生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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訣別の時きたれり

突如空が暗くなった。

皆窓からその状況を見ていた。

私も詳しくは知らないけどきっと神様が怒ってるんだ。

この状況を変えられる程の力が無い、ここで見ているだけしか…

 

「大丈夫だよ」

 

燐が私の手を握ってくれた。

「美穂ちゃんは帰って来るよ」

その目は真っ直ぐ空を見ていた。

私も燐の手を握り返し目を瞑る。

神樹様、どうか皆を守ってください…

 

―――――

 

先手は天の神からだった。

空から光の矢が降り注ぐ。

あまりの早さに避ける対応が遅れる。

 

「フィールド展開!!」

 

私は盾から遠隔型だけを射出し皆の周りをビームの膜で覆う。

精霊バリア貫通は残っているがこれは攻撃用のビームを防御に転用したから問題ない。

 

「総員散開!!!」

 

矢が止まった瞬間別方向へ散っていく。

黒花さん、夏凛、園子、樹ちゃんは天の神の侵攻を妨害。

風先輩、東郷が友奈の奪還。

そして私たちは…

 

「やっほー。元気にしてた?」

 

待っていたと言わんばかりに高嶋が笑顔で手を振っていた。

探す必要が省けて好都合。

 

「今度は逃がさないよ」

 

「当然だよ。私も生かして帰すつもりは無いから」

 

高嶋は既に変身を終えていた。

薄い桃色の勇者服、両手の武装が厚かった。

そこも友奈と同じなのか。

 

「4人はいいの?この戦いに勝っても神樹の元に帰っちゃうのに」

 

「精霊だから長くここにはいられない。けどアタシたちは美穂とずっと一緒だ!」

 

「また会える!そう約束したからな!」

 

「たとえ消えても美穂さんが覚えている限りこの絆は不滅です!」

 

「私のもう一つの居場所を無くしたくないの!」

 

4人の純粋な答えを聞き驚いていた。

精神攻撃は判断を鈍らすには効果的。

ただ乗り越えていたら無効。

 

「そっか…ならお互い全力で行こう」

 

「無論。この命が燃え尽きるその瞬間まで!」

 

「一目連ッ!」

 

『満開!!!!!』

 

6つの花が樹海に咲く。

出し惜しみ無しの全力。

3人は神樹の力を分け与えられた影響か黒かった部分が白くなりより神々しい。

銀は東郷や園子のような船ではなく大型の爪を装備していた。

5対1とはいえ相手は天の神の力を得た勇者。

満開してもハンデにすらなっていないかも。

それに千景の記憶通りなら高嶋は本気じゃない。

つまり本気を早めに切らしてからが勝負。

 

「行こう!」

 

「あぁ!」

 

銀と私で挟み込むように攻撃を仕掛ける。

全力で振るったのに手の甲で防がれた。

その隙を逃さず千景の鎌が胴体を狙うも黒い霧になり消える。

 

「やっぱりそれ使うか!」

 

「なら逃げられる前に押しつぶす!」

 

珠子が巨大化させた旋刃盤を炎を纏わせ別の場所に現れた高嶋に叩き落とす。

再び逃げようとするも千景が背後から羽交い絞めにする。

 

「ぐんちゃん…」

 

「今よ!」

 

「分かってらぁ!」

 

拘束を振り解き逃げ出そうとしていた。

 

「させません!」

 

杏が足元に矢を放ち科下半身を瞬時に凍り漬けにする。

即座に両手を交え旋刃盤を押し止めていたけど耐えきれず千景ごと火柱に包まれる。

強風が吹き荒れたが爆心地から無傷の高嶋が現れた。

 

「七人御先と雪女郎による拘束、そして輪入道の広範囲攻撃。精霊になったから弱いと思ったら生前と変わらない強さだね」

 

 

「流石に一筋縄ではいきませんか…!」

 

「なら何度でもやるまで!」

 

攻撃を再開しようとした時、樹海に赤い光が差し込む。

遥か後方で一輪の彼岸花が咲こうとしていた。

あれが千景砲…

だが、咲きかけていた花は粒となって散っていく。

 

「失敗したのか…!?」

 

「ふざけないでよッ!こんな所で終わらすなんて!」

 

「あーあ、折角の切り札も撃てなきゃ意味ないよ。ぐんちゃん残念だったね」

 

「まだ終わった訳じゃない!」

 

「そう?あっちも時間切れらしいしそろそろ終わらさないとね」

 

「何を言って――――!」

 

高嶋が指を鳴らした瞬間、パンッと何かが破裂する音がした。

私の横を1本の棒が落ちた。

 

「え…?」

 

それが視界に入ったのに理解が追い付かなかった。

だって棒じゃなくて人の右手だったから。

咄嗟に後ろを向くと血を吹き出しながら倒れる4人がいた。

千景は右の脇腹を、銀は右腕を失いながら全身を、珠子と杏は胸を撃ち抜かれていた。

 

「うああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

私は気が狂いかけた。

何が起こったか分からないじゃない、仲間が瞬きせず瀕死になっている事が信じられなかった。

 

「いくら精霊になったとはいえ過去の因果からは逃れられない。これはその再現。死とは永遠に付きまとう性、事前に経験したのならいつでも引き寄せられるんだよ」

 

4つの血だまりが樹海に出来る。

死にかけたなら私の中に来るのにその気配が無い。

 

「なんで、消えないの…?」

 

「だって死因だよ?確定した死なんだから無理に決まってるじゃん」

 

「ッ!お前ぇぇぇぇ!!」

 

ビットを高嶋に向かわせ正面から怒りに任せ剣で攻撃をする。

それでも微動だにせずただ突風を吹かせただけ。

私は吹き飛ばされ操作が上手く行かずビット同士で誤射や接触を起こし次々爆破していく。

しかも複数の破片が身体に刺さり出血した。

 

「どうせ勝てないって分かりきってたんでしょ。そんなボロボロになってでも戦うの?」

 

「…あぁ戦うよ。人は弱くて脆くすぐに悪意に落ちやすい。けどねッ!」

 

剣を突き立て何とか立ち上がる。

頭からも血が垂れ片目しか見えないけど無理やり開ける。

 

「誰だって守りたいものがある!諦めなければ何度だって立ち上がれる!!それが…人間の持つ最大の強さだ!!!」

 

「無駄な事を…ッ!」

 

高嶋の冷酷な目が大きく開かれた。

その先にあるのは再度咲こうとする花。

 

「あの状況から立ち上がるなんて…!」

 

「よそ見厳禁だよ!」

 

私は高嶋に剣を横に振る。

難なく防御されるも表情に焦りがある。

天の神の本能なのか目線が花に向いていた。

 

「これでどうだ!」

 

破片を抜き血を噴き出させる。

 

「目潰し!?ずるいよ!!」

 

「戦いにズルいもクソもあるもんか!」

 

それでも高嶋は私の剣を捌く。

肉体に残った感覚でこの強さ、本来の高嶋友奈は相当の強者に違いない。

 

「このッ!」

 

高嶋の左目が開き私をはっきり捉える。

復活が早すぎる!

顔面に拳が迫ってきたけど腕で何とか防ぐもバリア無効の上装甲が薄いから衝撃が骨に伝わり砕ける。

 

「ぐっ…!」

 

痛みで視界が白くなったのもつかの間全身に衝撃が走る。

息が一瞬止まったけど何とか持ち直した。

私は仰向けになって倒れていた。

見えるのは天の神に刺さる2つの赤い光。

綺麗と思ってしまったのは少し場違いな感想。

しかし光はバリアを貫いたものの跳ね返された。

同時にすべてを燃やす炎が樹海に落とされる。

 

「焦ったけどここまでだね。最後まで足掻いたのは評価するけど無駄になったね」

 

「それは、どうかな…」

 

突然、時計の針が止まる音が響き渡る。

身体に変化は無い。

 

「何が起こって…!?」

天の神の攻撃が途中で止まっていた。

 

「まさか…黒花千早ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

高嶋が今まで以上に吠えていた。

黒花さん、あなたって人は…

 

―――――

 

天の神のいやらしい攻撃を4人でカバーし合う。

三好と樹が満開したがこの状態も長くはもたない。

オレも空戦能力はあるが寿命をジワジワ削っている。

それなのに千景砲は一度失敗している。

何が人類の切り札だ!使えなきゃ意味ないだろうが!!

 

「クソッ!ジリ貧だっつーの!!」

 

霧になりながら攻撃の誘導を切るも無理がある。

なら本体に直接やるしかないか!

オレはジグザグに動きながら天の神に迫る。

一番攻撃すべきなのに的が合っていない。

そのまま刀で本体を斬りつけたがバリアを張られた。

 

「小癪な!」

 

距離を取り突撃しようとした時胸が熱くなって――――――

 

「がッ、ああああああ!!!」

 

全身を焼かれる感覚に襲われる。

痛いなんて生易しい、このまま身体が千切れそうだ。

視界が回りはじめ自分がどんな体勢で、どこが地面なのか理解できない。

 

「くろっち!!」

 

「黒花先生!!」

 

「先生!!」

 

誰かに抱きかかえられたのか降下は緩やかになった気がする。

スパークしたように視界はあちこちが歪に瞬いている。

 

「樹か…?」

 

「今は休んでてください!その身体じゃ…!」

 

相当やばいんだな…

心遣いは感謝するけどくたばっている訳にはいかない。

オレは震える足に力を込め立ち上がる。

 

「樹は2人のフォローを続けろ…」

 

「でも…」

 

「いいから行けッ!!」

 

声を張ったからか吐きそうになるのをギリギリ耐える。

樹は悲しそうな顔をしてたが2人の元へ向かった。

 

「ごほっ…」

 

やはり耐え切れず吐き出しながら膝をつく。

本来なら血を出すんだろうけどあったのは墨汁のような黒い液体。

吐き出すものすら取られた空の器。

 

「う、うううああああ……!!!」

 

一度絶望し悪魔に身をゆだねた。

世界なんてどうでもよくさっさと消してやりたかった。

だが最後の最後に泥に咲く花を咲かしてしまった。

その結果、オレは呪いと責務を与えられ今成就しようとしている。

 

「そのためにオレは…ッ!!」

 

フラフラと立ち上がり神を睨みつける。

空に伸びる1つの光に襲い掛かる火球。

込められた思いは『根性』。

遥か先で再び咲こうとする花。

込められた願いは『生きたい』。

これだから惚れるんだよ…人間ってやつにさ。

無理と分かってもなお立ち上がる。

力が無くても意志さえあれば誰だって勇者なんだ。

オレは全身に力を込め地面を蹴り上げる。

 

「見てろよ…!これがオレの答えだぁぁぁぁ!!!」

 

刀を抜きバリアに突っ込む。

神樹の力を刀身のみに注ぎ込んだ決戦兵器。

バリアにヒビが入り、突き抜け本体にダメージを与える。

ここに長く居れば直に反撃をされ生きて帰れる保証はない。

刀を深く刺し込み離脱する。

満開が切れた三好と園子を樹が抱え高速で離れていく。

そうだ、それでいい…

園子が手を伸ばし何か言っているが聞こえない。

オレは背を地面に向け落下していく。

空に天の神の紋章が増えていく。

本気で終わらせにきた…

 

「やはりこれ使うしかないか…」

 

美穂には伝えていない最後の手段。

寿命ではなく記憶を削る滅びの力。

300年という途方もない時間積み上げてきた思い出を焼却しこの瞬間を維持する。

 

「じゃあな、私…」

 

目を閉じオレは闇の世界へ消えていった。




色々てんこ盛りなバトル回です!
冒頭のバリアはνガンダムのフィンファンネルバリアです。
最後の最後に追加武装ですけど忘れられる系の武装なので…
そして黒花の切り札発動!
この人ならなんでもOKの気持ちがありますが代償あるし大丈夫でしょ!
あとタイトルはFGOのあの宝具名から取りました。
必ずしも展開が同じになるとは限らないので…ね?
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