笑ってた。
「くよくよしないって決めたんだ。その人達の存在を否定して今があるなら必死に生き抜かないと死にきれないでしょ」
「強いんですね美穂さんは」
「まさか。裏社会に飲まれ過ぎてひねくれただけだよ」
「美穂の発作の要因はその欠けた記憶なのか?」
「恐らくね。全ての答えがそこにあると思う」
誰が蓋を閉めたかは分からないけど私に残されたパンドラの箱なんだろう。
開ければ自身の破滅に繋がるかもしれない。
それでも私は開けてみたい。
自分がここに入れる理由が知りたい。
ただその1点のみ。
今は園子を助ける事が大事だけどね。
ゆゆゆで対人戦だって!?
しかも野郎だ!
百合の教えはどうなってるんだ教えは!
だってこういうキャラって男の方が映えるし…
茶番は置いといて遂に美穂の過去が解禁となりました。
やり過ぎたかと思いますが千景の闇を越えるにはこれしか無いんです…
オリキャラだからやりたい放題やっても問題ない!
次回から段々重くなっていきます…