事件後初の部活があり部室前まで来たけど正直どういう顔をすれば良いのか分からずドアの前で立ち尽くしていた。
ここで立っていても埒が明かないと思い意を決して中へ入る。
そこには普段と変わらない勇者部があった。
から元気という雰囲気でもなく日常そのもの。
私は皆に笑顔で挨拶をして作業を行う。
私に対する接し方も変わらず安心した。
翌日、友奈のクラスを通った時チラリと中を見たけど当然園子の場所は空席だった。
一体どこをほっつき歩いてるのやら。
それにしても私が姉か…
似ていると言われればそうかもしれない、けど自覚は無い。
姉妹だとしても生き方が違えばただの他人。
犬吠埼家のように仲良くなんてなれない。
一度刃を向ければそこに歪が生まれる。
埋めるにはお互いの本音をぶつけ合うしかないと考えてる。
実例が最近あったけどその時は物理入ってて無理やり気味。
そんな事を考えていたら突然端末が鳴った。
校則上電源を切るべきだけど非常時に備えマナーモードにして…た…?
マナーモードってバイブレーションだけなのに何で鳴ってるの?
しかも周りから様々な着信音が聞こえてきた。
さながら合唱しているように。
画面を見ると『SOUND ONLY』の文字のみ。
恐る恐る耳をあててみる。
『これを聞く箱庭の皆さん初めまして。僕はこの世界の真実を知る者であり裁決を下す者だ』
声を聞いて思わず立ち上がり先生の制止を無視し教室を出る。
間違いない。この声は園子と共に消えたやつの声だ。
『今君たちの見ている世界は偽り。神の見せる夢物語により自ら成長をやめ人間は破滅を待つ愚かな存在になり下がった。これも全て大赦のシナリオ通りだ』
まさか全て語る気なの!
嘘か真でもまずやり玉にあげられるのは大赦。
確実に暴動を停めようと躍起になり最悪実力行使もあり得る。
つまりこの狭い世界で内乱が起ころうとしている。
ただこれが目的なら園子を拉致し私に殺させる意味が無い。
校門を抜けたものの行くあてが無い事に気付き辺りを見渡していた。
「やっぱ飛び出すよな!」
後ろから銀が息を切らしながら来た。
「策はあるのか!?」
「あったらもう動いてるって…!」
その時見慣れたSUVが私たちの前にドリフトをきかせながら止まった。
「乗れ!」
「「黒花さん!!」」
ドアを開け滑り込むように乗り込む。
後ろには既に3人が座っていた。
「状況は!」
「知るか!スマホだけじゃくテレビ、ラジオあらゆる電子機器がやつに持ってかれた!ハッカー課が死に物狂いで止めようとしているが使い物にならん!」
ラジオをつけチャンネルを変えても男の声は聞こえる。
街も時間が止まったように車がその場に止まっていた。
黒花さんが車の合間を縫いながら運転するから揺れが激しい。
ジェットコースターが優しく思うよこれ!
「なぁ!どこに向かってるかそろそろ教えてくれよ!」
後ろから珠子が叫びに近い声で黒花さんに聞く。
運転に集中しているのか黙ったままだった。
しばらくして車が止まり降りるよう言われた。
そこは小さな港。
波が打ち寄せる音だけしか聞こえないくらい周りは静か。
「これから壁に向かい奴とケリをつける」
「壁にですか…?」
「奴が声明を出す前に電話をかけてきた。『始まりの地で会おう』。その一言だけだが居場所を知るには十分過ぎた」
近くの漁船に乗り込み準備を始めた。
さも当然のようにやっていて反応が遅れた。
「黒花さん!?窃盗はダメですって!」
「あ?バカかお前。これはオレの持ち物だぞ」
漁船まで持ってるなんて聞いてないよ…
まぁ壁まで相当距離あるし変身して飛ぶのも至難の業だったのは前回経験してる。
とりあえず海面ジャンプはやるべきじゃない。
そのまま乗り込み壁まで接近する。
東郷が開けた大穴は塞がれ一見しただけでは分からない。
船上で変身し壁面を駆け上がる。
壁の向こうは蜃気楼のようにあやふやになっている。
いつもと変わらない風景。
「ようやく来たね。待ちくたびれたよ」
男が足を壁から垂らしながら座っていた。
服装は変わらないスーツ姿。
「この景色をどう思う?何気ない日常、300年前から変わる事のない平和。争いが無いのはいいとは思う。けど僕からすれば吐き気がする」
「御託はいい。要が無ければここで拘束するだけだが」
黒花さんが男の会話を叩き切る。
「相変わらず僕に対しては冷たいね。まぁいいよ、お互い時間は無いし」
男は身体を動かし立ち上がる。
「これより奉火祭を執り行う。君たちはその目撃者になって欲しい」
「お前…正気か!」
黒花さんが焦りとも怒りとも取れる表情をした。
それにしても奉火祭?
儀式なのだろうけど全く全貌掴めないけどよくないのは分かる。
「前回とは意味が違う。これは降伏ではなく敗北だ。自ら破滅を望みながら認めない愚か者に変わり僕が裁く」
「敗北だと…?」
正直話についていけてない。
男は私たちの顔を察したのか話始めた。
「300年前、ただ一人の勇者とこの土地を残し人類は神に敗北した。神の提示した条件は反抗戦力を捧げる事。本来なら勇者を出すのがセオリー。しかし捧げられたのは6人の優秀な巫女だった」
人身御供、諏訪やアイヌ伝説にもある神に人を捧げる儀式。
神代とはいえまさかそこまで復活していたなんて。
「計画そのものは大社が作っていたけど人選は巫女達が決めた。その最終決定者は勇者と共に過ごし神に最も近いとされた巫女、
「「「!!!」」」
上里…乃木を同じ最高権力を持つ名家。
そして大赦を作ったとも言われている。
「彼女も中々の策士だよね。まさか自分で事足りるのに他人を生贄にするなんて。あの時代どいつも狂っていたけど一番いかれていたとは」
肩を揺らしながら男は笑った。
ひなたさんがどんな人かは知らない。
けど
「貴方は何も分かっていない!上里さんがどれだけ辛かったか知らないくせに!」
千景の怒りの反論が全てを語っている。
杏と珠子も怒りのあまり武器が震えている。
「もういいでしょ。早く終わらそう」
男の後ろに影から湧き出たように園子が現れた。
「そうだった。長話してしまう癖は直さないと」
そのまま2人は結界の外へ出ていった。
私たちも急いで後を追う。
灼熱の世界に2人は勇者服無いで立つ。
この暑さをものともしてない。
「300年越しです。今度こそあなたの元へ忌まわしい血を捧げられます」
「そんな事させるとでも!」
銀が両腕を天にあげた男の元へ駆け寄る。
しかしそれを邪魔する白い物体。
「バーテックス!何でここに!」
「外野の処理は任せたよ」
まさかバーテックスを使役しているの!
奥から蟻のように大量のバーテックスが向かってくる。
皆バーテックスの対応に追われ身動きが取れていない。
このままじゃ世界が…
「君はこちらだよ」
誰かに肩を掴まれ吹き飛ばされる。
そこは男と園子がいる前。
「無礼をした事を謝罪する。でもこうじゃないと君突っ込みそうだったからね」
「何がしたいんだ!」
男に掴みかかろうとした―――――
「たかみー。私を殺して」
園子の口から衝撃的な言葉が放たれ怒りが消えた。
「今…なんて…?」
「殺して欲しいの。たかみーが苦しむのは間違ってる。私が生まれなければ幸せだったんだよ」
「まさかせ――――!」
「間違っても洗脳とは言わないでね。これは彼女の意志。誰かに裁いて欲しいという思いに答えるためこの儀式を提案したら了承してくれたんだよ」
ガクリと膝をつく。
私が手を汚していたのは世界が本当に良くなると思っていたから。
誰かが傷つくくらいなら自分が受ける。
自己犠牲を貫いてきたけど園子の心を傷つけたのは私の意志だ。
結局私も守れてないんだ…
カラカラと音が鳴り私の足元に何かがあたった。
それは綺麗に磨かれた銃だった。
「君のを使うと乃木園子がただ痛むだけだからね。頭を撃てば楽に死なせられるよ」
再び黒い感情が湧き出る。
世界を救うなら園子は殺すべき。
でも本当にそれしかないの…?
私は立ち上がりながらも銃のセーフティーを解除していた。
「弾は一発だけ。外したら君は世界を終わす共犯者扱いになるからそのつもりで。乃木園子は好きなタイミングで落ちなよ。それが契約だから」
園子は地獄を背に私を見つめていた。
生を諦めたのか感情は無かった。
頭に押し付ける様に構える。
これで終わる。
私は殺した罪に苦しみ続けるしかない。
「苦しむ…?」
ボソリとつぶやく。
園子は生まれて来た事を罪と言った。
私は殺してきた事を罪と思っている。
生と死、相容れない存在。
なのに同じ罪と捉える。
「あ…」
そっか…端なんだ。
身長の低い人は高くなりたいと、高い人は低くなりたいと願うのと同じ。
私が園子を殺したい理由。それは…
「憧れだったんだ…」
園子の顔を銃を突きつけながら答えを告げる。
「いろんな人と絡んで友達作って、自分を取り繕っても隠さない。それに比べ私は家族に近い人も友人も最近出来たし嘘で自分を固めないと交われない。単純に羨ましかったんだよ」
ギリギリまで迫っていた感情は消えていた。
これが正しい選択だって理解してくれた証拠。
「姉が妹に嫉妬とか恥ずかしいけど…まぁそれも悪くないね」
銃を下に捨て頭を撫でる。
「生きていてくれてありがとう」
今の私にできる最大の感謝。
夏凛にも言った事あるっけ。
「…生きていいの?」
「当たり前だよ。1人で全て背負うなんて無理なんだから。問題があったらまず相談でしょ?」
「また不幸にさせるかも…」
「その時はその時。イフを考えてたらキリないからね」
「ッ!…ごめんなさい…また間違えちゃった…!」
「私もだよ。傷つけてごめんね」
ようやく姉らしいこと出来たかな。
風先輩に弟子入りしないと。
「やっぱこうなるよね。じゃ2人共消えてもらおうか」
懐から銃を引き抜くのと同時に、私は捨てた銃を蹴り上げながら園子を壁内に突き放す。
先に火を噴いたのは男の方。
事前に弾道を予測し身体を倒す。
弾は私の髪を切り裂き通過していく。
即座に銃を空中でキャッチし放つ。
照準なんて頭のイメージであわしてある。
狙いは一点。
弾は迷うことなく男の眉間を貫くと、一言も言う事無く反動で後ろへ倒れた。
主が死んだからかバーテックスの集団が散り散りになっていく。
「園子!美穂!大丈夫か!」
最初に来るのは銀。
「ありがとうミノさん。大丈夫だよ」
「そっちはどう?怪我してそうだけど」
「擦り傷程度だから気にすんなって。撃ったのか…」
男の死体を見て銀の顔が曇る。
「これは私の総意だよ。世界の敵を倒すのが勇者なんだから」
銃を地獄へ投げ捨てる。
これは私には不要な物だからね。
「帰ろう。私の…私たちの帰るべき場所へ」
園子に右手を差し出した。
もう血まみれなんて思わない。
「うん!」
私の手を強く握り立ち上がる。
あの死んだ顔は無い。
いつもの園子だ。
「黒花さんに連絡しないと―――――」
「やはり自滅を選ぶとは。想定の範囲内とは言え実に愚かだね」
ゾクリと背中を何かが走った。
私は園子を後ろに隠し声の方を向く。
そこには男が片膝をたてこちらを見ていた。
眉間には黒い穴が出来ていてメガネは吹き飛んだまま。
「あなた人間なの?」
「人間だよ、昔はね」
何事も無かったように立ち上がり私たちと対峙する。
「僕は天の神の使徒。人間が降伏した後、歯向かう力を残していないか調査し発見次第破壊する。本当なら君を使おうと思ったけど上手くいかなかったね」
人類を絶滅寸前まで追い込んだ神様のパシリってこと?
私こんなやばい人と仕事してたのか。
「この姿を晒すのは心外だけど仕方ない。悪いけどここで君たちを殺す…!」
初めて明確な怒りを男から感じた。
先程まで散らばっていたバーテックスが再度集まってきた。
剣と盾を出し臨戦態勢を取る。
しかし襲ったのは私たちではなく男だった。
大型のバーテックスを生成してる光景と似ていて星屑が集まりながら1つの塊を作り上げている。
違う点といえばその作る速さ。
結界の外とはいえ余りにも早すぎるため私たちの立てる範囲が狭まってきた。
避難も兼ねて結界内に入った。
「どうした!緊急事態か!?」
「そうですよ!今外では―――――!」
園子以外の端末がけたたましく鳴り出した。
画面には赤い規制線と共に『特別警報発令』の文字。
東郷が壁を破壊した時もあったという警報。
これが鳴るってことは…
「樹海化が始まる…」
私たちはすぐ光に飲まれた。
目を開ければ久しぶりに見る樹海。
「300年経っても変わらないのね」
「逆に懐かしさすら感じます」
「ここなら全力で戦えるな!」
端末を見て敵の位置を把握するもまだレーダーには入ってない。
まだ外にいるけど直に侵攻を始めるだろう。
「一旦ここから離れましょう。敵がどう来るか分からないので」
杏の案に従い壁から離れる。
園子は勇者になれないから私が抱えて飛ぶ。
壁を一望できるところまで距離を離し待ち構える。
突然パキンと壁の上の空間が割れ、ヒビが全体に広がっていき、ガラスが割れるように崩れ落ちる。
その先にいたのは巨大な人型バーテックスだった。
白一色がデフォルトだったのに全身を漆黒に染めている。
両手に大型ライフルを持ち4枚の羽根を展開し宙に浮いていた。
しかもこれまで対峙してきたバーテックスとは違いメカメカしい。
『かつて王を導いた神の使い、八咫烏。僕から君たちに終末を届けよう』
あの男の声がインカムから聞こえる。
身体を失なっても意識あるとか何者なの…
だけどやることは変わらない。
「目標大型バーテックス!12体に属さないイレギュラーだけど仕組みは同じ!神樹に接触される前に御霊を壊し倒す!」
それぞれの武器を持ち眼前の敵を見る。
これは私の運命を変える戦い。
だから絶対死ねない!
「行くよ!」
世界の命運をかけた戦が始まる。
駆け足気味でしたが仲直りさせました。
ぐたぐたやっても辛いだけなのでさっぱりさせました。
そして2章ラスボスのイメージはACVDの財団、変異体はN-WGⅨ/Vです。
バーテックス感ゼロですけどイレギュラーなら関係ないでしょ!
戦闘が続きますがよろしくお願いします!