生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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誰かの傍に

気がついたら白い天井を眺めていた。

頭の回転が悪い。

確か昨日は初実戦で、勇者になってその後あの子が…

 

「あっ…!」

 

私は急いで身体を起こしベットを見た。

そこには心地よく寝ている銀がいた。

思わずホッと息を吐いた。

よかった…夢じゃない…

そういえば今日あの夢見たっけ。

いつも思い出すのにイメージすら出てこない。

こんな事初めてだ。

 

「…不思議なこともあるもんだね」

 

いつもの目覚ましはあえてかけず自分の体内時計に頼った。

かけてなきゃあそこから出れないかもだけど。

 

「さてと…」

 

私は立ち上がり洗面所へ向かい顔を洗った。

鏡をふと見ると口角が少し上がっているのに気づいた。

惚気か?

いやいやいや、そりゃないよ…

鼻で笑い顔をタオルで吹きキッチンへ。

とそのタイミングで眠そうに目を擦る銀と会った。

 

「おはよう。ごめん起こしちゃった?」

 

「おはようございます。いえ、目が覚めちゃっただけなので。」

 

「そっかぁ…今朝ごはん作るね。」

 

なんか申し訳なかったけど切り替えないと。

「あっ…あの!」

 

銀がモジモジしながら話しかけてきた。

 

「どうしたの?」

 

「えっと…朝ごはん…作らせてください…」

 

「んん?」

 

ちょいちょいちょい。今なんて?

朝ごはん作る?

 

「高木さんの役に少しでも立ちたいんです。お客様ってのは分かるんですけどそれでもアタシ…やりたいんです。」

 

銀の真っ直ぐな目を見て私は驚いた。

空っぽなのにそんな目ができるなんて…

私もまだまだなのかな。

 

「分かった。好きに使っていいよ。コンロはガス式だからつける時は気をつけてね。」

 

そう言い私はキッチンの使用権を銀に譲った。

今は記憶が失われているだけで身体に染み込んだ癖やセンスは消えない。

もし、銀が料理上手ならそこから突破口が開けるかもしれない。

まぁ不味くても食べられればね…

 

って思ってた自分を殴りたい。

銀が作ったのは卵焼き。

よく弁当に入れとくタイプ。

感想はシンプル。

なんだこれ!!美味すぎる!!

一口食べた時思わず悶絶してしまった。

誤解を生んだのはご愛嬌。

『最初は作れるか不安でしたけどいざやってみたら上手く出来ました!』

と言ってたからよかった。

まぁ記憶に変化は無いけど。

 

朝食後は学校に熱があるとみえみえの嘘を言い休んだ。

根回しは黒花さんに任せよう。

ごめんよ友奈…今日は行けなさそうだ…

てか昨日初戦なのに部活あるのかな?

本来なら着替えやらの買い出しを考えていたけど今日は部屋でゆっくりしよ。

銀には綺麗にした制服を着させた。

パッと見じゃ違和感ないからよし!

 

「あの…高木さん?」

 

「どうしたー?」

 

「アタシの名前って知ってるんですか?」

 

来たかぁ…

名前回避して話しかけたけど限界かな。

 

「うーん…今私の知り合いが探してるんだけどまだなんともね。」

 

ソファに深く座り腕を組んで考え事をするように見せた。

 

「けど名前無いのは不便だからね。よし!私が命名しよう!」

 

「ホントですか!ぜひお願いします!」

 

キラキラした目で見ないで欲しいなぁ、罪悪感半端ないから。

 

「…決まりました〜!貴方の名前は『銀』だ!」

 

ビシッと指を指して決めポーズをした。

これくらい前向きじゃないと私のメンタルがやばい。

 

「ありがとうございます!なんかしっくり来る名前です。」

 

うん、そらそうだよね。

でもこれで黒花さんの情報ってかなり正確なのでは。

その後はテレビを眺めお菓子を頬張ったり、本を貸して読んだりとグダグダしていた。

常に誰かを感じるのは嫌いかと思っていたが意外と楽しいんだと感じ始めた。

 

―――――

 

アタシは銀と言うらしい。

本来の名前すら覚えていないからホントかウソかも分からない。

けど、何故か納得できた。

いい響き…というか前から言われてきた感じに近い。

それに高木さんは気にかけてくれるから安心できる。

なんか落ち着くなぁ…

と思ってたら高木さんのスマホが鳴りだした。

なんかうるさいけど着信音なのかな?

 

―――――

 

突然樹海化警報がなり始めた。

まさか連日襲撃とはやるなバーテックス!

まぁ時が止まっているからこのまま行くしかないけど。

 

樹海も変わらず気味悪かった。

作業の一環のように勇者に変身する。

 

「さてと…仕事は仕事。張り切って観察といきま…」

 

「高木さん。ここは?それにその服は?」

 

聞きなれた声が横からした。

 

「…え?」

 

そこに居たのは銀だった。

しかも動けてる。

 

「ちょっ…なんで動けるの!」

 

思わず両肩を思いっきり掴んでしまった。

びっくりして目を大きく見開いていたが状況が見えていない感じがした。

 

「…今は私から離れないで」

 

銀は非戦闘員。

怪我をさせないよう周りに注意しながら今回のバーテックスを見る。

本日の編成は、スコーピオン・キャンサー・サジタリウス。

(あれ?こいつら何処かで…)

パッと思い出せないが最近見た記憶がある。

スマホを見てもあの4人は到着していない。

先行しすぎたのかな?

と思っていたらサジタリウスがオレンジ色に光った。

 

「マズッ…!」

 

咄嗟に盾だけを体の前に展開し左足を後ろにさげた。

その瞬間爆音と共に身体に衝撃がはしった。

反動で少し下がったが耐えきった。

 

「長距離狙撃か!」

 

再び高速の矢が私に飛んでくる。

今度は盾を斜めにし跳ね返した。

3激目以降は剣を出し、パリィを中心にして対応。

理由としては無いが盾頼りだと今後の戦闘に支障が出るかと思ったから。

銀は私のやや後ろに隠れさせた。

7回目ぐらいで勇者の4人が合流したらしくタゲが変わった。

少し右手が痺れたが大きな怪我は無い。

 

「何とかなったかな…銀大丈夫?」

 

武器を置き後ろを見た。

そこには腕を身体に巻き付けるようにしゃがみ震えている銀がいた。

息が荒く肩が激しく上下していた。

 

「大丈夫!?」

 

私も銀の前にしゃがみこんだ。

被弾したかと思ったけど私が無傷の時点でほぼ無い。

となると…

 

「銀…」

 

「…」

 

完全に話せる気力もなさそうだった。

ここにいたらまた狙撃される可能性もある。

 

「ごめん。一旦動くよ」

 

コクリと軽く頷いたのを確認し、背中におぶり根の間に降りていった。

ここなら射線も通らず狙われても数撃なら耐えられる。

遠くでは爆音がする。

かなり派手にやってるのかな。

 

「降ろすよ」

 

根に寄りかかれるように座らせた。

すると体育座りのように身体を丸め足の間に顔を埋めてしまった。

無意識的な自己防衛。

見たくない、関わりたくないものに対して自己の内側に逃げる。

 

「んしょと…」

 

私も銀の横に座った。

こんな時なんて話しかければいいのかな。

 

「怖かったよね。だっていきなり変なとこに飛ばされて変な奴に狙われるんだもんね!」

 

反応はない。

 

「はぁ…なんでこんな事しなきゃならないのかなぁ…」

 

思わずぼやいてしまった。

なりたくてなった訳でもない。

成り行きと黒花さんの影響で引き受けたが正直他の人に任せたい。

あの夢を見始めたのも同時期だし。

 

「どうしたものかね…」

 

髪をかき分けながら自称気味に笑った。

戦況確認をしに立ち上がろうとしたら服を引っ張られた。

見てみたら銀が右手で掴んでいた。

 

「…離れないでください…」

 

顔を上げず弱弱しい声で言った。

その言葉を聞き私の心臓付近がグッと苦しくなった。

そっか…この子もひとりぼっちなんだ。

私以外知らない生まれたばかりの雛。

いつか巣立つその日まで守らないと。

 

「大丈夫。どこにも行かないよ」

 

私は座り直し銀の右手を左手で握り返した。

すすり泣く声がしたが気にせず樹海化が解けるまで握っていた。




段々字数を増やしています。
ホントの手探り状態ですけど。
薄い戦闘描写で盛り上がらないのは許してください…
ここで話す事じゃないんですけど、本編の裏方をかいてこうかなと思ってます。
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