生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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支え合う

検査の結果まさかの健康との診断を受けた。

失った右半分も臓器含めて正常に動いているとの事。

おかげで入院は検査結果待ちの数日間のみとなった。

家に帰っても4人は目覚めず久しぶりの独身生活を送る事にはなったけど。

掃除はみんなでやっていたから1人でやるとめちゃくちゃ大変。

 

翌日は絆創膏だけ貼って登校した。

アイツが声明出して混乱してるかと思ったけど街はいつも通りの様相。

 

「大規模ハッキング?そんな事無かったと思うよ?」

 

「スマホにも変化は無いね」

 

蛍と燐に聞いても首を傾げるだけだった。

ネットやSNSで調べても出てこない。

大赦が隠蔽に成功してもここまで上手く行く訳がない。

つまりあの事件そのものが無かった事にされている。

こんな芸当神にしかできない。

神樹が干渉してきたかそれとも天の神とやらの影響、あるいは使徒の権能か。

とにかく内乱は起こっていない、今はそれでいい。

放課後普段通り部室に入るや否や皆私をジッと見て来た。

 

「…どういう状況?」

 

「そこに座りなさい」

 

あっ、察し。

ここに入っても来なくても学校に来た時点で詰みだった。

荷物を机に置き正座する。

正座は言われてないけど誠意みせないと。

私の周りを取り囲むように並ぶ。

 

「なんでこの状況になっているか分かっているの?」

 

「私が死にかけ全員に心配をかけた事が原因です」

 

まぁ死にかけではなく死んだが正解だけど。

 

「無茶をするとは思ったけど死にかけるなんて聞いてないわよ」

 

「完全に油断してました…」

 

そこは言い訳も無い。

まさか狙撃守備貫通付与とか初見殺し極まりない。

しかもタイマンでフルボッコだし。

 

「どのような罰も甘んじて受けます。パシリだろうとなんでもします。どうかお許しを」

 

私はそのまま土下座をした。

そもそも園子の家で狙撃された時から皆には迷惑をかけていた。

こんな謝罪じゃ済まないけどその贖罪になれば構わない。

 

「顔を上げていいよ」

 

ゆっくりと上げるとそこに友奈が膝をついていた。

 

「腕痛くない?」

 

「痛みはないよ。病院でも健康だって言われたくらいだし…」

 

突然抱き着いてきた。

後ろに倒れそうになったのを両手で支えて耐える。

 

「良かった…本当に良かった…!」

 

私は黙って抱きしめ返す。

友奈の心は繊細だ。

嬉しい時は一緒に喜んでくれるし、悲しい時は悲しんでくれる。

ある意味皆を繋げたのは友奈のお陰とも言える。

 

「友奈ちゃんを泣かせた罪は重いわよ」

 

「そこに怒るのは東郷先輩だけじゃないんですか…」

 

「はいはーい!私から提案がありまーす!」

 

園子が手をビシッとあげた。

 

「今大赦の監視が凄い強化されてて自由が減っちゃって困ってるのよ。だからたかみーに私専属のお手伝いさんになってもらいたいの~」

 

「でも私家から通うようになるけど?」

 

「大丈夫~。たかみーの家にしばらくお世話になるから」

 

なるほどね。信頼されているかは置いといて対人も料理も出来て顔なじみの私には適、任…

 

「えええええ!!??」『えええええ!!!!』

 

 

いつもの適当な名案かと思ったらガチだった…

金は乃木家が補填するから安心だけどこうなるとは。

今は本家に顔合わせに車で送迎されている。

精霊の4人はなんやかんやあったけど解放し家で受け入れ準備中。

私の部屋の空きスペースを利用すればどうにかなるはず。

それにしても本当の両親との対面か…

一度も会った事もないから緊張する。

 

「大丈夫?」

 

察したのか隣に座る園子が声を掛けてくれた。

 

「何とかね。どう会えばいいか分からなくて」

 

「言いたい事は言った方がいいよ。そうすればスッキリするよ」

 

「分かった。頑張ってみる」

 

乃木家はかなり、いや言葉にできないくらい敷地が広かった。

案内無かったら迷子になるでしょ…

建物も大きく部屋数が尋常じゃない。

 

「よくここで暮らせたね…」

 

小声で園子に聞いてみる。

 

「私も幼い頃迷子になったよ~」

 

分かりやすく改築しろって言いたい…

まさか乃木若葉が造ったとか?

そうなるとどんな人だったか益々気になる。

変なこと考えて歩いていたら応接室についた。

中には椅子が4つ向かい合う様に置いてあり棚には高そうな花瓶がある。

 

「こちらでお待ちください」

 

軽く頭を下げた後、席に座り周りを見る。

いつ来るか分からないから余計落ち着かない。

横に座る園子は背筋を伸ばして待っている。

めっちゃ綺麗な座り方。

すると扉が開き園子の両親が入って来た。

母親の雰囲気が私より園子に似ている気がする。

両親は私たちの前に座る。

高そうなスーツを着てて身だしなみがちゃんとしてる。

 

「娘がお世話になっております」

 

「いえいえ…こちらこそ仲良くさせてもらってます」

 

「貴方の活躍は耳に入れています。神樹様のため戦われているその姿、感銘を受けます」

 

なんだこの持ち上げ具合は…

私を勇者として接しているの?

 

「そうですか…娘さんの安全は私が保障しますのでご安心を」

 

「良かったです。園子、粗相の無いようにしなさい」

 

「…なんで私にお姉ちゃんがいたの黙ってたの?」

 

私は園子の顔を横目で見た。

表情は変わっていないけどその眼には怒りが籠っていた。

 

「教えても実感が湧かないと判断したんだ」

 

「勝手に決めないでよ。それにお姉ちゃんは私より何倍も辛い目にあってるんだよ?なんで助けてあげなかったの」

 

「戸籍から消されていた。私たちでも追うのが難しかった。理解してくれ」

 

 

「ふざけないでよ。それが見捨てる理由に―――――」

 

私は園子の前に右腕を出した。

これ以上私の為に言い合うのは心苦しかった。

 

「もういいよ。庇ってくれてありがとう」

 

園子に微笑み再び両親と見合う。

 

「私の事は大丈夫です。その上で1つ聞きたいのは園子…妹に私の分の愛情を注いであげれましたか?」

 

よく片方に愛情を注いで仲が悪くなる話を聞く。

ただ私はこの人たちから愛は受けれなかった。

ならその分園子には幸せになっていて欲しい。

 

「…」

 

2人共俯いてただ黙っている。

それが答えか、ならば結構。

私は勢いよく立ち上がり父親を殴る。

受け身すら取らず椅子と共に後ろに倒れる。

母親は手を口に当て驚き、園子は表情を一切変えず見ていた。

父親は何が起こったか理解していないがお構いなく胸倉をつかみ上げる。

 

「ふざけんなよテメェ!」

 

実の父親に手前なんて普通は言ってはいけない。

でも家族扱いされてないならお構いなく言える。

大声と物音が聞こえたからか扉が勢いよく開き黒服の男性2人が入って来た。

 

「外野は失せろ!」

 

私は一喝し黙らせる。

場の空気に押されおずおずと下がっていく。

 

「子供に愛情捧げないとか馬鹿にしているのか!」

 

「園子は神樹様に選ばれたんだ…その意向に従うのが正しいだろう…!」

 

「神様が殺せと言えば殺すのかお前は!」

 

「この世界には神樹様の加護があって成り立っている。その為なら…」

 

あの男が絶望するのも納得する。

神樹の力は絶対だ。

それは300年という長さが物語っている。

 

「それでも親は最後まで子を守るものだろうが!たとえ何もしなくても背中ぐらいは見てやれよ!」

 

一番辛いのは誰からも見られず認められない事。

かつて千景が受けていたいじめが例だ。

 

「私だって、変われれば変わりたかったの…!」

 

「なら散華の事は言ってあげたの?」

 

「それは…」

 

「言えないよね。守秘義務ってやつ?私も隠し事は沢山してきたよ。でもあなたたちは言えたのに言わなかった。同罪だよ」

 

もう怒りは失せい呆れが出て来た。

それに飛ばし過ぎて疲れた。

ゆっくり手を放し扉へ向かう。

園子も立ち上がり両親に背中を向けた。

 

「最初にも言いましたが妹は私が守りますのでご安心を。もうあなた達とは会う事はないと信じます。さようならお父さん、お母さん」

 

顔すら見ず黒服の横を2人で抜けていく。

道は大体覚えてたから何とか建物の外には出れた。

その瞬間眩暈がして倒れそうになったのを園子が支えてくれた。

 

「ごめんよ。少し無理したかも…」

 

「そんなことないよ。寧ろスカッとした!」

 

「おおう…それは良かった」

 

まさかグーパンが好評とは。

治まって来たから園子から離れる。

 

「怒られないかな?傷害罪待ったなしだけど」

 

「ただの喧嘩だよ。もし言われたら私がどうにかするよ~」

 

立場変わっている気がするけど悪くない。

お互い支え合っての姉妹だしね。

 

「そろそろ帰らないとね」

 

「楽しみだな~。ミノさんもいるしご先祖様の同期もいるしワクワクが止まらないよ~」

 

「それは良かった。短い間だけど仲良くしてね」

 

「もちろんだよ~」

 

ふと手が触れ合う。

ドキリと心臓が跳ね顔が赤くなってきた。

園子も同じでそっぽを向いていた。

その姿が可愛らしくつい手を繋いでしまった。

 

「あっ…」

 

驚きで指先が細かく動いていたけど決心したのか握り返してくれた。

こういうの憧れてたんだよね…

 

「帰ろう、私たちの家に」

 

「うん!」

 

―――――

 

オレは1人英霊の碑にいた。

何かあると報告しにここに来る。

 

「見てたか?あいつら紛い物だけど神様倒しちまったよ。しかもオレのシステムの先に行っちゃってさ、びっくりだわ」

 

返事は無いが聞いてくれる感覚になる。

ただいい思い出だけじゃない。

 

「そろそろオレも終わりが近いかもな。仕事を放棄し朽ちていく身体を無理やり繋いで生きて来たんだ。そのツケを払わないとな」

 

元々300年前に死ぬ予定を契約やら権能でどうにか生き抜いた。

お陰で化け物に成り果てたが。

 

「安心しろ、お前たちの描いた物語の結末まで死なないさ。それがオレの最後の仕事だからな」

 

軽く笑いその場を後にする。

最後の日に向け出来る全てを費やすだけだ。




2章完結!
一から考えていたからか1章よりも疲れましたね…

少し話させてもらうとモチーフは進撃の巨人の王政編です。
外にも内にも敵がいて自身とどう向き合うか、行き止まりの歴史に価値はあるのか。
そんなことを考えながらのわゆ救済をぶっ込みました。
こじつけ感満載と重い展開続きですみませんでした…
今回もアンケートあるのでご回答お願いします。

次回も暗い内容になります…
本当に申し訳ない…
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