生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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第三の道

後を追っていた東郷と園子から見失った連絡を受けた。

友奈は事前に端末を家に置いてきており行方が分からなくなったらしい。

まぁ位置バレしたら計画がつぶれるから好都合。

そんなタイミングで大赦から呼び出しを受けた。

完全に狙っているとしか言えないが行くしかない。

指定された場所は英霊の碑。

中央にある大きな石碑の前に女性の神官がいた。

 

「勇者様に最大限の敬意を…」

 

「やめてください」

 

神官と会うのは初めてだけどここまで畏まれると苛立たしく感じる。

単に黒花さんがフレンドリーすぎるだけかもしれない。

 

「私たちは友奈ちゃんに会いに来たんです!」

 

「友奈さんはどこにいるんですか!」

 

「今は大赦におられます」

 

「じゃあ大赦に乗り込むわよ」

 

「今行っても間に合わないと思いますよ」

 

「アンタね…!」

 

この扱いは仕方ない。

完全に大赦寄りの発言だしね。

 

「世界を救う方法は神婚しか残されていません」

 

「ええ!聞かされたわよ!」

 

「急ぐ必要があった。ご存知かと。友奈様の寿命はあと僅か」

 

「友奈さの祟りを祓う方法は本当にないんですか!?」

 

「我々は探りました。しかし、無かったのです。外の炎がある限り、友奈様は祟られたまま」

 

大元を潰さない限り消えない。

バーテックスを倒すのでやっとなのに神を倒すなんて無理と考えるのはある意味正しい。

 

「もう時間がありません。友奈様はこれより神婚の儀に入られます」

 

「ふざけるな!止めてやる!」

 

「歴代の勇者様の多くが、お役目の中で命を落とされました。2年前には人類を守る為に、三ノ輪銀様が落命」

 

銀の名前に思わず反応してしまった。

それは東郷と園子も同じ。

 

「銀様は人類を守ろうと懸命に戦い、見事お役目を果たされ英霊になられました。友奈様もまた、戦いは違えど皆の為にその身を捧げようとされています。それこそが勇者であると理解して」

 

「子供を犠牲にしなければ存続できない世界なんて歪み過ぎですね」

 

「それしか方法が無いならば…全てを生かすために少数の犠牲が必要なのはやむを得ないのです。それが、この時代における人の在り方」

 

少数を切り捨てるのはよくある事。

しかし、人の命を粗末に扱うのはもっての外。

 

「黙って聞いていたらなんだその考え。呆れて反論すらでねぇわ」

 

ホールに響くウザったらしい声。

でも一番聞きたかった声でもある。

階段から4人を連れ黒花さんが降りて来た。

両手には黒い布に巻かれた長い物を持っている。

 

「遅いんですよ」

 

「ギリギリまで調整しててな」

 

「先生…美穂、これはいったい…?」

 

「騙しててすみません。友奈を取り戻す作戦を裏で動いていたんです」

 

全員の顔に光が灯る。

私は黒花さんに目線を送ったら目を閉じ頷いてくれたので計画を話す。

どんどん皆の目に力が入っていくのを感じる。

 

「以上が私たちの反抗作戦の概要です」

 

「神様をぶっ飛ばすなんて驚いたわ…」

 

「これなら上手く行きますよ!」

 

「でもどうやって天の神を倒すの?」

 

「そのカギはこいつだ」

 

布を取ると2本の刀があった。

 

「神ではなく人の手によって作られた兵器、終わりと始まりを繋ぐ姉妹刀ってとこか」

 

「どうやって作ったんですか?」

 

黒花さんは胸ポケットから私のペンダントを出した。

 

「これのお陰さ。なぁ美穂、何で作られていると思う?」

 

「…まさか神樹?」

 

「その通り、これは神樹の御霊の破片を加工したものさ」

 

『ええええええ!!!???』

 

何て言った!?

神樹の御霊?それって心臓から作ったようなものじゃん!

 

「な、何でそんな神聖な物お母さんが持ってたの!?」

 

「元々乃木家が長い間所蔵してたもんだったがある時紛失したらしい。だからこれは本当の母親から託された唯一のお守りさ」

 

「お母さんが…」

 

そんな事するならもっと早く言ってよ…

しかも長い間なら本来の持ち主は若葉だろう。

 

「私の精霊が勇者なのは神樹と血筋の影響って事…」

 

「そうなるな。しかもあんなに手を汚しても資格を剥奪されないのは神様目線だと自分の身体だと錯覚しているのさ」

 

完全にチートアイテム…

ゲームバランス壊すどころか環境破壊不可避。

 

「お前もこんな役割ばっか引き受けて災難だな」

 

私にペンダントを返し、神官の前に立ち見上げる。

「貴方はいつも逃げてばかりですね」

 

「そこは否定しないが奴隷よりかはマシさ」

 

「私は神樹様に使える身。個人の感情は捨てました」

 

「教え子の前でよくもまぁ言えるな」

 

「安芸先生…」

 

銀が声をかけた。

さっきも名前上がってたし想い入れは強いだろう。

 

「いつも遅刻するアタシを叱ってくれた先生はいないんですね…」

 

「ッ!」

 

「ミノさん…」「銀…」

 

精霊とは言え傍から見れば本人だ。

その記憶、思考は生前とほぼ同じ。

これは嘘偽りない銀の本音だ。

 

「安芸真鈴はそこまで頑固じゃなかったぞ」

 

「なッ!」「え…!?」

 

今度は珠子と杏が強く反応した。

 

「アイツは親友を失った時ひどく落ち込んだらしい。だが自分が生きている理由を見つけ前を向いた。お前もその血を引くなら最後くらい意地見せろ」

 

「…」

 

もはや言い返す事も出来なくなった。

自我を仮面に押し込め冷酷に行動するなんて不可能。

いつかボロが出るか狂うかの二択。

この人は前者、過去の自分を捨てきれなかった。

私は一歩前に出て神官の方を見る。

 

「私たちは大赦の考える神婚による絶望のリセットではなく希望のコンティニューを選びます。人の持つ知恵と想いを信じたいんです」

 

その場にいる皆が前を向いていた。

 

「私もまだまだでしたね…」

 

そうつぶやいた瞬間全員の端末から嫌な音が鳴り響く。

 

「何よこれ!」

 

しかしブツリと途中で切れた刹那、地面が吹き飛ぶかのような揺れが私たちを襲う。

バランスを保つのでやっとのくらい強い。

 

「もう来るとは…」

 

「勘ずくのが早いな」

 

2人は大橋の先を見ていた。

 

「天の神は、人間が神に近づいた事に怒り、裁きを下したと言われています。神婚などもっての外」

 

「バーテックスが来る…!」

 

「いや、もっとヤバいもんだ」

 

空が暗くなり赤い染みが壁側から広がって来た。

まるで喰らっていくかのように。

 

「現実の世界に敵!?」

 

「敵…なの?あんなの見た事ないけど…」

 

「既に千景殿の方は準備できています」

 

神官は階段を降り黒花さんの前で止まった。

 

「この子たちをお願いします…」

 

頭を下げることはしなかったけどその声には思いが込められていた。

 

「分かっている。お前も頑張れよ」

 

黒花さんは声いろを変えず私たちの方を振り向いた。

 

「只今から最後のお役目である訣別の儀を始める!この先出向く戦場ではお前らの命を懸けてもらう。だが、あえて言おう!()()()()

 

 

300年前、外と壁を繋ぎ2年前のお役目で大破した大橋に立った。

既に変身を終えた11人の勇者は赤く変色した壁を睨む。

生暖かい嫌な風が髪をなびかせる。

私は託された刀を握る。

全員緊張で顔が固まっている。

よし、ここは私が…

 

「今日帰ったら何食べたい?」

 

「え、この状況でそれ聞く?」

 

「空気かなり重いじゃん?だからいい事考えようって思って」

 

「もっと他にいいネタは無かったの…」

 

「ならバーベキューがいいな!全員で肉焼いて食べるのは美味しいと思うぞ!」

 

「疲れてると思うから無理だよ…やるとしても寿司パーティー位がいいよ」

 

「寿司いいね~。珍味頼んじゃうー?」

 

「なら私も握ってみようかしら。上手く出来るといいけど」

 

「金はオレが出す。財力のすべてをつぎ込んでやるよ!」

 

「絶対お腹減るから思う存分食べるわよー!」

 

「程ほどにしてよね…財布空にしそうだから」

 

「風ならやりかねないわね」

 

やっぱ勇者部はこうじゃないとね。

真面目なのもいいけど適度に力抜かないと。

普段通り樹海化が始まった。

いつもとやや違うけど大きな変化はない。

それぞれ武器を出し身構える。

これがラストミッション、人類の存亡をかけた大喧嘩の始まりだ。




神婚が完全にエヴァの人類補完計画だったのでシンエヴァでの返しを入れました。
というかこれをやりたかった…!
神の力に対抗する1つのアンサーがシンエヴァの結末だったので入れるしかないなと。
あと、昔エヴァの小説書いてたのもあって使命感ありありでした。
次いでにOOも放り込んどきました。(適当)

遂に最終章もクライマックス!
お見逃しなく!
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