生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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死神

『実行犯と撃ち合った!?馬鹿かお前!』

 

開口一番お叱りの言葉を貰った。

連絡が偶々ついたから話をした。

電話主から口止めされたけど終わったからいっか。

 

「軽率な行動をして申し訳ございません」

 

『まぁいい…で相手はお前の顔を知ってたんだな』

 

「はい。私を死神とも言ってたので4年前の関係者かと」

 

『死神部隊。世界のバランスを揺るがす存在を抹殺する独立部隊。消えたと思っていたが生きていたか…』

 

当時は組織名すら知らなかったけど大赦のデータベースを黒花さんとこっそり閲覧した時に判明した。

隊員の名前どころか顔、規模もすべてが謎。

当然私も載ってないけど。

 

「しかし今回の行動は理念に反していると思います。園子が目標ならあそこにいるはずです」

 

『そうだな。とにかく次のアプローチまで待て。どうせ聞いてるだろうし』

 

勇者の端末は一般的に使われているスマホと仕組みがやや違う。

特にセキュリティ面が厳重にされているはずだけど電話主はそれすら突破してきた。

今も聞いているに違いない。

 

「では失礼します」

 

私は電話を切り息を吐く。

4年前解散した部隊と乃木…

考えても関係性が浮かばない。

けどこれで終わらすことも無い。

一体この世界をどうしたいの…?

 

―――――

 

三好との共同生活をしていたが美穂の襲撃を受け、一時解散とした。

用心はしとけと釘をさした上、兄貴が見てくれるだろうし問題ないだろう。

オレは廃ビルへ行き状況を確認してきた。

柱に残された弾丸を回収し大赦に戻って調べてみると既製品ではなかった。

十中八九その男が自分で作った物だろう。

だが、この世界に銃の弾を作る技術は既に存在しない。

300年前、星屑に通常兵器が通用しないと分かり廃れていったからだ。

美穂に支給しているのもオレが再現したレプリカ。

これはオリジナルに近い、いやオリジナルだ。

誰が作ってるんだ…?

地下に停めた車のカギを開け乗り込む。

そのままエンジンをつけようと―――――

 

「久しぶりだね。黒花千早」

 

まるで友人に会ったように男が後部座席から話しかける。

鍵がかかっていたし気配も全く感じなかった。

 

「まさかお前とはな、暁」

 

「ただいま。地獄から帰って来たよ」

 

一番聞きたくないただいま。

 

「ならこの事件の辻褄は合うな」

 

オレはパックに入れられた弾丸を振りながら見せる。

 

「その通り。僕が提供した物だよ」

 

証拠物であるが答えがあまりにも呆気なさ過ぎて助手席に投げる。

バックミラーを見てもヤツがいるのは分かるが駐車場のライトが当たらずちょうど影になっている。

 

「死神を呼び戻して何をする気だ」

 

「僕の目的は変わらないよ。今も昔も」

 

最後の言葉が怒りのように強く言われた。

 

「証明問題か。答えは得たと思ったが」

 

「まさか。君のお陰で良くも悪くも進んだけど」

 

「最後の大詰めか?」

 

「そうだね。言わなくても分かってるだろうけど今の君にかつての力はない。おとなしく見ているのをおすすめするよ」

 

「オレが動かないとでも」

 

「まっ動くかは自由だよ。目的はあの2()()なんだから」

 

フッと後ろの気配が消えた。

振り向くも前から誰もいなかったようにしわ一つない座席。

触ってもぬくもりを感じない。

亡霊かアイツ…

舌打ちをうちエンジンをかける。

正直爆弾仕掛けられていると思って身構えていたがその心配はなさそうだ。

奴の目的は人類の否定。

問を解いたなら実際に見せるだけ。

そうなれば…

 

「美穂か」

 

オレは急いで美穂の家に向かう。

交通ルールすれすれの運転だが今は非常事態、気にしたら間に合わない。

美穂の家の前に車を停め合鍵を使い入る。

家の中には誰もいなかった。

遅かったか…

奴らは既に動いていた。

前回の接触は小手調べ程度、これが本番なんだろう。

とリビングの机に紙が置いてあった。

美穂からの置き手紙だ。

 

『私の運命を知りに行きます―――――』

 

――――――

 

黒花さんとの通話後、電話の主から連絡が来た。

 

『君たちと話がしたい。既に迎えは来ている。あぁ、前回の通話を漏らした事は不問にするよ。こちらが言わなかったから』

 

カーテンの隙間から覗くと黒のワゴンが止まっていた。

前回と言い私たちに選択肢が無い。

黒花さんに伝言を残しみんなと向かう。

窓に外から見られないようコーティングされている。

ドアを開けると全身黒づくめの黒のマスクをつけた人がいた。

体格的に男性だけどそれしか分からない。

私たちは黙って乗り込むと発進しどこかへ連れていかれる。

話すことも外を見ることも意味をなさないから黙って下を向く。

話がしたいらしいけど殺し合いながら話すとか言いそう。

でも話そのものが気になる。

もしかして抜け落ちた過去に関する事かな。

希望的観測だけど可能性はある。

考え事をしていたら車が止まった。

外からドアが開き背中を押されながら出された。

何処かの地下駐車場らしいけど車はワゴン以外なかった。

周りには6人のマスク男がライフルを持っていた。

平和な世界なのにここだけ紛争地域みたいな感じ。

皆この異様な雰囲気に怯えてるんじゃ対話もクソもないね。

 

「遅れてごめんよ。客人と会ってて時間がかかった」

 

柱の横から茶髪のメガネをかけた男性が現れた。

声からして電話の男に違いない。

 

「初めまして、初代死神。僕は暁」

 

「どうせ4年前会ってるんでしょ?」

 

「もちろん。君を見出したのは僕なんだから」

 

「なっ…!」

 

想像の斜め上を行く回答。

なら端末を渡したのはこの人?

 

「…御礼をして欲しいの?」

 

「いやいや、そんなくだらない話なら乃木園子を誘拐なんてしないよ」

 

笑いながら否定してきた。

ズレた眼鏡を直し右腕を私に差し出した。

 

「君に帰ってきて欲しい。再び世界に光を見せよう」

 

「は…?」

 

一体何を言ってるの?

帰る?部隊に?

 

「彼は相当の腕だけど戦闘狂でね。首輪をつけてようやくといった所。それに比べ君は身体能力と判断力を兼ね備えている。実に魅力的だ」

 

全然話についていけない。

そもそも私が部隊を離れた理由すら知らないのに。

 

「なぁ俺の事馬鹿にしてるのか?」

 

実行犯が口を挟んで来た。

前回の捨て台詞を思い出し銃を抜くも眼鏡の男に手で止められた。

 

「今は僕の番だ。そんなに殺し合いがしたいのかい?」

 

「あぁ、むかっ腹が収まらねぇな」

 

「そうかい。じゃ後ろのおもちゃなら好きにしていいよ。どうせ壊れないし」

 

男は後ろにいる4人を指した。

 

「待てッ!」

 

私は実行犯に掴みかかろうとしたけど男に止められた。

 

「ここで死なれたら困るんだよ」

 

「黙れッ!」

 

殺意をむき出し男に銃を向ける。

しかし横からマスク男に組み伏せられる。

こいつら強い…!

 

「イライラが収まらないんだよ…。悪いが簡単には倒させないからな」

 

実行犯は懐の銃を引き抜き一発撃った。

皆、咄嗟に身体を強張らせ目を閉じる。

しかし身体に何の痛みも無いのか恐る恐る目を開ける。

実際撃たれても急所じゃなきゃ痛みが来るのは時間差がかかる。

でも私は叫んでしまった。

 

「千景ぇぇぇ!!!」

 

「え…?」

 

千景の服に赤い染みがジワジワ広がる。

それを見て撃たれたのを意識させてしまった。

胸を抑え苦しそうに倒れ込む。

自分を呪った。

いくら死なないとはいえ私は抵抗もせず仲間を傷つけさせてしまった。

しかも園子を誘拐し罪のない人を傷つけた。

お前らはまた…あの地獄を作りたいのか!

不甲斐なさで涙が溢れてくるのと同時に黒い感情が思考を食らう。

殺せ。奴らは死に値する。

あぁ…アイツらは生かしては置かない。

ここで殺してやる。

私は闇を受け入れかつての姿を顕現させる。

 

―――――

 

アタシは何が起こったか分からなかった。

美穂から言われてようやく事態に気づいたくらいだった。

千景さんが胸を抑え倒れる。

 

「一応急所は外したが中身は人間と同じじゃねぇか。本当に死なないのか?」

 

男は千景さんに近づき頭に銃を突き付けた。

杏さんと珠子さんも恐怖が勝って動けない。

それはアタシも同じ…

勇者になれば助けられる。

頭では理解しても手が震えて動かない。

 

「うあああぁぁぁぁ!!!」

 

咆哮に近い声を出した瞬間、美穂の端末が起動した。

変身の風で押さえていたマスク男が吹き飛ぶ。

いつもの光ではなく闇に包まれるような変身。

勇者服のデザインは変わっていないけど黒に統一されている。

それにいつもの雰囲気じゃない…

まるで目の前のすべてを喰らうような。

 

「おお…おおおお!!これだ!この殺意を待っていた!」

 

男は銃を美穂に向ける。

その眼は狂気を伴いながらも生き生きとしていた。

 

「さぁ!殺し合お―――」

 

その瞬間、美穂が腕をのばし横に回転しと思ったらマスク男達の頭から血が吹き出た。

撃った音は聞こえたけど早撃ちの次元を超えていた。

 

「雑魚を駆ってもつまらないだろ!」

 

男は何発も撃つけど弾が当たるのを避ける様に外れていく。

すぐに銃を捨てナイフを右手に持ち迫る。

美穂は倒れていたやつからナイフを取り出し攻撃する前に一気に距離を詰め、飛び着いたと思ったら直ぐ離れた。

 

「こいつ!何を…」

 

グラリと男の身体が傾きそのまま倒れ込んだ。

 

「な…に…、立てない…!?」

 

手に力を入れてもすぐ倒れる。

 

「お前の感覚を壊した。もう私を捉える事は出来ない」

 

抑揚のない声で美穂は睨みつけていた。

戦闘の時口調が崩れる事はあっても別人のようになったのは初めて。

それに殺意を向けられていないのに震えが止まらない。

 

「くそッ…!こんな所で…終われるか!」

 

ほぼ根性で立ち上がり美穂に殴りかかる。

しかし拳は空を切り当たらず美穂の拳が男の顔面にめり込ませ吹き飛ばす。

さっきまでの余裕が無くなり男は後退りをしていた。

 

「やめろ…来るなぁぁ!!」

 

美穂はナイフを投げ男の足に当てる。

ただでさえ立てないのに益々動けなくなった。

近づいた美穂は胸倉をつかみ上げる。

 

「命乞いが出来る立場と思っているのか?お前はここで殺す。最後の瞬間まで懺悔でもしていろ」

 

そのまま突き飛ばし足に刺さったナイフを抜き取り男の腹にまたがる。

両手でナイフを握り高く振り上げる。

 

「待てッ…!まだ…!」

 

振り下ろし胸に深く刺す。

口から血を吐き出し苦しんでいる。

美穂はナイフを抜き再び振り上げ刺す。

何度も何度も…

鮮血が振り上げる度に周りに飛ぶ。

美穂がここまで恐ろしいとは思わなかった。

いつからか男の声は聞こえない。

響いているのはグチャグチャと汚れた音。

 

「素晴らしい…全く、驚異的だ。そうだと思わないかい?」

 

メガネ男が関心したように話しかける。

その横に園子が立っていた。

 

「園子そいつから離れろ!」

 

アタシが言っても黙って下を向いているだけ。

 

「園子…?」

 

美穂は刺すのをやめゆっくりこちらを見た。

勇者服と顔は返り血で赤くなっていた。

 

「御覧の通り怪我の一つもさせてない」

 

「そんなのどうでもいい!早く解放しろ!」

 

「悪いけどまだ借りるよ。今は現実を見せたかったからね」

 

「美穂さんの殺しの瞬間を見せる為にですか…」

 

千景さんの手当てをしていた杏さんが問いかける。

 

「今回は対話ではなく彼女の本性を呼び戻すためだった。おかげでいいデータは得られた。それに妹に伝染してるかもしれないしね」

 

「妹…?」

 

「高木美穂、なぜ君が無垢でないのに勇者に変身出来るのか。なぜ適合値が高いのか。なぜ精霊がかつての勇者なのか。その答えの1つ。君が、乃木家の血を引いているからだ」




ピロロロロロ…アイガッタビリィー
アロワナノー
ワイワイワーイ
最後にこれが聞こえた人、最高です。
少しセリフが違いますがやりたかったからヨシ!
そして高木美穂オルタ爆誕です。
どちらかと言えばバーサーカーモードですけどね。
前話で匂わせたアイツが死んだ?
噛ませキャラだから問題なし!
そして暁。
彼のベース作品はありますがまだ言いません。
死神部隊…見下ろすようなセリフ。
これで気づいた君はイレギュラーだ!
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