生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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全てを焼き尽くす暴力

バーテックスはゆっくりとこちらに向かいながら二連装ライフルを撃ってきた。

ただのライフルでも危ないのに今は体格差もあり弾そのものが大きいから危険性は高い。

弾を高速で避けながらも私もライフルモードで応戦する。

あちこちで爆発が起きている。

完全に戦争だ。

私は速度を落とさず切りかかるも一瞬で避けられる。

 

「こいつ早い!」

 

即座にビットを展開し反撃されないよう攻撃し後退させる。

この反応速度中々の腕に違いない。

 

『なら後ろを取るだけだ!』

 

銀が背後を取り斧を振り下ろす。

当たりはしたもののダメージにはいたっていない。

そもそも無抵抗の時点で避ける必要すら無いと判断したのか。

そのまま離脱し距離を取る。

 

『勇者の攻撃はどの部位を当てても必ず破損はしました。なのにそれが無いなんて…』

 

『どこか装甲の薄い所があるんじゃない?そうでもなければあのスピードで避けれるはずが無いわ。例えば駆動部分とか』

 

『しかしそう簡単に当ててくれるのかよ!?』

 

「可能性があるならそこを狙うしかないよ。私と杏で弾幕を張るから3人は足元を攻撃して」

 

私は連射速度を上げ放ち続ける。

敵はバーテックスであるのは確実。

頂点という意味を持つけどあれに与えられるべき言葉だと思う。

パンパンと花火のような音が鳴り、バーテックスの両肩から火花が大量に巻かれた。

それは火花ではなく火に包まれた小型だった。

星屑は迷うことなく勇者たちに襲い掛かる。

似たような物と交戦したことはあるけど数が全く違う。

 

「足を止めたら死ぬぞ!」

 

インカムに向かって叫んだ。

ライフルの弾よりも一回り大きな爆発が起こる。

今をしのぎ切らないと攻撃のチャンスは無い。

後方の私たちにも飛んでくるし早い。

 

「ビット!杏を守って!」

 

私の周囲を飛んでいたビットを全て杏の元へ向かわせる。

放置したら珠子に叱られるし距離を詰められると対処が厳しくなる。

私はバリアあるから直撃さえどうにかすればいい。

捌きながらも限界が来て爆風で吹き飛ばされそのまま幹にぶつかった。

 

「ぐうゥ…!」

 

全身に痛みが走ったけど動けない程じゃない。

インカムからは砂嵐が聞こえる。

故障か通信妨害かは分からないけどしばらく使い物にならない。

周りは山火事のように樹海を燃やしていた。

勇者服を着てるから呼吸は問題ないけど園子が心配。

私は端末を開き状況を把握する。

怪我の有無は分からないけど全員の名前が表示されているって事は無事なんだろう。

勇者部の皆も園子と合流したらしい。

 

「え?」

 

サラッと流そうとしていた。

園子は黒花さんと共に後方に下げた。

でも勇者部は学校にいるはず…

 

「そうか適性値!」

 

銀が記憶を失っていた時も樹海化には巻き込まれていた。

それと同じ現象が発動している。

バーテックスの範囲攻撃も着実に広がっている。

 

『どうだい?これが君の選んだ答えだよ』

 

仲間ではなく男の声が聞こえる。

 

「イカれているよお前」

 

『ま、僕の事をどう思うと構わないけどイカれているのは全部だ。人間の。可能性なんて存在しない。それを証明して見せる…!』

 

「なら私たちはお前に勝って可能性ってのを見せてやるよ!」

 

私は地面を蹴り上げ残りのビットを展開する。

8機同時展開はあの日以来で未調整。

アイツに煽られたのもあるけど意思疎通が出来ない上やつを止めないといけない。

頭痛が私を襲うがもう気にしない。

私はアサルトモードでバーテックスを狙う…

 

『その可能性撃ち抜かせてもらうよ』

 

刹那、赤黒い光が私を貫く。

右腕が一瞬で目の前から消えた。

バリアは展開され自動防御に入ったビットも作動していた。

しかし光は全てを突破して来た。

 

「ギッイイイッッ…!」

 

私は血を吐きながら後方に飛ばされ樹海をゴムボールのように何度もバウンドした。

全身を打ちつけた上頭をかき混ぜられるような痛みが襲う。

汗が全身から溢れ出し五感が狂い始める。

 

「ゴホッ…ぐうう…あああ!!」

 

「美穂!!」

 

変身した黒花さんが私を抱え離脱した。

 

「みん…は…!」

 

「前線で粘っているが状況は分からん!」

 

後方にいる勇者部の元に降り立った。

 

「美穂!その姿…!」

 

「腕が…」

 

勇者服を破って貰い止血する。

オレンジ色の布が赤く染まっていく。

めっちゃ痛いけどここに居続けるのは良くない。

 

「応急だが止血はした。それでどうすんだ」

 

「何言ってるんですか…そんなの決まってるでしょ…」

 

剣を杖にして立ち上がる。

未だ激痛が走るけどなりふり構ってられない。

片腕無くすとバランス取りにくいや。

 

「どうして戦うの…?」

 

友奈が声を震わせ聞いてきた。

私は振り替える事はせず強く答える。

 

「生きて明日を見るためだよ」

 

明日が地獄になるか天国になるかなんて誰も知らない。

けど何もないからこそ楽しみの一つになる。

 

「黒花さん…あなたの命、私にください」

 

「いいぜ、こんなカスみたいな命で足りるならくれてやる」

 

「ありがとうございます。それじゃ、行ってくるね」

 

地面を強く蹴りバーテックスの元へ急ぐ。

爆音が止んだから4人はやられたに違いない。

ビットは残り4基、ライフルモードへの移行は不能。

もう突撃しかない。

 

『まさか生きていたとはね。あの時楽に死ねてたら良かったのに』

 

「私を仕留め損ねた事後悔させてやる!」

 

『死にぞこないが2人来たところで運命は変わらない』

 

広範囲爆撃を始め炎が迫って来た。

バリアすら貫通する以上避けるしかないけど力入れる度、体の何処かが痛み上手く避けれない。

 

「全く、見ちゃいられないな」

 

再び黒花さんに抱きかかえられた。

黒いオーラに包まれ高速移動する。

まるで影が空を駆けるようだった。

 

「策はあるのか?」

 

「無い!ただ殴るだけ!」

 

「脳筋だな。まっ悪くないが!」

 

そのままバーテックス顔面目掛け突撃した。

取り付いてしまえば自分で振り払うのは難しい。

そのまま片手で剣を振り下ろす。

装甲の硬さは健在で傷1つつかない。

コイツは何をしてくるか分からないから警戒を…

 

『まとめて吹き飛ぶといい』

 

周りが赤く光出した。

 

「まさか…自爆か!」

 

黒花さんと別れバーテックスから何とか離脱し盾を構える。

物理的な衝撃は防げる。

一瞬静寂になった後空気が破裂するような音が鼓膜を揺らす。

両手でやっとなのに片手で抑えるのはキツイ。

 

「うぅぅああああ!!!」

 

体に樹海の破片が当たり新たな痛みを生む。

目を開けていられないくらい風が強い。

足に力入れすぎて感覚が薄れてく。

爆風が止み目を開け見てみるとバーテックスがまだ立っていた。

 

「化け物かよ…」

 

「よく言われる」

 

「ッ!!」

 

横を振り向いた時には顔に衝撃が当たり暗転する。

 

______________________

 

右腕を無くしたたかみーが運ばれた時胸が苦しくなった。

大切な人を失ったあの時と同じ傷と戦う意志。

本当は行って来て欲しくないのに止めれなかった。

言っても無理だと割り切っていたからかも。

バーテックスが大爆発を起こしてから大きな変化はない。

勇者じゃない私たちに戦況を知る術はなくただいるだけ。

ミノさんもこんな気持ちだったのかな。

 

「こんな時変身出来れば…!」

 

「でも満開したら…」

 

「しなくても戦えるでしょ!」

 

「無理だよ、あいつは今までとは全然違う…」

 

「そのっち…」

 

わっしーが私の震えた手を握ってくれた。

 

「ありがとう…」

 

「こんな後方にいるとは」

 

落ち着こうとした時、最も聞きたくない声が聞こえた。

そこにはあの男が変わらぬ姿で立っていた。

右手にたかみーを持ってさえ居なければ。

制服姿に変わっていて赤く染まっている。

残った左腕も傷だらけで力無く垂れ、糸の切れた人形みたいだった。

 

「高木ッ!アンタまさか!」

 

「勘違いしないで欲しい。彼女はまだ生きている。虫の息だけどね」

 

「何が目的なの!」

 

「願いを叶えてあげただけだよ」

 

「願い?」

 

「人間態となった僕に何度も殴りかかってきてね。だから何度も殴り返してあげたよ。顔に痣が出来ても、足を折っても、肋を砕いても抵抗してきた」

 

「うっ…」

 

イッつんが苦しそうに口を押さえてた。

ミノさんの時はただ倒すだけだったのにたかみーは苦しませる過程が入ってるから酷かった。

 

「その時『生きて帰る』って何度も言っててね。どうせ死ぬならその願いは叶えてあげたって話」

 

元々持っていた髪を更に持ち上げ私たちに顔を見せてきた。

あちこちが腫れて紫色に変色していて鼻と歯が折れたのか血が垂れていた。

 

「ほら起きなよ。君が望んだ場所だろ?」

 

「…あ………」

 

少し離れた距離からだったけどその目に光は無かった。

死ぬのを待つのではなく完全に燃え尽きた状態。

 

「じゃ死のうか」

 

たかみーの髪を離し前に倒す。

抵抗もせずうつぶせのまま動かない。

 

「動いたらどうなるか、分かるよね」

 

駆けだしかけたにぼっしーとふーみん先輩を言葉で止める。

男は膝を着き右手に力強く拳を作る。

何を使用か理解した自分を呪いたい。

それは確実に殺せる方法だけど酷い殺し方。

 

「やめて…」

 

声を震わせ訴えるけど聞く耳持たない。

腕に力が入るのと同時に一点目がけ振り下ろされる。

 

「やめてぇぇぇぇ!!!」

 

私は走り出しその腕を止めようと手を伸ばす。

しかし、その手に着いたのは赤いぬめっとした液体だった。

男の拳はたかみーの左胸にねじ込まれ周りに液体が飛び散っていた。

 

「動くなと言ったんだけど。まぁ殺れたし不問にするよ」

 

抜かれた手がイチジクのように赤く染まっていた。

 

「あ、あああ…!ああああああ!!!」

 

「何被害者面してるんだい。これは君が望んだ答えじゃないか。自らを犠牲にせずこの世界を残す。良かったじゃないか、君は生き彼女は死んだ。これで満足だろう?」

 

言ってることが分からない。

ただ1つ言えるのは、私のせいでたかみーが死んだ。

結局今回も後悔の残る選択しか出来なかった…

 

「これで僕はおいとまさせていただくよ。神樹を燃やしに行かなきゃね」

 

突然黒い風が吹き荒れ目の前にくろっちが現れた。

コートがボロボロになってた。

 

「あの空間に飛ばしたのにもう帰ってくるとはね」

 

「…やりやがったな」

 

「惜しかったね。もう少し早ければ死に目に会え────」

 

言い終わる前に男の首が飛んだ。

いつの間にかくろっちが刀を振り抜いていた。

切れ目から血を流さず倒れる。

 

「あーあ…折角この体で現れたのに」

 

首しかないのに呆れた表情で分かれた体を見ている。

 

「もう僕を止める人間はこの世に居ない。そこで世界の終わりを眺めてるといい」

 

砂のようにサラサラと体が消えていくのと同時にバーテックスが動き始めた。

絶望って言葉以外当てはまらない。

 

「もう終わりなの…」

 

「…いや、まだだ」

 

くろっちはそれでも前を向いている。

 

「希望はどんな状況でもある。それは最後まで諦めない奴にしか手に出来ない。お前らはどうだ、勝手に諦めて壊れやがって」

 

「ならどうしろって言うのよ!」

 

「祈れ。下らんことでも友の為でもいい。ただ生きるのを諦めなきゃなんだって構わん」

 

生きる…

 

「それに美穂は帰って来るさ」

 

「帰って来るって…美穂はもう…」

 

「それでもだ。オレが手塩にかけて育てたんだぞ?」

 

「全く説得にならないです」

 

「辛辣だな。信じるか信じないかはお前ら次第だが」

 

黒いオーラを再び纏いバーテックスへ向かって行った。

私たちに出来るのはそれこそ祈るしかない。

たかみーの横に座り左手を包み込む。

まだ温かく寝ているみたい。

 

「私は信じてるよ」

 

乃木の血をひいているからじゃない。

そんな気がするというフワッとしたイメージだけど強く思う。

そうすれば本当になるかもしれないし。

遠くで轟音が鳴り響いていた。




遂に主人公死亡!
打つ手なく勇者たちは敗北!
第2章【完】!
次からは『黒花千早、友と出会う!』を連載します!

まっ、嘘なんですけどね。(桜井)
冗談はさておき一部セリフ回しをACVDを参考にしました。
あの再起動までの一連のセリフ好き。

この後どうなるかお楽しみに!
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