生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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運命の夜

さっきまで意気込んでいた覚悟は吹き飛んだ。

見知らぬ少女が腰を抜かしてリビングに座ってるんだから。

 

「えー…と?大丈夫…?」

 

「はい…大丈夫です?」

 

少女も理解が追いついていないから疑問形の会話になっている。

 

「…まずは傷見せて?別に怪しい人じゃないからね?!」

 

私は怯えた子犬のようにゆっくり少女に近づいた。

少女が着ているのは恐らく制服だと思う。

目立った外傷は無く汚れや穴が開いている。

特に右腕の損傷が激しい。

顔も土のようなもので汚れていた。

 

「んー…まずお風呂入る?さっきまで私入ってたから暖かいよ。」

 

「ありがとうございます。入らせてもらいます」

 

「あ、ちょっと待って」

 

少女を呼び止めスマホで写真を撮った。

 

「一応私の保証で撮らせてもらったね。ネットにはバラ撒かないから大丈夫」

 

少女は頷き浴室へ向かった。

 

「ハァ…今日はキツいって…」

 

ソファに座り写真を見た。

グレーの髪を後ろに纏め小さめだけどポニーテールにしている。

幼さが残っているがどこか男らしさを感じる顔。

少女の写真をメールに添付し送る。

送り主は黒花さん。

困ったらとりあえず押し付ける感じにしている。

少女がシャワーを浴びている音を聞きながら返信を待っていたら電話がかかってきた。

思わず反射的に取ってしまった。

 

『これ何処で手に入れた?』

 

もしもしすら言わさない唐突な質問。

一呼吸くらいおかせてくれてもいいのに…

 

「何処って…今部屋でですけど」

 

『部屋で?』

 

「はい。ついさっき撮ってシャワー浴びてますよ」

 

黒花さんはその返答の後少し黙っていた。

 

『…明日学校休め』

 

「はい?」

 

『いいから休め。理由はなんでも構わない。最悪オレが言いくるめるから』

 

黒花さんの声が低くなり強めの口調に変わった。

この声は何か起こった証拠。

詮索してもどうせ言ってくれないのは目に見えてるので聞かないけど。

 

「分かりました。一応保護でいいんですね?」

 

『ああ、今日の話は後日聞く。その子を見ておけ』

 

レポートが事実上無くなったのは嬉しかった。

 

『あと周りには言うなよ』

 

「分かってますよ。私も入られたなんて聞かれたら嫌なので」

 

冗談交えて言ったが再び黙ってしまった。

何なんだこの空気。

 

『最後にその子の名前だが…』

 

黒花さん知ってるなら早く言って欲しかったんですけど…

 

『銀だ。以上』

 

ブチリと一方的に切られてしまった。

何があったんだか…

連絡は明日の朝するとして、名前も把握できたしあがるまでしばらく待ちますかね。

______________________

 

美穂との通話をやめオレは深く息を吐いた。

今日勇者とバーテックスが外敵した同日の出来事。

これが偶然で済ませられる訳が無い。

この状況で手をうたねば。

そのままある人物に電話をかける。

 

「黒花だ。夜分申し訳ない。悪いが明日会えるか?─…分かった。いつもの場所で13時に。あぁ…よろしく頼む」

 

とりあえずアポは取れた。

奴に嗅ぎつかれる前にどこまで行けるか勝負だ。

完全秘匿は不可能。

あえて知らせるか?

いや、彼女の事だ。ろくなことにならん。

 

「実に厄介だな…」

 

今はオレにできる最善をするしかない。

 

______________________

 

少女…いや銀のための部屋着を用意しようとしたがサイズが合わなさそうだった。

まさかこのタイミングでファッションに無頓着な事が裏目に出るとは…

仕方ない…同性なんだし多少ブカブカだとしても耐えてもらわないと。

そしていつもの部屋着用のシャツを取り出した。

一応ドアをノックする。

 

「着替え置いとくよー」

 

『ありがとうございますー!そろそろ上がりますから置いといてくださいー!』

 

うん、すごい元気。

洗面台の横にシャツを置き撤収。

今日は手抜き夕飯だが焼きうどんを多めに作ったのが幸をそうした。

あとはインスタントの味噌汁つけとけば大丈夫かな。

苦手なものもあるだろうしね。

やかんに水を入れコンロに火をつけ、冷蔵した焼きうどんを電子レンジに入れ解凍する。

まぁ簡単だからそんな待たせることは無いかな。

机に箸を置きキッチンに戻り火の番をする。

 

「上がりました。お風呂ありがとうございます!」

 

銀は深々とお辞儀をした。

風呂上がりということで髪をおろしていた。

待って。めっちゃ可愛いじゃん。

思わず顔が赤くなりそうになったが耐えた。

 

「いやいや、気にしないで。今ご飯作ってるから適当に座ってて」

 

「本当にすみません…」

 

そのまま椅子に座り部屋の中を見ていた。

てかこの部屋に他人入れたの黒花さん意外いないのでは?

電子レンジから音がなり焼きうどんを取出す。

そのまま持っていき銀の前に置く。

 

「先食べてていいからね。後でお味噌汁持ってくね。」

 

「いえいえ!待ってますよ!」

 

律儀だね…まぁ本人が望むなら構わないけど。

結局私のが出来上がるまで待っててくれた。

 

「それじゃ…」

 

『いただきます!』

 

2人で声を合わせ言った。

私はあえて食べず銀を見た。

うどんを啜った後唸り始めた。

 

「んーーーー!美味しいです!」

 

「それは良かった。ゆっくり食べなよ」

 

ホントよかった!

だって他人に料理出すなんて初だし。

しかも笑顔で言われたら余計ね。

私もようやく食べ始める。

黙食ではあるが私の心は暖かった。

 

「ほんとに美味しかったです。何から何までありがとうございます」

 

銀は改めてお礼をくれた。

今日何回聞いたんだか。

さっきなんて皿洗いまで手伝ってくれた。

マジでいい子。

今は机に向かい合って座っている。

さて…ここからだ。

 

「今更だけど私の名前は高木美穂。貴方の名前聞いてもいい?」

 

すると銀の表情が曇った。

「…分かりません…」

 

「ん?」

 

「気づいたらココにいたというか自分が何なのかすら分からないんです…」

 

薄々思ってたけどコレ記憶喪失ってやつだね。

まぁ部屋を見たけど侵入した痕跡は無かった。

つまり、銀はこの部屋に湧き出た事になる。

 

「なるほど…うん。そりゃそうだよね!仕方ないよ!」

 

とりあえず笑顔で前向きな事を言っとく。

本人の記憶は本人にしか解けない。

いつになるのかそもそも帰ってこないか。

けど黒花さんは情報を持っているなら活路くらいは出来るのかな。

今は名前は伏せておこう。

 

「とりあえず…寝よっか」

気づいたら22時。

今日は濃厚過ぎて疲れが出てきた。

生憎私は夜には弱い。

本音は寝たくないぐらいだけど。

 

「そうですね…少し眠いです」

 

「おっと…1つ確認。ベット派?それとも敷布団派?」

 

大事な質問だ。

これは死活問題に相応しい。

 

「えーっと…高木さんに合わせますよ」

 

そう言うと思ってた。

私は立ち上がり銀の横に座った。

 

「あのね、今貴方は不法侵入者だけど同時に私の初めてのお客様なの。経緯はともかくここにいる以上貴方の要望に応えたい。だから、好きなようにしてね」

 

そう言い整えられているグレーの髪を撫でる。

指に引っかかることもないくらい綺麗だった。

 

「…お言葉に甘えてベットで」

 

「わかったよ。お先にどうぞ」

 

銀をベットに案内し私は来客用の布団を邪魔にならない位置に敷く。

まさかこれも使うとは…

 

「電気消すね」

 

「はい。おやすみなさい」

 

「おやすみ。いい夢見てね」

 

無意識に言ったが自分自身に言い聞かしているように思ってしまった。

布団に潜り天井を眺める。

なんかドキドキするな…

遠足前の小学生気分とはこの事か。

程なくしてベットから寝息が聞こえたから私も眠気に身を任せ夢の中へ落ちていった。




自分の書く小説って一日が長いんですよね…
まぁ冒頭は丁寧?にやります。
他の二次創作さん方が通る救済ルートですがアレンジしてます。
まぁ救いたいですよね!

あと前回言い忘れていましたが、美穂の武装イメージはモンハンのチャージアックスです。
機能の追加がありますがその時に再度言います。
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