この章は本編(勇気の章・友情の章・勇気の章)と乃木若葉は勇者であるのネタバレを含みます。
以上の内容を理解した上で読まれるようお願いします。
全てを滅ぼす悪意
これは神を否定し人類を愛した1人の少女に課せられた罪と罰の物語。
2015年7月30日。
私、白鳥千早は都内の学校に通う普通の中学生3年生。
受験を控えている時期だけどそうは言ってられない。
何故なら日本中で大地震が連発しているから。
あちこちで地割れや津波が発生して死者数も日に日に増えていっている。
なのに疎開と称した勉強合宿に巻き込まれ島根までやってきた。
両親は仕事の関係で東京に残った。
合宿所は平屋でかなり大きめだったから全員が同じ部屋にいる。
先生の立ち話や周りがスマホで仕入れている情報を勉強しながら聞く。
「優等生はこんな状況でも勉強するのか~」
「白鳥さんは偉いよね。私なんて怖くて集中できないよ」
塾で知り合った2人の友達が話しかけてきた。
私は成績は塾内でトップだけど2人もかなり優秀。
「この異常気象が終わったらどうせ受験なんだし少しでもやっとかないと。それに印象に残るしね」
耳にかかる黒髪を払う。
そろそろ髪切りに行きたいな。
「ちぇー。こんなんなるならトランプでも隠し持っていけばよかったわー」
「旅行じゃないんだから…」
突如、地面が激しく揺れ始めた。
元々座ってたから問題ないけど2人は立っていたからしりもちをついた。
揺れそのものは十秒程だったけど身体がまだ揺れていると錯覚を起こしている。
教師陣が私たちを乗せたバスで逃げようと言い始めた。
この日本にいる限り逃げ場なんてないのに…
「揺れ強かったね。大丈夫?」
「無事だけど尻痛ぇ…」
「足の震えが止まんないよ…」
「とりあえず外に出よう。いくら耐震工事されてるとはいえ限度が――――――」
轟音と共に屋根が崩れた。
その瓦礫によって2人と離れ離れとなった。
埃が舞い息がしずらくなる。
早く外に出れる場所を探さないと…
そう思った時、瓦礫の山が動いたのと同時にその正体を見てしまった。
巨大な白い物体。
この地球上に存在するどの生き物にも該当しない何か。
定義するなら『化け物』としか言えないほど奇怪。
あまりにも非現実的な出来事に思考が止まる。
化け物は私の方に顔を向けた。
大きく開いた口があざ笑うかのように見えた。
「あ、あぁ…」
蛇に睨まれた蛙状態、戦う術なんて無い。
死ぬのを待つしかないの…?
嫌だ、死にたくない…死にたくないよ…
「ああああああ!!」
化け物が突っ込んできた時、本能で横に飛びのく。
正直これで死んだんなら仕方ないって思ったけど私は擦り傷程度で生き延びた。
しかも壁を同時に壊してくれたお陰で外への道が出来た。
急いで外へ出たもののその先は私の知る世界じゃ無かった。
空があの化け物で埋まっていた。
夜空だから余計異様に思える。
建物は化け物によって壊され、外に逃げて来た人は悲鳴をあげながら食われていく。
老若男女問わず、片っ端から。
2012年に人類が滅亡するSF映画を見たけどその方が生易しいくらい。
私はがむしゃらにバスの方へ駆ける。
何が正しい選択か分からないけどそれしかないと考えていた。
バスはまだ止まっててくれた。
体力はそこそこある方なのに精神的に疲弊して足が重く感じる。
それでも最後の力を振り絞ってバスに手を伸ばす。
私が触れたのはガラスのドアだった。
「は……?」
運転手が私の顔を辛そうに見ていたけど前を向き発車させた。
「なんでよ…まだいるんだって…」
バンバンと車体を叩きながら並走する。
しかしバスの加速について行けずどんどん離される。
中にいる人が私を見ていた。
その中に2人がいるのを見つけてしまった。
『置いてかれて可哀そう』と言っているような目。
絶望で全身が崩れ落ちた。
同時に内側から怒りが湧きあがる。
「ふざけんなよ…なんで置いていったんだよ!なんでそんな目をするんだよ!!」
私はバスへ向かって呪詛を吐き続ける。
「お前らは助かっていいよな!そうやって高みからみれるんだから!!」
涙が溢れるけど悲しいからじゃない。
この世全てを呪う怒りの涙。
合宿所から火が上がる。
周りが明るくなり、人の欠片がよく見える。
化け物が私の前に降りて来た。
どうやら最後のご馳走らしい。
「いいよ…食べたきゃ食べればいい。でも約束して欲しい…」
人の言葉を理解する程知性があるか分からないけど誰でもいいから聞いて欲しかった。
「アイツらを…この世界に生きる全ての人間を滅ぼして…!」
自分だけ裏切られて死ぬなんてごめんだ。
全員まとめて死んでしまえ。
化け物は私を見ているだけで食べる気配が無い。
「何を躊躇してるの?人間食べるの好きなんでしょ?ほら、来なよ」
私はフラフラと立ち上がり化け物に近づく。
口をや開けていたから上半身を入れる。
腐敗臭が酷く吐きそうだったけど恐怖は無かった。
最後の景色がこれとか情けないけど。
しかし化け物がとった行動はかみ砕かず後ろに下がった。
今度は私が口を開け啞然とした。
『汝 悪意 強大』
「!!」
頭の中に言葉がイメージのように流れる。
声は無いけど雰囲気的にAIのよう。
『我 人類 否定 汝 同族』
「待って…私を勧誘しているの?」
『肯定』
マジか…
化け物と話すだけじゃなくて手を結んできた。
私を囲うように化け物が集まって来たが攻撃はしてこない。
「確認だけど私人間だよ?貴方たちの敵だよ?」
『承知 汝 勧誘』
「分かった…その案のるよ。で私はどうすればいい?」
『感謝 汝 進行 四国』
四国へ行けと?
実家よりかは近いけど相当の距離。
「時間かかるけどいい?」
『了承』
方針が決まったなら動かないと。
まぁ化け物に襲われないなら気を張る事も無いか。
「じゃ行こうか」
荷物は全て燃え、自分が何者かを証明する物は無い。
白取千早はここで死んだ。
私…いやオレは黒花千早、人類を粛清する存在。
化け物と四国を目指す旅が始まった。
大名行列のようにオレの後ろを歩くわけじゃなく最初にコンタクトしてきた子だけ一緒にいる。
他は契約締結と共に散り散りとなった。
その際、胸に刻印を刻まれた。
この子たちの親玉の証でこれが機能してる限り襲われないらしい。
そして特徴的なのが白髪と赤い目。
契約と同時に変色した。
未練は無いから別にいいんだけどこれ目立たないか?
「そういえば名前あんの?」
『無』
「だよなぁ…化け物とかこの子じゃ言いにくいし…」
神様だったら変な名前つけたら怒られそうだし。
難しいな…
「白…雪…うーん…」
『無用 汝 使命 優先』
「好きでやってる事だ。もしつけた名前が嫌ならその時は諦めるさ」
『把握』
山道を歩いているけどこの子がナビゲートしてくれるから迷うことは無い。
ふと空を見上げる。
歩き始めて数日は経っている筈だが空は暗いまま。
まるで極夜だな。
「これも親玉の仕業なの?」
『肯定 神 権限』
神様と契約したのかオレ…
破ったら死ぬだろな。
「疲れたから休んでいいか?」
『了承』
「あんがとさん」
近くの木に腰掛けコンビニからパクった水を飲む。
リュックは亡くなった人から拝借した。
こんな状態で窃盗とか言ってられっか。
「はぁ…生き返るわ〜…あとどんくらいで着きそう?」
『数ヶ月』
「アバウトだな」
『陳謝』
「謝んなって。半年とか言われるよりかはマシさ」
『感謝』
感情がストレートな気がする。
謝る時は謝り感謝はすぐに言う。
よっぽど人間らしいと思うのはオレだけか?
そのまま歩みを進め数日。
人の気配が失せた高速道路を歩いていた。
あちこちに炭化した車が放置されてる。
その中に見覚えのある物を見つけた。
「あ…」
トンネルのへりに頭から突っ込み車体がへし曲がったバス。
何故か燃えておらず屋根が半分めくれていただけだった。
「これ嫌味か?」
『不明 生存 無』
オレはリュックを置き曲がったドアに身体を滑り込ませ中に入った。
何度も嗅いだ血と肉の腐った匂い。
あの子の報告通り死体しか無い。
私を見捨てたがここで詰まって朽ちたのか。
「よぉ。やっと会えたな」
オレは目当ての死体を見つけた。
友達だったそれは顔が半分無くなっていた。
最初分からなくてスルーしてしまい最後の記憶から推測したくらい変わっていた。
「…ハッ、ハハハ…アハハハハハ!!!ザマァねぇな!」
友達に向かって罵倒する。
死人に口なしとは言うけど関係ない。
「私を見捨ててこれとか笑えるな!なぁ、どんな悲鳴あげたんだ?懺悔したのか?まさか私を呪ったり?もうどうでもいいけどさ!」
死体の山で狂ったように笑う。
人間性を疑う行為だけど人間の皮を被った化け物だし。
ひとしきり笑った後バスを降りた。
「待たせて悪いな」
『問題 無 汝 辛』
「そうか?スッキリしたつもりだけどな」
『了解 行動 開始』
「はいよ」
再びリュックを背負い先を急いだ。
オレの旅はまだまだ続くのだから。
ハーメルンよ…私は帰って来たぁぁ!!(あとがき投稿から約1週間)
宣言通り、黒花千早メインのストーリーです。
初っ端からクソ展開ですけどあの時代なら仕方ないよね!
そして星屑とのデート!
いやぁ、1度やってみたかったんですよね…(何を)
雲行き怪しいですけどたまにはほのぼのも入れたいなと。
改めてよろしくお願いします!!