生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

66 / 126
白夜

化け物と旅を続け2ヶ月が経過しようやく瀬戸内海に出れた。

今まで死臭しか嗅いでなかったから潮の香りが懐かしく感じる。

 

「いい景色だな。観光ならここで1枚写真撮りたい気分だ」

 

『呑気』

 

「へいへい。分かってますって」

 

目指すは本州と四国を結ぶ全長約12キロの吊り橋。

この子の話によると目立った破損は無く安全らしい。

ただ、結界が張られているのか橋そのもに近づけないとのこと。

 

「ようは斥候をしろと」

 

『肯定』

 

火を起こし缶詰を軽く温める。

サバイバル生活に不安があったけど本屋から頂いた本を頼りにやったら意外と上手くいった。

自分で言うのもなんだけど天才か…

 

「しかしあなたのサポートあっての今だ。無くなったらどう行動すればいいか分からんぞ」

 

『検討中 暫し待て』

 

作戦を練っているのか。

というか文字数増えてないか?

ふよふよと飛ぶ姿を見てある疑問が浮かんだ。

 

「なぁ、しょうもない質問なんだがお前って食えるのか?」

 

『困惑 意味不明』

 

「ただの好奇心さ。マシュマロみたいだし美味しいかもしれないだろ」

 

『…了承 少々 可能』

 

オレにお尻?を向けて来た。

牡蠣のようなプリプリとしてて見た目はよさそう。

てか今の動き可愛いな。

ナイフを取り出し一口サイズに切る。

切れ目から血も出ずすぐに再生した。

 

「いただきます」

 

触感はもちもちしてるが無味。

味のしないガムをもう一回食べるようなものか。

吐き出すのはこの子に失礼だから無理やり飲み込んだ。

不味いが食えなくは無い。

後は栄養素次第だが、まぁ期待しない方がいい。

 

「ごちそうさん。当分は食べないわ」

 

『馬鹿 阿保 外道』

 

めっちゃ怒られてる。

人なら顔真っ赤にして目に涙溜めてそう。

 

「悪かったって!もう二度としなからさ!」

 

『本当』

 

「マジのマジ!」

 

『…了解 契約』

 

「分かったよ。あと契約じゃなくて約束で済ましてくれ」

 

 

ついに目的地である瀬戸大橋に到着した。

島を複数経由して行き最終地点の四国へ行ける。

車が1台も無く綺麗だった。

 

「長かったなぁ~」

 

『納得 御苦労様』

 

「いやいや、アンタのお陰だよ」

 

『感謝』

 

フワフワと私の周りを回っている。

よっぽど嬉しいのか。

 

「道案内ありがとう。貴方との旅、楽しかったよ」

 

顔を軽く撫でる。

その時、胸が締め付けたように苦しくなり視界が霞む。

 

『哀 辛 苦』

 

「もう、言わないでよ。余計辛くなっちゃう…」

 

『…謝罪』

 

学生だった頃も親の期待に応える為に死に物狂いで勉強をした。

最初は喜んでたけど次第に反応が薄くなっていった。

周りも友達ではあったもののただのライバルと見てた。

誰も私を見てないし、見ようともしなかった。

でもこの子は私を見てくれている。

神様からの命令としても気持ちを理解してくれる事が嬉しい。

 

「名前決めたよ。本当はもっと早く言いたかったけど悩んじゃった」

 

私は少し距離を取り顔が見える位置についた。

 

白夜(はくや)。本当は日が一度も沈まない日って意味だけど貴方といた日々はそのくらい輝いてたの」

 

人類の敵だろうと関係ない。

この子との日々が私にとって魂の場所なんだから。

 

『感謝 感動 幸福』

 

「ありがとう、白夜。お互い間違っても殺し合わないようにしようや!」

 

笑顔で答え大橋に向かって歩く。

オレはこれから人類の希望を壊すのだから。

鬼でも悪魔でもなってやるさ。

 

「まって」

 

その声に反応してしまい立ち止まる。

感情のこもった幼い言葉遣い。

ゆっくりと後ろを振り向く。

そこにいたのは1人の少女。

小柄なその身体に不釣り合いの腰まで伸びた白髪、見る物を掴む赤い目、病人のような白い肌。

 

「白夜…?」

 

その子はコクリと頷いたもののバランスを崩し倒れそうになった。

駆け足で戻り白夜を抱きかかえる。

 

「その身体どうした…?」

 

「おやくめ。ちはやについていって」

 

「だって白夜は化け物なんだから無理なんじゃないのか?」

 

「だいじょうぶ。からのうつわもらった」

 

空の器って誰かの死体のこと?

私の契約した神様って冥界神とかなのかな。

 

「早くくれたっていいのに…」

 

「ごめん…」

 

「気にすんな。それにしても…」

 

白夜は裸だ。

このまま連れて行ったら確実に怪しまれる。

 

「服着てから出直そう」

 

「このままだめ?」

 

「ダメに決まってるだろ。郷に入っては郷に従えだ」

 

「むずかしい…」

 

「人の皮を被ったんだ。色々学べ」

 

「わかった。はくやがんばる」

 

感動の別れ返して欲しいと思ったけどずっと入れるなら感謝しないと。

白夜と手を繋ぎ歩く。

これじゃ姉妹みたいだけど悪くない気分だ。

 

白夜は人で言う小学5、6年くらいの体つき。

そうそういい服が見つからず難航した。

とりあえず死体からはぎ取ったりしてどうにか合わせられた。

血がこびりついて汚いから中に入ったら早めに買ってあげないと。

 

「行くぞ」

 

先に大橋の境界線を越え白夜が来るのを待つ。

片足を恐る恐る伸ばし一歩踏み出す。

 

「どうだ?」

 

「きもちわるくない。だいじょうぶ」

 

ホッと胸をなでおろした。

妹と言ったけどこれじゃ娘の成長を見守る親だ。

 

「ここから敵さんの力が増すからな。変だと思ったら言えよ」

 

「うん。ちはやといっしょならこわくない」

 

「嬉しい事言ってくれてこの~!」

 

白夜の頭をわしゃわしゃと撫でると目を閉じ気持ちよさそうな顔をしてた。

まるで犬みたいだな。

 

オレたちは橋を難なく渡り切り四国に上陸した。

島を超えた辺りから太陽が昇り数か月ぶりの青空を拝めた。

いくら敵になったとはいえ人の身体である以上日光は大切。

まぁ白夜は眩しそうにしてたけど。

とりあえず避難民として保護してもらえ、市が借り上げたホテルに泊めてもらっている。

長旅の疲労もあったからかベットが見えた時即座にダイブしてしまった。

 

「疲れたぁぁぁぁーーー」

 

ここからが本番なんだけどチュートリアルが長いん

よ。

だから今はセーブポイントってことで休ませてもらおうか。

 

「ちはや。これはなに?」

 

「それはお湯を沸かす機械。今はいいけど動かす時は触るなよ」

 

「なんで?」

 

「痛い思いするから」

 

「きをつける。これは?」

 

興味津々で色々聞いて来る。

確かに学べと言ったけど気合が凄すぎる。

お役目の影響か?

 

「後で教えるから一旦来い」

 

起き上がりシーツを軽く叩き呼ぶ。

意図を理解したのかパタパタと早歩きしながら座ってきた。

オレの膝に。

つっこんでも疲れるだけだし諦めた。

 

「まずオレたちの状況を確認する。目標は全人類の抹殺、ここは神様からの勅令を受けて来たが何かあるのか?」

 

「はくやたちをうらぎったかみさまいる。みんなけっかいはられてこれない。だからたおしてたべる」

 

物騒な言い方だけどようは裏切り者を殺せと。

オレと真逆だな。

 

「なるほど。潜伏期間はどのくらいだ?」

 

「ながくなければいい」

 

「そういうとこアバウトだよな…」

 

「みんなだんだんつよくなる。てきをまなんでる」

 

知性があるのは白夜を見れば分かるけど他の個体も同等なのか。

となると本格的に動くというよりかは暗躍して侵攻しやすくするといった所。

 

「状況はなんとなく分かった。これからについてだが、オレたちは自分が何者か証明する物が無い。新たに戸籍を作らないといけないが中学生と言えば行動を制限される。そこで成人と言っちゃえば自由にいけ…」

 

「うーーーー…」

 

眉間にしわを寄せて唸っている。

 

「大丈夫か?」

 

「だいじょうぶ。はくやついてく」

 

「要は大人になる為には知識が必要って事だ」

 

「ちしき?」

 

白夜を降ろし部屋に備え付けられているパソコンを開き検索をかける。

見せたのは有名大学の入試試験。

さすがのオレでも意味が分からない内容。

 

「これが出来ないといけない。その為に最低でも4年は必要なんだが対策されちまうかも」

 

「これできればいいの?」

 

「とりあえずな」

 

「……うん。いける」

 

「は?」

 

今なんて?

ケトルの存在を知らない子が大学入試問題を解ける訳が無い。

 

「ちはや、あたまだして」

 

「は、はぁ…?」

 

恐る恐る白夜に頭を出す。

オレの前に立ち小さな手を乗せてきた。

すると重力が全身に一気にかかるような感覚に襲われる。

 

「グッ…!」

 

歯を食いしばり手と足に力を込め耐える。

腹筋にも力入れてるせいか胃が痛い。

少しして重力が収まり元に戻った。

反動なのか肩が軽く感じる。

 

「だいじょうぶ?」

 

「何とか…今のは?」

 

「ちしきあたえた。ちはやならとける」

 

白夜はパソコンを指さしていた。

するとさっきまで意味不明だった問題の公式や答えが頭に浮かび上がる。

 

「すげぇ…」

 

驚きのあまり言葉が出てこない。

最早魔法の域だ。

 

「後は独学で補えばいける…大手柄だ、白夜」

 

「えへへ。やくにたててよかった」

 

これで戸籍と仕事は困らないだろう。

大学は適当に検索して出て来たところを使えばいい。

 

「しばらく人の生活を送る。覚える事多くて大変だろうけど辛抱だ」

 

「まかせて。ひとになりきれるようがんばる」

 

両手で握りこぶしを作って意気込んでいる。

つい数日前まであの化け物だんて思えないくらい感情が出てる。

まぁ共犯者同士仲良くやろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして3年後。

オレは教卓に座り、新聞を読んでいた。

目の前で生徒が勉強してるから捲る時は極力音を出さないように務める。

公に出る情報の全てが大社によって検閲をかけてるから真実味は無いが見ないよりかはマシだ。

読むのに夢中になっていたらチャイムが鳴り響く。

 

「よし、今日の座学は以上だ。皆お疲れさん」

 

6人の生徒はペンを置き身体を解している。

すると廊下がバタバタと誰かが走って来る音がする。

 

「ちーはーやー!」

 

教室のドアを開けるなりオレの名前を大声で呼ぶ。

 

「今日のご要件は?」

 

「学校つまんない!」

 

「一応ここ学校なんだよ。それストレートに言ったらダメでしょうが」

 

「だって簡単なんだもん!ちはやといる方が数百倍楽しい!」

 

「嬉しいけどオレ教師ね」

 

毎回昼休みになると白夜が遊びに来る。

かまってちゃん体質なんだと勝手に思ってる。

 

「相変わらず元気だな白夜は」

 

「小さい子を見ると落ち着きますね」

 

「弟子にしたいくらいの活力を感じるぞ」

 

「変な影響与えないでね…」

 

「先生も会えて嬉しそうだしね!」

 

オレが担当してる生徒たちは少し事情が異なる。

白夜たちが世界を蹂躙した日、6人の少女が神に認められ四国を守り支える『勇者と巫女』として覚醒した。

とはいえ学生であることには変わらないから勇者をしない間は青春を謳歌している。

そしてこのクラスの担任はオレ。

つまり、同じ空間に敵同士が居て日常を過ごしている。

これがオレの作戦、人類の希望に近づき時が来たら全員を例外無く抹殺する。




祝!星屑ロリ化!!
人間態は何がなんでもロリにすると決めていたので!
中身はうん千年生きてるんでロリババアになるのか?
まっどうでもいいや!!

そして何も知らないからこそ生まれるカオスな空間!
裏切られるシーンはよく見ますけど裏切る視点からのは中々見ませんよね。
だったらやってやろうじゃねぇか!ってことでこの役職につかせました。
大社もぐじゅぐじゅだったから抜け道使って行けちゃうでしょ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。