ゆっくりと私の身体は沈んでいく。
深海ってのはどんな感じなのかは分からないけど暗く冷たいというならここの事を言うんだろね。
必ず誰か人がいるのに今回は案内すらないってことは夢じゃない。
正真正銘私は死んだ。
最後の記憶が男に話しかけられ右腕が消し飛んだはず。
これで生きてますって言われても逆に怖いわ。
でもやり残しばっか残しちゃったなぁ…
義理の妹ともっと触れ合いたかったし黒花さんと酒飲めてないし。
あと勇者部としてもまだまだ活動できてない。
それに4人を何も言わずに旅立たせちゃった。
後悔残さない生き方とか言ってかなりあるじゃん。
いつか終わりは来るとは思ったけど呆気ないって。
それに世界消えちゃた。
あのクソ野郎に負けたのは腹が立つけど皆に合わせる顔がない。
特に燐と蛍はなんも知らないんだから尚更辛い。
ほんと情けない…
『どこ…!』
大人の女性の声?
聞いたことが無いのに胸がジワジワ暖かくなる。
『見つけた!』
落ちていく私の横に光の粒が集まり人の形を形成する。
シルエットのようになっているから髪の長い女性としか分からない。
「誰…?」
『貴方の守護霊。と言えば分かりやすいかしら』
気品のある優しい声だった。
「守護できてないんですけど?」
『私だって万能じゃないの。無理なのは無理よ』
「なんですかそれ」
思わず笑ってしまった。
盾に住み着いた精霊ならさっき貫通されてたし。
『バカにしてない?』
「そんな事無いですよ。手抜いてたとかじゃないですよね?」
『…違う…わよ?』
疑問形だし言い淀んでる。
違うと信じたいけどそうだったら責任感じて欲しいよ…
「死にゆく私と話すなんてよっぽどの暇人ですね」
『失礼しちゃうわね。これでもお役目があるのよ?』
「ならご要件は?」
『もう一度青空を見て見ない?』
女性は上を指さした。
海面のようにユラユラと光り輝いている。
あの先が現世なら生き返れと?
「いやいや、そんな都合のいいことあります?」
『都合とかじゃなくて貴方の意思次第よ。生きたいと強く思うのなら力を貸すわ』
「そら生き返りたいですよ…でも」
女性は黙って聞いている。
少し間を置き本音を言う。
「また誰かを傷つけちゃうんじゃないかって不安なの…」
園子とは自分と区切りをつけ解決した。
それはまぐれかもしれない。
他の人とまたすれ違って傷つけるのは苦しい。
『この空間の影響ね…誰だって意見は異なるわ。特に正解が無いのは尚更。でもそれも人間らしいと思うの』
「人間らしい…?」
『人は争いを続けてきたけどお互い正しいと思っての結界なの。けど傷ついて終わりじゃない。悪かったところは直して最後は謝る。完璧な人はこの世にいないから』
人は歪だからこそ支え合って生きている。
足りない所を補って完璧に近づける。
『だから自信をもっていいの。もしすれ違ったなら過ちを認める心を思い出して。それの積み重ねが未来なのだから』
「未来…」
『私は何も届かなかった。意味も理由も全てが闇に消えたの。だからこうして貴方に託したい。もしウザかったら捨てていいからね?』
「出来るわけないじゃないですか。その考え素敵です」
『え、えへへ〜。良かったぁ〜』
めっちゃ安堵してるじゃん。
年齢は分からないけどたまに少女みたいな話し方になる。
『ここは時間の干渉が少ないとはいえ早く戻さないと手遅れになっちゃう』
沈んでいた身体が今度は海面へ浮き上がっていく。
女性はその場にとどまり私を見送っている。
「あの!貴方はどうするんですか!」
『私も後から行くわ。でも話せないから報告すらできないけどね』
そもそも精霊と話せるのが異常だって皆から言われてた。
『お父さんの事守れなくてごめんなさい。あの人なりに最善を尽くしたと思うけどそれに答えらえなかった私の責任なの』
お父さんを知っている?
しかも私の責任って…
「待ってください!貴方は…!」
『たとえ過ちを繰り返しても私たちは貴方を応援するわ』
私は上がろうとする身体を止めようともがく。
しかし浮上に逆らえずどんどん離れる。
「来てよ!もっと話したい!大切な思い出を知りたいの!だから…!」
『自分を信じればまた会えるわ。だって自慢の娘ですもの』
「ッ…!」
私は光の中へゆっくりと入っていく。
女性の姿は見えなくなってしまったけど寂しさよりも幸福に包まれていた。
もう迷わない。
私は私のわがままを押し通すよ。
だから見ててね…
―――――
私は見てるだけしか無かった。
血溜まりに倒れる美穂ちゃんを起こし仰向けにして寝かせた。
目を閉じたその姿はまるで眠っているかのように思える。
夏凜ちゃんは大きな声で揺すってて、風先輩と樹ちゃんは抱き合いながら泣いてる。
園ちゃんはバーテックスに挑もうとしている東郷さんが止めている。
そして先生は1人バーテックスと戦っていた。
黒い霧になりながら日本刀で何度も攻撃しているけどほとんど避けてばっか。
今皆を奮い立たせる勇気も祈る力も無い。
『人はいつ死ぬか分からない。だから一瞬一瞬を楽しんで生きる、それで死を誤魔化してる』
前にそんな事を言っていた気がする。
「でも、分からないよ…後悔の無い生き方なんて分からないの…」
ふと美穂ちゃんの胸にある十字架のネックレスに気付いた。
肌身離さず持っていたんだっけ。
何度も殴られたにも関わらず切れずにいた。
それになんか薄く光っている。
恐る恐る手を伸ばそうとした時白い光の粒が十字架から溢れ出て来た。
皆その様子を見ていた。
粒は美穂ちゃんの無くなった右半分に集まっていく。
次第に腕や歯を形作っていて、光が薄れていくと傷1つ無くなっていた。
「ッ…ん…?」
うめき声をあげながら美穂ちゃんが目を覚ました。
身体を起こしパチパチと目を瞬きながら周りを見ている。
「えーっと…ただいま?」
「このッ…バカぁぁぁぁ!!」
夏凛ちゃんが思いっきり美穂ちゃんの顔を引っ叩いた。
―――――
挨拶代わりに夏凛から平手打ちを喰らった。
「痛ってぇ!!何するの!?」
「最初に言うセリフがそれかぁ!」
今度は風先輩からももらった。
「なんでぇ!?」
「心配してたんだから当然でしょうが!」
「そこは反省してますけど暴力は違いますって!」
言い合いたかったけど目の前の状況を見て戦闘モードに頭を切り替える。
黒花さんがバーテックスと戦っている。
どのくらい寝てたか分からないけどこれ以上戦わせる訳にはいかない。
私は立ち上がり皆の前に立つ。
痛みが全くなく完全体といった所。
「皆行ける?」
私は胸に手を当て聞く。
『もちろん!派手にやってやろう!』
『コテンパンにやられたからな!100倍返しだ!』
『ええ。私たちの底力をアイツにぶつけましょう』
『皆さんと一緒なら大丈夫ですよ!』
やる気十分で漏れ出しそうなくらいだった。
なら出し惜しむ必要は無いね。
「…満開」
私は端末を出す事なく静かに言う。
光が私に集まり一輪の花を咲かせる。
切り札と同じドレスに鎧を合した物だけど白一色に変わっていてやや装飾に神々しさがある。
後ろの腰に鋭くなったビットがマウントされた。
黒花さんの設計したシステムには無く、私1人で手にした力じゃない。
人間の可能性が生み出した神を凌ぐもの。
人はそれを奇跡と言う。
「行ってきます」
勇者部の皆に笑顔で言い飛び立つ。
私はどんどん加速させながら接近する。
そのまま速度を落とさずバーテックスの顔面を殴り吹き飛ばす。
バーテックスは樹海を傷つけながら後ろに倒れていった。
その隙に空中で黒花さんをかかえ一度着地をする。
「美穂…その姿…!?」
「今は休んでいてください。ここからは私に任せてください」
目を丸くしていたけど状況を把握したのか武器をしまった。
「そうか…あとは頼んだぞ」
離脱するのを確認し再び飛ぶ。
既にバーテックスは立ち上がっていた。
『君は…!なぜここにいる!?』
男も困惑している。
一度死んだ人間が蘇るなんて普通は無い。
「言ったよね、人の可能性を証明するって!」
私は無意識に双斧を召喚した。
精霊となった4人の武器を使えるらしい。
ライフルから2発の赤い光弾が飛んでくる。
私はジグザグに飛びながら避ける。
これが私を貫いたのか。
「まずはその腕を叩き切る!」
そのまま高く飛び上がり斧を合わせ隕石のように右腕を貫く。
これまで傷1つつかなかったのに氷を砕くように壊れる。
着地をし斧を大鎌に変化させ高速で足の関節を狙う。
バーテックスは支えを失い再び倒れる。
『こんな…バカな!!』
「まだまだぁ!!」
背後から大量の星屑ミサイルを射出してきた。
旋刃盤を投げ楕円上に迎撃させ取り残しはボウガンで倒し切る。
しかし相手もやられっぱなしじゃない。
凄まじい早さで足を再生していた。
吹き飛んだ腕は内部に潜んでいた星屑を吐き出し新規に構成。
これじゃ埒が明かない。
「ならば一撃で壊すまで!」
私は距離をとっていつもの剣を手元に呼び出す。
両手で持ち頭上に掲げる。
背後のビットを全機展開し剣の先端へ合体する。
神樹から貰った力を私の内側から剣に流し、集束・加速させる。
様々な色の粒子が集まっていく。
バーテックスも察したのか再生した右腕でライフルを拾い上げ正面に重ねチャージを開始した。
思考が同じだけど白黒ハッキリつけやすい。
『神様は間違っている。世界を破滅させるのは人間自身だ…!』
「確かにそうかもしれない。けど明日を作るのは人にしかできない!」
『この世界にまだ未来があると?滅びからは逃れられないのに!』
「誰が決めつけた!そうやって自分のエゴを押し付けるな!」
『もういい…言葉など不要。見せて貰おうか君の力を…!』
臨界に達し巨大な五色の剣に変化する。
ライフルも準備できたのか赤い粒子が装甲の隙間から溢れている。
振り下ろすのと放たれるのは同時だった。
破壊の光と希望の光。
超エネルギーの塊がぶつかった瞬間視界が白くなった。
その後に来るのは轟音と衝撃波。
バリアが花のように展開され吹き飛ばされる事は無い。
前が衝撃で見えないけど手の感覚からほぼ互角。
相撲で言えば組み合った状態。
後はどちらが土俵の外へ落ちるかだ。
消費していくエネルギーを身体を中継し補填していく。
けどエネルギーそのものは有限。
このままだとジリ貧で負ける。
「こんなもんじゃないだろ…!もっと寄越せッ!」
剣が金切り声を上げる。
ただの人造兵器に神の力を流し込んでいるから最悪自爆もあり得る。
段々バーテックスの攻撃に押されてきた。
「クソッ…!届かないのか!」
諦めたくなる気持ちをおし堪えるも焦りが増す。
何が足りない?力か?でもどこから回収する?
私の中にいる4人の反応が薄れてる。
彼女達が現世に顕現する際に必要な力も使い燃やしている。
一体どうすれば…
『諦めるんじゃないわよ!』
インカムから風先輩の声が聞こえた。
黒花さんが使用しているのを交代で使っているに違いない。
『豪語したんだから勝ちなさいよ!』
『美穂先輩は1人じゃないです!』
『皆で生きて帰りましょう!』
『あんな奴美穂ちゃんなら勝てるよ!』
『皆の力を託すよ…だから生き抜いて、お姉ちゃん!』
最高の応援だった。
力がみなぎり剣を握る手が強くなる。
私が背負うのは自分1人の命でも神様でもない。
この世界に暮らす全ての人の生きたいという思いだ!
「はぁぁぁぁぁ!!!」
光が更に増して押し返していく。
全ての回路を繋ぎ最後の力を込める。
「これが人間の可能性だぁぁぁぁ!!!」
光の剣は赤黒い光を切り裂きバーテックスを真っ二つにする。
刹那、過去最大の爆発が起こった。
樹海に伸びる光の柱。
それが人間の勝利を告げる夜明けの星。
『見事だね』
男の声が聞こえたけどそこに殺意は無い。
「どう。少しは心入れ替えた?」
『まさか。これは問題の先送りだ。いずれ滅びは来る』
使徒とは言え神様目線で言えば内乱に過ぎない。
バーテックスの脅威そのものは以前健在。
「それでも私たちは越えてみせるよ。不可能も可能にするのが人間なんだから」
『…なら進むがいい。幾多の呪いを積み上げても尚希望があるのなら。君にはそれを行う権利と義務がある』
「もちろん行くよ。私が生き続ける限り、ね」
私は力強く答え白くなっていく世界を真っ直ぐ見つめた。
最初に見えたのは透き通った青空。
潮の匂いと共に波の音もする。
私は立ち上がり周囲を見渡す。
どこかの海岸らしく髪に砂がついていた。
『こちら黒花。生きてるか?』
雑音が入っているけど声は聞き取れる。
「生きてますよ。黒花さんこそ大丈夫なんですか?」
『何とかな。死にかけたとはこの事を言うんだな』
「無駄口叩けるなら大丈夫そうですね。安心しました」
『お前も辛辣だな。とりあえず迎えを行かせたから病院行けよ』
やっぱそうなるよね…
消えたはずの右手を動かす。
剣を振るった痛みはあるけどそれ以外は無い。
「分かりました。出来れば早めに出たいですね」
『お前次第だな。病院でおち合おう』
通信を切り私は砂浜に座る。
4人との繋がりは感じているけど疲れてるのか反応は無い。
今はゆっくりさせてあげないと。
「お疲れ様。そしてありがとう」
私はしばらく心を無にして波を見ていた。
最終決戦終了!
ただただやりたいことを詰め込ませてもらいました!
美穂の満開姿はFGOのアルトリア・アヴァロン、光の剣は約束された勝利の剣、ビットは機動戦士ガンダムOOのクアンタのGNビット、最後の問答もACVD、タイトルはダンボール戦機のラスボス戦BGM。
やりすぎだと思いますがこれくらいやらないと!
おかげでスッキリしました!(自己満)
残り2話で2章は完結します。
2章の感想について
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素晴らしいッ!
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止まるんじゃねぇぞ…
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オリ展開って蛇足じゃね?
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(無言の腹パン)