生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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姉妹

「どういう意味だよ…?」

 

銀ちゃんが困惑していた。

私も美穂さんが乃木家の血を引いていると言われても理解が出来ない。

 

「西暦に完成したシステムは神器に選ばれた少女しか使えず数が限られた。そこで契約対象を精霊にする事で勇者の母数を増やせる事が分かった。その際、乃木家は確定で勇者になれるよう陰で仕組まれたんだよ」

 

私たちの時は各地で神器に導かれこの四国に集結した。

大社が一部の神器を管理しているとは聞いたことがあるけど数に限りがある。

それに切り札に使用する精霊も反動が大きすぎる。

 

「そんな名門に生まれたが一月違いの双子だと判明した。跡を継げるのは1人。どちらかを切り捨てる必要がある。結果選ばれたのは妹の方だった。本来なら先に生まれた方を優先するのに不思議だね」

 

「…」

 

男が横目で見ても園子さんは黙って聞いている。

どこか申し訳なさそうな顔にも見える。

 

「切り捨てられた方は家から追放されある夫婦に託される。しかしそんな逸材を世界が逃す訳がない。勇者の資格があってもなれないなら力だけを有効的に使わせる。その為にアイツは近寄ったんだから」

 

「まさか美穂の両親って…!」

 

「いや、父親が死神部隊のメンバーだよ。まぁ母親は後々バレて死んでしまったけどね」

 

まるで死んでも仕方ないように言った。

この人にとって人は使い捨ての駒とでも思っているんだ。

 

「しかし父親が高木美穂を脱退させたいと言ってきた時は驚いたよ。だから最後の仕事をこなして願いを叶えたんだけど。覚えてるかい?」

 

殺した余韻なのか分からないけど美穂さんは虚ろな目で男を見ていた。

 

「最後の仕事…?」

 

「あまりのショックで覚えてないんだね。なら教えよう、君の最後の仕事は()()()()()()だよ」

 

「え…だってお父さんは殺されたんじゃ…」

 

「君が殺したんだから間違ってないだろ?」

 

「酷すぎる…」

 

血が繋がっていなくても家族だった。

美穂さんも嬉しそうに思い出を語ってた。

それを壊し利用し捨てた。

そんな事が許される訳無い。

 

「嘘だ…私を騙そうとしてるんだ…!」

 

「本当だよ。4年前君に依頼を頼んだのは僕なんだから」

 

「ッ!」

 

「お前…!」

 

タマっち先輩が怒りを露わにしてる。

ここまで怒るのは見たことない。

 

「僕に怒りを向けるのは正しい。けど彼女が生まれなければ君が傷つくことはなかった」

 

「何が言いたいの…」

 

「君を部隊に入れ、乃木園子を殺して欲しい」

 

「「「!!!」」」

 

「…」

 

横で殺害を明言されても園子さんは反論すらしない。

ここまで無言なのは不自然過ぎる。

 

「…私はもう部隊には戻らない。けど…」

 

高木さんは男の死体から立ち上がり男の元へ歩く。

服から血が垂れコンクリートに赤い点を作る。

 

「その依頼は受ける意味がある」

 

美穂さんが駆け出すのと同時に銀ちゃんが変身して割り込んで来た。

 

「何考えてるんだよ!」

 

「園子を殺す。邪魔しないで」

 

「ふッざけんな!正気に戻れ!」

 

両腕をがっしりと掴み歩みを無理やり止める。

 

「これが本来の私。大勢を救うために少数を切り捨てる勇者だよ」

 

「そんなの勇者じゃない!ただの人殺しだ!」

 

言い争っている間に甲高い音が響く。

私たちの後ろに一台の黒いSUVが止まる。

ドアを勢いよく開けて出てきたのは千早さん。

 

「お前がたぶらかしたのか」

 

「たぶらかしたとは失礼だね。ただパズルのピースをはめただけだよ」

 

「貴様…!」

 

「君が来た以上ここで退散しなくちゃね。また会おう。直ぐに、ね」

 

男は園子さんを連れその場を立ち去ろうとする。

 

「逃がすかぁ!」

 

タマっち先輩が変身し男に飛び掛かるけど黒色のバリアで阻まれる。

 

「精霊バリア!」

 

園子さんに端末は無い、ならこの人の?

でも男性は勇者になれないし年齢も離れ過ぎる。

 

「…ごめんなさい」

 

園子さんがボソッと一言だけ述べ2人とも影に隠れた。

急いで向かってもそこには壁があるだけだった。

 

「美穂。これはどういう状況だ」

 

千早さんが鋭い目で美穂さんを睨む。

 

「私を地獄へ落とした張本人が見つかりました。これから殺しに行きます」

 

「自分で言ってる事理解してるのか?」

 

「はい」

 

「そうか…」

 

深く息を吐き目を閉じる。

 

「残念だ…変身」

 

ポケットからガラケーを取り出し番号を打ち込んだ。

先ほどの美穂さんの変身のように闇に覆われる。

そこにいたのはかつて私とタマっち先輩を救った姿。

 

「最後のチャンスだ。バカな考えを捨てて変身を解け」

 

「断ります」

 

返答を聞いた瞬間刀を空間から引き抜き美穂さんに切りかかるもナイフで防御された。

ガンと重い金属音がよく響く。

美穂さんは距離を取り高速で接近し振るう一撃離脱型。

黒花さんは1歩も動くことなく全ての攻撃を流す。

そこから一進一退の攻防が始まる。

お互い有効打を与えられていないけど少しずつ千早さんの顔が辛くなって来ている。

そもそも千早さんの年齢は20代後半。

勇者になれない歳なのに対等に戦えている。

戦闘センスの問題だけでは無い。

 

「黒花さんいい加減やめませんか?あなたをこれ以上傷つけたくないです」

 

「ハッ…!弟子からいたわれるほどヤワじゃないんだよ!」

 

「なら大人しくしてもらいます」

 

美穂さんは千早さんの首元に狙いを定めナイフを構える。

 

「もうやめろ!」

 

「いい加減にしろって!」

 

銀ちゃんとタマっち先輩が抑え込む。

2人とも怒りなのか涙が溢れてる。

千早さんは刀を構えているけど襲いかからない。

 

「みんなお願い。これが最後だから」

 

「そんな願い聞けるか!」

 

「最後じゃなくてもう終わりにしろよ!いやなんだよそんな美穂を見るのは…!」

 

痛みが治まった千景さんがよろよろと立ち上がる。

 

「私のために怒ってくれたならもうやめて。痛むけど死ぬほどじゃないの。いつもの優しい高木さんに戻って」

 

「そうですよ、あなたはいつも私たちを気にしてくれたじゃないですか…その美穂さんが私は好きなんです…!」

 

自分でも意味わからないことを言ってる。

でもそれが本心なんだろう。

 

「ダメだよ…私を好きになっても損しかしないよ…」

 

「好きに損もクソもあるもんか。お前がいいからこうやって止めてくれてるんだろうが」

 

千早さんは刀を消し美穂さんの血まみれの手からナイフを取り上げ握る。

 

「お前も皆が好きなんだろ?その姿になるってことは相当辛いことがあったろな。なら仕方ないさ、誰だって家族が殺られたら怒る。けどその怒りの矛先を間違えるな」

 

私たちは千早さんに続いて抱きしめた。

体温が氷のように冷たかった。

 

「うあ…あああ…」

 

変身が解けいつもの私服に戻る。

あの殺意は消えひたすら泣く美穂さんがいた。

急に美穂さんの体から力が抜け千早さんにもたれかかった。

 

「美穂?」

 

「これで無力化した。銀少し頼めるか?」

 

「分かりました」

 

立ち上がった千早さんの手には注射器が握られていた。

 

「千早…お前まさか!」

 

「珠子さん落ち着いて。これは安定剤だから害は無いんです」

 

「銀ちゃん…?」

 

「アタシは事前に知ってたというより壊れた美穂を見てるので…」

 

この反応から見て急に起こった訳じゃない。

持病か何かなのかな…

 

「チッ…趣味の悪いやつだな」

 

黒花さんが兵士の仮面を足で蹴り落としていた。

そこにあったのは真っ白な顔、十字の目、耳まで裂けた口。

 

「バーテックス…?」

 

赤い液体を垂れ流した人型バーテックスが倒れていた。

 

「あそこで作ってたのはこれか…」

 

「なんでバーテックスがアイツの手先に?」

 

「…」

 

それ以降黒花さんが答えることは無かった。

けどその体から発せられる何かは怒りに近いと感じた。

 

――――――

ベットに寝っ転がりながら考え事をしていた。

闇落ちした後の記憶は残っている。

ただ、自分でやったという感じではなく『そんな事あったんだ』程度。

隊員と実行犯を殺したのは私の意志でもあるからいい。

けど園子を手にかけようとしたのは想定外だった。

あの姿が私の本音なら恨んでいた事になる。

理由は?

園子も散華の影響で神として祀られていた。

望んでいない結果を得たという点は同じ。

私は彼女を恨む理由が分からなかった。

 

「うーん…」

 

「何唸ってるんだ?まさかはめられた理由は分からないとか馬鹿言うなよ」

 

「そんな訳ないじゃないですか」

 

寝転んだままジャラリと私の手首についたソレを鳴らす。

現在私は手錠をつけられ生活しています。

二度に渡る独断行動、自制心欠如、そして黒花さんへ刃を向けた。

以上を加味し事件解決まで黒花さん監視下に置かれることになった。

とはいえ学校にも通わせてくれるし牢じゃなくて家にいさせてくれるから刑の意味が無さそう。

ちなみに黒花さんがあそこに来れたのは私の端末を追って来たから。

途中ジャミングが入り見失ったらしく到着に時間がかかったとの事。

 

「ならなんだ?」

 

「本当に園子を殺したかったのかなって。自分でもまだ分からないんですよ」

 

あの姿は死神部隊の勇者として活動していた時の服、そして自分に潜む闇。

いつどのタイミングで現れるのか分からない。

バーテックス相手だと出てこないのは救いだけど。

 

「人生を壊された恨み?」

 

「それなら部隊に戻るって言いそうです」

 

「ふーむ…お前とは4年いるがアイツに関してはさっぱりだな」

 

黒花さんは肩をすくめた。

二重人格じゃないから声かけしても反応はない。

 

「ところで黒花さん。変身した後変化ありました?」

 

「あー…ちょいと眩暈と動悸が来たが今は大丈夫」

 

前回のバーテックス戦でかなりとばしていたし今回も私も本気のスピードだった。

負担は相当な上、力を振るえば代償がくる。

 

「今回はどのくらい消費を?」

 

黙って親指と人差し指でコの字を作った。

どうせ大体こんなもんでしょ感覚だとは思う。

 

「死なないでくださいよ」

 

「死ねるかよ。お前と酒を飲むまではな」

 

「はいはい。それまでにいい酒探しておいてくださいよ」

 

雑に返答し部屋から出ていかせた。

酒が飲めるまでね…

二十歳まで約5年。

前聞いた時は結婚するまでだったかな…

あぁ…またやっちゃった…

私は身体を丸めた。

改めて責任というおもりがのしかかる。

これは殺した人の罪とは異なる重荷。

だって黒花さんの代償は寿()()なのだから。

 

―――――

 

私は帰ってからずっと部屋の隅に座ってた。

皆に会う前に男から真実を聞いた。

その時は信じてなく嘘だと思ってた。

しかし、男に連れられあの駐車場に転移し現実を見せられた。

たかみーが変身し仲間を殺し私にも牙を向けられた。

ミノさんが割り込んでくれたから助かったけどあの表情と声は忘れられない。

 

『その依頼は受ける意味がある』

 

「ウッ…」

 

吐き気が湧きあがる。

トイレに駆け込みしゃがむ。

出したくても出ない。

苦しい苦しい苦しい―――――。

もう嫌だ、消えたい…

 

「随分と情けない姿だ」

 

「…のぞき見なんて最低だよ」

 

いつの間にか男が部屋の壁に寄りかかっていた。

影を移動するならここに入るのは容易。

 

「それは失礼した。君に伝えたい事があってね」

 

「なら部下に呼びに来させればいいのに」

 

「悪いけどみんな殺されたよ。僕が唯一の死神部隊さ」

 

随分とお粗末。

たかみーの実力を知っているのにあの数しか用意してないなんて。

 

「用は何なの?」

 

私はトイレからゆっくり立ち上がる。

 

「君を解放する」

 

「そんな簡単に解放するわけないでしょ」

 

「言葉足らずだったね。正確に言えば君の背負う罪から解放する」

 

「罪…」

 

「この世で一番嫌いなのは自分自身なんだろ?自由に夢を持てず妄想にぶつけるだけ。勇者になっても友達に忘れられ今姉から殺されそうになっている」

 

図星だった。

皆の前に見せる姿は無理やり取り繕っている。

他人の幸せを叶え自分の願いに蓋を閉める。

どうせ言っても理解されない。

 

「だから僕と一緒に今の人類を否定して欲しい」

 

男は私の前に歩み寄る。

 

「誰かを傷つけ蹴落とす事で自分の存在を証明し続けるなんて間違っている。それが歴史というならそのものを壊し新たな歴史を作る。君が君であり続けられる世界を」

 

そのまま手を差し出してきた。

これは悪魔の取引だ。

今度こそ私はあそこに帰れない。

でも我慢してきたんだ。

たかみーに殺されるくらいならこの道を歩む。

私はその手を握ってしまった。




真実回はどうしても説明口調になってしまいます。
何かタラタラ流してる感あるのが悲しい点ですね…
これで美穂の過去、闇が明らかになりました。
前回言わなかったのですが千早の勇者服イメージはFGOのシグルドのインナーみたいなのにシン・仮面ライダーの革コート着てる感じです。

物語はいよいよクライマックスへ向かいます。
文量も1章より低いくらいですかね。
重い展開続きますが頑張ります!
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