「勇者となるのは神樹に選ばれた者だけのはず!」
「呼べるのは神樹だけじゃないんだよ。器さえあれば中身はどうとでもなるからね」
「貴方高嶋さんじゃないわね…」
「そうだよ。この人格はただのコピー。本物はどっか行っちゃったよ」
知り合いが敵側だけでもかなり辛いのに魂が別人になっている。
屈辱所の騒ぎじゃない。
「私の夢に介入してきた理由は?」
「面白そうだったから。最近この身体が手に入ってこっち側に来れたけど暇だったし道具の様子を見たくてね」
初めて会った時彼女は主催者と言った。
しかしその証拠は無く自称止まり。
「ここで殺し合いをする気は無いよ。また会おうね。アンちゃん、タマちゃん、そしてぐんちゃん」
高嶋は後ろを振り返り街灯の外へ歩く。
「…ッ!その名前を…お前が言うな!」
千景は怒りを顕に泣きながら変身をし鎌を高嶋へ振り下ろす。
攻撃は当たったが高嶋の身体が靄のように別れ闇に消えていった。
「千景さん、大丈————」
「何処に消えた!出てこい!殺してやる…絶対に!」
鎌を振り回し声を荒げる。
銀が近寄っていたから私は首根っこを掴んで無理やり下げる。
「落ち着けって!もう友奈はいないぞ!」
「土井さんも伊予島さんも思わないの!あの高嶋さんが敵になっているのに!」
「確かに驚きました…けど今は戻りましょう!何か訳があるんですよ!」
ピタリと鎌を止め私に目線を移した。
「ねぇ高木さん…夢で話してたのは本当なの…?」
「本当だよ。言い訳に聞こえるけど声が加工されてて誰か分からなかったの」
私は変身せず千景に近づき鎌を握る手に触れる。
怒りで震えていて今にも爆発しそうな感じだった。
「たとえ中身が違うと言われても大切な人が現れたら冷静になんてなれない。でも周りを見て、それは千景だけの問題じゃないよ」
皆黙っているけど不安にしているのは同じ。
ただでさえ風先輩が事故り友奈が呪われているのに高嶋の襲来は想定外の連発。
千景は下を向いていたが、フワリと花が舞い変身を解いてくれた。
「ごめんなさい…もう大丈夫」
無理やり抑え込んだ形にはなるけど落ち着いたなら良かった。
翌日黒花さんには高嶋友奈の事だけを話したら酷く驚いていたのが印象的だった。
高嶋側からのアプローチも無くクリスマスを迎えた。
一応クリスマスには風先輩のお見舞いついでにプレゼントとして行きつけのうどん屋のクーポンをあげた。
本人は『絶対食べるからリハビリ頑張るぞー!』と言っていた。
モチベーションが上がればいいかな。
そして我が家ではクリスマスパーティーを開いた。
「美穂ー、早く飯持ってきてくれ~。タマお腹ペコペコだぞ~」
「なら手伝った方が早く食べれるのに」
「箱イベント100箱開けようとしていたのに70箱しか開けきれてない…!クッ、私とした事が…!」
「程ほどにしてくださいよー。骨付き肉ここに置きますね」
「ちゃんと親と雛分けてね。変にうるさい人いるからさ」
「華やかになっていいね~。テンションあっがる~!」
机には満漢全席とはいかないけど豪華な料理を作った。
仕込みに時間がかかって疲れたけど満足する形にはした。
「色々課題はあるけど今くらいは忘れて楽しもう!という訳でメリークリスマス!」
『メリークリスマス!!!!』
シャンパン風の炭酸飲料を飲む。
いつもより美味しく感じる。
6人分作ったのにどんどん無くなっていく。
一年前の私が見たらどう思うんだろうな。
バカげてるとかありえないとか言ってそう。
大量の食器を洗いひと段落ついたから私にとってのメインイベントを開始する。
「皆にプレゼントがありまーす!と言ってもチープかもしれないけど」
私は一人ひとり手渡しでプレゼントを配る。
「お守り?」
それは手のひらよりやや大きめのお守り袋。
「うん、全部私が縫ったんだ。中が空なのは大切な物入れて欲しいなって思ってね」
しかもそれぞれの勇者服の色に合わせて糸を変えた。
園子が来たときは焦ったけど間に合って良かった。
裁縫スキルはボタンを縫うのが限界だったからミスしまくったけど何回かやってコツを掴んだ。
「ありがとう。美穂の想い伝わるよ」
「絶対大切にするわ」
「何入れるか迷うなー」
「思い出になりそうな物入れようかな」
「これで皆お揃いだね~」
それぞれお守りを掲げたり見せあってる。
そんな微笑ましい光景が歪み始めてきた。
「たかみー?」
「え?あれ…? 」
勝手に涙が零れていた。
ゴシゴシと手の甲で拭いても溢れてくる。
同時に心臓が掴まれたように苦しい。
「なんで止まらないの…?ひぐっ…プレゼントもらってくれて嬉しいのに…グスッ…」
嗚咽が強くなる。
もう感情の制御が出来ない。
隠していた本音が溢れる。
「私…私…皆と離れたくないッ…!!」
言っちゃった…
皆をこの世に引き止めちゃいけない。
お役目が終われば消える、それを理解し納得してたのに…
「皆と高校に行きたい…!ずっと暮らしてたい…!ダメなのはわかってる…けどッ!1人はもう嫌なの!!」
子供のわがままのように泣きじゃくる。
使徒との戦いで皆がいなくなった家は冷たかった。
帰ってくると思ってたからさほど気にしなかったけどずっととなると耐えられない。
それに銀と会う前の日々に戻りのが怖い。
「私だって…1人は嫌だよ…」
園子の声が震えていた。
顔を上げるとボロボロと涙を流していた。
「その、こ…」
「ミノさんと会えたのに別れるなんて…そんなの…」
園子も失っているし孤独の辛さは人一倍感じてる。
だからこそ今の状況から抜け出せないんだ。
「アタシだって…園子と須美と離れたくないんだ…」
「ここは私のもう1つの帰る場所なの…消えたくない…」
「美穂だけじゃない、燐とも会えた縁をこんなところで終わらせたくないんだ…」
「あの日々も大切な思い出です。けどこの瞬間も忘れられないくらい…美しいんです…」
つられてなのか泣いていた。
そっか、皆我慢してたんだ。
相手を縛り付けてしまう呪いの言葉だから言わなかっただけで心にある思いは同じだった。
「園子、銀、千景、珠子、杏…」
お互いの手を握り合いながら泣き続けた。
その声も温もりも思いも、全てを魂に刻みつけるように。
喉が枯れるんじゃないかってくらい泣いた。
あと泣きすぎて目も痛い。
「絶対目赤いよ…」
「実際そうだしな」
「皆さんなってますよね」
「目薬買っておけば良かったわ」
「前が見えない〜」
「園子っ!?それタマだから!へっ、へんなとこ触るなぁーー!!」
わちゃわちゃが帰ってきて良かった。
「たとえ遠く離れていても私はどこまでも一緒だよ」
お守りを胸に当て言うと皆も同じように行動する。
これがわたしのもうひとつの願いでもある。
何が繋がる物があれば消えても感じ取れるんじゃないかなって。
「そういえばくろっちのは無いの?」
「あるよ。今日来れたら行くとか言ってたから準備はしといたんだけどね」
ポケットには黒色のお守りが入っていた。
せっかく渡そうと思ってたのに。
カーテンを開け外を見ると雪が降っていた。
ホワイトクリスマスなんて珍しい。
「最後に集合写真撮るよー!」
「それなら三脚持ってくるわ!」
「その必要は無いよミノさん〜。じゃーん!これを使うんよ〜!」
「なんだそれ?孫の手にしちゃゴツゴツしてるな」
「自撮り棒ですね。先端にスマホをつけて撮るんだよ」
「初めて見るけど重くないの?」
「そこは気合いで何とかするよー」
皆肩を寄せあってカメラに入る。
密着してるからちょっと熱い。
「それじゃ撮るよ〜掛け声は私がクリスマスって言ったらメリーって言ってね〜」
「普通逆なんじゃ…」
「こうなったら受け入れるしか無いよ」
「いくよ〜…クリスマス〜?」
『メリー!!!!!!』
変な掛け声だけどそれが面白かったからいい笑顔が出来た。
黒花さんも来ればよかったのに…
―――――
オレはある神官に銃を向けていた。
「サンタさんはそんな物騒な仮面付けてないと思うが?」
ここは友奈の家の前。
何れ来るとは思い近くで待っていたが想定よりも早い。
「どいてください。仕事の邪魔です」
「ハッ、まさか犬畜生に堕ちるとは。見損なったぞ」
「これは世界を救うお役目です。このままだと手遅れになってしまいます」
「アイツらの考えだろ。お前自身は満足なのか?」
「満足してなければ来ていません」
ダメだコイツ、完全に自分を殺している。
もはや命令に従うロボットだ。
「あっそ、なら好きにしろ。オレも好きにさせてもらうがな」
銃を終い微動だにしない神官の横を通り抜けその場を後にする。
結城に残された時間は少ない。
それをどう使うかは本人次第だがこちらも同じ。
行きつく先は破滅か創生か。
それとも…
「第三の道か。望み薄だが可能性はあるな」
これはオレが作れても選ぶのはアイツらだけどな。
そのためにも開示しなくちゃな。
目の前にあるものが一体なんかのか、それを見てどう受け止めるのか。
無理くりでしたけど絆イベントでした!
え?千景の病みがあっさり?
中の魂が別人で横に友がいるならこのくらいでセーフでは?(暴論)
次回は大満開であったあの話をアレンジします。