生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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呪いは花開く

翌日、園子から合図が来た。

こっちも進展ありの様。

私の家に友奈以外を集めたら東郷も何か知ったような雰囲気だった。

 

「友奈ちゃんの部屋からこれを見つけました」

 

置かれたのは青い表紙に『勇者御記』と書かれた本。

「若葉のとまんまじゃんか」

 

「これ友奈さんの許可は…」

 

「無断です」

 

「だと思った…」

 

きっぱり言ったよ…

でもこれを持ってきたのはファインプレーかもしれない。

けど二度と独断行動はするな。

 

「私もゆーゆが心配でかたみーの仮説を元に大赦に行って調べてたんだ。結論から言うとね、ゆーゆは天の神の祟りに苦しんでいるの」

 

『!!!!』

 

「やっぱりね…」

 

予想は大方当たっていた。

今神様の借金を友奈1人が背負っている状態。

 

「しかも大赦の調べで、この祟りはゆーゆが誰かに話したり書いたりするとその人に伝染するの。だからこの本はとても危険、それでも見る?」

 

「それでも私は見るわ」

 

皆頷き覚悟を決めた。

呪物と化した御記を東郷が開く。

 

――――――

 

始まりは年末。

大赦の人が神託や研究で知ったので、神聖な記録として日記をつけて欲しいらしい。

自分は以前、大きな戦いで相当な無理をし身体のほとんどを散華してしまった上、敵の御霊に触れて魂が吸い込まれてしまった。

気付くと前に東郷さんを助けた場所にいた。

どこまでも広がるモノクロの世界、抜け出そうとしても同じ景色。

諦めようと心が折れそうになった時一羽の青い烏が飛んできた。

烏は私の手に止まり再び飛び立つ、まるでついてこいと言う様に。

だから進み続けると、光が見えて現実に戻ってこれた。

私や皆は散華から回復したけど、あれは供物が返って来たわけじゃないみたい。

神樹様が代わりに創った機能で私は強引な満開で全身を新しくしてもらった。

大赦では私の事を御姿(みすがた)と呼んでいるらしい。

簡単に言えば神様に好かれやすい体質。

だから友達を救いたいという願いを叶えられた。

そしてその役割を私が引き継ぐ事で世界のバランスが保たれた。

あれから大赦は私の異変に気付いて調べてくれた。

分かったのは、結界の外にある炎の世界がある限りこの身体が治らないこと。

 

そして来年の春まで持たないだろうという事だった。

 

私が話せば皆が不幸になる。

先生は平気そうだったけど風先輩は事故にあってしまった。

1人で我慢すれば大丈夫!

 

1月7日、風先輩が退院して皆で初詣に行った。やっぱ皆といると元気が出るけどうつさない様に気をつけなきゃ。食欲は無かったけど甘酒が美味しくて喉が喜んだ。でも、家で吐いちゃった…

 

1月9日、吐き気は酷かったけど、部室にいる間は楽しい。最近『また明日』って言葉が好きになった。そうすれば明日が来ると思えるから。でも温泉旅行はいけない。こんな身体見せたらびっくりさせちゃう。ごめんなさい

 

1月11日、今日は調子がいい。良く寝たのが効いたのかも。もっと健康にいい事やってみよう!

 

1月13日、胸が痛くて頭がクラクラする。皆とちゃんと会話出来てなかったかも…せっかく身体が良くなったと思ったのに…

 

1月16日、今日は夏凛ちゃんを傷つけてしまった。でも絶対に言う訳にはいかない。ごめんなさい。とても苦しい。身体も心も痛くて痛くてぐちゃぐちゃになりそう。もうおかしい。私はただ…みんなと毎日過ごしたいだけなのに…

 

弱音を吐いちゃダメだ。私は勇者なんだから。頑張れ私!とにかく夏凛ちゃんに謝りたい。でも言えない…もうここでいっぱい書く。夏凛ちゃん、ごめんね。私夏凛ちゃんのこと大好きだよ。本当にごめんね…

 

―――――

 

絶句なんて生易しい、頭をガンと殴られて記憶が飛ぶくらいの衝撃。

生かされているとは言うものの生き地獄とは。

東郷が鬼の形相で黙って出て行こうとする。

 

「何処いくんだよ!」

 

銀が立ちふさがり静止させる。

 

「離して!全て私のせいよ!天の神の怒りは収まって無かった!私が受けるべき祟りだったのよ!!」

 

「日記に書いてあったでしょ!わっしーに移っても本人は祟られたままなんだよ!!」

 

園子も加わり何とか止めた。

しかしその怒りは依然残ったまま。

 

「大赦はまた、アタシ達に重要な事を黙って…!」

 

「祟りの伝染がある以上迂闊に話せなかったんだと思います」

 

「あんずんの言う通りだよ…祟りについて詳しい事が分かったのがさっきだったから…」

 

恐らく大赦にも被害者はいるだろう。

これは触れた者を呪い殺す死のウイルス。

触らぬ神に祟りなしとは皮肉だ。

 

「うっ…ううっ…」

 

「三好さん?」

 

「友奈が…こんなに苦しんでいるのに私、酷い事言っちゃった…酷い事言っちゃったよぉ…!」

 

音を立てながら崩れ落ち嗚咽を零しながら泣いていた。

その背中を樹ちゃんと千景が擦っていた。

 

「これが友奈の状況か…まるでタトゥーだな」

 

珠子が友奈が描いたイラストを見て述べる。

紋章が心臓部分にありそれが全身に広がっている。

それにしても違和感がある。

黒花さんの身体を見た時こんな紋章は無かった、いやそもそも身体そのものが無い。

祟りの末期と言ってたけど友奈は死にそうなくらい辛そうに見える。

なのに黒花さんは普段通りの生活をしている。

まるで痛覚が遮断されたように。

とりあえずその日は解散し友奈の前では言わない様に取り決めた。

 

 

「そうか…進行が早いな」

 

私は黒花さんと喫茶店でコーヒーを飲んでいる。

昨日の疑問もあり2人で話したかった。

 

「黒花さんもそうだったんですか?」

 

「オレは離反だったからな。ごっそり持ってかれたよ」

 

「良く生きてますね」

 

「まぁ騙し騙しだけどな」

 

「やはり勇者システムですか」

 

「あぁ、長い目で見れば良かったと思う」

黒花さんのシステムは一から作り上げた模倣不可能のオリジナル。

自分の寿命を観測し焼却する事で出力に変換。

散華込の満開よりも瞬間火力なら上回る。

これを知ったのは3年前、3人がお役目を始める前。

私が園子を襲ったような状態になり暴走したのを止めるために変身した。

顔の火傷はその前から出来ていた。

 

「寿命削りすぎて痛覚無いとか狂戦士かと思いますよ」

 

「バーサーカーとは失礼な。痛みだけは残ってるんだぞ」

 

ロクな事しないね神様は!

痛覚だけ残すとか鬼畜の所業じゃん!

 

「よく生きてますね…」

 

「正直オレもそう思う。まさか300年とは…」

 

「ん?今なんて?」

 

「あ?300年ってとこか?」

 

「黒花さんって300歳なんですか?」

 

「正確には18だぞ」

 

「????」

 

「オレ一度死んでるから」

 

「ああ…?なるほど…?」

 

動体より下を仮死状態にして生きているよう偽装すると考えていた。

まさか死体だったとは…

 

「驚かんのか?」

 

「可能性の1つとは考えてましたので」

 

「肝が据わって来たな。それは良き」

 

「どこが良きなんですか全く…」

 

2人でコーヒーを啜る。

ブラックも段々飲めるようになってきた。

 

「こうして2人で話すのも久しぶりだな」

 

「そうですね。銀が来たと思ったら千景、珠子、杏、園子って加わりましたしね」

 

「会うたびに美穂の顔が明るくなったもんな」

 

「えええー。そんなですか?」

 

「鏡見てみろよ。口角上がってるから」

 

そう言われると恥ずかしい。

黒花さんは急に真顔になりカップに軽く口をつけた。

 

「…墓は桜の下に埋めてくれよ」

 

「残念ながら黒花さんの墓は作りませんよ。どうせ帰ってくるんですから」

 

「ハッ…愚問過ぎたな!すまんすまん!」

 

笑いながら答える。

普通の光景と思うけど私には無理しているように感じる。

本気じゃないよね…

 

その場で作戦資料をデータで貰った。

紙ベースの方が無くし難いけど園子にバレる可能性が高い。

勘ずくのは黒花さんレベルだし。

内容は天の神を追い出し神樹に止めを刺す。

大赦は全人類を神樹の眷属とし1つの生命体にする作戦を練っている模様。

勇者は天の神を押さえる任務らしいけどそのフォローとして切り札として『千景砲』とやらを使う。

名前が露骨なんだよね…

その隙に私たちが高嶋友奈を探し無力化させ、天の神が弱まったタイミングで攻撃をしかけ終わらす。

神樹は逃がさなければチャンスはあるけど天の神はここで押し切る。

そして明日最後の調整を入れるとのメモがあった。

どうやら禁忌の力を解放するとの事。

恐らく満開だろうね。

それにしても最後の戦い、か。

その先にあるのは天国か地獄か。

運命の日はすぐそこに迫っている。




みんな大好き胸糞シーンでした。
オノタカが出るのも頷きますねこりゃ…
そして反神作戦の概要も公開。
これでいけるのかな?
??「なんとでもなるはずだ!」

次もあの胸糞シーンです。
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