生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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広がる呪い

街はクリスマスムード一色。

広場に大きなツリーが飾られイルミネーションが眩しいくらい輝いていた。

 

「綺麗だね~」

 

「寒いけど見に行く価値はあるね」

 

園子が学校帰りにイルミネーションを見ようと言ってきたからのった。

 

「実は私皆とやるクリスマス初めてなんよ」

 

「それ言うなら私もブラックサンタ以外とやるの初めてだよ」

 

黒花さんがサンタの帽子を被って毎年来ていた。

最初は恥ずかしくて嫌だったけど強硬するから慣れた。

 

「なら一緒だね…おや?」

 

前に友奈と東郷がいた。

2人も見に来たのかな。

 

「邪魔しないであげ―――」

 

ようと言おうとしたが既に園子は2人の元にいた。

素早さといい気配の消し方が忍者か…

結局4人で帰る運びとなった。

 

勇者部にも小さなツリーを飾る事になり手伝っていた。

 

「良くこんなの見つけて来ましたね」

 

「オレの人脈甘く見られては困るなぁ」

 

「はいはい。ありがとうございます」

 

「ツンデレか~?」

 

「それは夏凛のキャラなので違います」

 

「ちょっと。何で私に飛び火が来るのよ」

 

「失礼、口が滑った」

 

「みーほー?」

 

頬をムニムニ摘ままれているけど気にしない。

 

「風さん勉強大変そうですね…」

 

「乃木がいなかったら大変だったわよ。でも来週は樹のショーもあるから頑張らないと!」

 

「お姉ちゃん!私のショーじゃなくて町のクリスマスイベント!学生コーラス!」

 

「やるじゃない、樹」

 

「友奈さんのお陰ですよ」

 

「イッつんのグッズ展開していい!?」

 

「ダメです!」

 

「そうだよ。作るなら公式マークつけないとコピー品が流れちゃうよ」

 

「そもそも作らないでください!」

 

皆冗談にのったり笑ったりしている中友奈だけが浮かない顔をしていた。

まるで無理をしているような。

 

「結城。悩みでもあるのか?」

 

黒花さんが先に話しかけた。

 

「え、何でもないですよ!」

 

「そうか?背中に大きなお荷物を抱えている風に見えるが?」

 

この人何か見えているな。

勘づくのは一流だし。

 

「実は、あの時…」

 

その時友奈は目を大きく見開いて私たちをみていたけど急に瞑りだした。

 

「どうしたの?」

 

「ううん。やっぱ何でもないです…」

 

その日の友奈にどこか違和感を持った。

私の仮説が正しければ負債を負っているのは…

 

―――――

 

部活が終わった後私は先生に空き教室に来るよう言われた。

 

「ごめんよ。東郷と帰りたかったろうに呼び止めて」

 

向かい合う様に座る。

先生の顔が夕日に照らされている。

 

「大丈夫です!何かありました?」

 

「あぁ、さっきのが気になってな。このなりでも顧問なんで部員の悩みは解決しないと」

 

上手く誤魔化し切れていなかったんだ。

でもこれ以上巻き込められない。

 

「樹ちゃんのイベント盛り上げるにはどうしたらいいかなと考えてたんです」

 

「なら言っても良かったんじゃないか?」

 

「でも自分で違うって思ったので言うのやめたんです」

 

片腕を机にのせジーッと私の顔を見ている。

何か別の物を見ている感じに。

 

「好かれているなお前」

 

「へ?」

 

「まぁ良くないもんだけどな」

 

「!!」

 

バレた。

これ以上探られるとさっきみたいに紋様が…!

 

「本当に大丈夫なんです!!」

 

勢いよく立ち上がってしまった。

 

「私だけの問題なんです…だから…!」

 

「あぁ、合ってるんだ」

 

「え?」

 

「ごめん、今のハッタリ。正直思いつめている位しか分かってなかった」

 

笑いながら頭を掻いていた。

なら私は自分から言っちゃったの?

 

「これで結城が悩んでいるものがなんとなく分かった。あぁ部員には黙っておく。然るべき時が来たら自分で言えよ」

 

「え、ええ…」

 

「なんだよ。もう少し攻めないのかとか思ってんのか?」

 

「はい…てっきり全部話させるつもりかと…」

 

「オレも鬼じゃない。言いたくないのに言わすのは拷問だからな。もう帰っていいぞ。遅くなったらオレが叱られちまう」

 

「ありがとうございました…失礼します」

 

私は鞄を持ち教室を出た。

先生に少し話してしまった時、紋章が出なかった。

話しても大丈夫なのかな…それともたまたまだったのか。

何が正しいのか分からない。

でも、相談していいなら…

―――――

 

次の日の部活は災難だった。

と言っても内容ではなくそれぞれに起こった事件だけど。

夏凛はエアコンの故障、東郷は停電、風先輩と樹ちゃんは家の鍵を無くす、園子と銀はお湯が吹き出し火傷。

そして私は家の階段から軽く落ちた。

これが時間差はあれど1日で起こった。

偶然にしても出来過ぎている。

それに友奈だけ何も起こってない。

 

「全員でお祓いいったら?」

 

「縁起悪いけどそれもアリかも…」

 

「また大赦だったりー?」

 

「不謹慎な事言わない。大赦を信じるって決めたんでしょ」

 

「えへへー。言ってみただけ~」

 

「全く…」

 

部活中風先輩と友奈がこっそり抜け出していたのが気になったけどさすがにストーカーはしなかった。

 

早めに帰れたからご飯を作るまで千景とゲームをしていた。

 

「格ゲーはコンボ入るまでが難しい…」

 

「キャラごとに強みやリーチがあるからそれを全部覚えて行動すればできるわ」

 

「それが出来たら今頃強くなってるって」

 

突然、部屋のドアが開き園子が息を切らしながら入って来た。

「ど、どうしたの?」

 

「ふーみん先輩が…車に跳ねられたの!」

 

「は…?いつ!?」

 

「今いっつんから連絡来て治療中だって!」

 

私達はコートだけを羽織り病院へ向かった。

バスを乗り継いで駆け付けた。

既に皆来ていて暗い表情だった。

 

「事故の状況は?」

 

「お姉ちゃんと信号を渡っていたら車が信号を無視して突っ込んで来たんです…」

 

「信号無視とは最低ね」

 

「でも満開してないならバリアがあるんじゃないのか?」

 

「アップデートで消えたのかも知れません」

 

待ち始めて2時間近く経過した。

祈るだけしかできないのがここまで苦痛とは。

 

「みんな心配かけてごめんね」

 

長時間の手術と合わないくらいの元気っぷり。

まぁ全身包帯巻かれているから中身だけなんだろうけど。

 

「本当に大丈夫なの?」

 

「ありがとう樹。入院は2週間くらいだって」

 

「クリスマスは無くなったけど受験には間に合うわね」

 

「ライブ行けないのが辛いわ…」

 

樹ちゃんは入院の手続きがあるから1人残った。

途中まで皆で帰りいつもの6人になる。

 

「何か気になることでもあった?」

 

園子が私の顔を覗き込みながら聞いてきた。

 

「バリアは無いんじゃなくてあったんだけど貫通したと思ってるんだ」

 

「貫通って言われても神様の力を越えるなんて無理だろ」

 

「それがあるんだよ。私はそれで死んだんだけどね」

 

「そっか…神の力に対抗出来るのは神の力だけ…」

 

「うん。そしてトリガーとなっているのが友奈」

 

「事故の前に2人で話してたよな」

 

「多分何かを伝えようとして口封じされたんだと思う」

 

「その通り。いい推理してるね」

 

聞き覚えのある声が後ろから聞こえ皆で振り向く。

街灯の下に黒い影が立っていた。

 

「約束通り来たよ」

 

「有言実行はして欲しくなかったね」

 

「知り合いなの?」

 

「話したことしかないよ。それに夢の中だしね」

 

夢が現実になるって言われても悪夢を呼ばなくてもいいのに。

 

「いい加減正体明かせよ。友奈」

 

口調を強くし敵対心をあげる。

コイツは恐らく友奈の別側面。

このタイミングで現れるのは呪いを強めるため。

 

「そうだよね…言った方がいいかもね」

 

影が霧のように晴れていく。

そこに居たのは友奈に似た誰かだった。

制服を着ていたけど讃州中学のものでは無く西暦組に近い。

 

「なんで…貴方がそこにいるの!?」

 

「千景?」

 

目を見開き声を震わしていた。

それは珠子と杏も同じだった。

 

「私は友奈、高嶋友奈。3人と同じ初代勇者。そして天の神に使わされた唯一の勇者だよ」




遂に主催者の正体が判明!
と言っても分かりやすくしたつもりなのでいつ出るか気になってた人が多いのかなと。
口調も赤嶺に寄ってましたけど何とか補正かけました。
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