生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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思いの殴り合い

本来なら私は黒花さんの元へ向かう予定だった。

けどこんな事聞かされたら行ける訳が無い。

 

『友奈ちゃんが神樹様と結婚する!』

 

 

銀を先に行かして私は部室に向かう。

私は満開があるから問題は無い。

友奈は全員が揃ったタイミングで隠しながら説明をする。

神樹の寿命が近づき結界が弱まっており、このままだと世界が業火に呑まれ消えてしまう。

そこで提示されたのが神婚。

神と人を繋ぐ存在となり人類を神樹の一部となる。

その変わり依代となる友奈は死ぬ。

本人曰くかなり悩み出した結論らしい。

当然バカげた考えに勇者部員全員が反対。

 

「そんなの引き受けるなんておかしいでしょ!」

 

「ゆーゆ…」

 

「それは違うと思います!」

 

「今の皆の反応で分かるでしょ。友奈ちゃんの考えが間違っていることが」

 

「みんな…」

 

完全否定までは想定していなかったのか驚いている。

その間に私を置いて大赦を潰す方針を決め始めた。

この状況じゃやむを得ない。

 

「待って!私は…神婚を引き受けるって…」

 

「その必要は無いって!」

 

「だって死ぬんでしょ…」

 

「神樹様と共に生きるって、何なのかな…?」

 

「何かゾクッとくるっていうか…」

 

「とても幸せな事だとは思えないわ」

 

反論は止まらないけど友奈も中々折れない。

 

「でも私が神婚しないと神樹様の寿命が来て世界が終わっちゃうんだよ!」

 

「神樹様の寿命も分かるけど友奈が行く必要はないでしょ!」

 

「風先輩…勇者部は人の為になることを勇んで行う部活なんですよね?これも勇者部だと思うんです…誰も悪くない。世界を守る為に他に選択肢が無いなら…それしかないなら、私は勇者だから…!」

 

「友奈!一回頭冷やしなさい!」」

 

「ゆーゆ、それしかないって考えはやめよう?神樹様の寿命が無くなる前にもっと考えればいいんだよ」

 

「ダメなんだよ…私にはもう時間が…ッ!」

 

言おうとしたのを急に止め口を押さえた。

天の神の制裁が入った様子だ。

 

「私たち知ってるの。友奈ちゃんの体が天の神の祟りで弱っているのを」

 

「その話はやめて!私は何も言ってない!」

 

東郷が友奈の手を優しく握る。

 

「その件含めて解決してみせるから」

 

「大体おかしいです!友奈さん1人が何でこんな目に遭わなきゃいけないんですか!」

 

「で、でもね樹ちゃん。私は嫌なんだ。誰かが傷つく事、辛い思いをする事が…今回私1人が頑張れば…」

 

「ダメよ!友奈ちゃんが死んだらここにいる全員どれだけ傷ついて辛い思いすると思っているの!!」

 

「東郷さんだって、皆を助けるために火の海に行ったんでしょ!」

 

「そうよ!でも壁を壊した私の自業自得でもあるの!友奈ちゃんは悪くない!反対よ!」

 

徐々に語尾が強くなっていく。

それだけお互い必死って事。

 

「ずるいよ…私は…私は東郷さんの代わりに…ッ!」

 

「友奈ちゃん…」

 

「友奈さんが言うように、勇者は皆を幸せにする為に頑張らないといけないと思うんです。でもその中に友奈さん自身も入っているんですよ」

 

「ゆ、勇者部五箇条!なるべく諦めない!私は皆が助かる可能性にかけているんだよ!!」

 

絶対使ってはならない言い訳を言った。

もう後に引くことは出来ない。

 

「あんたが生きることを諦めてるじゃない!!」

 

「勇者部五箇条!なせば大抵なんとかなる!なさないとなんにもならない!!」

 

「友奈!!五箇条をそんな風に使わない!!」

 

「私は時間のあるうちに出来ることをしたいんです!!だからきちんと皆に相談しました!!!」

 

「これじゃあ相談じゃなくて報告だよゆーゆ…相談しなきゃ…」

 

「してるよ!!!」

 

「あの…その…友奈、無理するな…」

 

「無理なんかしてない!!!」

 

「ご、ごめん…」

 

今の友奈はヤマアラシのように触れる物すべてを傷つける状態。

両者とも友達を守りたいというのにすれ違うどころか平行線のまま。

もう会話すら成り立たない。

 

「友奈!皆がこれだけ言ってまだ分からないの!?」

 

「待って――――」

 

「だから!他に方法が無いからこうなっているんです!」

 

「待って…なんで…こんな、喧嘩なんて…」

 

樹ちゃんが泣いていた。

友達が喧嘩していたら悲しくなるのも無理もない。

 

「樹…」

 

一旦冷静になるも対立構造は変わらない。

全員顔を合わせようともせずどう言えばいいか模索している。

動くなら今だ。

非難を受けるのは確実だけど世界のため、私は外道に堕ちよう。

 

「友奈」

 

皆の合間を通り友奈に近づく。

全員の目線が集まる。

 

「神婚の大切さは理解できるよ。でも友達と永遠に分かれてまでしたい事なの?世界がどうなるとか関係なく心からやりたいの?」

 

右手を肩に乗せ目を見て聞く。

呼吸が荒く焦点が合っていないように見える。

 

「それでも…この命で救える世界があるなら…私は…!」

 

「…それが答えなんだね」

 

私は左手でドアを勢いよく開け友奈の肩を突き飛ばした。

目を見開き何が起こったか分からない表情を向けている。

 

「いってらっしゃい」

 

「!!…ごめんなさいッ…!」

 

バランスを取り廊下を駆け出す。

 

「友奈ちゃん!!」

 

「ゆーゆ!!」

 

東郷と園子が私を睨みつけながら出ていく。

 

「美穂何やってんの!友奈を見殺しにする気!?」

 

夏凛が鬼の形相で掴みかかって来た。

それでも私の心は冷たいままだった。

 

「言い合ってもこの状態じゃ埒が明かない。ならその背中を押すのが友達の責務なんじゃない?」

 

「ふざけんな!アンタがやったのは最低の行為よ!」

 

「あぁ、最低だよ。友奈が動かなければ世界を救えないならこの手しか無いでしょ」

 

「ッ!」

 

大丈夫だよ夏凛。

友奈は絶対に死なさないよ。

この因果にケリをつけるトリガーなのだから。




短めですけどここだけやりたかったんです。
これ前の話なかったらただのクズ野郎なんですよね。
友達が死にそうなのにその背中押すなんて戦犯ムーブですから。

落とすところまで落としたんで上げてきますよ〜
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